「ねぇ、少しいいかしら?」
「なんでしょうかエルザさん。目が怖いよ?」
「何故その娘は貴方の腰に抱きついてるのかしら?
不愉快極まりないのだけど」
「残念だったわね、兄様はラムのものだから」
「お前こんなフリーダムだったっけ?
エルザさんお願いだから抑えて」
ロズワール、教育ちゃんとしてる?
まぁ俺がロズワールに
依存しないよう仕向けたんだけど。
なんで俺に依存したみたいになってんの?
頬をスリスリとか可愛い。
ラムは俺を萌え殺す気か?
「あはーぁ、ハーレムでも作るのかーぁな?」
「ちょっとこれは予想外なんだけど?」
一応、ランは引っ込んでもらっている。
自然の精霊なので空気に溶け込んだりできる。
ロズワールが精霊と関わるとロクなことに
なってない気がするし。
「レムはどこだ?」
「ここにいます、兄様」
「おっと背後を取られた。
久しぶり、レム。元気してたか?」
「はい。兄様、あの時はありがとうございます」
「……………ごめん、皆も助けたかったんだけど」
「いえ、私たちがこうやって生きているのは
兄様とロズワール様のお陰です」
………………感情、薄くなったな。
図らずともレムからラムを
取ったみたいになってしまった。
可哀想だが狙い通りだ。
レムとはいい感じで仲直りして
スバルを好きになって助けてもらわないと。
「もう1人メイドがいるんだけどねーぇ。
悪いけど2人と会わせたかったから
仕事を押し付けてある。
2人は戻らせてもいいかーぁな?」
「いいけど………もう1人?」
「少し前に拾ってねーぇ」
そうか、もうフレデリカが来ていたのか。
フレデリカは確か21、
ここに仕えていたのは12歳から。
俺とエルザがスバルが来る頃に23、
今は15だから来ていてもおかしくないのか。
「上がってくといーぃよ。
長旅だったんじゃないかーぁな?」
「そうさせてもらうよ。
ほらラム、レム、仕事だろ?」
「姉様、行きましょう」
「わかったわ」
…………レムはともかく、
この世界線、ラムは家事できるのだろうか。
早足で去っていく2人を見送る。
「本当に兄妹なのかーぁな?」
「血は繋がってないけどな」
「見慣れないのもいるけど
その辺も屋敷で聞かせてほしーぃな」
エルザを見て、ロズワールは言ったのだった。
広い屋敷を案内され、俺とエルザは
ロズワールの執務室へと入る。
「本当はまだ住人もいるんだーぁけど、
まずは話でもしようじゃーぁないか。
遠慮しないでゆぅっくりするといい」
「じゃあ遠慮なく」
「ほんとに遠慮ないねーぇ」
ソファにどかっと座り、
テーブルの上にあったリンガを手にとって齧る。
エルザは本棚の本の物色を始めた。
気になっていることが1つある。
俺がいるこの世界線はパラレルワールドの1つだろう。
問題は、ロズワールの福音に俺の記述があるか、
という話だ。
ロズワールの福音は『強欲の魔女』
性悪魔女ことエキドナが渡したものだが、
あの魔女の事だ、俺の記述があっても
おかしくはないだろうが…………
いつか、聖域にも行ってみないとな。
とにかく、コイツとは慎重にいかないと。
「じゃーあ質問しても?」
「どうぞ」
「その娘について、聞かせてもらえるかーぁな?」
「旅の途中のグステコで拾った。
エルザ・グランヒルテだ」
「ふむ、なるほどねーぇ」
俺の話にエルザの眉がピクリと動く。
最初からエルザについて知っていた、
というのを話したからだろう。
エルザのことは福音に記述があるのだろうか。
「じゃあ質問2つ目。
なぜここまで来たのかーぁな?」
「お前に礼を言うのと妹に会いたかったから」
「まーぁそうだよねーぇ」
「うわその当然、って感じ腹たつ」
「恩人に酷い言い様だーぁね、
嫌いじゃないけども」
笑いながらロズワールが頷く。
「質問3つ目。
君たちはここに住みたいのかーぁな?」
「拠点として、はな。
少ししたらまた気ままに旅をするつもりだ」
「こちらの招集にはおうじてくれるのかーぁな?」
「出来たら、な。
ま、レムとラムの恩もあるし」
恩義を感じていないわけではない。
受けた恩は返す。それが悪事だろうとな。
「2、3日滞在させて欲しい。いいか?」
「構わないよーぉ?
こちらもいいメイドを雇えたし、ねーぇ。
メイザース領での自由もある程度は許すよーぉ」
「そか、助かる」
「私の素性は知ってるだろう?
あまり悪いことは考えないようにねーぇ?」
「わーってるよ、確実に。
久しぶりに会って何となく分かる。
「…………まるで獣のような瞳だねーぇ。
戦いと血に飢えた、魔獣よりも狂暴な、ね」
「おっと、悪いな。
これでも俺、鬼だからな」