異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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最新話投稿します良かったら見ていって下さい。(^_^)
今回は前回まで戦闘が続いたので、ほのぼのを意識してます。



第12話 語らい

 

「……信じられない」

 

記録室で、カモノハシと進化型テラフォーマーの死闘の一部始終を見ていた、管理者の男は驚愕に体を震わせる。

 

「太田克弘(かつひろ)ローマで手術を受けたものに、こんな凄腕がいたなんて」

 

(神の子以外にもこれ程の手練れがいるとは、ドイツと並んで、ヨーロッパも侮れんな)

 

訓練室で堂々と立ち続ける、克弘を羨望と恐れの感情を秘めながら

見続けたのだった。

 

 

「やったのか ?」

 

同じ時、別の意味でカモノハシと進化型テラフォーマーの死闘を見ていた、

ジャレッド・アンダーソンが、まず感じたのは疑いだった。

 

カモノハシは本当にハゲゴキに勝ったのか?

 

モニターの映像を見ても、ジャレッドは未だに信じられないでいた。

 

 

が……それも

 

「本当だ。やったー !!」

 

同じ賭けをしていた、メンバーから

(ジャレッドの一人勝ちかよ)という

意味のメールがきた瞬間歓喜に変わる。

 

ジャレッドは両拳を天に向かって、突き上げ、ガッツポーズをするのだった。

 

その喜びは、彼がかつてチャンピオン絶対有利と言われながらも、チャレンジャーに賭けて、見事、ぶの悪い賭けに勝利したときに匹敵した。

 

 

「うぉぉぉー、金が入ったらステーキを喰うぞう」

 

 

「随分、景気の良いこと言ってるなぁ

ジャレッド ?」

 

 

「そりゃ、そうだ賭けに勝ったんだからって……アルバルドさん!!」

 

 

上機嫌で喜んで無意識に答えた、ジャレッドは、いつの間にか入って来ていた自分と同じアネックス計画のクルーである、同僚、アルバルド・ローレンス

の登場に戸惑い驚く。

 

声を掛けられるまで、その存在に気づかなかったからだ。

 

いくら大儲けして浮かれていたとはいえ、背後を取られるとは軍人失格である。

 

ジャレッドは恥じた。

 

(こんな事じゃ、火星に行っても犬死

が関の山だ)

 

これからは、もっと厳しい訓練をせねばと心に誓うジャレッド。

 

ギャンブル狂いとはいえ、真面目で仲間思いな軍人でもあるのだ。

 

 

 

「賭けに勝った ?、ほう今日はお前以外に、クローンテラフォーマーを

使った、戦闘訓練をするものは居ないはずだが?」

 

来客、アルバルド・ローレンスは

さっきまでジャレッドが見ていた、モニターを見ようと近づいて行く。

 

大きな男である。

身長181センチあるジャレッドより高い195センチを誇り、そのくせ体重は

75キロと身軽。

短い金髪で両耳にピアスを付けている。

顔は西洋人らしい、彫りの深い顔立ちで、肉体は筋肉がはち切れそうで、本来なら怯えられたりするのだろう。

 

が、水晶のように透き通る、美しい青い瞳と、ピアニストを思わせるような

細い指が、純粋さと華麗さを醸し出し、第一印象から恐怖感を消してしまう。

 

アルバルド・ローレンスとはそういう男だ。

 

後に太田政彦の運命に大きく関わって来ることになるが、それはもう少し先の事である。

 

今年31歳のアルバルド・ローレンスは2つ下の妻と、10歳になる娘の長女と、5歳になる息子の長男がいる。

愛妻家であった。

 

 

「ほう〜こいつは」

 

感心そうにしながら、目の前のモニターを見る、アルバルドは顎に手を当てる。

 

それから、モニターを見たまま、ジャレッドに声を掛ける。

 

「なぁジャレッド、この戦闘訓練してる奴、誰なんだ ?」

 

 

「え〜っと確かローマで手術を受けた

日本人で名前は、太田克弘って言うそうです。

ベースは哺乳類なんでしょうけど、

何かまでは」

 

ジャレッドが、思いだしながらアルバルドの問いに答えるが、肝心のベースが答えられなかったので、申し訳無さそうに頭を掻く。

 

「カモノハシだ」

 

「カモノハシですか」

 

「そうだ。俺のコアラと同じオーストラリア固有種だ」

 

 

ジャレッドに呟くように、答えたアルバルドは、(太田克弘か)とジャレッドにも聞こえない、小声で克弘の名を

言った後。

口元に笑みを宿し、モニターを興味深そうに眺めるのだった。

 

 

 

 

 

克弘がハゲゴキに勝った頃、弟の戦いを知らない兄は、ジェニファーが、出してくれたコーヒーをちょっとずつ飲んで、寛(くつろ)ぎながら、遅れて来る、ジェラルド・ローレンスを待っていた。

 

政彦はジェニファーに、薦められたソファーに腰を沈めながら、目の前のテーブルにコーヒーカップを置いている。

 

ジェニファーは向かい側のソファーに座り、コーヒーを飲んでいる、政彦を見ている。

 

 

(気まずいです)

 

無理もない。

政彦に説教を受けた後、コーヒーを渡した時、『ありがとう』と言ってから

先政彦はずっと無言なのだ。

 

重い空気が辺りに満ちている。

 

(何とかしないと)

 

ジェニファーは、この重苦しい雰囲気を変えようと、話しかける事にする。

 

「あの太田さん」

 

「何だ ?」

 

腕組みしながら、政彦が低い声で答える。

 

「え〜っと」

 

話しかけたはいいが、何を言うのか、

ジェニファーは考えていなかった。

 

「……」

 

キョロキョロ、首を動かす、ジェニファーを無言でジ〜っと政彦は見続ける。

 

(ううぅ)

 

 

「太田さん」

 

「2度言わなくても、聞こえているが ? 」

 

政彦は不思議そうな顔をする。

 

 

「ご趣味は何ですかぁ!!」

 

ジェニファーは、何とかそれだけの言葉を絞り出すと、両膝に手を置いて黙りこんでしまう。

 

 

 

(何がしたいんだ、ローレンス嬢は)

 

膝を抑え、顔を俯(うつむ)いている

ジェニファーを見ながら、どう答えるべきかと頭を悩ませた。

 

意図がわからないのだ、何故そんなことを聞くのか、政彦には理解できない。

 

(まぁいいか、聞きたいなら聞かして)

 

(聞かれたところで、困る訳でもないしな)

 

政彦はそう心の中で決めると、ジェニファーの質問に答える。

 

「読書と格闘技だ」

 

 

「読書と格闘技ですか。

健康的なんですね」

 

ジェニファーはニコリと笑う

 

「まぁ体は昔から動かすのが、好きだったからな」

 

「へぇ〜格闘技ってどんな事するんですか?」

 

「俺が習ってるのは、キックボクシングと古流剣術だ。

後居合もやってる」

 

 

政彦が、ジェニファーの質問に淡々と

答える。

 

 

「へぇ〜じゃぁ、太田さんはサムライなんですか ?」

 

 

ジェニファーが、羨望の眼差しで政彦を見る。

 

「侍ではない。

俺は大義や忠義では動かないからな。

侍は武士道を胸に、主君への忠義や

世のために動く者だ」

 

 

「そうなんですか。

じゃあ太田さんは何の為に動くんですか?」

 

「自分の為だ」

 

政彦は即答する。

 

「自分の為」

 

「そうだ俺は自分の為に動く。

誰かの為や正義の為には動かない。

己がやりたいと思うこと、正しいと思うことをするには、まず自分の意思が必要だと、俺は思ってる。

国のためだとか、誰かの為だと言っても、それは自分がそうしたいと言う意思があるからそうする。

そうするべきだと俺は思う」

 

政彦は拳を強く握り震わせながら、

語り続ける。

 

 

「 綺麗な言葉は、心地よく胸に響く

その言葉に酔いそうになってしまう。

かつてその綺麗な言葉によって、人は 多くの酷い行いをしてきた。

正義の為なら、人を殺してもいい、家族の為ならどんな汚い事でもするとな。

言葉とは恐ろしいものよ」

 

 

「そうですね」

 

 

「そう言う綺麗な言葉は、格好な言い訳になるからな、国が命ずるなら、仕方ない、家族や恋人の為なら仕方ないとな。

人は不完全な生き物だ。

家族や恋人の為ならはともかく、正義や大義とか言う言葉は人が、使うべきではないと俺は思う」

 

 

 

「正義が駄目なんですか?」

 

 

「正義が間違ってるのではない。

正義と言うものは、その立場や生まれ生い立ちや考え方で変わるものだからだ」

 

「そして……人という生き物は

基本自分の都合の言いように物事を考えるしな」

 

「はぁ〜そうですね」

 

ジェニファーは、強い意志をその瞳に

灯す、政彦の話しただ、ただ頷き続ける。

 

「まぁ正義や悪と簡単に決める事は

できないというわけだ。

……って俺は何の話をしているんだ失礼ミスローレンス。

こんな話面白くなかっただろう。

どうも同年代の女性とはあまり話さないので、どういう話が良いのかわからない。

克弘とか、利紀(としき)なら面白可笑しい話とかで、盛り上げられるんだろうが」

 

お辞儀をして謝る政彦。

 

「いえ、そんなことないですよ。

なかなか斬新な話で、興味深いです」

 

両手をふりながら、ジェニファーは言う。

 

「頭をあげてください。

謝るような事じゃないですよ」

 

ジェニファーにそう言われた政彦は、

顔を上げる。

 

「そう言って貰えると助かる。

ああ、克弘と利紀と言うのは、俺の弟の事で 」

 

 

今度は自分の弟の事を話す政彦の話に

ジェニファーは心地好い気分を味わいながら、耳を傾(かたむ)けるのだった。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
(⌒‐⌒)
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