異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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第18話 息子

 

 

「どうしたのだ ?

二人とも顔色が悪いが」

 

アップルパイを食べ終わった、政彦が沈黙している、父娘2人を眺めながら、紅茶を飲みほす。

 

 

「あの。

そう言う事、あったばかりの人に言っていいんですか ? 」

 

ジェニファーが、今更ながらに気になった事を告げる。

 

「そうか……そう言えばそうだな。

売り言葉に買い言葉といった感じで、

つい答えてしまった」

 

少し考えるように、腕組みした政彦が

首を傾(かし)げる。

 

「……とはいえ、一度出した言葉は

戻せんし、まぁいいか」

 

 

あっけらかんな調子でそう言う、政彦。

 

 

そんな政彦の態度に、2人はあきれ果ててしまい、2の句が継げない。

 

 

政彦の何回目かの不容易な発言で、会話の途切れた気まずい空気が漂う中。

 

「……誰だ ? 」

 

扉の向こうに人の気配を感じた、政彦は押し殺した声を出し、扉を睨む。

(拳銃を取り出さなかったのは、2人への配慮だろう)

 

 

政彦の声が聞こえていたのだろう。

間もなくカード認証の入り口の扉をノックする音が聞こえてくる。

 

 

コンコン

 

「すみません。

ローレンス教授はいらっしゃいますか

 

 

扉の向こうから、賢そうな感じの声が聞こえてくる。

 

 

「おうジェフか ? 入りたまえ」

 

声の主が誰か判った、ローレンス教授が親しげな声で、許可を出す。

その声には呼ぶ相手への、高い信頼度が溢れてる。

 

 

「失礼します」

 

ジェフと呼ばれた若い男が、扉から研究室の中に入ってくる。

 

 

ジェフと呼ばれたこの男、フルネームは、ジェフリー・スミスといい、

ローレンス教授の次女カミラ・ローレンスの婚約者である。

 

今年26歳で、背は186㎝と高いが、運動とか体を鍛える事は全くしてないようで、華奢な細い体つきをしている。

だが青い縁なしの眼鏡の奥に見える

瞳は、優れた能吏を彷彿させるように

鋭い。

 

ジェフリーは背筋を伸ばし、あまり足音を立てないで歩いてくると、ローレンス教授のまえに立つと一礼する。

 

「教授、アルバルドさんのベースについての有袋類型Mo用の新薬の事なんですが」

 

顔を上げてから話しだした、ジェフリーは机の上に広げられている、資料に気づく。

 

「これは、失礼しました。

今目を通してる最中だったのですね」

 

申し訳ありませんと、また頭を下げるジェフリー。

 

「おいおいジェフ。

いくら職場だからと言って、他人行儀すぎるぞ」

 

ローレンス教授は、あからさま過ぎる態度に、小言を言う。

 

「公私の使い分けをするのが、

社会人として当然だと思いますが」

 

「それは、そうだが」

 

「発言構わないですか。

ローレンス教授」

 

 

ローレンス教授と、ジェフの仕事の会話に、手を上げて、政彦は入っていく。

 

「構わんが、何かな政彦君」

 

 

「こちらの方は」

 

政彦は手を広げて、ジェフを差す。

 

「ああ、すまんすまん。

仕事の会話に夢中になって、紹介するのを忘れていたな」

 

そう言うと、ローレンス教授は立ち上がり、ジェフの隣に立つ。

 

「政彦君。

彼はジェフリー・スミス、ワシが頼りにしてる部下で、ワシの2番目の娘、カミラの婚約者じゃ。

真面目で優秀な研究員でしかも、

バツ1のカミラを貰ってくれるという。

今時珍しい奇特な若者だ」

 

ローレンス教授は、笑い声を上げながら、ジェフの背中を何回も叩く。

とても楽しそうだ。

 

「そんな……奇特なんて、自分はただ

カミラさんの内面にガチで惚れたんです」

 

小声だが、ジェフはきっぱりと言う。

 

「おう。

こやつノロケおってからに、じゃが

そういう、さりげない誉め言葉を

いつも言うのが、幸せな夫婦生活の

ひけつじゃぞ」

 

 

ローレンス教授は、今度はジェフの頭をかき混ぜながら、上機嫌で話す。

 

『下手な嘘は言わない事。

出来るだけ、家に帰るのが、遅くならないようにする事』

 

などと、色んな持論の良い夫婦生活について熱く語っている。

 

 

「はい、よくわかっております。

ローレンス教授、後は結婚したらマーク君の養子縁組を速やかに、おこなうですよね」

 

ローレンス教授の話を聞きながら、

ジェフは、話を先読みして、答える。

 

「君は……そこまで考えてくれてるのか」

 

そう言った、ローレンス教授が、ジェフの両手をいきなり掴み上げる。

 

「ありがとう……君が息子になってくれて、わしは幸せ者じゃ」

 

 

感無量とばかりに、ローレンス教授はジェフを抱擁する。

 

「教授。

お気持ちは嬉しいのですが、

そろそろ、そちらにいる、御仁を紹介して貰えませんか。

見たところ日本人のようですが」

 

抱擁するローレンス教授を引き離しながら、ジェフは政彦の方を見る。

 

「おう。すっかり忘れておったわ」

 

ローレンス教授は、抱擁をやめて、

政彦の方に手のひらを伸ばす。

 

「ジェフ紹介しよう。

こちらは、太田政彦君じゃ。

ワシの友人の太田常彦、名前ぐらい知ってるだろう。

その息子さんで、このUNASA本部に

Mo手術を受けに来てるんじゃ」

 

「太田政彦です。

どうぞ宜しく」

 

政彦はローレンス教授の紹介されて、

立ち上がると、ジェフに向かって会釈をする。

 

「こちらこそ宜しく。

ジェフリー・スミスだ」

 

 

政彦の会釈を受けた、ジェフは挨拶を

交わした後、握手を求めてくる。

 

政彦はそれに応じて、2人は握手を交わす。

 

(うんうん……未来のワシの息子たちが仲良く握手を交わしてるのう)

 

ジェフはともかく、政彦に対しては

先走り過ぎな事を思いながら、ローレンス教授は2人の握手を見ながら、ニヤけるのだった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

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