異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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第25話痩せ我慢

 「太田さん? 」

 

大の字になって無様に倒れてる、グレアムを見た後、ジェニファーはぼんやりした顔で、グレアムの背後に立っている政彦を見る。

今やっと政彦の存在に気づいたようで、その顔には驚きが見られる。

 

「ミス・ローレンス。

あなたが手術を受けていたとは、知らなかった」

 

それだけ言った政彦の両膝が笑い、体が震えやがて腰が砕けてそのまま尻餅(しりもち)をうって座り込んでしまう。

 

 

「太田さん?! 」

 

座り込んで、頭をカクッと落として俯く政彦に、ジェニファーが慌てて駆け寄る。

その顔には先程までの、状況に付いていけず、惚(ほう)けた間抜け面はない。

心配そうに政彦を気遣う、優しさだけがある。

 

「大丈夫ですか? 」

 

そばに着いた、ジェニファーは片膝立ちになり、彼の背中に左手を回し、右手は腰を持ち上げ、立たせようとする。

 

(ぐぅ !! )

立たせようと触ってきた、ジェニファーの左手が、政彦の背中に触れた瞬間。

火傷のような痛みが背中全体に走る。

 

さっき天井に叩きつけられた時の痛みが残っているのだ。

 

(悪気どころか、気づいてないのか? )

 

心配そうな顔で、必至に自分を立たせようとする、ジェニファーの様子を見た政彦は、ジェニファーがさっき自分を吹っ飛ばした事を覚えていないのに気づいた。

 

まぁ、実際には頭に血が上っていたジェニファーは、吹っ飛ばした事に気づいてないのだが、そんな事情判るはずもない。

 

(まぁ、いきなり肩を掴もうとした俺も悪いか)

 

そう結論づけた政彦は痛みに、耐えながらジェニファーに身を任せる事にした。

なおこの時彼女の胸が俯く政彦の顔に当たっていたのだが、痛みに耐え忍ぶ政彦はそれを楽しむ余裕もなく、立ち上がらせる事に集中してるジェニファーも気づかなかった。

また幸いな事に、苦悶に顔を歪めてる政彦の表情もジェニファーは見ずに済んだし、政彦も見せずに済んだ。

 

 

「どうやら私の仕事は済んだようだな」

 

立ち上がらせて貰った、政彦とジェニファーを見ながら、ミッシェルが話しかけてきた。

肩にショルダーバッグのように軽い感じで、気絶したグレアムを担いでる。

政彦が立ち上がらせて貰うまでの間に、肩に乗せたようだ。

女性とは思えない、凄い膂力だ。

 

「では私は気絶したこいつを、医務室に運んでいく。

倒れたままにしておいたら、通行の邪魔だからな」

 

肩に担いだこいつ、グレアム・バンディを指で差しながら、早口で告げたミッシェルは、医務室に向かうため方向転換する。

 

「今回は、この男に落ち度があるようだから、不問にする。

天井の修理も、スパイを見つけて戦闘になって壊れた事にしたら、UNASAの予算でなおせるだろう」

 

私が言ったら、艦長も深く詮索はすまい。

ミッシェルはそう付け足して、話を終えると、人1人担いでるとは、思えない軽い足取りで、去っていく。

ジェニファーに肩を支えて貰いながら、政彦はそれを見送った。

 

 

「天井がどうかした……ってあんな大きな穴が」

 

医務室に歩いて行った、ミッシェルを見送った後、天井を見上げたジェニファーが口元に手を当てながら、大声を上げた。

穴の開いた隙間から、上の階の棚とか、机などが見え、壊れた天井の破片が通路に降っている。

それを見たジェニファーの目は大きく見開かれている。

 

(君が穴を開けたんだと、言わない方が良いな)

 

ジェニファーの精神衛生上それが良いと判断した政彦は、その件に触れないようにするため、別の話題をふる。

 

「ちょっとした事があったんだ。

大したことじゃない。

ミッシェル副長補佐も経費で落ちる言ってるから、大丈夫だろう」

 

政彦はそう言ってから、礼を一言言うと、ジェニファーの手を外して、自力で立つ。

 

「あの体の調子が良くないんですか」

 

政彦の頭から、足先まで順番に見ていきながら、心配そうにジェニファーが声をかける。

本当に具合が悪いところがないのか、確認してるようだ。

 

(君に天井に叩きつけられて体が痛いんだよ)

と心では思った政彦だが、流石に口には出さなかった。

信じられない程のKYの政彦だが、女性を悲しませて、喜ぶサディストではない。

なので

 

「飛行機に慣れてないので、その疲れが出てきただけだ」

と手短に済ますと飲み物を買いに行くため、早歩きしだす。

 

「そうですか」

 

一瞬、納得のいかない顔をした、ジェニファーだったが、素早い政彦の動きを見て、とりあえず安心するとその後に付いて行く。

 

 

「遅くなっちゃいましたね」

 

「そうだな」

 

10分後。

飲み物とついでに、お菓子の調達を終えた、2人は並んで歩いていた。

政彦は、左手にお菓子の入った袋を持ち。

ジェニファーはお盆を両手で持ち、人数分の力ップをのせている。

 

お盆に飲み物を乗せてる、ジェニファーのスピードに合わせてるため、

2人のスピードはゆっくりだ。

 

「皆さん遅いって怒ってないかしら」

 

「大事な話をしてるから、飲み物が遅いと気にする余裕はないだろ」

 

心配する、ジェニファーに、あっさりと問題ないと、政彦が答える。

 

「そうですか」

政彦の一言に少し気が楽になる。

 

「まぁ、さっき遅くなって怒られたから、遅くなってもまたかで済むだろう」

 

心配ないさと、伝える政彦。

 

「そうですね……ってそれ私が遅いのは仕方ないって事ですか? 」

 

「一度遅くなったのだから、二度目もあるだろ」

 

しれっと酷いことを言う政彦。

 

「そんな、酷い」

 

押し黙り、肩を落とし、立ち止まるジェニファー。

 

「と言っても、今回は話し込んだから、仕方ないさ」

 

自分で落としといて、フォローする政彦。

 

「万が一。

文句を言ってくる者がいたら、俺が懇切丁寧に説明するから気にするな」

 

「……グレアム・バンディが謹慎を破ってどうして」

 

最後の政彦のフォローを聞かず、グレアムの事をジェニファーは考えていた。

その憎悪と怒りに溢れる横顔を何も言わず隣に並んで、政彦は見続ける。

 

(あの男が、何者なのか気になるが、

ミス・ローレンスに聞くのはまずいな)

 

他の者に後で聞いてみようと、政彦は結論づける。

 

名前と顔を知ってるから、大丈夫だろう。

 

そのまま政彦は、グレアムの悪口と、

行動を推理する、ジェニファーの独り言を聞きながら、克弘達が待つ第2研究室に帰って行った。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
(^-^)
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