やはり幼女の似非モラトリアムはまちがっている。   作:信濃氷海

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どうも信濃氷海です。執筆速度はガタ落ちしたけど設定とかはちょくちょく浮かんできたので初投稿です。

俺ガイル×幼女戦記はありそうでなかった(確か)組み合わせで、八幡とターニャは中々良い動きをしてくれそう(存在X並感)なので書いてみました。

基本的に戦争は起きないし幼女戦記側からはターニャだけで、魔法もありません。大筋は俺ガイル側そのままです。

それではどうぞ!




1. こうして幼女と腐り目のまちがった青春が始まる。

「……『高校生活はモラトリアムである。その限られた猶予期間の内に、我々は為すべき事を為さねばならない。我々の大部分はあらゆる能力で一握りの天才達に敵わず、故に我々は彼らに伍していく為努力を怠る事は許されない。にも関わらず勉学を放棄し、現実を直視しようとしない者は完全な敗北者であり社会の落伍者に他ならない。規律なき自由は単なる破壊であり、自由なき規律は単なる圧政である。よって、個々の思想及び行動の自由は保障されるべきであるが、しかしこの貴重な準備期間を無為に食い潰す事などあってはならず、その様な退廃思想の持ち主は将来の最低限の秩序構築すらも脅かしかねないため早急に対処し更生させるべきである』…………はぁ」

 

 何故ため息をつくのだろうか。他者の朗読であっても、実に至極真っ当な内容にしか聞こえないのだが………?

 

「なんでこの学年は色々問題児ばかりなんだ………まぁいい。デグレチャフ、当然だがこれは再提出だ」

 

「…………は?!」

 

 しかも、言うに事欠いて再提出?!もはや理解の範疇を超えていた。……いや、そもそも理解できないのは

 

 

 

 容姿やら環境やらを含めた、ありとあらゆる全ての事象だったが……………

 

 

 

 心中でどうしてこうなったと嘆きながら、総武高校2年J組ターニャ・フォン・デグレチャフは天を呪った。——————とりあえず、存在Xに災いあれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 無能に突き落とされ、列車にミンチにされた後遭遇した悪魔、存在X。その奸計に嵌り、何故か近代っぽい異世界に叩き落とされた“彼”は、存在Xの魔の手でちまっこい幼女にされてしまった!

 

 何としてもより良い生活を手にし生き延びるべく、先手を打って軍人になり『模範的軍人』として振る舞い続けた“彼”もとい彼女は——————

 

 

 

 五年以上に及んだ世界大戦を、しかしなんとか生き延びることに成功した。

 

 

 

 人間ミサイルにされたり、コミーを焼いたり、同盟国の面蹴っ飛ばしたり、挙げ句の果てに祖国すらも裏切ったり…………まぁ色々あったが結果的に生き残れたのだから良しとしよう。その後の人生も、軍時代のコネやら財産やらのおかげでまぁ安楽的なものだったし。結局彼女は大戦終結から数十年後、無事天寿を全うし大往生した。

 

 ………筈だったのだが

 

 

 

「……………なんだ、ここは?」

 

 

 

 気がつくと、見知らぬ部屋の中に居た。さてはまたも存在Xか!と忌々しく辺りを見渡すも、しかし誰もいない。

 

 警戒しつつその部屋を物色すると………これは、どうやら

 

「………これは、日本語?しかも—————」

 

 見つけ出した新聞が指し示す事実。それは、ここがどうやら

 

 

 

 現代……21世紀の、日本であるということ。その事実に、ターニャは狂喜した。ははは!存在Xめ抜かったな!例えこの生でも何か謀略を張り巡らせていたとしても、文明が十分に成熟し理性が世界を覆うこの世界ならば、もはやターニャにとっては取るに足らない些事である。

 

 が、鏡を見て歓喜の気持ちは吹き飛んだ。……………よ、容姿が前世のまま??

 

 見たところ、前世の大戦時における姿形とそっくりである。…………ここ、日本なんだよな?

 

 

 何故????

 

 

 …………………その後、取り敢えず色々調べてみたところ、彼女は『ターニャ・フォン・デグレチャフ』という名で戸籍登録されていた。母がドイツ人、父が日本人なので日本国籍も取れる。…………何故貴族でもないのに娘に“フォン”などと付けたのかは大いに疑問だが、まぁそこはいい。

 

「…………………そして、両親ともに海外出張中に事故死、か」

 

 一人取り残されたターニャ!親戚もなく天涯孤独となった彼女だが、しかし!自分名義の口座には、奇妙にも前世で稼ぎ、結局使わなかった莫大な財産が(単位が円に変わっていたが)詰まっていた。少なくとも就職するまでは十分以上に食べていけるため、ターニャの心配事はもはや皆無と言ってよかった!

 

「この容姿だけは唯一懸案事項だが………しかしやはりここが現代日本である限り、どうとでもなるな」

 

 ターニャは帰宅し、テーブルの前で呟く。その手には、『総武高校入学者案内』と書かれた書類が。戸籍上では彼女は丁度15歳で、今は3月末。記憶が完全に存在しないが、どうやらターニャはこの高校に合格し来月から通うことになるらしい。

 

 

 

「ふむ、まぁよかろう。全く分からん状況ではあるが、二度目の高校生活といこうではないか」

 

 

 

 

 …………そして、彼女は総武高校に入学。特に何事もなく、前々世と同じように勉学に励み過ごし————————

 

 

 

 

 一年後、即ち現在に至る。

 

 

 

 

「デグレチャフ、君は実に優れた生徒だ。だが…………これは余りに極端すぎる」

 

「お言葉ですが、社会を維持していく為に必要最低限の事柄を一般論的に述べているに過ぎません」

 

「確かにそうかもしれないが、しかし君はその“最低限”にすら届かない人間を考慮すらしないだろう。………清濁合わせ待て、と言う気はないが、少なくとも知っておく事は必要だ。——————よし、ちょっと来たまえ」

 

 2年進級後すぐに出された課題『高校生活を振り返って』を、極めて真面目に書いたはずが、何故か生活指導の平塚教諭に呼び出されてしまったターニャ。理不尽な言いがかりに反論していると、忌々しい事に平塚教諭はまったく取り合わずに、ターニャについてくるように言い歩き出した。

 

 連れられて行った先には

 

「……………教室?」

 

「ああ。————邪魔するぞー」

 

 そう言って、平塚教諭は無造作に扉を開け中へと入った。眉を潜めながら、ターニャもそれに続き扉をくぐる。

 

 

 

 

 そこには

 

 

 

 …………生徒が、二人?

 

 

 

「…………だから平塚先生、入る時にはノックをといつもお願いしている筈ですが」

 

「すまんすまん、また今度な。……おや、比企ヶ谷は今日もしっかり来ているな感心感心」

 

「………………来なきゃあんた鉄拳制裁してくるでしょ」

 

 そんな事はないさ、とわざとらしく言い、平塚教諭はターニャの肩を掴みズイッ、と前に押し出した。抵抗しようとするものの、悲しいかな彼女のちまっこい身体ではそんなことできるはずもない。

 

「…………………あら、貴女は」

 

「ああ、雪ノ下は知ってたか。新しい部員のターニャ・フォン・デグレチャフ君だ。……それじゃ、頑張りたまえよ!」

 

「は?!」

 

 トン、とターニャの背中を軽く押して、平塚教諭はスタスタと教室から出ていく。……な、何という説明不足!ターニャは憤慨し、抗議の一つでもしようと後ろを振り返るが、すでに平塚教諭は影も形も無い。

 

 チッ、逃げ足の早い輩だ。心中で吐き捨てながら忌々しげに扉を見つめていると、背後から凛とした声が掛かった。

 

「………それで、貴女が新しい部員という話だったけれど」

 

 そんな事を了承した覚えはない。が、しかしここでバックレようものなら後日平塚教諭に咎められるどころか、他教師からも何か言われかねない!折角コツコツと積み上げてきた“信用”が、こんな程度で失われるのは、それこそターニャにとって許容しかねる事であった。

 

 故に、観念して彼女の方を向き答える。

 

「ああ、そうらしい。それで、君はここの部員なのかね?————雪ノ下」

 

「ええ、そうよ。—————デグレチャフさん」

 

 そのまま、少しな間隔を開けて向かい合うターニャ・フォン・デグレチャフと雪ノ下雪乃。雪乃の方は特に何も思っていなさそうであったが、しかしターニが雪乃を見つめる視線はどこか————————

 

 

 

 

「………あー、あんたらオトモダチだったの?と言うか…………………おたく本当に高校生?」

 

 

 

 

 と、二人の少女の———特に片方は———どこか思う所がありそうな見つめ合いタイムをぶっ壊したのは、部屋の片隅で所在なさげに座っていたもう一人の部員(多分)の声だった。

 

「………いや、単にクラスが同じと言うだけだ。そして、“本当に”とは一体何が言いたいのか詳しくご説明願おうでは—————?!」

 

 少々苛立たしげに顔をしかめつつ、ターニャは雪乃から目を逸らしその失礼すぎる輩の方を見やって————————

 

 

 

 

 

 一瞬本気でビビった。

 

 

 

 

 

(んな?!なんだこれは!こ、これが生きている人間の目だと言うのか……?!)

 

 死んでいる…………余りに、死にすぎているッ!!“彼”の淀みきった瞳を見て、ターニャは思わず後ずさった。なんと言う事だろうか、彼女はあの忌々しき前世の大戦の時ですら、これほどまでにヤバい目をした者に出会わなかった。

 

 部下は勿論、帝国軍のいかなる兵士ですら———最末期の絶望状態の時ですら!———こんな目の者はおらず………どころか、コミーの捕虜ですらこんなじゃなかったぞ?!

 

 ひ、ひぇぇぇぇ……………いかなる苛烈な戦場ですら恐れなかったターニャが、今なんと恐怖していた!理性が支配する現代日本に、このようなおぞましいモノが存在したとは……………!

 

「………すごく失礼な事思われてる気がする」

 

「はぁ、失礼なのは貴方の方よ比企ヶ谷くん。彼女はこれでも正真正銘2年J組の生徒で、どこかのひねくれ根暗男と違って品行方正を絵に描いたような優等生よ」

 

「いやこれでもって言ってる時点でお前のそれも大概だからね?」

 

 少々茫然としてきたターニャだったが、しかし雪乃と“彼”の妙な掛け合いを聞き再び稼働する。

 

「………ゴホン、失礼少々考え事をしてしまっていた。それで、ここにいるという事は貴様もこの部活の部員という事で良いか?」

 

「き、貴様って…………「あら、罵倒してもらえたわよ良かったわねマゾ谷くん」喧しいわ雪ノ下!…………一応な。さっきあんたを連れてきた平塚先生に、昨日暴力で脅されてしかたなーくこんな部活に入る事になった」

 

 ほう、とターニャは頷く。なるほどあの破戒教師は私以外にも妙な勧誘をしていたのか。……………ところで

 

「……………それで、ここは一体なんの部活動なのか、僭越ながら教えて頂けないだろうか」

 

 雪ノ下の方を見て軽く頭を下げる。分からないことは即聞くこれは常識。というか、それができない奴はすなわちターニャがもっとも忌み嫌う“無能”なのだ。

 

「ふっふっふ、ならばクイズだ—————「奉仕部よ」————おい雪ノ下ァ!!!!」

 

「あら、急にどうしたの比企ヶ谷くん。丁寧に尋ねられたらすぐに答えるのは人として常識よ」

 

「いや、俺の時はすっごいはぐらかしましたよね?」

 

 目腐り男が妙に癪に触る言い方で妙なことを叫びだすが、即座に雪乃に遮られる。それによりまたぞろ下らん罵り合いが始まりそうだった為、ターニャはすぐに雪乃にその“奉仕部”とやらの詳細について尋ねた。

 

「奉仕部?……………ボランティアのような部活動か?」

 

「そうとも言うわね。……持つ者は持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれを奉仕と呼ぶわ。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ。————————ようこそ奉仕部へ、歓迎するわデグレチャフさん」

 

「それ決め台詞だったのか……………」

 

「なにか?ボソボソヶ谷くん」

 

 ………ボランティア、ねぇ。結局そんなものは持つものの自己満足に過ぎず、第一それに頼るような輩は永久に救いの手を掴むことしかできない愚物だろう。

 

 前々世でサラリーマン、前世で軍人として生きてきたが、そう言った“奉仕”だの“献身”だのといった胡散臭いものにはそもそも近づくことすらしなかった。無論今世でだって近づきたくない……………しかし残念なことに退路は塞がれてしまった。

 

 …………ならば、やらねばならないのならば、宜しいやってやろうではないか。ターニャは決意する。そうだ、ここで成果を出せば教師連中からの評価もうなぎのぼりだろう!

 

「—————なるほど、了解した。こちらこそよろしく頼む、雪ノ下」

 

「ええ、もっともそこの挙動不審男と違って、平塚先生は貴女についての依頼をしてこなかったけれど…………」

 

「まぁあの人は「入れ」と言いたかっただけだろう。………教師ならばそう言うことも細かく伝えるべきと思うのだがね」

 

 全く同感よ、と少し苦笑いして雪ノ下が言う。………ふむ、だが雪ノ下が居るのであればまぁ変なことにはなるまい。

 

 なにせ彼女は、私なぞ人生を三度やっても追いつかない“本当の天才”なのだから——————

 

「ああ、それで一応だけれど部員はもう一人いるわ。………比企ヶ谷くん、挨拶しなさい」

 

「お前は俺のかーちゃんか何か?…………あー、さっきも言ったが強制的に奉仕部に連れてこられた2年F組比企谷八幡だ。…………えーっと、そういえばあんたの名前……………」

 

「私はターニャ・フォン・デグレチャフ。先程雪ノ下が言った通り2年J組だ………………どうした?」

 

 もはや数十年以上の付き合いとなった我が名前を言うと、何故か比企ヶ谷八幡は目を輝かせ………怖!!腐った目が異様な光を放ちもはや筆舌に尽くしがたい恐ろしさとなっている………

 

「す、すげぇ…………“フォン”って…………あんたもしかしてドイツ人だったり?!」

 

「あ、ああ…………正確には母だけドイツ人だが……………」

 

 やや怯みながらそう答える。さらにヒートアップする八幡。

 

「見た目もなんかラノベとかアニメで出てきそうな感じだし、色々捗るな!!………あー、でもサイズが…………ちびっこい…………」

 

「よしなるほど。貴様に救いの手をやるそこの窓から飛びたまえ」

 

「え、救いの手ってあの世ってことですか??」

 

「それがいいわ飛び降りヶ谷くん。できれば来世では絶対に二度と会いたくないけれど、お互い頑張りましょう」

 

「君たちほぼ初対面の人に対して失礼過ぎない?」

 

 失礼なのは貴様だ………ターニャはゲンナリしながら、積み上げられていた椅子を取り座る。……………ん?しかしボランティアといっても…………

 

「そもそも、依頼は来ているのか?」

 

「まだよ。それまでは好きにしていていいわ」

 

 ええ…………………とターニャがドン引きした。そんな部活動が存在したとは……………

 

 

 

 

 その時

 

 

 

 

 

 

 

 コン、コン

 

 

 

 

 

 

 

 ———————小さいノック音が、部屋に響いた。

 

 

 

 

 




ターニャ、奉仕部に入る。

次話はいよいよもう一人の奉仕部員登場です!クッキーを、作ろうの巻。

…………なんだけど、正直現状だと次の投稿時期は未定です。なるはやで上げようとは思っていますが………

ただ、絶対にエタらないように頑張りますので、どうかよろしくお願いします!!
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