ちな、説明回です。
side人形
「ほらもう一度、よーく思い出してみなさい。」
「知ってるかも…?」
言い直してみる。
「違うでしょ、さっきは『知ってる』ってはっきり、くっきり、まるっと言ったでしょ?」
さっきの知ってる発言から巫女の足の下から巫女の膝の上に強制シフトチェンジ、そのままみんなに囲まれています。
「レミリア、悪いようにはしないから知ってること全部吐いちゃいなさい。」
「あはは…まあ皆さん落ち着きませんか?ほら、お嬢様もそんな風に囲まれたら思い出しづらいと思いますよ。」
数少ない
「お嬢様、もしや昔の――…いえ、何でもありませんでした。」
咲夜さん?そのいかにもな言い方、辞めてください!
「記憶を呼び覚ます薬か…、確かうどんげが爆発しちゃったのよね…試してみる?」
霊夢の膝の上というかつてないほどのピンチの中で、何で写真の
「ええっと…あんまり細かいことは覚えてないけど…多分…その…夢でみらららっ!」
巫女に思いっきりつねられる。今更だけど聖職者じゃないの?
「もう一度言ってみなさい。『夢で見た』?まさかそんなどうでもいい事で私はあんたを膝の上に移動させてあげたというのかしら?」
勝手に移動させてきたくせに…正直足蹴にされるよりこっちの方が怖いです!
「夢ねえ…。内の
「………。」
「あら、夢だって馬鹿にしたものではないですよ?そもそも夢を見るというのは――
「『科学的に』ですか?幻想郷で通じるんですか?」
「それを言ってしまいますと元も子もないですわね。それに科学が通じないのなら、薬師の商売から呪術師に転身しなくてはいけませんもの。」
「魔術は魔術で独特の理論に基づいて行使するものよ。それは神託や予知夢も然り。ねえ…レミリア、少し質問良いかしら?」
「ふえっ!?」
正直小難しい話をされているのでついていけなかったんですが…。
「その夢の内容は?」
「えっと、昔の出来事と…、あと覚えがないけどその紫と同じ『目』で私のことを見る誰か――よくは分からないが同じ人物だとわかる。」
考えるのに必死で最初の方は素が出てしまったけれど途中で気が付いてレミリアっぽく言う。っていうかレミリアさんごめんなさい、思い出すと霊夢から写真を取った時などとっさのときに素が出る。
「それじゃあ、夢はよく見る方?」
「ふっ、吸血鬼は夢なんてみないわ」
「いえ、一か月ぐらい前に怖いからってトイレに付き添わされましたね。」
ちょっとレミリアさん!?
「えっ!?いや、その、そーだったけなー…。だ、だがあんな風な夢は今までに……あ、二回目だ。」
思い起こすと同じようなこと以前にもあった。
「二回目…、一回目はいつ?」
「あー…あれだ、諏訪神社に遊びに行った日だな。」
「………。わかったわ。確かにレミリア、いえ――貴女の記憶の様ね。」
「?」
「取りあえずレミリア、小悪魔と一緒にこのメモに書かれた本を持ってきてくれないかしら?」
そういってメモを渡される。
「え、ちょっと…?」
「それが必要なのよ。持って来なさい。」
これでも僕、ここの主なんですけど…。
「うー…、わかった。小悪魔、案内して?」
仕方がない、まあ、後で紫が誰なのかは聞けばいいかな?
sideパチュリー・ノーレッジ
人形が退室するのを見届けて部屋に防音の術を掛ける。
「それで、なんで今更
「アリス、そんなに睨まなくても理由はきちんとあるわよ。」
『今更』か、確かにこの場にいる全員が人形が人形であることを知っている。それでも――
「彼女………いえ、あの子には絶対にさせてはいけないことや知られてはいけない事がいくつかある。今回はそういった内容を含んでいたというだけの話よ。」
「前置きはどうでもいい。正直な所、あなた達があの娘に固執するまでに惹かれているの知っているし、私も惹かれてはいる。けどそれだけの話よ。あの紫が何であって、人形が知っていることで何か解決策ができたのか、重要なのはそこで有って人形の境遇じゃないわ。」
ある意味でどこまでも真っ直ぐに異変解決を求める霊夢にとって少し話し方が回りくど過ぎたようで焦れている。
「関係ある話なのよ。最後まで聞いてちょうだい。」
「いいんじゃない?話も聞かずに出て行きたい人は勝手に出ていかせれば、まあ、八雲紫が
「言うじゃない。何ならもう一度あんたの不死性を確認してあげようか?」
二人の間に火花が散る。
「ほら、喧嘩するぐらいなら試しに聞きなさいな。」
そもそも止めるつもりで動いて輝夜姫は喧嘩するつもりではなかったのですぐに引くが霊夢は渋々といった様子。
「最後まで聞いてくれれば私がレミリアの話をした訳がわかるわ。――いいかしら?」
そういって全員をゆっくりと見渡す。誰も反論(反論していたのは霊夢ぐらいだけど)しないので話を進める。
「あの子の――人形の魂は切ったり張り付けたりしてレミリアの魂に近づけているの。」
「なっ!?」
「…っ!」
驚いたのは
「けろけろ、歪なのは解ってたけどそういう事か、腐っても…まあ、腐ってるつもりはないけどともかく神としては文字通り『神を冒涜する』行為に対してどう反応したらいいのかねぇ?不老不死の医学者としてはどう思うよ?」
「…さて、私が言えることは同じ命を冒涜しているものとしては少ないですね。」
「んー、そういった細かいことは伊邪那岐様達や十王の領域だからねぇ。私は何も関わっていないし管轄違いだから何も言わないでおくよ。…でも気を付けなよ。下手したら四季映姫やら
「勿論よ。それに器の中に閉じ込めているような状態の人形を冥界にでも連れていけば下手したら魂が器から抜けてあの世に行っちゃうわ。」
だからあの子が行っちゃいけない場所筆頭だ。
「後は…、これが一番大切な点なのだけれど、あの子の魂の形をレミリアに近づけた故にあの子は本来の記憶のほとんどを失っているはずよ。」
人形に近しい人たちは考え込むようなしぐさを取り、永琳は魂と記憶の関係性を考えているのか難しい顔をしている。
興味なさげにしている霊夢と断片でしか今回の異変の知識を持っていない姫海棠はたて、ルーミアは途中から話を理解できていないのか首をかしげている。
「逆に言ってしまうと記憶を取り戻すようなことがあれば魂に変質や変形があるかもしれない、だから私と紫はあの子にストッパーをかけた。」
「ストッパー?機械なんかには安全装置として取り付ける時があるけどね。………そうか、気絶はそういう事かな?」
さすがに普段から機械関連に強い川城にとりは気づいたようだ。
「けろ…?どういうこと?」
「簡単な話よ。機械でもなんでも、ストッパーの役割は『その場で止める』とか『緊急停止』あの子の場合は活動の停止、つまりは気絶するようにした。」
「じゃあ、あのお人形は記憶を取り戻しそうになると気絶するってこと?」
ルーミアが自信なさげに尋ねる。
「残念ながら少し違うわ。私たちもそうで来たら良かったのだけれど人間の脳というのは回復力も複雑さも私たちの手には負えなかった。だから妥協した。」
「妥協…ですか?」
ここら辺は咲夜たちにすら知らせていない。
「
「…お嬢様の死因…。」
と、咲夜が呆然としている。まあ、この娘は何だかんだでまだ年若いやさしい娘だから近しいものの死の話などにはショックも受けるのだろう。
「当たり前でしょ。死者の魂の中から選別したのだから、死因はある。
「誰かい殺されたというのですか!?」
「落ち着きなさい。話が進まないわ。後で知ってる限りは話してあげるから。」
「………。はい、申し訳ございません。」
「いいわ。とにかく、話を戻すわね。トラウマによるフラッシュバックが起きると記憶を取り戻す可能性が高いから『火』を見ると一部機能を停止して気絶するようにしてあるの。」
「そう、だから
ちなみに何人かは焼き鳥と聞いて首をかしげている。
「なぜ…なぜ
「八雲紫に止められてたのよ。そうしないと動きが不自然になるってね。」
いまさらだが私自身が伝えづらいというのもあった、死者の魂を弄ぶような所業は人の持つべき一線を越えたものであり、伝えずに済むのならそうしたかった。
「さて、人形については分かったわね。本題よ。」
巫女を筆頭に空気が引き締まるのが分かる。さすがに場数を踏んでいるだけはある。
「あの子の記憶に覚えのある人物――といえば数は少ないわ。」
「ハイハーイ、しつもーん。記憶は全部ないんじゃないの?」
いいながらメモを取る姫海棠、後で燃やすからね?
「さっき言った『火』を見ると停止する機能だけど難点は一瞬とはいえ『火』を見てしまうのよね。それによりほんの少し、問題がない程度、断片的に記憶の一部を思い出すのよ。」
「じゃあ、あの八雲紫っぽいのはお嬢様の元の知り合いってことですか?」
美鈴が恐る恐る聞く。
「それどころかもしかしたらあの子を殺した人かもね。」
「っ!」
「な!?」
「…ギリ…!?」
一様に驚いているが特に紅魔館の面々は席を立つようにして詰め寄ってきた。
「落着きなさい。あくまで可能性よ(結構高い可能性だけど)。」
「…どういう状況だったのかは知らないけど、あの子は他殺で焼き殺されていて、『
…せっかく可能性が高いことを言わなかったのに、これだから月の頭脳は…。
「…ちょっと出てきます。」
「草むしりしてきますね。」
「アッハハハッハハッハ!」
「落ち着きなさい。それとフラン、狂気に取りつかれた振りをしても駄目よ。」
「ちっ」
だんだん性格が悪くなってる気がする。正確には
「さて、そこでひとつ紫を捕まえるための提案。人形に記憶を取り戻させることなく記憶を読み取ることの出来るものが幻想郷にはたった一人…いえ、正確には二人居るわ。」
「記憶を読み取る?…慧音先生ですか?」
そういえば咲夜も寺子屋に言った事があるんだっけ。
「慧音でも可能かもしれないけれど満月限定だから少し時間がかかるわね。」
そもそも慧音が魂の歴史まで知れるかは不明だし…。
「その2人は『覚
考えていることがすべて丸見えなんて隠し事の多い魔法使いでなくとも嫌でしょうね。
「いいわ。今回は従ってあげる。覚妖怪…じゃあ言いづらいわね。その『さとり』をここに連れて来ればいいわね。じゃ、行って来ていいかしら。」
霊夢、話し合いの場がよっぽど苦手な様ね。手がかりが覚妖怪だけじゃ見つかるはずが…ないとも言い切れないか、巫女だし。
「けろけろけろ、いいんじゃない?あれはあれで何とかしそうだし。というか突っ込みどころは覚妖怪だから『さとり』ってそのまんまって所だね!」
「わかりやすくていいんじゃないですか?ほら、八雲紫さんのことをスキマって呼ぶ人もいますし。」
何だかんだで霊夢のことも可愛がってる美鈴がフォローしてるけどあまりフォローになってない。
「うっさいわね。わかりやすくていいじゃない。思い切ってあんたたちも改名したら?」
「じゃあ、私、『きゅうけつき』?」
「じゃあ、私は『ほーらい』ね。」
「そうです。私が『かっぱ』です。」
「けろけろ、私こそ『かえる』!」
「え?え!?私が代表みたいに『てんぐ』って名前だと多分天魔様あたりが不貞腐れると思うけど…。」
「『よいやみ』か少しだけかっこいいな。」
突っ込まない。私は突っ込まない。突っ込んだが最後、面倒臭く意味のない会話に付き合わされる気がする。
「いい感じに話がそれてきましたね。」
「仕方ないわね。落着きの無いこの連中が持った方だと思いましょ。」
どのみちもう話すこともなくなったところだ。
「それではこれでお開き―――ギィ…ガタン
勢い良くドアが開かれた。
「パチェリー!」
そこには目を輝かせた人形、すごく嫌な…いうなれば波乱の予感が。
「さとりに会いたいから地底に行きたいんだけど…!」
想像通りの爆弾が投下された。
…多分この間、スキマの言っていた『東方project』とやらの知識なんだろうけど―――
「お嬢様、どこでそれを?」
「地底か…。また面倒臭い場所ですね。」
「地底ね。月の光も届かなそうね。竹林も飽きてきたし、引っ越し先にどう?」
「姫様…。どうと聞かれてもさすがに危険なので反対はしておきます。それにこれ以上引きこもりにさせても大変ですし。」
「この状況はどう収拾着けたらいいのかしら?」
この時の私は異変解決の糸口を見つけたことで少々見通しが甘くなっていた。この先の内在する事件の1つはまだ始まってすらいないことに気が付きようもないために…。
「けろけろ…地底………ね。」
補足:吸血鬼は夢なんてみないわ=実はとある作品の台詞が元ネタです。わかるひとはいないだろうなぁ)チラっ
伊邪那岐様達や十王=フ・ラ・グ!ちなみに我らが山田ナントカさんも十王の一人、さらに言えば山田が今作品のさいきょー、戦闘員37564号並にさいきょーです。
死因=ちなみに享年5~12歳あたりを考えています。
改名=突っ込みどころは果たしていくつ?
次回更新遅くて土曜日です。
感想や矛盾点のご指摘等御座いましたらお願いいたします。