異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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最新話投稿します。
今回は主人公を別視点から見てみました。

それではどうぞ。(^^)



29話 因縁

「はぁ〜生き返る」

 

試合を終えた、善治郎は汗を流すため、湯に浸かっていた。

 

あれから20分かけて、対戦相手達を

食べ終わった彼は、脇目も振らず、この浴室に駆けつけてきたのだ。

 

試合が終わった後、湯に浸かるのが

善治郎の日課なのだ。

マーズファイトのオーナーが、日本人であるためか、マーズファイトの運営には、日本人好みに合わせてくれるところがあり、この巨大浴槽もそのうちの1つだ。

日本の下手な温泉場よりも、でかく

また特殊なホログラムシステム搭載で、地下でありながら、いろんな国の

景色を見ることができるのだ。

善治郎は、そのホログラムのレパートリーから、日本の富士山の映像を選んでいた。

また、風呂場で、性的なサービスを

してくれるという、無料サービスもあるが、善治郎は利用したことはない。

 

「A級に上がって7連勝、これで通算

11連勝か……金も大分貯まったな」

 

浴槽に、肩まで浸かりながら、善治郎はこれまでの戦いを思い出す。

少年院を出たのは17歳。

それから、マーズファイトの闘士になった。

命がけのマーズファイトは、莫大な賞金をくれる。

善治郎はこの二年で1億、貯めていた。

だが富と超人の力を、手に入れてもその心は満たされない。

 

善治郎が満たされる、条件はただ一つ

憎き仇太田政彦の死のみ。

 

「一兄(いちにぃ)さん」

 

湯を顔にかけながら、善治郎は、亡き兄の名を呼ぶ。

 

───────────────────────────────────

善治郎の兄、徳永善一郎は善治郎より、5つ離れた兄だった。

2人っきりの兄弟で、美男美女の両親に似て、美しい容姿をしていた。

しかし、父の悪い癖である、女癖の

悪さも、2人の兄弟は受け継いでしまっていた。

とくに、兄である善一郎は、ひどかった。

善一郎は、女に飽きると、金を絞れるだけ搾り取り、ぼろ雑巾のように捨てた。

風俗に売り飛ばされたもの、借金を背負わされたもの、AV女優にされたもの

などは、可愛いもので、自殺したものも複数いた。

堕児を強要された者すらも。

そんな女の敵だった、善一郎を家族は

止めなかった。

両親は我が子可愛さから黙認し、善治郎は、飽きた女をくれるという、おこぼれという、利益があるために。

とはいえ、そんな非道が何時までも、続く訳がない。

終わりは唐突にやってきた。

 

当時、善一郎がつき合っていたのが、

2歳上の、太田静恵(おおたしずえ)

太田政彦の姉だった。

これが運の尽きとは、善一郎も善治郎もこの時は気づかなかった。

 

例によっていつも通り、飽きた静恵を

従兄弟と弟に、下げ渡した善一郎は

その後妊娠してしまった、静恵から

引っ越しして、逃げた。

それから、2ヶ月新たな土地で、再び性欲を満たすための、セフレと金づるを探していた、善一郎の前に、1人の男が現れた。

 

「徳永善一郎さんだな?」

 

ぶっきらぼうにそう言ったのが、静恵の弟当時高校生の政彦だった。

 

政彦は善一郎と確認すると、善一郎に

姉への慰謝料と、これから産まれる

子供への養育費を、払うようにと言ってきた。

いきなり現れて、そんな事をいう無礼な学生に、善一郎は当然しらばっくれた。

 

「何んだお前は?

大体初対面の人間に対して失礼だろうが」

 

強気の口調で善一郎が怒る。

それに対し、黙って怒鳴られた政彦は無言で分厚い書類が、入った封筒を取り出すと、それを善一郎に渡す。

 

渡された書類を見た善一郎は、顔を真っ青にして叫ぶ。

 

「なんだこれは!! 」 

 

そこには善一郎が今まで、食い物にしてきた女性に善一郎が行った悪事の細かい調査内容と、その後女性達の現在の境遇だった。

善一郎が毒牙にかけた全ての女性が、書かれている。

 

「どうしてこんなモノがあるんだ?」

 

「調べた」

 

とだけ、簡潔に政彦は答える。

 

「俺を脅すのか? 警察にでも言うつもりか」

 

ここにきて、善一郎は目の前の学生が、危険な存在であることに気づくが、時すでに遅し。

 

「警察に言うなんて、無駄な事はしない。

詐欺は立証しにくいからな。

慰謝料や養育費を払わないのなら、徳永善一郎が、この大乗町(だいじょうちょう)に居る事を、被害者女性の家族に伝えるだけだ。

この書類の調査報告で、徳永善一郎が、クロだとすでに判明している

さて、被害者家族はどうするかな?」

 

口元だけ、ニヒルな笑みを浮かべて、

政彦は告げる。

お前は終わりだと。

 

「ふざけるな!!、そんな事されたら」

 

悲鳴じみた声で、善一郎は抗議する。

今まで、騙した17名の女性の家族が、敵として、追ってくるなど

冗談ではない。

 

「あなたの身から出た錆だろ。

ジゴロのあなたに、姉に責任を取れとは言わない。

その代わり、姉が自立して、別の相手にあうまでの援助をしてもらう。

一千万渡して貰おう」

 

善一郎の言い分など、意に介さず

政彦は伝え終わると。

手を差し出し金を要求する。

 

「そんな金あるか!! 」

 

金はないと、善一郎は要求をはねのける。

 

「私有財産売るなり、親に借りるなり

手はあるだろう?」

 

「うるさい、人を詐欺師みたいに、

言いやがって、ふざけたガキが」

 

善一郎は政彦の胸ぐらを掴んで、睨みつける。

 

「払う気はないというんだな?」

胸ぐらを掴まれながらも、政彦は涼しい顔で答える。

 

 

「そうだ」

 

「わかった、では金の代わりに別のものを貰おう」

 

政彦はそう言うと、胸ぐらをつかんでいる、善一郎の腕を掴み、その手を

胸ぐらから離す。

 

「別のもの? がぁ!!」

突然体の下から激痛が駆け抜け、

耐えられず、善一郎は地面に大の字に

倒れる。

あまりの激痛に善一郎は意識を失った。

意識を失う寸前、善一郎には去っていく政彦の姿と声が聞こえてくる。

 

「過去の被害者には、何も出来ないが、これで、未来の被害者を無くす事は出来たな」

 

この時、政彦の発言の意味を、善一郎は理解出来なかったが、意識を取り戻した彼は、その意味をすぐ知ることになる。

善一郎の玉は2つとも、政彦に潰されてしまっていた。

政彦は、胸ぐらから、腕を放した後

股間に蹴りを放っていた。

善一郎は男でなくなってしまった。

 

怒り狂った、善一郎は従兄弟と弟を

引き連れ、夜半バイト帰りの政彦を

殺そうと襲いかかった。

この時途中で、一緒になった部活帰りの弟利紀もいた。

政彦は弟を逃がすと、襲いかかったてきた、4人を迎えうった。

善一郎と同い年の従兄弟のツグハルが、バタフライナイフで、切りかかって来たのを、あっさりさばきつつ、ナイフを奪い、奪ったナイフをツグハルの喉笛に、政彦は突き刺す。

突き刺したナイフを素早く抜き取った

政彦の側面に、兄を殺された、善一郎の17歳の従兄弟マサフミが、両手に持った木刀で殴りかかる。

政彦は、奪ったナイフを彼の目めがけて投げる。

目にナイフが刺さって、痛みのあまり

顔を抑え俯いた、マサフミの木刀を

その手からあっという間に、盗み取った政彦は、頭上を高く振り上げると、

いまだに俯いてる、マサフミに振り下ろしを頭をかち割る。

鈍い音が道端に鳴り渡り、その音がこだましている、間に政彦はもう一度マサフミの頭を木刀でどつく、痛みで

うつ伏せに倒れたマサフミに、逆手に木刀を持った政彦が、その後頭部に

木刀を突き下ろす。

うつ伏せに倒れてる、マサフミが頭を激しく地面にぶつけ、吐血した後動かなくなる。

善治郎は、いくら襲ってきたとはいえ、2人の人間の命を何のためらいもなく、奪った政彦に恐怖を覚え、凍りついたように、体が動かなくなる。

 

「畜生!! このキチガイがぁ」

 

憎しみの籠もった目で、背中の後ろに隠し持っていた、ボウガンを取り出すと善一郎は、矢を放つ。

三発放ったが、一発めと、二発めは

木刀で払い落とされ、残りの一発は

首を傾け避けられる。

三発めを凌ぎ終えた時には、政彦は

木刀の届く距離にまで迫っていた。

善一郎のに、次弾を撃たせる前に、

政彦の片手突きが、善一郎のボウガンを持つ左手の指を砕く。

 

「ぎぃやぁー」

苦悶の表情で、叫び声を上げながら

善一郎は、ボウガンを道に落としてしまう。

 

「終わりだ」

 

政彦は木刀を諸手突きの構えで、持ちながら、冷たい声で言う。

 

「待ってくれ、俺が悪かった!!

命だけ」

 

ヒュン

みなまで言わせず、政彦の諸手喉突き

が、善一郎の喉を打ち抜く。

奇声のような断末魔の声をあげながら、3メートル程飛ばされ、倒れ込んだ、善一郎は数秒程体をピクピク動かしたが、やがて力尽き、地面に手を

落とすと、動かなくなった。

 

「ひぃ、ひぃー」

 

兄と従兄弟達の、死を知った善治郎が

凍ったように、動かなかった体の

呪縛が解け、逃げようと走り出そうするが、なぜか転倒してしまう。

 

「うう……」

 

転倒した善治郎が起き上がろうすると、自分の脚に、何か光ってるものが刺さっているのが見える。

それは兄が、武器としてもってきたボウガンの矢である。

矢が飛んできた方向を見ると、ボウガンを左手に持ち、右手に木刀を垂らして持って歩いてくる、政彦の姿が目に映る。

政彦が、地面に落ちてるボウガンを

拾って、善治郎めがけて放ったのだ。

 

「徒党を組んで、凶器を使って

人を襲ったんだ。

死んでも仕方ないよな」

事務的に感情を込めずに、そう告げ、

政彦は、痛む脚を抑えている、善治郎の元まで着くと、頭めがけてボウガンで狙いをつける。

いくらボウガンを使いなれてなくても、僅か2メートルの距離を外す事はたぶんない。

 

(この人、俺も殺す気だ)

 

善治郎は、死を覚悟した。

 

──────────────────────────────────

 

「運が良かったなぁ、後数秒警察の到着が、遅れていたら俺は殺されていた」

 

湯から、上がりながら脱衣室に、向かいながら善治郎は、思う。

 

ボウガンを政彦が放とうとした、瞬間サイレンが鳴り響き、警察がやってきたのだ。

通報したのは、政彦が逃がした実弟

利紀だった。

利紀は逃げた後、近くの駐在所に駆け込んでいたのだ。

駆けつけた警察官は、善治郎と、政彦の身柄を拘束した。

拘束後、取り調べを受けた、政彦と

善治郎は、政彦は正当防衛で釈放され

善治郎は殺人未遂で、裁かれ、少年院に行くことになった。

なお余談だが、近年深刻な人口増加の為、正当防衛なら、特にとがめられる事はなくなっていた。

過剰防衛という法律はすでに、有限無実化している。

中には、自分の家族を殺された、遺族が復讐しても、有耶無耶になる事例もあった。

深刻な、人口増加は人の命も軽く扱われるという、悪癖を産んでいた。

少年院の中で、善治郎は母と父の死を

知った。

出所後、兄に焚き付けられたせいで、

従兄弟達が、死んだと思っていた親戚連中は善治郎を引き取ろうとはしなかった。

善治郎は、親戚連中から金目のものを

盗むと、行方をくらまし。

窃盗や、強盗や非合法の死体処理などの裏世界で生きてる時、マーズファイトに誘われ、今闘士としてここにいる。

 

────────────────────────────────────────────────

 

(あの時は、死んでゆく一兄さん達を

見ている事しか出来なかった。

だがもう少しだ、もう少しで俺の牙は

お前に届く、太田政彦)

 

復讐心をたぎらせながら、歪んだ顔で、乾いた笑い声を上げながら、善治郎は入浴を終えた。

 

徳永善治郎が、太田政彦と運命の再会を果たすまで

 

 

 

 

 

 

後7日。

 




最後まで読んで頂きありがとうございました(^ー^)
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