偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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前回からまた時間が経ってしまい申し訳ございません。
また、全体的に修正を入れてあります。
具体的には、

人形が自分が人形だと理解する → 自覚なし

人形が自身がレミリアでないことを告白しようとする → 今は言おうとしない

はい、もう少し勘違い要素を続けようとした結果の修正です。
申し訳ございませんがご容赦ください。


祟神、錬金する

sideパチュリー

 

「ううぅ――痛い…!」

今、私はおそらく最大の危機に直面している。

恐らくは呪術の類、それも先ほどから魔法で(ほとんど魔力が空なので簡単なサーチしかできないが)見ても私の目からは異常性は確認できない、普段から掛けている防御魔法も感知魔法も異常はないという結果。

しかし、今回の戦闘で私が受けたダメージは気絶こそしたものの打ち所が悪かっただけで数か所の打ち身のはず、全身の痛みというのはおかしい。

「あら、意外にもお早いお目覚めで。」

全身を針で穿ったかのような痛みをこらえながらも懸命に原因を探る私に見計らったかのように八意永琳が私の顔を覗き込んできた。

「…正直希望を見いだせないわ。いったい何の呪いを受けたのかはわからないけれど、……持って数日といったところかしら?」

…なんだろう、なぜに人が認めたくない自身の死期を悟り告げているのに…。

「なぜ笑っているのかしら…?」

少々語気を強めて問う。もしや、何かたくらみが…!?

「くく……、だって……ぷっ…筋肉痛だもの…(笑)」

――――――はっ?

「受けたダメージ量を計算して疑問に感じるのはいいけれど、動かない大図書館が久々に動くときの筋肉量なども考慮してあげなきゃだめよ?…ぷっ」

「……。」

「急に黙ってどうしたのかしら?筋肉痛の患者さん。顔が真っ赤よ?」

「…………いっそのこと殺しなさい!」

そういって暴れようとして――

「ーーっ!?」

全身に痛みが走る。

「ほら、薬よ。」

仕方がない。

「……ありがと…。」

助け起こされて飲み薬を渡される。ほのかな甘みのある薬だ。あの子でも羽を動かして喜びそう――ってダメね。どうも最近はあの子のことばかりを気にかけてしまっているか…。むきゅ?

「すごいわね。もう動けるし魔力が回復してる…。」

「…………成功か………。」

「待ちなさい!」

何を飲ませやがったこの年増。

「ただの国士無双の薬よ。爆発しなくてよかったわね。」

爆発……うん、追求するのはやめておこう。

「ただ…2、3日内は覚悟しておいてね。…試作品だからいつ爆発するかのタイミングまでは知らないし…。」

「 」

と輝夜姫がこちらに手を振ってきた。

「えーりん!あとは治してね!」

「ちょうど姫様の処置も終わったようですし。――さて、手伝ってもらうわよ。」

「それはいいけれど正直できることは正直少ないわよ?」

人形を治す力にはなりたいが私の身でできるのは魔術に関連する事項程度、人形作りにおいてその中身の大部分を引き受けていたのは八雲だ。

「いいのよ。やってもらうことは決まっているわ。」

「とりあえず私の能力でこの娘の時間をほとんど永遠に近い形にまで引き伸ばしたわ。」

「…私に出来ることは?」

「ふふ、紅魔館の全員を魅了するとは、あの子には不思議な魅力があるのですかね。あなたには人を集めて欲しい、さきほど言った様に知恵から道具から何もかもが足りないわ。具体的には腹部に使っていた人工臓器とボディに使っていた希少な金属や魂の受け皿の役目をしていた魔界の材料を使っているからそれを持っている人にもらわないといけない、あとは皮膚や関節のパーツも必要ね、それらを加工出来るだけの道具を持っている人は必要よ。ま、それだけの人と道具を集めてもうまく行くかどうかはほとんど運任せな部分も多いんだけどね。それだけの人たちとコンタクトを取って交渉できる?」

それだけの条件に当てはまるだけの人と物を集めて(・・・)|いたらとても二時間…いや、それは人形の魂が洩れて無くなるまでの時間、修理する時間を考えれば時間はほとんどかけられないか…でも――

「それなら簡単よ。交渉するまでもない。向こうから来てくれるし、持ってきてくれるわ。」

そして、あるひとつの魔法を使う――どこかのカラスのせいで一部に知られることになった雨を降らす術、紅魔館から真っ直ぐに呼び出したい人たちの居住区に巡らせる。

「どの人たちも頭の回転のいい人たち…これで察してくれれば…。」

「ふぅん、一応家の方にもその術をかけておいてくれる?」

「?もう人手としては十分だと思うけど?」

「ま、保険ね」

別段断る理由もないので永遠亭にむけて一直線に雨雲を伸ばす。

 

最初に来たのは矢張りと言うか山に住まう2神の片割れ、洩矢諏訪子。

「あなたはお嬢様の事情を知っていたわね。」

「けろけろけろ、人形ってこと?それとも今壊されかけてるってこと?ともかく神様、しかもこんなカエルの形を取ったしかも神様に雨の酒を振りまいてお願いをしてきたんだ。話を聞いてあげようじゃないか。」

「今は時間が惜しい、このリストに乗っている鉱石や金属を頂戴…。」

「…ふーん、それで対価は?」

少し悪そうな笑顔で言っていることから冗談の問い掛けということはわかるが…。

「じゃあ、今度このお嬢様で遊んでいいわよ。」

途端、目を輝かせてきた…現金なやつめ。

「それじゃ…ほいっと発動坤を創造する程度の能力、必要なのは――『鉄、鋼、銀、金、銅、ニッケル、オリハルコン、ダークマター…etc』合金が入っている上に後半がおかしい…!?」

洩矢が四つの目を白黒させているが無視だ無視。

「後半だって神話級のものだからきっと出来るでしょ?それじゃあ、お願いね。」

「ちょ…神話は神話でも日本神話にして!っていゆうか未知過ぎる物質はやめて!?」

でもそう言いながらチラチラと人形の方を気にしていることから助けてくれるだろう。

「あーうー…レミリア人形と遊ぶためか…しょうがない…やってやんよ!」

まあ、実際にこの娘(人形)を作成した時に材料は全て使ってしまったので割と焦っていた問題でもあった。

「おりはるこん…あーうー、これはヒヒイロカネだ…。」

 

さて、洩矢は人形のとなりでケロケロ泣きながら難しい部類の金属の作成を行っているが――次が来たみたいね。

 

「さてと…洩矢に頼んでパーツの金属は集まったとしてお次に呼んだのは誰かしら?」

にやにやしながら言っている薬師は分かっていて言っている気がする。

「距離の順番的には――バタン「ちょっと、人ぎょ…レミリアは居る!?」アリスね。」

「キャーー!ちょっと、誰か来なさい!なんで私の子がこんなことに!」

「あーうー、賢者の石になっちゃった。静かにしてよー!」

どうしよう、すごく行きたくない。アリスってあんなに人形に執着心を持ってたっけ?時々弾幕ごっこで爆発させてた気もするんだけど…。あっ、こっち来る――

「あら、そこにいたのね。さあ、どうしてこう言う状況になっているのか説明しなさい。」

ちなみにそのレミリアの隣でケロケロ泣きながら必死に能力を使っているのは完全に無視なのね。

 

「それで、貴女ともあろうものが付いていながらどうしてこういう状況になったわけ…?」

語気を強めて言うアリス、気持ちはわかるけどちょっと怖いのだけれど…!?

「…説明は後ほど…今は治すのを手伝ってもらえないかしら?」

「了解よ。でも、治すのは至難の技ね。作るときに使った道具やら素材はあるけど人形そのものの皮膚と関節、魔界の素材だけしか私は用意できないわ。足りないなら今から魔界にいる母親と連絡取るけど?」

作った時とは状況が違う。既に人形の中には魂が入っていて、八雲紫がいない。難易度は正直この娘でなかったら匙を投げているだろう。そしてそれはアリスも同じ、にも関わらず食い気味に返事を返してきてくれる。

「十分すぎるわよ。貴女の専門外である金属は今、洩矢に用意させているし、ほかの人工臓器も宛がある。」

そのあともしばらくは三人で準備を行う。洩矢も

 

――ピンポーン――…来たようね。

玄関で律儀に守っていた(洩矢とアリスはズカズカと入ってきた)のは――

「やー、盟友に何かあった?」

河城にとりだ。

 

人形を助けるための最後のピースが揃った。




いやー、気がついたら2月も後半、バレンタインも過ぎてしまいましたね。
チョコ?うどんにチョコは合いませんよ。(すっとぼけ)

補足:筋肉痛=実は筋肉痛はなぜ起きるかが分かっていない。
   国士無双の薬=確率で爆発します。試薬品。
   雨を降らす術=紅魔館からまっすぐと続く酒の雨雲、紅魔館で何かが起きていることを知らせたが同時に犠牲者が一人出た。 ↓

『その雨の影響で』
   
永遠亭

side鈴仙 優曇華院 イナバ

「ふん ふーん ふふーん」
今日の私の運勢は恐らく過去最高なのだろう。
「嬉しそううさね。」
今日も今日とてどこかのスキマの様に胡散臭い、しかも人を騙すとき特有の語尾が出てる。
「てゐ、今日はあんたの相手をしてる暇はないのよ。なにせ…お師匠さまと姫様がいないという十年に一度あるかという奇跡の状況!」
なにせあの(・・)|姫様が外出なのだ。
「この姫様の布団を干すのも果たして何年ぶりか…。」
普段から『十二単に見えないかしら?』なんて言って羽織われたりしている布団だ。
「今日は天気もいいし、患者さんは風見幽香が診察で午後に来るだけだし…最高よ!」
え?幽香が来るのに最高なのか…?私じゃ診察できないから関係ない、午後に帰ってきた師匠が相手をするのだ!腋を丸出しにした巫女に昼餉を食べられるハプニングはあったものの布団を干したら休みだ。
「さーて、ついでに全員分の布団を干して……おーわーり!」

ザーーーーーーーーー!

「へ?雨?」
見る見るうちに雨を吸収する布団、って言うかこれは雨でも
「酒の雨…?」
「うさうさうさ、どうやら私に用事があるよううさね。」
そう言ってタタっと走っていくてゐ、よくよく見てみると酒の雨は一直線にどこかの方向に振っている。
「一体何が…?」
「あっ!鈴仙、鈴仙が勝手(・・)|に干してダメにした布団はちゃんと元通りにしておいてね。あと、今日は多分遅くなりそうだから風見さん家の幽香さんに断り入れておいてね。」
「え?え!?」
そこにいるのは酒まみれのブレザーを着て膝をつく哀れな玉兎が一羽、膝をついていた…っていうか私だ…。

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