最後の最後、あとがきの場所に書いたのがまずかったのでしょうか。
照魔鏡という鏡は幽霊だろうと妖怪だろうと映すことのできる鏡です。
うーん、この先の展開に必要とはいえ咲夜さん視点の文章が硬すぎて書きづらい…。
そう、まるでその胸の様(ピチューン
――――――――――side咲夜
普段は使うことの少ないダンスホールに紅魔館の面々(妖精、妹様を除く)と八雲紫、アリス・マーガトロイドが集まっていた。
その中でお嬢様は面白くなさそうな…忌々しい物を見るかの様な苦悶に満ちた顔で一通の手紙――悪魔による社交界の招待状――を見ている。
この招待状を断るということは紅魔館のみならず所属先である幻想郷にすら不利益を被る。
その為、不承不承ながらも出席の旨を返信する。
だが問題はその後、この幻想のパワーバランスの担い手が一人減るという事だ。
常ならば各所に強者を置いているために問題などはないのだが今は事情が違う。
妖怪の山の頂上に新たなる勢力が出てきたおかげで内外問わずに様々な勢力が慌ただしく動いている状態だ。
おまけに外でも何か問題があったらしく運命が慌ただしく変化しているらしい。
この状態の紅魔館で主が不在という事実はあまりにもマズイ。
その結果、管理者八雲紫とその八雲に渡りをつけてもらい人形遣いのアリス・マーガトロイドに協力を仰ぎ、親友のパチュリー・ノーレッジを巻き込み、紅魔館の主をもう一人つくりだす。
まずはアリスが紅魔館の主その人にそっくりで精巧な、人とほとんど変わらぬ人形を一体作り出す。
次に八雲が今回の事態に相応しい魂を選定洗浄、パチュリー様が人形に魂を定着させる。
時間があまりにもなかった為にお嬢様は人形が起きる前に社交界へと旅立ってしまわれたがその際に一つだけ命令を受ける。
――咲夜のしたいようにしなさい――
恐らくはそう命令するのか最善だと運命を見たのだろう。
そうこうしている内に協力してくださったお二人も恙無く人形作りが済んだことを確認して帰っていった。
あとはこの人形に魂が馴染むのを待てばいいらしいが…。
「大丈夫ですか?咲夜さん。」
私が人形を睨みつけているのを見て美鈴が心配そうに聞いてくる。
ああ、今の私はそんなにひどい顔をしているのだろうか…。
見れば残った紅魔館の面々もひどく心配そうに私を見ている。
「大丈夫、大丈夫よ。」
言ってみて、まるで自分に言い聞かせているようだと思いながら人形をお嬢様のベットまで運ぶ。
…これが…、これがお嬢様だと?
ふざけるな…、私が崇拝し、仕えているのはただ一人レミリア・スカーレット様だけだ。
こんな姿形だけを真似た人形に暫らく仕えなければならないなんて…冗談じゃない。
頭の中でそんな思いがぐるぐると渦巻く中、その人形がかすかに動く。
「…。」
今一度人形を睨みつけ、外に出る。
閉めると同時に衣擦れの音や伸びをする声が聞こえる。
その声にさえ苛立ちを覚えながらゆっくりと二回、ノックをする。
本来は仮初とはいえとても主に行うことではないことは重畳に承知している。
承知してはいるがそれを止められない。
程なく返事がないままに扉を開ける。
「失礼いたします。」
この人形にはメイドとして最悪だと思われてもいい―ー最低限の礼儀しか払うつもりはない。
「十六夜…咲夜…!?」
天蓋を開けた先で人形は驚いたようにつぶやく。
確か、人形に入っている魂は『最低限必要な幻想郷の知識を持ったおバカさん♪』と八雲紫が心底嬉しそうに言っていた…。
「どうしたのですかお嬢様?」
聞くと、ビクッと震えた人形は目を泳がせながら鏡を要求してきた。
腹いせにただの古い手鏡を照魔鏡だと言って渡したが人形だから問題ないだろう。
ついでに普段はエスコートする朝食も来るように言い置いただけ…。
うさぎ小屋のようにどの部屋が何か書いてあるわけでもないし、他者に聞くにも著しくこの時間は他者とも遭遇率が低いが問題はないだろう。
最低限の知識は持っているというのだから…。
その後は食堂でただぼうとしていた。
「…何やってるんだろう私は…。」
今の自分が最低なことをしていることも、それがお嬢様の意向を無視しているであろうことも理解している。
けれど、人形を目の前にすると思わず、らしからぬ行動をとってしまう。
『にゃ、にゃんでもないわ咲夜。』
普段にお嬢様から聞いたのなら時間を止めて抱きしめていたであろうこの台詞も、人形が声を真似ているのだと思うと許せなかった。
そんな取り留めのないことを考えていると外から声がする。
どうやら美鈴が助けたらしい。
人形は…
「ふっ、普段より少し遅れたな。だが、この空腹感がおいしい朝食をより一層おいしい物にしてくれそうだな。」
それはお嬢様の真似だろうか…確かに似てはいる。
その、内心で威厳やらカリスマという単語が飛び交ってそうな顔も、無い胸を突き出して羽をパタパタと動かす様も
多少のぎこちなさと腰の左手の位置と顎の角度、足の角度を除けば完璧にお嬢様だが、それを人形がやっていると思うとどこか許せなくなる。
最も格の低い席に座らせ、血だらけの料理を出す。
今出している料理も人間の感性を持つ人形にはきついだろう(飲食は出来るらしいが)。
案の定ポロポロと涙を流しながら血で漬けた野菜を口の近くに持って行っている。
…流石に…、これは…。
やり過ぎたけれど、一度出してしまった以上は下げるのも不自然。
どうしようかと考えあぐねていると不意に誰かに肩を叩かれた――美鈴だ。
(大丈夫です。ちょっと話を合わせてください。)
小声でそう言うと、私を外に連れ出す。
はぁ、美鈴は怒って…いや、呆れてるかなぁ。
廊下に出て美鈴は…唯唯、頭を撫でてきた。
「大丈夫ですよ。咲夜さん」
それだけ言うとまた人形のもとへ…
「涙が止まったら入ってきてください。」
…目元を触ると微かに濡れている。
知らぬ間に泣いてしまったらしい…。
全くもって私は何をしていたのだろうか、敬愛しているものの物真似をされたことに苛立つなんて…。
「うん。しっかしなさい十六夜咲夜、私は誇り高き紅魔館のメイド長。」
自分に言い聞かせる。大丈夫、第一本当はしっかりと理解していたはずだ。
寧ろ人形のお嬢様は今回の騒動に巻き込まれてしまった謂わば被害者。
せめてその魂が解放されるまでしっかりと面倒を見なくてはお嬢様に面目が立たない。
美鈴と入れ違いで中に入る。
美鈴は何も言わない…、私を信じてくれているから。
恐く、子悪魔とパチェリー様が出てこないのも私ならうまく人形のお嬢様と付き合うことが出来ると信じてくれているから…。
違うんだ!もっと書きたいのはキャッキャウフフでゆりんゆりんな文章を書きたいんやー!
でも今回のは仕方がないんやー(泣)。
へへ、咲夜視点が終わったら俺、閑話やらifを書いて楽しむんだ…。
補足:勘違い?(タグ)=大丈夫です。バレているのは紅魔館だけ…。
確かに似てはいる=咲夜さんはミリ単位で指摘できます
嫉妬=A〇Bファンにとってのキン〇ロー。みたいな心境