良かったら見ていってやってください。
1
「……」
(だんまりか)
早足で追いついて、隣に並んだ政彦は、顔をそむけたままの、ジェニファーの横顔をため息混じりに、見る。
さっきからこの調子である。
政彦が追いついて、もう5分ぐらい
経っているというのにだ。
(この場合、俺が悪いんだよな)
身に覚えがないが、政彦はどうやら
自分が悪い事をしたのだと思う。
(親父殿の友人の娘さんだ。
不仲だと、まずいか)
そう計算した政彦は、ジェニファーの前にまわりこむ。
「ミスローレンス!!」
大声で、ジェニファーの名を呼ぶ。
「何ですか? 」
大声にビクッと体を震わしながら、
ジェニファーは返す。
「すまなかった」
ジェニファーの返事とほぼ同時ぐらいに、政彦は頭を下げる。
「えっ? 」
小首を傾げて、不思議そうな顔で頭を下げてる政彦を見る。
「いきなりどうしたんですか ?」
「いや。
機嫌を損ねたと思って謝ってるのだが、謝るだけでは駄目か」
下げた頭を戻しながら、政彦は考え込む。
(そう言えば、親父殿が愛人の機嫌を損ねた時は、プレゼントをしていたな
他にはベッドで機嫌を治してたが、
そう言う訳にもいくまい)
「そうだ。
ミスローレンス何か欲しいものはあるか? 」
政彦はジェニファーの様子を、慎重に伺いながら、言う。
「欲しいものですか? 」
口元に指を当てた、ジェニファーが考え込む。
(別に怒っては、いないんですけど、
ただ美人なんて、言われた事なくて
びっくりしただけなんですが)
そう思った、ジェニファーは、怒ってはないから、プレゼントは要らないと言おうとするが、ここでふと思いなおす。
(プレゼントは、大袈裟すぎるけど、
ご飯をご馳走になるぐらいなら)
ジェニファーは、最近U-NASAの近くに、出来た日本食の店を思い出す。
美味しい天ぷらが絶品だと、広告にも載っていた。
騙すようで、一瞬気が引けたが、向こうからプレゼントでもと言ってきたし、プレゼントよりは安値だから、良いと、彼女は思う。
「そうですね。実は今気になってる店があるんです。
ただ値段が高いんですよね」
政彦の反応を伺いながら、ジェニファーは話を続ける。
「太田さんは私にプレゼントしたいんですよね。
だったら代わりに奢ってくれませんか? 」
(図々しかったかしら)
ジェニファーは、不安げに顔を歪めながら、政彦を見る。
視界の先にいる、政彦は特に嫌そうな顔を見せてない。
「食事を奢ってくれって事だな。
了解した」
政彦はそう言うと、ポケットの財布から紙幣を数枚取り出し、次にジェニファーの手を掴み、広げさせると、
その手のひらに、取り出した紙幣を渡した。
百ドル札が五枚大体日本円にして、
約五万円ぐらいと言ったところ、そこそこの金額である。
「あのこれは」
手のひらに乗せられた、紙幣を困ったような顔でジェニファーは見てる。
「それだけ、あったら足りないか?
足りないなら、追加するが」
「いやそうじゃなくて、あのこのお金はいったい ?」
政彦の意図が読めない、ジェニファーはとまどう。
「食事の代金だが……それで食事を食べてくるといい。
ああ、お釣りがあっても、返すには及ばない。
そのまま懐に入れてくれ」
政彦はそう言うと、ジェニファーの横を通り抜けようとするが、通り抜けられない。
「待って下さい」
目を据わらせた、銀髪の姫が政彦の腕を掴んでいたからだ。
「まだ何か? 」
掴まれた腕を見ながら、話しかける政彦。
「普通食事を奢ると言ったら、一緒に食べに行くんじゃないんですか ?」
「ミスローレンスは、俺と一緒に食事をしたいのか? 」
政彦が、ジェニファーに確認をとる。
「いえ、したいと言うより、むしろ奢るのに、お金だけ渡してって、そんなのおかしいと思っただけで」
政彦のド直球な質問に、顔をふせながら、聞こえるか、聞こえないかぐらいの小声で、ジェニファーは返す。
「俺と行きたくないのなら、別に俺と行くのに拘(こだわ)らなくてもいいだろう。
その金で他の人間を誘ったらどうだ」
ジェニファーの答えに政彦が、別の案を出す。
「太田さんは、私と食事するのが、嫌なんですか? 」
悲しそうな声で、呟くジェニファー。
「嫌ではないが、時間の無駄だろう」
さらっと、毒舌を吐く政彦。
「時間の無駄ですか? 」
ショックで、ジェニファーは声が裏返ってしまったが、本人は気づかない。
(美人って言ったと思ったら、今度は一緒にいるのが時間の無駄って)
ジェニファーは目の前にいる政彦がどういう人間か解らなくなった。
「そうだ時間の無駄だ。
俺を相手にするより、もっと将来有望な若者を相手にした方が有意義と言うものだ」
「はい ?」
政彦の言ってることがわからず、素っ頓狂な声を上げるジェニファー。
「食事の場と言うのは、人の気がゆるむのだ。
上手い事酒でも、飲まして後は既成事実を作ってしまえば、将来安泰だ。
現に俺の母はそうやって、妻と言う安泰の地位を手に入れた」
「いったい何を」
ジェニファーは困った笑みを浮かべる。
目の前の男が、何を言ってるのか、心底理解できないのだ。
「既成事実云々は先走りすぎたか。
とにかくミスローレンスが、粉をかければ、将来有望なエリート達がうじゃうじゃ集まるんだ。
俺を相手にするなど、時間の無駄な事はやめておけ」
政彦は、そう言って締めくくると、
掴んだ腕を離してくれないかと、目で合図を送る。
「太田さんは、私と食事するのが、嫌じゃないんですね」
「だから時間の無駄だと」
「無駄じゃないです」
掴んだ腕に力を込めながら、ジェニファーが政彦を鋭い目で睨む。
「太田さんは、そう思うみたいですけど、私には無駄じゃないです」
ジェニファーは続ける。
「私と一緒に食事しましょう。
政彦さんの奢りです良いですね」
有無を言わさない口調で、政彦に迫る
ジェニファー。
思わず下の名前に呼んでる事に気づかない。
(やれやれ、物好きもいたものだ)
政彦は、ジェニファーの顔を見つめる。
(金を貰って、好きな事に使えば良いものをわざわざ使い方を限定するとはな)
「こういう場合、女性に恥を掻かせる訳にはいかんな。
あいわかった、ミスローレンス」
「最初から、そうしたらいいんです」
照れてるのか、顔をそむけながら、ジェニファーが早口ですます。
その頬と耳が赤くなってるのに、政彦は気づかない。
(よくわかった。この人悪い人じゃないけど、考え方が普通じゃないんだ)
ジェニファーは、さっきまでの、政彦との、会話を思い出す。
(それと、もの凄く人の気持ちに鈍いんだ)
やれやれとばかりに、溜め息を吐いて頭を振ってる政彦。
(こういう人にははっきり言わないと駄目だわ)
少しは政彦の事を理解した、ジェニファーはこの不器用で、すこぶる変わり者の日本人の男を好ましく思い、惹かれていくのだった。
5
「おやぁ、ジェニファーさんじゃないですか? 」
政彦との立ち話を終えた、ジェニファーに、通路の反対側から、歩いて来る、白衣を着た男が声を掛けてきた。
ニコニコと笑いながら、男が近づいてくる。
20代半ばぐらいだろうか。
ジェラルドと同じく、白衣の袖を腕に通さず、羽織っている、髭は一本すらないほど綺麗にそり、髪は短い茶髪
で、額に掛かるか、掛からない状態に留めてる。
一見好青年に見える、その男から、
不気味な雰囲気を政彦は感じ取った。
(ただの好青年ではなそうだ)
政彦はその茶髪の男を注視する。
「ご無沙汰してますジェニファーさん」
大仰な、動作で手を振り下ろしながら、頭を下げて茶髪の男は挨拶する。
「どうしてあなたがここにいるんですか? 」
ジェニファーが得体の知れないものを見るような、目でみながら嫌悪感をあらわにしながら、男の名を呼んだ。
「グレアム・バンデイ」
ジェニファーに名を呼ばれた、グレアムは爽やかな笑みを浮かべた。
最後まで読んで頂きありがとうございました
(^-^)
もう少しで。執筆おわりそうだったので、
更新を優先しました。