異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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遅くなりましたが、最新話投稿します。
今回は長くなってしまったので、二回に分割します。
それでは1回目どうぞ。



第2話密かな来客(前編)

 

 

 

「残り2匹」

 

拳銃を持ったテラフォーマーを仕留めたのを確認した政彦は、勢いよく振り返り次に備える。

 

彼が言う通り敵は残り2匹。

 

ハンマーを装備する、テラフォーマーとチェーンソーを持つテラフォーマーである。

 

「じょう」

 

「じょ。じょ」

 

2匹のテラフォーマーは独特の鳴き声を発しながら、政彦をじっと見ている。

 

痛みも、恐怖も、死すら恐れないテラフォーマーだが、仲間があっさり殺られてしまったので、警戒しているのだろうか。

 

とにかくテラフォーマー達は政彦と

暫(しばら)くにらめっこする事に決めたようだ。

 

2

 

 

「後2匹か。

一番厄介な拳銃を装備する、テラフォーマーは倒したが、それでもチェーンソーとハンマー装備……一撃でも喰らったら政彦さんの命はない」

 

 

テラフォーマー1匹を、あっさり片付けた手際に感心すれど、楽観できない星野研究員は、ハラハラしながら訓練場で行われている非常識な訓練を見ている。

 

今のところ、生き残ったテラフォーマーは睨み合いを続けているようだが、それもいつまで続くかはわからない。

 

(万が一の時は……ゴクッ)

 

星野は手元にある、カバーにおおわれている赤色のボタンを険しい顔で見る。

 

そのスイッチは訓練中の事故死を、防ぐための2つの緊急装置。

 

押せば、訓練場内にマーズレッドPRO

を天井に設置されている、噴射口から散布する。

マーズレッドPROは20年前のバグズ2号計画のおり、テラフォーマー駆除のために使用された害虫駆除用薬品

だ、しかしテラフォーマーには全く効果はなかった。

だが、テラフォーマーを駆除するには

至らないが、それを体に浴びたテラフォーマーは短時間だが、体が硬直するぐらいは出来る事が、新たな研究で解った。

また至近距離でかければ、かけた箇所によれば僅かに悶える事がわかった

まして今訓練場内にいるのは、火星のオリジナルの劣化版クローンテラフォーマーだ。

オリジナル以上に効果はあると踏んでいる。

30秒ぐらいなら、麻痺させる事が出来ると星野は思っている。

30秒あれば充分だその間に

 

(政彦さんを脱出させて、次に訓練場内を

真空にすれば)

 

クローンテラフォーマーが暴走した場合の為に、訓練場にはもう1つの安全対策、空気を抜くことが出来る仕掛けが設置されている。

 

いかに超生物テラフォーマーといえど

空気が無ければどうしようもない。

 

 

(……出来れば使いたくないが)

 

星野は今だ睨み合いを続けている、

政彦とテラフォーマー達を見下ろし、

嘆息する。

 

使えば間違いなく無断使用はバレる 。

そうなればただでは済まない事になる。

停職や万が一解雇などになったら、

家族に迷惑がかかる事になる。

 

(だが、太田さんの息子を死なす訳にはいかない)

 

いざとなったら全責任は自分が背負う。

覚悟を決めた星野は何時でも対処出来るよう、2つの緊急スイッチの上に手を置き、事態に備える。

 

 

「ほう〜まとめて3匹相手にするとは

ハードな訓練やってるなぁ」

 

突然緊張状態で政彦の訓練を見ている

星野の背後から声が、聞こえてきた。

 

「えっ?!」

 

驚いた星野は一瞬体を、ビクッと震わせたあと、背後へと振り向いた。

 

 

「艦………長」

 

 

星野は驚愕の表情で、何時の間にか入ってきていた、黒髪を逆立てた四十路男を彼の役職で呼んだ。

 

 

 

「星野さん。

今訓練場使ってるのは、政彦君ですね」

 

艦長と呼ばれた小町小吉は、訓練場を

誰が使っているのか、確認する。

だがはっきりと言ったその口調の感じから、星野に聞くまでもなく知っているのだろう。

聞いたのは、念押しと言ったところか。

 

小町小吉、彼は3年後火星に行く

U-NASA火星探索チーム総隊長で

あり、火星探索艦アネックス1号の艦長でもある。

 

探索チーム全100名の人員

の頂点に立つ最高責任者で、前計画のバグズ2号の数少ない生き残りの一人でもあり、その実力は抜きん出ている。

 

そんな大物の突然の登場に、星野は緊張を強いられる。

 

 

 

 

 

(艦長は驚いてない、前から知っていたのか)

 

心中でそう察した星野は、観念して素直に答えた。

 

「はい。艦長のおっしゃる通り太田政彦さんが、訓練場で戦闘訓練をしています」

 

 

「そうか」

 

小町小吉はそう言うと、記録室の窓の方へ歩いていき、ガラス越しに政彦の戦闘訓練の様子を見る。

 

 

「あの艦長」

 

星野が冷や汗をかきながら、どもった声で呼ぶ。

緊張で声がうまくでなかったのだ。

 

「何かな」

 

小吉は首だけ振り返って、星野を見る。

 

すると星野はいきなり膝を地面につけ、頭を地面に擦り付けた。

土下座である。

 

「!?」

 

「小町艦長!!」

 

地面に額を擦り付けたまま、顔を見ないで、星野は話す。

 

「今回の無断使用は、管理者である

自分の責任です。

むしがいいとは、思いますが政彦さんには、何とぞお咎(とが)めなしでお願いします」

 

星野は大声でそう言うと、土下座の状態で小吉の返答を待つ。

 

10秒ぐらい過ぎたか、でも小吉は何も言わない。

 

30秒ぐらい経った、それでも小吉は何も言わない。

 

不思議に思った星野はゆっくり頭を上げて、小吉の様子を覗き見ようとする。

 

「星野君、君が責任をとる必要はないよ。

あれも二十歳を過ぎた大人だ、責任の

取り方ぐらい知ってるさ」

 

頭を上げようとしていた頭上に、記録室の自動ドアのスライド音が、聞こえると同時に、小吉とは違う別の男性の声が聞こえてくる。

 

落ち着いた、渋みのある声。

 

この声の主を星野はよく知っている。

 

星野は顔を上げると、声をかけてきた、人物の名を呼ぶ。

 

「太田さん!!」

 

声の正体は、今訓練中の太田政彦の父

太田常彦だった。

星野の敬愛する、上司である。

 

 

太田常彦は、上に白衣を下にジーパンをはいている。

今年で43で、星野より3つ年上である。

ちなみに小吉は40歳である。

こっちはスーツをきっちり着こなしている。

ただ鍛えぬいた体の筋肉が盛り上がっていて、ちょっと窮屈そうに見える。

 

「星野君早く立ちたまえ、衣服が汚れるよ」

 

そう言うと常彦は手を差し出す。

 

「いえ、自分で立てます」

 

星野はすぐに立ち上がると、お気遣いありがとうございますと、常彦に告げる。

礼を聞くと、常彦は差し出した手を戻した。

 

「礼を言うのは私の方だ、せがれの無茶な願いを聞いてくれて、ありがとう」

 

常彦は頭を下げながら、星野を労う。

 

 

 

「いえ。政彦君は優秀な人物です

協力するのに、骨身は惜しみません」

 

 

星野は、お辞儀をしながらはっきりとそう言う。

 

 

それに答えた常彦は、笑みを浮かべながら星野の肩に手を置く。

 

 

「君のような優秀な人物に、そこまで思って貰えるとは、愚息もいつの間にか成長したようだな。

これで後は彼女の一人でも連れてくれば良いのだが」

 

 

常彦は、息子に頼れる味方がいることを知り喜んだが、息子の不甲斐ない部分も思い出して、再びガッカリしたのだった。

 

 

「そうだ。小町くん」

 

「はい、博士」

 

星野に感謝をした常彦は、次に小吉に

話かける。

 

「倅(せがれ)の事だが、今回の訓練場無断使用

責任は私と政彦にある。

星野君は責めないでやってくれ」

 

 

頭を下げながら、常彦はそう言う。

 

さらにこう続ける

 

「子の失態は親の責任だ。

まして私は日本のMo手術研究の

最高責任者だ。

親以前に、上に立つものとしての責任もある」

 

 

 

「退職となってもかまわない、小町君。

いかなる処分も私はうける」

 

 

顔を上げ、真剣な目で小吉を見る

 

 

「あのすみませんが、博士も星野さんも先ほどから何を言ってるんですか?」

 

 

常彦の強い眼差しを、困ったような目で見返しながら、小町が戸惑い気味の

小声で返答した。

 

 

 

 

「いや。訓練場の無断使用の処罰についてだよ。

訓練場は、Mo手術を受けたもの以外は使用出来ないという決まりだ。

私の息子はそれを破った

だから親である私は処分を甘んじて

うけると言うことだよ」

 

常彦は話についていけてない、小町に

もう一度説明した。

 

(私たちの話を聞いていなかったのか?小町くんは)

 

 

「あぁその事ですか」

 

常彦の説明を聞いて、二人の話の意味がわかった小町は、合点がいったと

手のひらに拳を打つ。

 

「小町艦長、太田博士は我が国の研究に必要不可欠な人だ。

そしてそれは政彦君も同じだ

なにとぞ穏便に頼む」

 

 

「小町君、遠慮はいらない。

規則は大事だ。

火星探索チームの総隊長として、職務を全うしたまえ」

 

 

「太田さん!!」

 

自分の弁解を無にする、常彦の発言に星野は悲鳴のような声で名をさけぶ。

 

 

「しませんよ」

 

 

「星野君気持ち嬉しいが、上に立つものが、規則を破るわけにはいかん」

 

「しかし、政彦君は体を張って頑張ってくれてるんです。

決して私欲でも、興味本意でもない。

まだ若く才能もある、艦長許してやってくれ」

 

星野は再び土下座しようと、膝を折る。

 

 

「星野君。男がそんな簡単に土下座を

するべきじゃない」

 

常彦が、膝を折る星野の腰に手を回して止める。

 

「いやですから、処分はしませんて!!」

 

二人が話に夢中になっていて、さっき処分しないと、言った言葉が聞こえていなかった、小吉は大きな声で伝える

のだった。

 

 

 

 

「しないと言うのかね」

 

 

「艦長本当なのか」

 

常彦は確認するように、ゆっくりと言い、星野は喜びのこもった高い声で

問いかける。

 

 

「まぁ、このさいだから言いますが、

俺もその無断使用ってのやってるんですよ

だから処分なんて出来ないんです」

 

小吉は、頭を掻きながらそう言うと

さらに続ける。

 

「それに若者の修行を邪魔するなんて、無粋な真似はしませんよ」

 

小吉は両手の平をふりながら、のたまう。

 

「良かった」

 

星野は安堵して、胸を撫で下ろす。

 

 

「そうか、ありがとう小町君」

 

常彦も小町に礼を言う。

 

 

「いえ、それより太田博士、見ませんか。

息子さんの勇姿を」

 

小町は、親指をグイッとつきだして、

記録室の窓を指し示す。

 

 

「おおそうだ。

政彦君の訓練中だった」

 

星野は慌てて、小町の指した窓まで行き、そこから訓練場を見下ろす。

 

「太田博士もどうです」

 

 

小吉は、武骨な笑みを浮かべ常彦を誘う。

 

「小町君に誘われては、断れないな」

 

 

常彦は、苦笑いを浮かべながら、小町の隣に立つ。

 

「ああところで、小町君」

 

 

「何です、太田博士」

 

「さっき言った、自分も無断使用してるというのは、どういう意味かね?」

 

常彦がふと思い出したように、小町に

質問をなげかける。

 

「ああその事ですか、艦長の俺は、ランキングが高いですから、付き添いなしで、個人で訓練場使えるでしょ」

 

小町が、軽い調子で答えていく。

 

「正確にいえば、幹部である

ものたち、だが」

 

「それなんですけど、俺は俺自身が使う時もありますが、たまに俺の名前で

使用許可とって、一郎に訓練させてるんですよ。

まぁ、あいつは忙しいですから毎回じゃないですけどね」

 

小町が、口元を緩めて照れ笑いをしながら、説明する。

 

「ほう。一郎君に……」

 

(うん一郎君?)

 

小町が言った名前に、常彦は妙な引っ掛かりを感じる。

 

やがてその名が意味する事を知り、

常彦は、顔色を変える。

 

(一郎だと、小町君の友人に一郎という名前はたった一人だが、確か彼は)

 

 

「小町君、一郎に貸したと言ってるが、まさか蛭間一郎君にかね」

 

常彦は、恐る恐る小町に聞く

 

自分の記憶が正しければ彼は

 

 

「ええ、蛭間一郎ですよ」

 

小町は、何を当然な事をと、あっさり答える。

 

「総理が訓練してるのかね!!」

 

 

小町の、さらっと言った爆弾発言に

常彦は年甲斐もなく、大声を上げる。

 

 

「そうですよ。

体が鈍るのは嫌だって言うから

数にしたら、10回中3回ぐらいは

あいつが使ってますね。

豆に来ますから、いまでも腕は鈍ってないですよ」

 

小町は、友人を誇らしげに自慢する。

 

 

「知らなかった……総理が訓練を」

 

常彦は心底驚いてしまい、それ以上言葉が出てこない。

 

「お二人とも何やってるんですか、

政彦さんの訓練見な……あっ終わってしまった」

 

 

小町と常彦が会話中の間、しっかり、下の訓練場を見ていた星野が

ちょっと残念な感じで、呟く。

 

「何だって!?」

 

小町は、驚いた後、急いで訓練の様子を見下ろす。

 

黙って小町に続いて、訓練場を見下ろした常彦は

良いところを見れなくて、少し残念そうに、眉をしかめるのだった。

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
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