偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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ひとつだけ言い訳させてください。――会社も悪い
なんというかあれです。急に出張ねなんて言われてもどうしようもありません。
自室のパソコンじゃなきゃパスワード分からないもの(泣)


メイド、取引する

side十六夜咲夜

 

―死んでくれる?―

その言葉を聞いた瞬間、紅魔館の面々が私は霊力を纏ったナイフ持って、一人は魔力の篭った手をかざして、一人は気を込めた拳を持って、一人は妖力を濯いだ爪を持って八雲ゆかりを囲んだ。

「あら、怖いわね。でもいいのかしら?」

「へっ?」

お嬢様が地面により下に落ちて――スキマ!?

「ひゃああぁぁーーーー…。」

「―――。」

「「「「お嬢様(お姉さま)(レミリア)!!」」」」

人形がスキマに飲み込まれるその一瞬、八雲が口元を隠しながら何かをつぶやく、今度はその間隙を縫い4人に御札が飛び、動きを封じる。

「御札!?くっ…どういうこと?…霊夢!」

目の前の、自分たちを縛るものへ問う。

「何?あんたらはレミリアを守るために動く者だと思っていたけど?」

恐らくは八雲のスキマで飛んできた霊夢とは何やら話が噛み合っていない。

「落ち着きなさい。この場で襲撃者に人形を壊させるのが正解なのよ。霊夢にはもう既に話してあるから話は噛み合わないと思うわよ。」

「っていうかあんたこんな重要そうなこと当事者に黙ってる?」

呆れいる霊夢は面倒くさそうに座り込んでしまった。あとは全部八雲に放り投げるらしい。そして八雲の言葉に切れ出すのは先ほどの戦闘の空気に当てられ普段以上に狂気に塗れやすくなっているのフラン、最も4人ともに多少なりとも殺気立っているのは間違いないが…。

「…正解…だと?ふざけているのかキサマ。」

「そこのメイド、あなたの本当のお嬢様は誰?」

妹様の言葉を無視して私に質問を投げかけてくる。

「…レミリアお嬢様が私にとってのお嬢様よ。」

途端、人の悪そうな笑みを浮かべる八雲。

「それじゃあ貴女方にも了承していただけると思いますわ。何せあの人形を壊させてしまえば貴女たちのお嬢様に関する問題は全て解決するのだから。さて、今抱えている問題、幾つかあるが筆頭でヴァン・カルンスタインやコミュニティ、真祖の数が近年の人間のコミュニティによって減らされてしまった事による誰彼からの子を身篭れというのまであるわね。どうするのかしら?レミリアをどこかに嫁がせる?」

「巫山戯るな!そんなことは紅魔館の面々が許さない!」

だからこそ態々レミリアお嬢様が直々にパーティに赴き解決を図ろうとしているのだ。

「それよりも今は…!」

「話は最後まで聞きなさい。今お人形ちゃんと追いかけっこをしている人たちはその人間のコミュニティの中でも最強戦力のコミュニティ、8割は彼らの仕事といっていいわね。」

「……そういうこと。」

「どういうことですかパチュリー様、全くわからないんですが…。」

「要するに、あの子が奇しくもそこいら中に出歩いてしまったのが運の尽きって所かしら?」

「ふふ、まあそれも計算してわざわざ好奇心旺盛な魂を選んだのですけれどね。今やあの子は紅魔館の一員としてたとえ人形であろうともその知名度は広まってしまっている。事実、永遠亭やら守谷では人形としてみている。」

((バレちゃってるの!?))

「コホン、続きを。」

「さて、ここで紅魔館の所有していると評判の人形に手を出した人間を紅魔館が怒り殺す。そうしたら偶然そいつらはレミリアの容疑のかかってい殺人事件の真犯人であることが遺品から判明でした。ほら、万事解決でしょ?吸血鬼に敵対する最悪のコミュニティが潰れたために見合いなどの話は以前程五月蝿くはならない。偶然手怖いわね。」

「殺人事件?」

「ええ、残念なことに今、レミリアはヴァン・カルンスタインを殺した第一容疑者なのよ。あら?またもや偶然、これで問題のひとつは解決しているはね。ほっておいたら犯人として大変なことになりそうだけど…。」

本当にどこまでも胡散臭い…。

「それでもお嬢様…人形の方のお嬢様を殺す理由がない。襲われた時点でそいつら人間を殺せばいい。」

けれどもまずい…このまま会話を続けていると人形のお嬢様を壊すことを正当化されそうで怖い。

「それではダメ。明確に紅魔館、この場合は幻想郷の中でも勢力の一つが手を下す基準が必要なのよ。」

「手を出した時点で十分じゃない?」

人形のお嬢様を心配してか苛立ったように美鈴が問う。

「ダメよ。今回の場合吸血鬼のコミュニティに植え付けるべき印象は少し手を出すと皆殺しにするというのではダメそれでは危険因子扱いだしただ闇雲に事件の関係者を皆殺ししたイメージしか持たれない。」

「だから紅魔館で少なくとも咲夜に大事にされていたかつ人格を持った一種の生命体といってもいい人形を破壊させる?」

「そういうこと、ひとつ計画外だったのはあなたたちが異常に人形に懐いたことぐらいね。」

まあ最初は確かにその… 強く当たっていたけれど…。

「当初の予定だとこんなに説得に時間が掛かるものではなかったのだけれども仕方ないわね…。ではいいでしょう、あなたたちの本物のお嬢様を呼んで了承して頂ければ納得するのでしょう?まさか本物のお嬢様を差し置いて偽物のお嬢様を取る?」

クスクスと笑う八雲に対してこちらは歯噛みをするしかない、確かにお嬢様に破壊を命じられたら私たちは従うだろう。

「覚悟は決まったかしら?(一応、藍には襲って来るであろう一団のことを調べるように言ってあるし真面目に調べたのなら私が依頼人でその真意も汲み取っているはず…。)」

そのままスキマを出現させて――

「さあ、出てきなさい、藍!」

……。

「焦らさなくてもいいから出てきなさい?」

……。

「あら?藍…藍出てきなさい!…出てきて、今なら八雲家ビデオ鑑賞会も考えてあげるわよ~!?」

(((八雲家ビデオ鑑賞会って何?)))

結局、八雲藍とレミリアお嬢様はスキマの向こうにはいなかった…格好つけていたのがすべて反転した瞬間だった。

「ふ…ふふっふ、……いい度胸ね…ふふ…この私に恥をかかせるなんて…。何でいないのよ~!」

今までの喧騒が静まり八雲紫の小言しか響かない中、遠くで銃声とお嬢様の声が響いていた。

『咲夜、美鈴、フラン聞こえるわね?』

『パチュリー様?』

たしか念話といっていたものがパチュリー様から届く。

『あなたたちは返答出来ないから一方的に話すわね。八雲と博麗の意識がこちらに向いていない今がチャンスよ、拘束を緩めるわ。おそらく能力の行使ができるようになるぐらいしかできないけれど、フラン能力を使って拘束を解いて、美鈴は気配をたどって、咲夜は能力を使ってなるべく遠くに美鈴を運んで、但しあなたは戻ってきなさい。わかったら右目で瞬きしなさい、……フラン、気持ちはわかるけど美鈴が適任なのよ。ちょうど八雲の視界の端っこだしおそらく敵は封印系統の能力を使って近代兵器を使っているから単純な戦闘能力に秀でてる美鈴でなきゃダメなのよ。私たちはこいつらの足止め。』

最後まで渋っていた妹様も了承し、拘束が軽くなる。ここから先は私の仕事!

瞬間、時間を止めて美鈴を館の外まで連れ出す。あとは戻って…針!?

「ハァ、人形を助けようって?たかだか人形でしょ。」

全くどこまでも気だるそうに言ってくれる。

「霊夢…どうしても邪魔するってことかしら。」

お互いにそれぞれの獲物を構えるがおそらくは私は負ける。実力差がありすぎるのだ。

それに既にもう片方(八雲vs妹様&パチュリー様)が殺気を振りまいていることから増援も見込めない。

「ま、どっちに転んでもいいんだけど…。」

そう言いつつ投げてくる御札と針は理不尽に避けづらい。

「くっ、だったらこっちの味方しなさいよ!どっちが悪役かはわかるでしょ。」

「一応言っておくとこれでも私って博麗なのよね。」

要するにこれを異変として捉えたということか。

「珍しいわね。貴女こういったことには介入する行動力はないと思ったけど?」

「仕方ないじゃない。スキマに頼まれて、その…借りがあるし。」

「大方あなたのことだからお金とか食料ってところかしら?」

「…何時から紅魔館のメイドは予知能力者になったの!?」

この巫女は…!とお互いに会話しながらも激しい弾幕の応戦は徐々に霊夢の弾幕が支配してゆく。

やはりというか、この巫女は…、私の能力も大概だと思うがその全てをカンで避けてしまうのはどうなのかしら?

「…一ヶ月…。」

次々と迫り来る弾幕を紙一重で避けながら必死に交渉する。

「?」

「一ヶ月の間、三食紅魔館の食事し放題、妖精メイド10人の奉仕付き…。」

「!」

「別に紫の事を裏切れとは言ってないわ。…ほんの少し具合が悪くなって弱い弾幕が当たってしまっただけ…。私は仲のいい友人に食事を提供する。何ら不思議はないわね。」

「…そう言えば前に食べた“クラムチャウダー”が食べたくなったわね。」

「明日はクラムチャウダーが作りたくなったわ。」

薄暗い交渉成立。…一刻も早くお嬢様のもとに!




やっと出張が終了!辞表だそうかな…
今回サブタイを思い切って『うどん、出張を終えるにする』にしようか迷うぐらい忙しかったです。
補足:ヴァン・カルンスタイン=誰?という方は『九尾狐、絶叫する』
   最強戦力のコミュニティ=とはいえ彼らは強くありません。能力を封じて近代兵器で遠くから狙撃する暗殺タイプなので能力だのみの外の世界の怪異が抵抗できなかっただけです。
   襲われた時点でそいつら人間を殺せばいい=しちゃいけない理由が実はもう一つ。昇天すべき魂をひとつの器に入れ続けるとロリ閻魔が説教しにきます。…ただでさえ少ないシリアス空気がぶっ壊れるので除去
   出てきなさい、藍=Qなんで最初からふたりに説明しなかったの?A藍の場合、説明すんのめんどいしちょっと考えりゃ分かんだろ。レミリアの場合、なんだかんだで上にほだされやすい性格だけど散々ヴァン卿に嫌な思いを植えつけられた上に接点のない人形壊せば紅魔館メンバーの無事が安泰っていうのを考える時間を与えずに問えば人形を壊すのも同意してくれるだろうという発想から
   妖精メイド10人の奉仕付き=個人的にはこっちがメインデッシュ
   クラムチャウダー=作者が好き

今回久々の執筆投稿なので見直しはしたのですが齟齬があるかもしれません。その場合、直しますので教えていただけると嬉しいです。
次回投稿はここまでではないですが遅くなるかも知えません。未だに繁忙期なので…ではノシ

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