予想以上に咲夜さんの視点が書きにくい(泣)
中に入るとお嬢様がこちらのほうを向いている。
その顔にはここに来るまでとここに来てからの二度泣いたからこそ付いてしまっているであろう泣き後、一体私は何をしていたのだろう。
「お嬢様。」
まずは謝らねば、その結果許されないのであればそれは仕方がない…。それほどの態度をしていたのだ。
「ひゃい!何かしら?咲夜。」
…驚かれるのも無理はないだろう…。
「申し訳ございませんでした。」
誠心誠意謝罪する。
この可愛らしいお方の心に傷を負わせたのは私だ。
急に誤って態度を改めたからといっても信じては下さらないだろう。
けれど、お嬢様は怒るでも突き放すでもなく教え諭すかのように言ってのけた。
「気にするなとは言わん。だが、急拵えの代用品でもそれなりの心程度はこもっている…だろう?」
この方は…、既に気が付いているということか。
自身が代用品であるということも、ご自身の心の有り様も…。
それでいて全てを受け入れる。この方は、例えレミリアお嬢様に姿形が似ていてもその心はまるで違う。
そう、まるで幻想郷のようなお方…全てを受け入れている存在。
そのことにわたしはただただ「はい」としか答えられなかった。
それなのに…。
「なればこそ、私は気にしない。…さて、そんな事よりも朝食だ。これで存外楽しみにしているのだぞ?」
やはり、幻想郷のようだ、すでにこの方は私を信じている。
ついさっきその料理で嫌がらせをしたばかりだというのにその料理を楽しみにしている?
そんなことを言われてはもう…。
「はい!」
この方に…。
言葉通りに私の料理をとても美味しそうに食べた後、紅茶を飲む。
先程の―料理を作る時にした返事の時に決心した。
「それにしても…。」
けれどもまだ、どう接していいのかを決めかねている。
元来の私は話下手…どう話したらいいんだっけ?
とりあえずの話題…先ほどの出来事
「全てわかっていらっしゃったのですね…。」
私の嫉妬心も自分自身の役割(代用品)のことも含めてこの方はすべてを理解している…のに。
「当たり前だ…。私を誰だと思っている。…運命を操る程度の能力を持つレミリア・スカーレット様だぞ?」
などとそんなはずもないのに明らかな嘘でおどけてみせる。
確かに似せてはいるが能力まではにさせる事はできない、いや、正確には出来るのだがその範疇で手を出せるのは
天照大御神やイエス・キリスト、オーディンの様な神様の中でもトップクラスの者たちだけだろう。
無論そんな訳もなく、この方は頭の良さや感の良さで気がつけたのだろう。
おどけていっているのは照れ隠しか、触れられたくないのかはたまた私では考えの及ばない理由からなのか、
追求しても困らせてしまうのは明白なので本来したかった話をしようと覚悟を決める。
「改めて、申し訳ございませんでした。一番辛いのは他でもないお嬢様なのに…。」
そう、一番辛いのは魂を弄られ、望んでもいない役を必死に取り繕っているこのお方だろう。
なれば、その役割を全うするまでは私はこの人の支えとなりたい。
「お嬢様。」
「何?咲夜。」
確信めいたものがある――この方は私を拒絶しない。
「せめてもの短き生、この十六夜咲夜精一杯尽くさせていただきます。」
おそらくは七日間の短き生、その間の関係をできることならば仮初のものでなく本物の主従関係、そのための契り。
――うん!――
その笑顔はレミリアお嬢様ではなく全く別物の笑顔だった。
…ああそうか、他でもないレミリアお嬢様がしたいようにしろと言ってきたのはここまでの運命を読んでのことなのだろう。
この七日間の主従関係はレミリアお嬢様との主従関係をやめるわけでなく公認だということ…。
全く…、私のお嬢様たちはお二人とも凄すぎる。
「なにかお望みあらば私めをお呼びください。」
願わくばこの七日間が平和でありますように…。
という訳で咲夜さんが正式に主人公に仕えるの巻でした。
次からは東方文花帖で難しさのあまり大嫌いだったのにこれを書いていて大好きになってしまった。
…み…、美鈴さん視点です。
補足:料理=鯖のみりん干し、玄米ご飯、切干大根、ほうれん草のおひたし、芋の味噌汁
3話タイトル=『メイド長、嫉妬する』にするか『メイド長、パルパルする』にするかで30分ぐらい悩んだ
次回更新金曜日予定です。
おまけ
sideレミリア
うー、明日から一週間も紅魔館離れるのか…。
ん?そういえば幻想郷に来てからそんなに長く離れるのは初めてだな…。
!そうだ!
「咲夜、私が幻想郷を離れる一週間は咲夜のしたいようにしなさい・」
ふふふっ、従者を労わり暇を当てる…。
うん、きっと今の私はカリスマにあふれてる!
普段、咲夜は働きっぱなしだもんね!きっと喜ぶ!
{あんまり考えないで咲夜に自由にしろと言っていました}