やはり幼女の似非モラトリアムはまちがっている。   作:信濃氷海

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〜書き溜め放流中〜

それでは本編どうぞ!


3. 故に剣豪将軍はラノベ王となる。

「…………ん?」

 

「おや」

 

 ある日の放課後、いつもの如く部室までの道を目を澱ませながら歩いていた八幡は、そこで同じ奉仕部の部員、ターニャに遭遇した。

 

「…………やはり貴様の目は尋常でないほど濁っているな」

 

「うるせほっとけ。これがデフォルトなんだよ」

 

「ならせめて少しはどうにかしてみたらどうだ」

 

「生憎呪いの装備で外せねぇんだ」

 

 いよいよ奇怪だな………とターニャは本気半分冗談半分で呟く。そのまま二人は、揃って部室へと歩いていった。………もっとも、“揃って”と言ってもかなり距離が空いているし、速度も同じとは言えず側から見ると実に奇妙な連れ立ちであったが。

 

「………………そういえば」

 

 と、道中ふと思い出したかのようにターニャが言った。

 

「……………どした」

 

「昼休みの後、何故か雪ノ下の機嫌が実に良かったのだが…………何か知っているか?」

 

「………あ?あんたあいつらと一緒に飯食ってたんじゃないの?」

 

「いや、今日は用事があってな。部室には行かなかった」

 

 さぁて、どう説明するかな…………………八幡は頭をガリガリ掻く。雪乃はF組の女王三浦優美子をボッコボコに口撃し、見事結衣をゲットしましたとでも言うのか?……………うーん。

 

「…………ま、いいさ。同じ部の同僚の機嫌が良いのは歓迎すべき事だからな」

 

 うんうん悩む八幡をチラリと見て、肩を竦めるターニャ。そして、八幡を置いたスタスタと先に行ってしまった。

 

「……………さいですか」

 

 八幡も肩を竦め、彼女の後を追う。…………すると、道の先に何やら二つの人影が。

 

「………一体どうしたんだ?」

 

 怪訝そうにターニャが彼女たちに声をかける。すると、くるりと振り向いた一人———雪ノ下雪乃が、やや怯えたように答えた。

 

「デグレチャフさん………それと比企ヶ谷くん」

 

「部室に変な人がいるんだよー」

 

 それに続けて、雪乃の横にいた結衣が困惑声で言う。……………変な人?

 

「変な人って………依頼人とかじゃねぇの?」

 

 八幡は首を傾げつつも、雪乃らに背中をぐいぐい押され教室内へと入る。中には確かに、彼女らの言う通り一人の妙な人物の姿が。

 

 メガネをかけ、少々季節外れのコートを纏い、彼は教室の中央に立っていた。その周りには無数の紙が散乱し、おまけに不気味な笑い声も響いている。

 

 えええ…………と一瞬八幡はマジでこいつ不審者か?と考えたり、警察呼ぼうかとかも考える。マジでドン引きしている八幡をよそに、その人物はゆっくりと振り返ると、妙なポーズを決めこう言った。

 

 

 

「ククククク…………………こんな所で出会うとは奇遇よの八幡、この剣豪将軍待ちわびたぞ!」

 

 

 

「貴様の知り合いのようだが?」

 

「…………貴方の知り合いみたいだけれど?」

 

「いえ、知らない人です」

 

「即答?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………それで、アレは一体なんなの?」

 

 数分後、その人物が八幡の知り合い(?)の材木座義輝だと判明したり、その材木座がいちいちカッコつけたり訳のわからぬ単語を羅列したりポージングしたり…………と色々すったもんだあったのち、未だ部屋の片隅で一人はしゃぐ材木座をよそに、奉仕部四人は離れた場所でこそこそ話していた。

 

「ああ……ありゃ厨二病って奴だ」

 

「ちゅーにびょう?」

 

「そ。まぁ要するに自分のことをなんちゃらの化身だとか誰々の生まれ変わりだーとか言い出しちゃうイタい奴の事だよ」

 

「どうやらそうみたいだな。…………しかし、社会に害をもたらしていないのであれば何かを言う必要もない。それ以前に彼は依頼人なのだろう?まずはそれについて話を聞こうではないか」

 

 心底どうでも良さそうにターニャが呟く。ゴミを見る目で材木座を眺めていた雪乃と結衣も、その言葉にそれもそうかと頷いた。

 

「そんじゃそうしますか。………おーい材木座、お前結局何の用事なん………ん?この紙は」

 

 用事を聞くべく八幡が材木座に呼びかけようとした時、彼は床に落ちていた紙が、あるものであると気づいた。

 

「ヌハハ!お主も気づいたか八幡!!そう我の依頼はァァァァァァァァ!!我の書いた小説読んで感想くださいよろしくお願いしまぁぁぁすっ!!!」

 

「お前のキャラ、ブレブレ過ぎない?」

 

 ………まぁともかくも、依頼がなされた以上しなければなるまい。拾い集められたそれらをまとめ、八幡たちは読んでみる。その“小説”は、どうも題名から察するに…………

 

「ラノベか?これ」

 

「はぽんはぽん、如何にも!我には読んでくれる友達がいないのでな!!聞いたぞ八幡お主のいる奉仕部とやらは生徒の願いを叶える義務が有るというではないか!故に我は新人賞に応募する準備としてお主らに読んでもらいたいというわけだ!!」

 

 暑苦しい………あと奉仕部にそんな神龍みたいな義務はない。八幡は鬱陶しそうに肩を組もうとしてくる材木座を振り払い、もはや定位置と化している自分の椅子に座って読み始め————————

 

「いや無理、今からこれ読破はハードすぎるわ」

 

「確かにそうね………ではこうしましょう。今日はそれぞれこれを家に持ち帰り、明日の放課後までに読み、感想を考えてくる。そして、明日の部会で各自発表しましょう」

 

 …………かくして、雪乃の判断により本日の部会は少々早いが終了。四人はこの無駄に分厚い紙の束を持ち帰り、うんうん唸りつつもなんとか読破して————————

 

 

 

 翌日。

 

 

 

「頼もう頼もう!いやぁ人生初感想とあって我の緊張は今まさにピークを迎えているでござる!!では皆の衆今日は無礼講じゃ好きに言えい!」

 

 ぬるぽぬるぽ、と相変わらず狂った咳払いと共に材木座が放課後早々に叫ぶ。その鬱陶しすぎる大音量に、早くも八幡はげんなりした顔になるが、材木座の正面に座っていた雪乃はまるで無表情のままとっとと進めた。

 

「私、あまりこういう作品は詳しくないのだけれど……………」

 

「構わぬ!思うがままに言ってくれたまへ!」

 

「そう………………でははっきり言って—————————つまらなかったわ」

 

「げぽぉ?!」

 

 開幕早々剛速ド直球かよやっぱすげーな…………とドン引きする八幡。しかし、彼もこの長大すぎる駄作にうんざりしていたため別に何も言わない。

 

「そもそも内容以前に日本語の使い方が酷すぎるわ。何故全て倒置法なの?あとルビの振り方が理解不能だわ。この字でこんな読み方はありえないわよ」

 

「よ、より読者に親しみを感じてもらう為の致し方ない…………」

 

「それは最低限まともな日本語が書ける様になってからすべき事ではないかしら?それと内容も支離滅裂よ。何故ここでヒロインは唐突に服を脱いだの?前後関係が意味不明で理解困難だわ。………それに、第一この作品完結していないじゃない。そんなものを読ませて感想をだなんて………文才云々以前に一般常識を身につけた方が良いわよ」

 

「あばばばばばば!!!!」

 

 容赦ない連続口撃に、材木座はぶっ倒れた。さすがに哀れに思ったか、八幡がその辺りで雪乃を止めた。

 

「まぁその辺でいいだろ。あんま一度に言ってもアレだし」

 

「まだ全然言っていないのだけれど………まぁいいわ。それでは次に由比ヶ浜さん」

 

 雪乃が横に座る結衣にバトンタッチする。あまりの退屈さに居眠りしていた結衣は慌てて目を覚まし、あわあわした後こう言った。

 

「えーっと……………………難しい言葉いっぱい知ってるんだねー」

 

「ひでぶ!!!!」

 

 え、えげつねぇ…………。哀れみを込めて合掌する八幡。すると、ギギギと最後の力を振り絞り、材木座が八幡の方を見た。血涙を流しながらか細い声ですがりつく。

 

「は、八幡は………はちまんはわかってくれるよね?」

 

「……………………ふっ」

 

 にっこりと、慈愛に満ちた表情で微笑む。おお、やはり我が相棒は理解っていてくれたか…………と一筋の光明を見出した材木座は目を見開き笑顔にな………………

 

 

 

 

 

 

「で、アレなんのパクリ?」

 

「うわらばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 材木座は死んだ。その屍は真っ白に燃え尽き、口から魂が抜けかけている。

 

「う、うわぁ………」

 

「貴方、容赦ないわね………………」

 

 お前らも相当だったけどな、と八幡は首を竦め心中で突っ込む。しかし、材木座をノックアウトしてしまったが、この後どうするか………と悩んでいると、今まで黙って小説を読んでいたターニャが、苦笑しつつ口を挟んだ。

 

「そのくらいにしておけ。…………確かにまともに読むのも苦痛な駄作ではあるが、しかしこれは最初の作品なのだろう?完結云々の瑕疵はあれど、とりあえず数百枚の原稿を完成させ、しかもそれを修正すべく他人に感想を求める。…………その姿勢は実に素晴らしいではないか!」

 

 予想外の称賛。意外だな、と少々驚く八幡。

 

「そ、それは真かぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 思わぬ助け舟に、涙を止め復活する材木座。飛び上がり、ターニャの近くにぬるぬる近づきペコペコ崇め奉り始める。………端的に言って、ヤバい絵面だった。

 

「おい落ち着け材木座。お前の見た目でそれやると色々アウトだ………………随分高評価だな。あんたの場合てっきり罵倒しまくってお帰り頂くのかと思ったが」

 

「貴様私を何だと思ってるんだ。………そもそも私は文学を含めた文化芸術の類を実に尊敬している。あれこそ文明が文明たる象徴であり、人間が人間たる所以だからな。故にいくら駄文であってもそれを成した人物に対しては敬意を表する」

 

 だから…………とターニャは続ける。平伏する材木座を、妙にあくどい顔で見下ろしながら。

 

「先程雪ノ下が言った通り、君の文章は文法、内容双方で問題が山積みだ。が、〇から一にするのに比べ一から二にする労力は極めて少なくて済む。最小限の力で君を………作家にしてみせよう」

 

「成る程………確かにそういう見方もあるわね。でも意外だわ、貴女がそんなにやる気を出すなんて」

 

 顎に手を当て雪乃は感心した様に呟いた。するとターニャは実にイイ笑顔になりこう宣った。

 

「ははは!なぁに、もしこれで彼が作家になれば、それをプロデュースした我々奉仕部の名はこれ以上ないほど上がるだろう?」

 

「け、結構俗物的だな…………………」

 

 やや目をひきつらせる八幡。しかしそれを無視し、ターニャは材木座への調教……もとい訓練を始める。

 

「まず文法だ、君ははっきり言って日本語が母語とは思えんほど支離滅裂な文章しか書けんようだ。故に一から覚え直さなくてはならん。アマ○ンでも書店でも良いから何かしらの初級文法参考書を買い毎日やれ。それから内容だが、文章を闇雲に書き始めるのではなくプロットや設定等を箇条書きでノートなら何なりにまとめておくと——————————」

 

 

 

 

 

 

 ———————そして、下校時刻近くになった。

 

「本日は御指導誠に感謝の念に堪えませんぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ターニャ殿、いや大天使ターニャエル様!この剣豪将軍を導いて下さりありがたやありがたや………………」

 

「礼はいい。あと二度と私を天使などと呼ぶな○すぞ」

 

「ぶひぃぃぃぃぃ!!わ、我々の業界ではご褒美ですぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 ………これで良かったのか?と八幡はドン引きしつつ思った。

 

「………本人が満足しているんだし良いんじゃないかしら」

 

 あまり関わりたくないですという感情を全開にして、雪乃が呟く。しかし確かに、依頼人が満足していればこれでいいのだろう。

 

 と言うか、ぶっちゃけ材木座とはあまり深く関わり合いたくないのが八幡の本音であったが…………………

 

「では、本日は終了だ。来週までに課題を終えこの教室へ持ってきたまえ」

 

「けぷこんけぷこん、万事了解でありますぞ!!」

 

「ま、頑張れよ材木座。俺はもう関わりたくないけど」

 

「ひどくない相棒?!まぁいい今に見ておれ、いずれ我は必ずや——————ラノベ王に、我はなる!!」

 

「やかましい。もう下校だとっとと教室から出たまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、材木座騒動から数日後。いつもの様に部室に入ったターニャは、そこで八幡と雪乃がなにやら言い争っているのを見た。

 

「…………どうした?」

 

 すると、雪乃が呆れたように答える。

 

「こんにちはデグレチャフさん。…………ええ、実はこの不審ヶ谷くんが……………」

 

 …………雪乃が語ったところによると、なんでも八幡がいきなりテニス部に入りたいと言い出したらしい。そしてその理由が、“戸塚なる人物に頼み込まれたから”だという。

 

「…………他の部活に入りたいだと?はっ!さては貴様それを口実に逃亡する気か?」

 

「うぐ?!や、やだなーそんな事考える訳ないじゃないですかー」

 

「目の泳ぎ方が尋常じゃないぞ……」

 

 図星だったのか、動揺しまくる八幡。それを見て、雪乃はため息と共に頭に手をやり、ターニャは肩を竦める。

 

「はぁ…………それに、貴方のような人間が集団生活を支障なく送れると思っているの?」

 

「そうだ、貴様の卑屈さと目の腐り具合では、貴様の排斥活動を誘発しテニス部そのものを瓦解させるのが関の山だろう。やめておけ」

 

「俺はモンスターか何かなんですかね?…………………なら強くしてくれって頼まれたら、あんたらならどうするんだ?」

 

 八幡がならばと尋ねる。すると、雪乃とターニャはチラリと二人で顔を見合わせた後揃って言った。

 

「「死ぬまで走らせ、死ぬまで素振り、死ぬまで練習……………とか?」」

 

「うわぁ…………………」

 

 予想通りに酷すぎる回答で、思わずドン引きする八幡。しかし、その反応が不服だったのか雪乃たちはムッとしたように言い返そうとして—————

 

 

 

「やっはろー!!」

 

 

 

 元気よく部室に乱入してきた結衣に、邪魔される。

 

「…………………由比ヶ浜さんせめてノックを」

 

「あ!ゆきのんごめんごめん、今度から気をつけるよー!…………ふっふーん、それでなんとなんと!あたし今日は依頼人をつれてきたよー!!」

 

 どんどんぱふぱふー、と自分で効果音までつけ、かなりハイテンションの結衣。全身ですごいでしょほめてほめてと主張する彼女に、雪乃は真顔で告げる。

 

「いやー、ほらあたしも奉仕部の部員じゃん?何か働こーって思ってたら、丁度困ってるっぽかったからさー。連れて来ちゃった!」

 

「由比ヶ浜さん」

 

「いやいや、ゆきのんお礼とかは全然大丈夫だからね!こんな事は部員としてとうぜ——————「貴女、そもそも部員では無いわよ」—————ほへぇ?!」

 

 ちがうんだ?!と素っ頓狂な叫び声を上げる結衣。しかし雪乃曰く、入部届も顧問の承認もない人物は部員ではないのだという。それを聞くと、結衣はうわーん、と半泣きでルーズリーフを一枚取り出し『にゅうぶとどけ』とでっかく書きなぐり始めた。

 

「かくよー!入部届なんて百枚だって書くよー!!」

 

「いや、百枚は要らんだろ………………」

 

 呆れたように八幡は腐り目で、なんとも形容し難い形式で“にゅうぶとどけ”を書く結衣を眺める。と、ふと結衣が開けっ放しにしていた扉から、一人の生徒が困ったように覗き込んでいるのを見つけた。

 

「………………あ、アレはまさか」

 

「そこの貴方も、何か用なら入って来て」

 

 同時に、雪乃もその人物に気づいたのか声を掛けた。すると、ちょっとビクッとした後おずおずと部室内に入ってくる。それは——————

 

「と、戸塚!」

 

「あれ?比企ヶ谷君、どうしてここに?」

 

「いや、俺はここの部員だから………」

 

 入って来たのは、八幡と結衣の同級生で、八幡がテニス部に行きたいと言い始めた理由たる戸塚彩加だった。

 

 そして、彼は依頼する。自分のテニスの腕を、もっと上手くしたいと——————

 

「………ふむ、仲介の由比ヶ浜さんも正式に部員になったし、依頼者本人が来た訳だから受けなければならないわね。了解したわ戸塚くん」

 

「本当ですか?!ありがとう雪ノ下さん!」

 

「…………では、早速これより始めるとするか。なに、心配いらん。一ヶ月もあれば最前線でも使える程度には鍛えられる」

 

 最前線って……………おいおいまさかと八幡は引き立った顔でターニャを見た。本気でさっき言っていた事をやるつもりなのか……………?

 

「……………はっ!無論先程のはあくまで冗談だ。しかし」

 

「—————望んだ以上、覚悟はできているわね?」

 

「え、はい!もちろんです!!」

 

 戸塚の力を込めた答えに、ニヤリ、と不敵に微笑む雪乃とターニャ。うわぁ……………とまたも八幡は青い顔でドン引きするが、それを無視し二人の悪魔は宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

「ならば貴方の願い、叶えてあげるわ」

 

「貴様の願い、叶えてやろう」

 

 

 

 

 

 

 —————戸塚彩加育成計画、スタート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




剣豪将軍御登場!うーんカオス。

そして、みんな大好き戸塚彩加も登場!!やべー奴が原作から倍になっていますがはたして戸塚と(ついでに八幡は)大丈夫なのか?!

次話、VSリア充軍団!
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