「……………」
「おはよう、いい朝だね」
「…………エキドナか」
身体を起こし、目の前の狼の精霊、ラン………
もとい、エキドナを軽く指で撫でる。
エキドナとは分かっているが、
もう癖なので放っておく。誰かが言っていた。
『クセなんて直さなくていい』
まぁ面倒なだけだが。
「んん………やっぱり気持ちいいね」
「そうなのか?」
「慣れたもんさ。最初はくすぐったかったけど」
実際、触り心地はいいので
気にする必要も、特にデメリットもない。
すると、扉が開く。
「おはよう兄様、朝食ができたわ」
「おはようございます兄様、朝食ができました」
「おはよう、2人とも。
わざわざありがとう。エルザは?」
「いるわ。行きましょう」
「あぁ、悪い。少し待っててくれ」
寝ているうちにラムも出ていったようだ。
ベッドから出る。
そして服を脱ごうとしてエキドナが
いることを思い出す。
「着替える。エキドナ」
「うん。見てるよ」
「よし…………じゃなくて!
何お前の男の着替え見ようとしてんの!?」
「いやだって興味あるし」
「何に!?」
今までランに徹していたから
エキドナが全面に出てきやがった。
ランの時は消えてくれたんだがな………
「まぁいいか」
「……………ほう」
「『ほう』じゃねぇ!!」
(エキドナ、出てくるのはいいが
俺はお前をエキドナとは言わないし
お前も『ラン』を今まで通り演じてくれ)
(なんでさ?)
(ロズワールが発狂するぞ)
(それはそれで面白そうだね。
………そんな睨むことはないだろう?)
正直不安だ。
外で待っていたエルザと共に屋敷内を進んでいく。
エキドナにはロズワールやベアトリスに
勘づかれると(俺が)殺される可能性すらあるので
黙っておいてもらうことに。
「しかしエルザ、なんで道知ってるんだ?」
「朝早くに目覚めたから散歩に行っていたの。
ここ、見た目以上に広いものだから」
「俺も起こしてくれてもよかったのに」
「いえ、貴方はあのメイドの子と
気持ち良さそうに寝てたから」
「え、エルザさん?
目が怖いです…………」
顔は笑ってるけど目が笑ってない………
エルザさん怖いって。
「仲良くお腹を裂いてあげようと思ったのだけど」
「さ、裂かれなくて良かった………」
「今度は私も一緒に寝ることにするわ」
「うん?いやそれは
ちょっと寝れないといいますか」
色んな理由で寝れないよ?
くっつかれたりしたら特に。
ラムは子供の身体だったからいいけど
エルザさんは結構洒落にならないんだけど。
「冗談だろ?」
「あら、本気なのだけど」
「えぇ……まぁいいか」
役得だと考えればいい。
別に寝ている時にお腹を
ザックリやられる訳じゃないし。
その辺はエルザへの信頼と親愛だ。
……親愛……愛……見えざる手……うっ、頭が………!
(そういや俺はアレ見えるのか?)
まぁ見えなくても対処法は考えてるし大丈夫か。
別にエキドナでもいけると思うし。
鍛練はかかしていない。
自慢ではないがエルザ以上は力があると思ってるし
最悪、鬼化すれば大抵は押し潰せるだろう。
…………聖域でラムが折れた角で鬼化してたが、
実は俺も鬼化は最後の手段になってしまった。
角が片方折れているせいで
かなり鬼化が不安定な上にかなり精神を削る。
おそらく1分………いや、30秒持たないだろう。
大気中のマナを取り込みすぎて魔力が暴走する。
まぁスバルとユリウスに任せよう。
あれは2人の仲良くなる一部の
イベントみたいなもんだし。