本来ならここまでで、一つの話にしようと思ってましたが、多かったんで分割しました
それでは( ^-^)_旦~
「ふう〜酷いめにあった」
ベッドの上で上半身を、起こして本を読んでいた、グレアム・バンディは
不機嫌そうに呟いた。
ここは、UNASA敷地内病棟の一室である。
ミッシェルに保護されたグレアムは、
それから、念のため怪我とかないかと、調べるためこの病棟に連れてこられた。
とはいえ、意識を失っていたので、グレアム自身、気づいたら病棟にいたのだが。
グレアムは20分前に、ミッシェルKデイヴスによる、事情聴取を終えていて、暇を持て余していたので、ポケットの中に入れたままの、本があったので、暇つぶしに読んでいる。
読書に耽っていた、グレアムの耳に
ドアをノックする音が聞こえてくる。
「どう」
グレアムが許可を出す前に、ノックをしていた人物が、病室内に入ってくる。
「礼儀正しいのか、正しくないのか
わからないなそれだと」
グレアムは病室内に入ってきた、人物に親しげな、口調で声をかける。
その人物は、大きな男であった。
2メートル5センチを超える身長に、体重は140キロという、まさに巨人だった。
ふちなしのメガネに、鼻の下に綺麗に整えた少し伸ばした口ひげが生えている。
特注の白衣を着てる、その男は目を凝らしながら、グレアムの全身を見渡す。
「大した怪我がないようで、何よりだ
グレアム」
男はグレアムの様子を確認し終えて、安心した。
「見舞いに来るのに、手土産の1つもなしなのか、エド」
グレアムは、読みかけの本を閉じると、少し非難するような、感じで
でも顔は普通に笑いながら、見舞いに来た男の名を呼ぶ。
見舞いに来た男は、エドモンド・ウェイン・ゲイシー(通称エド・ゲイシー)でグレアムと同じく、アーノルド准教授の教え子で、グレアムの無二の友だった。(ちなみにグレアムには他に友はいない)
「入院するつもりはないだろうに」
エドは、苦笑混じりにそう言うと、
グレアムが、ベッドの上に置いてる
本を目にとめる。
「珍しいな紙の書籍とは、電子書籍じゃないのか?」
「電子書籍は、味気ないんでね。
まぁ、本棚がいらないのは助かるんだが、お気に入りは紙の本で購入する事にしてるんだ」
「そうなのか」
図体がでかくて、ただでさえ部屋を
狭く感じるエドは、持ち運びに便利な上、収納ペースに困らない電子書籍派なので、友のそのこだわりはわからない。
「まぁ、俺のお気に入りは電子書籍で
ダウンロードできないものも、あると
いうのもあるがね」
グレアムはベッドの上に置いてる本を、病室内に備えられている、冷蔵庫の上に置き直したあと。
冷蔵庫の中から、缶コーヒーを
二本取り出すと、そのうちの1つをエドに投げ渡す。
「すまんな」
エドは、缶コーヒーを開けながら、礼を言って、飲み始める。
「そこに椅子がある、座ってくれ
お前に立たれてると、威圧されてるみたいで、落ち着かないんだ」
グレアムは友に、見舞い客用の椅子があるのを、手のひらで差して、教えた。
「わかった」
エドは、片手で、缶コーヒーをもったまま、イスを用意すると座った。
「それで、計画はどうなってるエド?」
グレアムは、着席した親友を見た後、
自分も缶コーヒーを開けて一口飲んで
話す。
グレアムが、謹慎中でありながら、UNASA本部に来たのは、実は
親友のエドに呼ばれたからだ。
そのためグレアムは来たのだ。
見つかったら不味い事に、なると想像はしていたが、まさか殺されかけるとはグレアムも思っていなかった。
(危ないところだった。
次からは、万一に備えて薬を携帯しとかないとな。
薬さえあれば、遅れを取る事など、ないからな)
「准教授が計画を急がせろと言ってきた。その事をお前と相談しようと思ったんだ」
エドは、めんどくさそうに、今回呼んだ訳を話した。
「……それについては、言った筈だが、まず俺の謹慎を解いてからだと
」
物思いに耽っていたため、問いかけに
少し遅れてグレアムは、答える。
「その謹慎を解くには、自分がトップにならないと、無理だと准教授は言っている」
エドは、困った顔で准教授の意思を、グレアムに伝える。
2人が准教授と呼ぶのは、自分達の
師である、アーノルド准教授の事である。
太っ腹で、よく飯を奢ってくれたりするのだが、野心家で辛抱がない、困った人でもある。
「あの豚が……俺が謹慎になったのに、ほとぼりを冷ますって、頭はないのか!!」
自分の師である、准教授を口汚く
グレアムは、罵る。
グレアムにとって、准教授はかつての
教えを受けた、人に過ぎない。
グレアムは既に、アーノルド准教授を超えたと思っている。
いや、ローレンス教授すらも超えたとグレアムは、思っていた。
グレアムは自分こそが、本部研究所の
トップに立つべきと思っていた。
とはいえ、若造がそう簡単にトップに立てるとは、思っていなかった。
そこで、アーノルド准教授を隠れ蓑にして、研究を進め、研究所内での発言権を得ていたのだ。
自分達が非道な実験をしても、最悪アーノルドのせいに出来るという、打算もはたらいた。
とはいえ、アーノルドも利用されっぱなしという、訳ではない。
アーノルドは、先の死刑囚を使った実験で、責任を追及されたグレアムを庇い、ローレンス教授に頼み込み穏便に済まして貰った後、グレアムに1つの条件を飲ました。
自分を本部研究所の所長にしろと。
つまりローレンス教授を失脚させろと言う事だ。
グレアムはこの条件をのんだ。
エドも同じ条件を受けた。
グレアムは謹慎中のため、表だって動けないので、アーノルドの紹介でマーズファイトの手術を施す闇医者になり、優秀な戦士を集めるのと、自身の研究を発展させるために。
エドは、ローレンス教授の弱点を探るため、表向きはローレンスの助手の1人になって、働いていた。
アーノルドは、ローレンス失脚後に自分が後釜に座れるように、UNASA上層部への裏工作と、マーズファイトの闇医者になった、教え子のために、手術用の被験者と、手駒になる研究員を集めた。
「チャンスが来たからな、准教授が
いきり立つのも無理はない」
「有袋類型の哺乳類MOの新薬実験だったか?」
「そうだ准教授は、これで実験が失敗したら、ローレンス失脚は間違いなしと言っていた」
「失敗じゃなく、失敗させるだろ?
」
グレアムが嫌みを込めて言い直す。
アーノルドの正確な意図を見抜いているのだ。
「そう准教授の思い通りにいくのか?」
「新薬実験の責任者は、ジェフリー・スミスだ。
いずれ義理の息子になる、男の失態となれば、ローレンス教授もただでは、すまないだろうというのが、准教授の考えだ」
エドの説明を聞いて、グレアムは
なるほどと呟いた。
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2人が話し出して、30分が経っていた。
太陽の日差しが少し弱くなってきていたが、室内の二人には関係なかった。
「新薬実験の失敗となると、被験者の暴走が一番重い責任になるか」
グレアムは顎を撫でながら、自分の思う事を言う。
「明日の午後二時から新薬の効果を試すための、クローンテラフォーマーとの模擬戦が予定されている。
これを利用しない手はないぞ。
グレアム」
「そうだな……被験者はアルバルド・ローレンスだったな」
グレアムが、エドに確認する。
「ああ、しかも明日は、火星探索チームの1班、二班の主要メンバーの殆どは
グランメキシコ内のリカバリーゾーンで、実戦訓練らしい。
リカバリーゾーンの自然が、火星の
大地に似てるからだそうだ」
「つまり残るのは、被験者のアルバルド・ローレンスと一部のクルーだけか」
誰も来ない、病室で2人は悪巧みを続ける。
病室内を重い空気が漂うが、悪巧みに夢中な2人は、特に気にならない。
もし別の第三者がここに来たら、何だか嫌な感じと思うだろう。
「そう言うことになる」
「それにしても、ジェフリー・スミス
が新薬開発の責任者とは、偉くなったものだ」
「人が良いぐらいの、ぱっとしない奴だがな」
「だが、どんなつまらない仕事でも
手を抜かずにしっかりやる。
そこがローレンス教授に好まれたんだろう」
グレアムはほくそ笑みながら、ジェフリー・スミスの顔を思い浮かべる。
「珍しいな、グレアムが人を誉めるなんて」
「心外だな友よ。
俺は尊敬出来ると思ったら、例え赤子にでも敬語を、使うぐらいだぞ」
「それは知らなかった。
で具体的にどうする?」
「これを使う」
グレアムは、本を入れていたのとは、別のポケットから哺乳類型MO用の
フィルム型の薬を取り出した。
「これは?」
「俺が作った。
MO手術の戦闘能力を数倍に高める、秘薬だ。
この薬を使ったものは、過剰接種したように、完全変態し自我を失って
暴れる、目につく者を片っ端から殺すって寸法だ」
「そういや実験には、新型の薬が上手く機能しなかった時、ようにクローンテラフォーマーから、アルバルドを守るために、3人手術を受けたクルーが付く。
それを襲わせるのか?」
エドは、グレアムの計画に戦慄を覚え冷や汗をかいた。
(恐ろしい奴だ、そこまで大事を
准教授は望んではいないだろうが)
まぁ、ローレンス失脚さえ出来たら、文句は言うまいとエドはそう思う事にする。
「よしんば、アルバルドがクルー達を
殺せなくても、クローンテラフォーマー達が、訓練中襲ってきたら
ただでは済むまい」
悪そうな笑みを浮かべて、冷たい声でグレアムは喋る。
「とはいえ、クローンテラフォーマーには、安全装置が付いてるぞ」
エドが言う安全装置とは、クローンテラフォーマーの急所に埋め込まれている、小型爆弾の事だ。
訓練中には、万が一に備えて、被験者が殺されそうになったら、遠隔操作で
それが爆発して、レフェリーストップが掛けられるようになっている仕組みだ。
まぁ一部のロシアのクルーの中には
緊張感が出ないと言って、付けないクルーもいるそうだ。
「だから、准教授が用意してくれた駒を使って、解除させとくんだ。
後、そいつには、新薬の中味を、俺の作ったこの薬と入れ替えて貰う」
「わかった、伝えておく」
エドはグレアムの、依頼を快諾する。
ちなみに駒とは、アーノルドが弱みを握って、使っている研究員やUNASA職員の事だ。
「事が終わった後、駒を始末しないと、いけない。
マーズファイトの闘士を何人か用意しとこう。
何なら失脚なんて、まどろっこしい事しないで、ゴキブリ共を訓練室から、
出して、その混乱に乗じて暗殺してもいいしな」
「あまり乗り気でないと思っていたんだが、どういう風の吹き回しだ?」
エドは、先ほど准教授を豚と罵っていた、グレアムの態度を思い出し不思議がる。
「まぁ、時期尚早と思うが、准教授が
研究所所長になれば、俺たちにもメリットあるからな」
「なら、暗殺作戦に切り替えるか?」
エドがグレアムに、冗談混じりに、聞く。
「まぁ、魅力的な提案だが、リスクもあるからな。
とりあえず暴走事故を起こす手で行こう
でも、駒を始末するのは、確定だから、闘士を用意するのは、変わらないがな。
上手くいきそうなら、そっち路線に変更って感じで良いだろ」
「なるほど。駒の始末をさせる闘士の数は」
エドが政彦と、作戦を練り上げていく。
「闘士の数は、駒を一人始末するぐらい1人で充分だが、暗殺作戦に切り替える時に備えて、3人用意してほしいな」
「わかった。准教授が出張にかこつけて、マーズファイトの興行を見に言ってるから、連絡して頼んでもらう」
「待った、1人だけ、絶対に加えて欲しい闘士がいる」
「ほう〜誰だ?」
エドは、自身もエキシビションマッチで、マーズファイトに参加する事もあるので、強い闘士の名は知っているので、興味を持つ。
「A級闘士のゼンだ」
エドは、ニヤリと笑いながら、その名を告げる。
「あの男か。
未だ負け知らずだが、奴のベースは確か犬だったはず……」
エドが意外な名前が出たと思い、
首を傾げる。
弱くない、だがマーズファイトには
他にも強い闘士はいる。
エドが知るなら、S級の隼人、R級のバビル、あるいは引退したが、R級の総司とかがいる。
「犬だが、弱いとでも?」
「そんなことはない。
俺のベースからしたら、犬は天敵だ
犬は強いよ」
エドが慌てて、グレアムの言った事を手の平を振りながら、否定する。
「それに執念深いしな。
あのゼンって闘士、前に見た時目に狂気を宿してた。
ああいうのは、戦場じゃ強いぜ」
グレアムが自信満々に、ゼンを押す。
友の目に狂いがあるとは、エドは思えないので、エドは、グレアムの注文を
伝えるため、携帯電話を取り出して
准教授に電話をかける。
病院では電話は禁止だが、個室だし
気心の知れた友と2人っきりなので、
エドは、気にしなかった。
(明日は、楽しい1日になりそうだな)
エドが電話を掛けるのを、見ながら
グレアムは、エドが来るまで不機嫌だったのが、嘘のような上機嫌になっていた。
悪い、悪い奴らがいる。
(*_*)