偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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私は帰って来たぞ!!…はい、ごめんなさい。骨折、風邪、増税に伴う仕事量の増加で中々書けませんでした。この作品は絶対に終わりまで執筆しますので楽しみにされている方はご安心ください。


姉妹、逆転する

side人形

 

今日も咲夜に服を着させてもらったが、段々と慣れてきた自分が怖い…。

「咲夜、今日は何か用事はないのか?」

「そうですね…ああ、そういえば今日は河童のにとりに修理してもらった機械を取りに行きます。」

お値段以上!それに妖怪の山の近くだから椛や文…流石にはたては会えないかな…兎も角、いろいろな人達に会えそうだ。

「では、私も付いて行こう。」

「え!?お、お嬢様もですか?ですが余りにも危険では?」

「既に諏訪神社に入った時点でも同じ事が言えたが問題はなかっただろう。」

まあ、それはその時の僕たちが参拝客だったからかもしれないけれど、それにしても咲夜はどうにも心配性だ。

「…わかりました。少々お待ちください。」

そういうと咲夜は消え、後にはクッキーと紅茶が残されている。

「本当に過保護だよな…。」

でも、ふと考えてしまう。この過保護さはあくまでレミリアに対して…、僕にではない。体こそレミリアの体を借りているのかもしれないが咲夜の加護を受けているのは僕だ。寝る前や一人で静かにしていると頭の中をぐるぐると考えが巡る。自分はどうして憑依なんてしてるんだとかレミリアさんの意識は?とか…。

はしゃぎまわって忘れようともしているけれどこういう時は無理だ。

「早く来ないかな…咲夜さん…。」

紅茶の入ったカップを弄びながら少し、ほんの少しセンチメンタルな気持ちになるのは取りあえずでレミリアの振りを現状に甘んじているからだろうか。それでも自分一人では生き抜ける気がしない。人里では拒否されそうだし、道中でほかの妖怪に喰われそうだ。だからこのまま嘘をつき続けて保護してもらう?一体僕はどうしたらいいのだろうか…。

 

 

 

 

side咲夜

 

今日もお嬢様は積極的に他勢力との接触を図っている。確かに他の勢力に“お嬢様”が居ると思わせる為に行動するのはいいのですが…。流石に妖怪の山は不味くないですか?お嬢様の友人(本人は否定するだろうけれど)であらせられる射命丸文、出会ったら一発で偽物だと理解してしまう彼女はブン屋として幻想郷で名を馳せている。もしも友人のレミリアが妖怪の山の麓に顔を出したという情報が舞い込んで来たら彼女がどういう行動に出るのかは想像に難くない。

「すみません。お嬢様が付いて来ようとするのは分かり切っていたのに…。」

相談相手はパチュリー様、館内の家事などの細々とした問題は私の役目だが対外の問題となると基本的にお嬢様で、頭を使…難しいことはパチュリー様に対応していただいている。

「…全く、あの娘が危険を考えずに外に行こうとするのは守矢の時に理解したでしょ?」

「…はい…。」

「ま、済んだことを言っても仕方がないわね。本当に仕方がない…私も出るわ。」

「え!?」

これは意外過ぎた。二つ名が動かない大図書館が動く…アレ?これもブン屋に飛びつかれそうな話題だけれど?

「私が単独で動く。妖怪の山にほど近い所で動けばカラスは全員釣れるでしょ。」

なるほど、それならカラスたち…射命丸文も間違いなくパチュリー様の方へ行くだろう。

「それじゃあ、今から行ってくるから一時間後に出発して。」

「了解です。」

 

 

side人形

 

 

待つ、と聞いて咲夜の事だから一瞬かとも思ったが殊更長く、既に一時間近くは待っている。

…暇だ…。

「どうしたの?お姉様。」

「え?」

問、レミリアである僕に“お姉様”と言うセリフを吐く人物とは?

答、…一人しかいないじゃん。

「ふ、フラン?」

声をかけてきたのはレミリアの妹にして情緒不安定な破壊魔、フランドール・スカーレット。

「いつの間に…。」

「言っとくけれどノックはしたよ?お姉様が反応しなかっただけじゃん。」

やばいな…レミリアはフランとどう接していたっけ…あれ?ゲームに二人一緒のシーンってあったっけ?

「…淑女たるもの相手の返事を待つものよ。」

「へぇ…。あ!じゃあお姉様!」

うーん、疑問を言ってこないってことは普段からこんな感じで接していらのかな…?

「弾幕ごっこしよ?」

「え…!?ちょ、ちょっと待ちなさい…!ええっと、そう!この後、予定があるからまた今度やりましょ?その時は存分に付き合ってあげるから。」

「今度って何時?」

「えーと、あう。」

どうする!?下手に時間は指定できないし…。

「…そうね、時間が出来た時には私から呼びに行くわ。」

「え~、そういって“また”誤魔化すんでしょ。」

また?以前も同じように誤魔化したって事か…。

「フラン、余り我儘を言わないでちょうだい。」

「は~い。」

うん、間延びした元気な返事はとても妹様が狂気に塗れているとは思えないほどにかわいらしいものだ。

「それじゃあ弾幕ごっこは諦めるから代わりに…お・ね・え・さ・ま?」

だったのだが今のは子悪魔っぽいし嫌な予感しかしない。

「この前に約束した一日だけ私がお姉ちゃんって約束、今日にして!」

「え…?何それ?」

「だから、今日は一日私がお姉ちゃんでお姉様が妹って事!この前一日ぐらいならいいって言ってたでしょ?」

ちょっと待ってレミリアさん、何を妹様と約束していらっしゃるんですか!?

「ま、まあ…以前私も了承したことだし仕方あるまい。だがいいのか?今日はこの後出かけてしまうぞ?」

「一日中出てるわけじゃないでしょ。」

「フランがそれでいいなら構わないけど…。」

「レミリア!」

「へ?」

「『フランお姉様』…でしょ。」

ああ、もう始まってたのか。

「…フラン…お姉様…。」

今までをお姉ちゃん面していただけに以外に恥ずかしいな…。

「……たしが……えちゃん。」

こっちが恥ずかしがっている中、フランは放心して固まっている。

「どうしたの?お姉様…。」

「ハッ…何でもないわ。…と、咲夜も来たみたいだし気を付けて行ってくるのよ、レミリア。」

「うん、行ってきます。フランお姉様。」

 

sideフラン

 

今、紅魔館の主は不在だ。でも『レミリア・スカーレット』は居る。

幻想郷のトップクラスのお人達が結集して~とかなんとか小難しいことを言っていたけれど要するにレミリア人形だ。

咲夜、美鈴、パチュリーはすでに会っている。私だけが未だに会っていない。理由は言わずもがな、私がここ数日の間に狂気に塗れていたからだ。という訳で狂気も落ち着いたので会ってみよう!

トントントン

本当はノック何て何時もはしない、注意はされるけどそれ以上に面倒くさい。

「ま、初めて会うんだし…性格がアレに近いんなら口うるさいかもしれないし…。」

姉をアレ呼ばわりするのは我ながらどうかとも思うが長きにわたる幽閉生活の恨みは重い、だから偶にはその姉を模った人形を私が苛めてあげるのも許されるはず…。中には確かに姉そっくりな人(?)が居た。紅茶を片手に何か考え込んでいる様。何かつぶやいている…何々…。

『このまま紅魔館の人たちを騙してレミリアの振りをしてても良いのかなぁ…。』

…つまりは、本人的には周りにばれてないって思ってるって事かな…ふっふっふっ、いいこと思いついた。

 

「どうしたの?お姉様。」

「え?」

うわー、あいつのキョトンとしてる顔って初めて見た…。

「ふ、フラン?」

今度は慌て始めてる。成程、あいつとは似ているけど完全に別人でなんだかかわいいな…。

「いつの間に…。」

「言っとくけれどノックはしたよ?お姉様が反応しなかっただけじゃん。」

今回は本当にノックはした…いつもは蹴り破るけど。

「…淑女たるもの相手の返事を待つものよ。」

わ!台詞があいつっぽい。

「へぇ。」

と思わず口に出してしまったほどに…。これなら親しい人じゃなきゃばれなさそうだ。ま、そんなことはどうでもいいとして。 

「あ!じゃあお姉様!弾幕ごっこしよ?」

私にはこれが本題、実力は未知数でも流石に私やあいつのレベルに届いているとは思わない。

私の本題は――

「え…!?ちょ、ちょっと待ちなさい…!ええっと、そう!この後、予定があるからまた今度やりましょ?その時は存分に付き合ってあげるから。」

慌てふためくレミリア人形を見て楽しむことだ。考えれば簡単なことだよね、戦ってすぐ負けたらレミリアっぽくないし、ああいう素が現れやすい戦いの場はそもそも他人の振りをしている人形にはつらいのだろう。

「今度って何時?」

「えーと、あう。」

…これはいい!ハマりそうだ。あいつの泣きそうな顔なんて二百年ぐらい前におねしょをしてお母様に怒られた挙句、私が幽閉されている所に逃げ込んだ時以来…うふふ。

「…そうね、時間が出来た時には私から呼びに行くわ。」

無難な答えもダメ。

「え~、そういって“また”誤魔化すんでしょ。」

わざと“また”を強調して逃げ場をなくす。

「フラン、余り我儘を言わないでちょうだい。」

そういう人形はおろおろと困っていて…すごく、何と言うか弄りがいがある。

一応弾幕ごっこは一旦諦めて…。

「それじゃあ弾幕ごっこは諦めるから代わりに…お・ね・え・さ・ま?」

別方向から弄ぶ。

「この前に約束した一日だけ私がお姉ちゃんって約束、今日にして!」

もちろん、そんな約束してない。けどこの子にそれがわかるはずもない。

「だから、今日は一日私がお姉ちゃんでお姉様が妹って事!この前一日ぐらいならいいって言ってたでしょ?」

さあ、立場逆転の時間、普段なら絶対にありえないことをこの人形にさせる。…これもお人形遊びっていうのかな?

 

「…フラン…お姉様…。」

 

そして放たれた言葉は銀製の武器よりも深く私の胸を穿った。

お姉様って…フランお姉様って…!!

さっきから私たちの様子を盗み見ている咲夜を盾に逃げたけど…あれはすごい!

今度パチュリーに頼んであの人形を譲ってもらおうかな…。当面の問題は帰ってきた妹をどう弄るかだ!

「ああ、こんなに楽しいのは弾幕ごっこをして以来だわ…!」

今日は思いっきり楽しくなりそうだ。




ここまで日数を経たせてしまい本当に申し訳ございませんでした。
一応忙しいのは五月の終わりまでです。それにしても右手の剥離骨折が辛いです。左手一本の生活でここまで苦労するとは…まだ治らないし、
補足:フラン=フランドール・スカーレット、495年の間幽閉s誰続けていたレミリアの妹、気が触れている
   お値段以上=河城にとりのこと、にとりという名前から

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