異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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最新話更新です。
良かったら見ていってやってください。



第22話朴念仁

 

「……」

 

(だんまりか)

 

早足で追いついて、隣に並んだ政彦は、顔をそむけたままの、ジェニファーの横顔をため息混じりに、見る。

 

さっきからこの調子である。

 

政彦が追いついて、もう5分ぐらい

経っているというのにだ。

 

(この場合、俺が悪いんだよな)

 

身に覚えがないが、政彦はどうやら

自分が悪い事をしたのだと思う。

 

(親父殿の友人の娘さんだ。

不仲だと、まずいか)

 

そう計算した政彦は、ジェニファーの前にまわりこむ。

 

「ミスローレンス!!」

 

大声で、ジェニファーの名を呼ぶ。

 

「何ですか? 」

 

大声にビクッと体を震わしながら、

ジェニファーは返す。

 

「すまなかった」

 

ジェニファーの返事とほぼ同時ぐらいに、政彦は頭を下げる。

 

「えっ? 」

 

小首を傾げて、不思議そうな顔で頭を下げてる政彦を見る。

 

「いきなりどうしたんですか ?」

 

「いや。

機嫌を損ねたと思って謝ってるのだが、謝るだけでは駄目か」

 

下げた頭を戻しながら、政彦は考え込む。

 

(そう言えば、親父殿が愛人の機嫌を損ねた時は、プレゼントをしていたな

他にはベッドで機嫌を治してたが、

そう言う訳にもいくまい)

 

「そうだ。

ミスローレンス何か欲しいものはあるか? 」

 

政彦はジェニファーの様子を、慎重に伺いながら、言う。

 

「欲しいものですか? 」

 

口元に指を当てた、ジェニファーが考え込む。

 

(別に怒っては、いないんですけど、

ただ美人なんて、言われた事なくて

びっくりしただけなんですが)

 

そう思った、ジェニファーは、怒ってはないから、プレゼントは要らないと言おうとするが、ここでふと思いなおす。

 

(プレゼントは、大袈裟すぎるけど、

ご飯をご馳走になるぐらいなら)

 

ジェニファーは、最近U-NASAの近くに、出来た日本食の店を思い出す。

美味しい天ぷらが絶品だと、広告にも載っていた。

 

騙すようで、一瞬気が引けたが、向こうからプレゼントでもと言ってきたし、プレゼントよりは安値だから、良いと、彼女は思う。

 

「そうですね。実は今気になってる店があるんです。

ただ値段が高いんですよね」

 

政彦の反応を伺いながら、ジェニファーは話を続ける。

 

「太田さんは私にプレゼントしたいんですよね。

だったら代わりに奢ってくれませんか? 」

 

(図々しかったかしら)

 

ジェニファーは、不安げに顔を歪めながら、政彦を見る。

 

視界の先にいる、政彦は特に嫌そうな顔を見せてない。

 

「食事を奢ってくれって事だな。

了解した」

 

政彦はそう言うと、ポケットの財布から紙幣を数枚取り出し、次にジェニファーの手を掴み、広げさせると、

その手のひらに、取り出した紙幣を渡した。

 

百ドル札が五枚大体日本円にして、

約五万円ぐらいと言ったところ、そこそこの金額である。

 

「あのこれは」

 

手のひらに乗せられた、紙幣を困ったような顔でジェニファーは見てる。

 

「それだけ、あったら足りないか?

足りないなら、追加するが」

 

「いやそうじゃなくて、あのこのお金はいったい ?」

 

政彦の意図が読めない、ジェニファーはとまどう。

 

「食事の代金だが……それで食事を食べてくるといい。

ああ、お釣りがあっても、返すには及ばない。

そのまま懐に入れてくれ」

 

政彦はそう言うと、ジェニファーの横を通り抜けようとするが、通り抜けられない。

 

「待って下さい」

 

目を据わらせた、銀髪の姫が政彦の腕を掴んでいたからだ。

 

「まだ何か? 」

 

掴まれた腕を見ながら、話しかける政彦。

 

「普通食事を奢ると言ったら、一緒に食べに行くんじゃないんですか ?」

 

「ミスローレンスは、俺と一緒に食事をしたいのか? 」

 

政彦が、ジェニファーに確認をとる。

 

「いえ、したいと言うより、むしろ奢るのに、お金だけ渡してって、そんなのおかしいと思っただけで」

 

 

政彦のド直球な質問に、顔をふせながら、聞こえるか、聞こえないかぐらいの小声で、ジェニファーは返す。

 

「俺と行きたくないのなら、別に俺と行くのに拘(こだわ)らなくてもいいだろう。

その金で他の人間を誘ったらどうだ」

 

ジェニファーの答えに政彦が、別の案を出す。

 

「太田さんは、私と食事するのが、嫌なんですか? 」

 

悲しそうな声で、呟くジェニファー。

 

「嫌ではないが、時間の無駄だろう」

 

さらっと、毒舌を吐く政彦。

 

「時間の無駄ですか? 」

 

ショックで、ジェニファーは声が裏返ってしまったが、本人は気づかない。

 

(美人って言ったと思ったら、今度は一緒にいるのが時間の無駄って)

 

ジェニファーは目の前にいる政彦がどういう人間か解らなくなった。

 

「そうだ時間の無駄だ。

俺を相手にするより、もっと将来有望な若者を相手にした方が有意義と言うものだ」

 

「はい ?」

 

政彦の言ってることがわからず、素っ頓狂な声を上げるジェニファー。

 

 

「食事の場と言うのは、人の気がゆるむのだ。

上手い事酒でも、飲まして後は既成事実を作ってしまえば、将来安泰だ。

現に俺の母はそうやって、妻と言う安泰の地位を手に入れた」

 

「いったい何を」

 

ジェニファーは困った笑みを浮かべる。

 

目の前の男が、何を言ってるのか、心底理解できないのだ。

 

「既成事実云々は先走りすぎたか。

とにかくミスローレンスが、粉をかければ、将来有望なエリート達がうじゃうじゃ集まるんだ。

俺を相手にするなど、時間の無駄な事はやめておけ」

 

政彦は、そう言って締めくくると、

掴んだ腕を離してくれないかと、目で合図を送る。

 

「太田さんは、私と食事するのが、嫌じゃないんですね」

 

「だから時間の無駄だと」

 

「無駄じゃないです」

 

掴んだ腕に力を込めながら、ジェニファーが政彦を鋭い目で睨む。

 

「太田さんは、そう思うみたいですけど、私には無駄じゃないです」

 

ジェニファーは続ける。

 

「私と一緒に食事しましょう。

政彦さんの奢りです良いですね」

 

有無を言わさない口調で、政彦に迫る

ジェニファー。

思わず下の名前に呼んでる事に気づかない。

 

 

(やれやれ、物好きもいたものだ)

 

政彦は、ジェニファーの顔を見つめる。

 

(金を貰って、好きな事に使えば良いものをわざわざ使い方を限定するとはな)

 

「こういう場合、女性に恥を掻かせる訳にはいかんな。

あいわかった、ミスローレンス」

 

「最初から、そうしたらいいんです」

 

照れてるのか、顔をそむけながら、ジェニファーが早口ですます。

その頬と耳が赤くなってるのに、政彦は気づかない。

 

(よくわかった。この人悪い人じゃないけど、考え方が普通じゃないんだ)

 

ジェニファーは、さっきまでの、政彦との、会話を思い出す。

 

(それと、もの凄く人の気持ちに鈍いんだ)

 

やれやれとばかりに、溜め息を吐いて頭を振ってる政彦。

 

(こういう人にははっきり言わないと駄目だわ)

 

少しは政彦の事を理解した、ジェニファーはこの不器用で、すこぶる変わり者の日本人の男を好ましく思い、惹かれていくのだった。

 

 

 

「おやぁ、ジェニファーさんじゃないですか? 」

 

政彦との立ち話を終えた、ジェニファーに、通路の反対側から、歩いて来る、白衣を着た男が声を掛けてきた。

 

ニコニコと笑いながら、男が近づいてくる。

 

20代半ばぐらいだろうか。

ジェラルドと同じく、白衣の袖を腕に通さず、羽織っている、髭は一本すらないほど綺麗にそり、髪は短い茶髪

で、額に掛かるか、掛からない状態に留めてる。

一見好青年に見える、その男から、

不気味な雰囲気を政彦は感じ取った。

 

(ただの好青年ではなそうだ)

 

政彦はその茶髪の男を注視する。

 

「ご無沙汰してますジェニファーさん」

 

大仰な、動作で手を振り下ろしながら、頭を下げて茶髪の男は挨拶する。

 

「どうしてあなたがここにいるんですか? 」

 

ジェニファーが得体の知れないものを見るような、目でみながら嫌悪感をあらわにしながら、男の名を呼んだ。

 

「グレアム・バンデイ」

 

ジェニファーに名を呼ばれた、グレアムは爽やかな笑みを浮かべた。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました
(^-^)
もう少しで。執筆おわりそうだったので、
更新を優先しました。

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