今回で丁度30話です。
それではどうぞ(^-^)
1
「あれ兄貴」
グレアム・バンディとの予期せぬ遭遇で、遅くなってしまった政彦達が第二研究室前に、戻って来たちょうどその時、克弘が扉を開けて外に出てきた。
「克弘か 」
「遅かったのう ?」
政彦が克弘に声をかけて、すぐにローレンス教授が部屋から出てきて、最後にジェフリーが出てくる。
克弘とローレンス教授は手ぶらだが、
ジェフリーは、書類を脇に挟んでいる。
「どこで油いや……しけこんでたのか? 」
好色な笑みを浮かべながら、弟が兄をからかう。
さっきの電話の仕返しだ。
「馬鹿が……ミス・ローレンスがそんなことする訳ないだろう」
親の前で何て事言うんだと、政彦は更に付け加え弟を窘(たしな)める。
「儂は別に構わんぞ。
娘も大人じゃから、そう言う事は意志を尊重せんとな」
叱られてる、弟にローレンス教授が助け舟を出す。
そのやり取りを、恥ずかしそうに顔を伏せて、ジェニファーはこっそりと見ている。
「良かったじゃねぇか兄貴。
親公認だぞ、これで兄貴にもやっと春が来たなぁ」
グッと親指を立てて、ニヤリと笑う
克弘。
「お父様、何を言ってるんですか? 」
たまりかねて、ジェニファーが非難の声を上げるが、耳を真っ赤にしてるので、あまり説得力がない。
「全くだ。
ミス・ローレンスと俺がお付き合いなどと、馬鹿も休み休み言え」
「えっ?、それってどういう意味ですか」
父親に、食って掛かろうとしてた、ジェニファーが止めて政彦の方を振り向く。
不思議そうに政彦の顔を見ている。
何を政彦が言うのか、気になるようだ。
「意味か? さっきも言ったと思うが
俺と付き合うなどと、わざわざランクの低い男を相手にする必要が、ミス・ローレンスには無いと言う事だが」
真顔で命令事項でも、伝えるように淡々と政彦は話す。
「太田さんは、ランクの低い男何ですか? 」
自分の事を平然とランクの低い男と言い切る、政彦の言葉に、ジェニファーは信じられないものを見るような、顔で問いかける。
(顔をも悪くないし、真面目そうで頼りになりそうだし、言うほどそんなに悪くないと思いますが)
政彦を眼で観察して、ジェニファーは評価する。
「違うな。
ランクが低いと言うより、ランク外だな」
ジェニファーの評価に対して、政彦の自己評価は低いどころか、低すぎる。
「そんな事」
「人殺しだからな、俺は」
反論しようと、口を開いたジェニファーが話終わる前に、政彦の爆弾発言が、辺りに響いた。
2
政彦の爆弾発言を最後に皆が沈黙し、重苦しい空気が辺りを包む。
ジェニファーは、「またそんな冗談」と言って、暗い空気を無くそうとするが、その発言を聞いた父や克弘の反応を見て固まってしまう。
克弘は、辛そうな顔で兄を見つめており。
父親である、ローレンス教授は顔を歪めて、歯を噛み締め黙ってる。
ジェフリーは、政彦と克弘とローレンス教授の顔を交互に見て、溜め息を吐く。
(本当なんだ)
ジェニファーは皆の態度から、嘘じゃないと判ってるが、どうしても聞かずにはいられなかった。
だから、次の瞬間。
「本当に人を殺したんですね」
静かな口調で一言、一言をゆっくりと
言って、政彦に聞いた。
否定してほしいとジェニファーは思った。
3
懇願するような、ジェニファーの顔を見た政彦は、微かに困ったような、顔をした。
(つい余計な事を話してしまったな)
普段から、あまり若い女性と話さない
政彦は自分が失言した事に気づく。
(確かに。初対面の女性に言う話ではなかったな)
自分の口元を見て、聞き逃さないようにしようと身構えてる、ジェニファーを見ながら、政彦は考える。
実は冗談だと言うのは簡単だ。
しかし、克弘とローレンス教授は、本当だと知ってる。
仮に自分が冗談だと、流してもあの二人が話してしまったら、後で余計に彼女は傷つくだろう。
適当な冗談で振り回されたと。
(自分が言った言葉には責任を持たんとな)
「本当だ。
嘘を言って女性に罵倒されて、喜ぶような趣味はない。
俺はマゾじゃないからな。
ちなみに初めて殺したのは、14歳の時だ」
前半は冗談混じりに言って、相手の緊張をほぐした後、政彦は衝撃の事実を告げた。
「14歳で……」
政彦の告白に、ジェニファーはそれ以上何も言えず、ただ政彦の少し寂しそうな顔を見続けた。
最後まで、読んで頂きありがとうございました。(^-^)