Re:腸狩りと魔獣使い救済ルート   作:青い灰

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第3節「鬼の思い出」

 

 

 

 

 

自分が、嫌いだ。

 

 

無力で、無能で、個性もなくて。

 

ただ、守られる弱い自分が、嫌いだった。

 

 

…………そんな時だった。

 

 

 

「強くなりたいのかーぁな?」

 

 

 

目を覚まして泣いている自分に手渡された

その『凶器』に、私は知った。

 

 

────強くなるとは、傷つけることだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、何故。

 

何故、私は。

 

 

兄様を───────お兄ちゃんを、

傷つけて、泣いているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きだった。

 

姉様について行くだけだった私を、

姉様と同じように見てくれた、兄様が。

 

 

本当に、お兄ちゃんができたようで嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

だが、今となっては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ぐぎ、あ、ぁぁぁぁ!?」

 

沈んでいた意識が覚醒し、

身体の潰れた腹から走る電撃のような

痛みが脳を支配する。

────何だ、今のは。

 

「シルバ!!」

 

「ぐ、あ、あぁぁぁッ、がぁ、あ………!!」

 

「あ、ぁぁぁぁぁ…………」

 

エキドナが治癒魔法で治療してくれている。

それは分かった。分かるくらいにはなった。

だが、なんだ、今のは。

────レムの、記憶、感情、か?

 

「感情の、共有………!」

 

思い当たる節がある。

『憤怒』の大罪司教の権能だ………!!

 

「何故攻撃を避けないんだ!

 馬鹿じゃないのか君は!?」

 

「エキ、ドナ………!

 周囲に『憤怒』の大罪司教がいないか……!?」

 

「!?

 …………いや、魔力を探ってみたけどいない、

 一体どうしたんだ!?」

 

『大罪』の権能じゃない!?

なら別の力………ネクトは………違う!

なんだ、今のは………!?

────────────いや、今は。

 

「あ、ああああ、ああああああ!!!!」

 

「!」

 

「…………まぁ、でも。

 そこまで悩んでたのかよ、レム」

 

「………ワタシが戦ってもいいんだけど」

 

「いや………いい。

 もう十分に治療もできた。

 手を出さないでくれ」

 

暴走を始めたレムを見据えて、立ち上がる。

立てる。剣も握れる。魔法も使える。

そして、レムへと剣先を向ける。

 

「行くぞ、レム。

 兄貴として、お前を倒す」

 

「ああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも鬼化し、身体能力を強化する。

襲いくる氷柱を炎弾で破壊し、

薙ぎ払われる鎖を剣で弾いて接近する。

 

「あああッ!!!」

 

「やればできるんだよ、お前も」

 

腐っても、鬼の娘。ラムの妹なんだ。

それが無能なわけがあるまい。

頭を狙った飛び蹴りを首を捻って回避。

 

「なぁレム、覚えてるか?」

 

「ああああああッ!!!」

 

レムの追撃の回し蹴りが再び頭部を狙ってくる。

一撃でも貰えば頭蓋ごと砕け散るだろう。

足を掴んで防御する。

 

「確か魔法の使い方が知りたいって

 オレの所に押し掛けてきたんだったよな」

 

「うるさいっ…………うるさいっ!!!」

 

「懐かしいよなぁ、お前はすぐ覚えて

 …………魔法が暴走して2人揃ってびちゃびちゃ。

 ラムが珍しく爆笑してたよな」

 

撃ち込まれる鉄球を手の甲で弾き、

そして鎖を掴んでレムからそれを奪う。

モーニングスターを投げ捨てる。

 

「いつだったか、ラムに美味しいものを

 作って食べさせてあげたいって言い出して

 村の皆に内緒で森に入ったんだよな」

 

「やめてっ!!!」

 

「そこで綺麗な滝を見つけてさ。

 景色に見とれてオレが川にドボン。

 レムも入ってきて水遊びだよ。

 探しに来たラムも混じって遊んだんだ」

 

レムが離れ、氷の槍が空から降り注ぐ。

剣で弾くが、剣の刃が欠ける。

必要ないのでそれも捨てる。

 

「勉強が分からない時は一緒にやったよな。

 物覚えがいいんだろうな、

 すぐに足し算と引き算ができるようになって」

 

「黙れ!!!」

 

「料理がしたいって言い出した時は

 本を見ながらオレも初めてやったんだ。

 一緒になって本と睨めっこだよ」

 

少しずつ歩みを進める。

足も話も止めはしない。

 

「楽しかったよ」

 

「う、あ」

 

「レム。お前はラムの影なんかにいないよ。

 ずっと、オレとラムの間にいたんだからな。

 オレが知ってるよ。全部。

 オレがこんなことを言うのは違うけどさ」

 

鬼化を解除し、手を差し出す。

崩れ落ちたレムの顔は見えない。

 

「レムは、レムだよ」

 

それでも、手を伸ばした。

やろうと思えば簡単にへし折れる。

 

「…………お兄ちゃん」

 

「………………あぁ、お兄ちゃんだ」

 

腰を下ろし、レムの頭を撫でた。

差し出した、血で汚れていない左手で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ、ラムもラムで、兄様も兄様。

 ────レムも、私たちの大切な妹、レムよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ったく、なんてタイミングだよ。

来るのが遅ぇぞ。

 

「お前もオレの妹だからな。

 来て当然だろ、おい」

 

「お姉ちゃん………っ」

 

「もう、兄様に泣かされたのね。

 ほらもう大丈夫よ」

 

「お前なぁ………」

 

レムが、ふとこちらを見上げて。

 

 

 

「ごめんなさい………大好き………っ!!」

 

 

 

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