異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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閑話 回想2610年アックスマン事件 その2

 

「なぁなぁ。  あの真面目人間が、どういう風の吹き回しだ」

 

隣を歩く橋爪に野川が、すり寄り、声を潜めながら、話しかける。

 

「さぁな。 でも緒方と太田は親友同士なんだろ?

緒方が行くなら、俺もって事じゃないの」

 

多分と最後に付け加え、橋爪が野川の問いに答える。

 

有り得ない話ではない。

 

現に緒方と太田は親友同士なのだ。

クラスの中いや、学年で太田が下の名前で呼ぶのは、緒方だけだ。

 

 

「なるほどな、そういや臨時収入があったとか、言ってたな。

俺たちも奢ってもらうか?

なぁ良いだろう太田」

 

先を行く、政彦に野川が、背後から

声を上げて、ちゃっかりおねだりする。

 

「何故? 野川と、橋爪の分も奢らないといけないんだ」

 

振り向かず、政彦がきっぱりと断る。

 

「良いじゃんケチケチすんなよ。

臨時収入あるんだろ」

 

早足で、政彦の横に並んだ、野川が

肘で、政彦の脇腹を突っつきながら、

再度頼む。

 

「俺のクーポン券使ったら、安く済むからさ」

 

人懐っこい笑みを浮かべる、野川。

なっいいだろうと、言ってくる。

 

「政、1人だけ奢って貰うのは、気まずいのだが……懐は暖かいから、別に奢ってくれなくても」

 

しつこく政彦に迫る野川に、見かねた緒方が、嫌そうに手を上げながら、会話に加わる。

1人だけ奢って貰うから、波風が立つのだ。

だったら奢って貰わなければ良いと緒方は思う。

 

「いや恒、俺が奢りたいのだ。

所詮親父殿から貰った泡銭(あぶくぜに)。

惜しくはない」

 

緒方の方を見ながら、政彦が大丈夫だとばかりに笑みを浮かべる。

 

「野川に橋爪。

好きなモノを選んでくれ

遠慮は要らないぞ」

 

またしても、急に言った事を180度変えた政彦のらしくない行動に、野川と橋爪の2人はあんぐりと口を開けた。

 

 

 

「なぁ緒方、太田の奴本当に、どうしたんだ? 」

 

前を歩いてる政彦の後ろ姿を見ながら、野川が緒方に聞く。

 

声に反応した緒方は、野川の方に振り向く。

 

「どうしたとは? 」

 

 

「どうしたも何も太田の様子が、おかしいだろ。

授業さぼったり、奢ってくれたりって

あいつらしくないだろ? 」

 

 

野川が、緒方を見ながら首を傾げる。

 

「確かに」

 

橋爪も右に同じと野川にならう。

 

「恐らくだが……俺に気を遣っているのだろう」

 

「気を遣ってる? 」

 

野川が、不思議そうな顔で、言葉を返す。

 

「気を遣う? あのひたすら我が道を行く天上天下唯我独尊男が」

 

橋爪が驚きの声を上げる。

 

橋爪と野川が、意外に思うのも無理はなかった。

 

政彦は、同年齢とはとても思えない少年だ。

下手な軍人も裸足で逃げ出すような、威圧感と雰囲気を常に纏っており、中学2年の現在ボクシングの公式戦で負け知らずと言う、偉業もなしている。

スポーツや勉強にでなく、武に力を注いでる北辰中学校、屈指の存在なのだ。

ボクシング部の顧問の先生は、高校生の時2冠をして、その後プロで日本チャンピオンになった人なのだが、

スパーリングでは政彦にかなわない。

 

またその負け知らずと言うのは、世界大会も含めてというのだから、さらに拍車(はくしゃ)がかかってる。

 

勉学も学年で、十位以内に入り、素行も悪くない。

難点は、変わった性格をしてるという事ぐらいだ。

例(ボクシングで世界チャンピオンになるのも夢でないのに、将来の夢は宇宙飛行士とか)

 

「緒方は、太田のやつに何かされたのか? 」

 

野川が、前を歩く政彦の背中をこそこそ、何度も見ながら緒方に問う。

 

そんな野川の問いに緒方が、少し間を置いてから答える。

 

「政は何もしてない……ただ弟たちがな」

 

やっと緒方が答えたが、言葉を濁(にご)されているので、野川には何の事かさっぱりわからない。

 

「何だそれ?  意味わからねぇよ。

緒方言いにくい事なのか?

だったら無理に聞かねぇけど」

 

そう言って、野川は譲歩したが、その顔は未練があり教えてくれと言っている。

また小声で「気になるじゃねぇか」

とも言ってる。

全く譲歩してない、従兄弟の行動に橋爪がのる。

 

「なぁ緒方そこまで言ったなら、気にしないで済ますのは、無理だぞ」

 

橋爪が気になって仕方ないと付け足すと、野川が渡りに船とばかりに、そうだ、そうだと言ってくる。

 

ついには、緒方の周りを野川が、ぐるぐる周りながら、気になる、気になると言い出す始末。

 

あまりにも子供過ぎる態度を取る、従兄弟に一瞬ひいた橋爪だが、自分が煽った以上、今さら止める訳にもいかず、様子を見るしか手はない。

 

「教えてくれても、良いだろうケチンボ、ドケチの緒方」

 

緒方が、押し黙り何も喋らないのを、良いことに野川が調子ぱずれな、歌声でケーチ、ケーチ、を連発している。

歌うのに夢中になってるので、緒方の拳が強く握られ、こめかみがピクピク動いているのに、野川は気づかない。

 

「おい! もうその辺で」

 

まずいと思った橋爪が、背後から口を塞(ふさ)ごうとするが、沈黙を守ってた緒方が口を開く方が早い。

 

「わかった!! 話す。

ただしオフレコで頼むぞ」

 

執拗な野川の追求に観念したのだろう。

緒方が、話すことを決意する。

 

「先に忠告しておく、これは俺の家族や俺や政の弟たちの名誉やプライバシーに関わる」

 

そこで一旦話を区切った、緒方が獲物を狙うハンターのような、鋭い目で橋爪と野川を見回す。

 

「だから、2人には守秘義務がある。

もし誰かに話たりしたら」

 

橋爪と野川の顔を覗きこみながら、緒方が釘を差す。

 

「俺は、木刀でお前たちの頭をかち割らないで、済ませられる自信がない」

 

肉食獣のような笑みを浮かべた、緒方が、政彦が気を遣う事になった、事を話しだした。

 

橋爪と野川は、緒方が本気だと気づいて、一瞬聞かないで、済まそうと思ったが、怖いもの見たさの好奇心もあり、そのまま聴く事にするのだった。

 

 

「あいつら、何突っ立ってるんだ」

 

一向についてこない、3人を見た政彦は、やれやれと頭を掻きながら、3人の元に戻るのだった。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
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