異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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こんにちは、いつもより遅れましたが最新話投稿します。
どうぞ( ^-^)_旦~


32話 野心

グレアム達が、病室で悪巧みを終えた

2時間後

 

「いったい何の呼び出しなんだ!!

支配人は」

 

シャワーを浴び、食事をしていたゼンこと、徳永善治郎は不機嫌を隠そうともせず、激しく足踏みしながら支配人室に向かっていた。

理由は簡単、食事中にいきなり、この

サニープールのマーズファイト闘技場の支配人に、部屋に来るように呼ばれたからだ。

腹が満たされていない、善治郎は空腹感に耐えながら、歩く。

時たま腹がぐぅーと鳴る。

 

「くそ、試合後は腹がいつも以上に、

減るってのに、お預けとは……」

 

善治郎は途中まで、食べていたチキンやハンバーグを思い浮かべ情けない気持ちになる。

本当は今すぐ食事を再開したいが、試合出来て儲ける事が出きるのも、支配人が試合を組んでくれるから、文句は言えない。

それに、こういう呼び出しは今日が初めてでもなかった。

昼間に呼び出され、支配人のボディガードをしたことも、一度や二度ではない。

 

(とはいえ、今すぐ来いってあまりないよなぁ。

厄介な頼み事でなきゃ良いが)

 

善治郎は、心の中で密かに願いながら、自分を待つ支配人の元に向かった。

 

 

 

「支配人。

ゼンただいま到着しました」

 

自動ロックされている、支配人室の前に到着した善治郎は、扉の近くにある

スピーカーで中にいるはずの、支配人に呼びかけた。

 

ゼンと言うのは、善治郎の闘士としての名、闘士名で親しい者以外は

本名の善治郎を知らないので、普段からこの闘士名を善治郎は使う。

 

まぁこれは善治郎に限らず、マーズファイトの闘士は皆、闘士名を日常でも使う。(中には本名を闘士名に使う闘士もいるが)

 

善治郎が、呼びかけしばらく待つと、

ロックされている、扉のロックが解除され、その解除音が廊下に鳴り渡る。

 

入ってこいという、合図だ。

 

「失礼します」

 

呼び出しておいて、挨拶1つ寄越さない、支配人だがいつもの事なので、

善治郎は敬意のかけらもない、敬語で

断りを入れると支配人の部屋に入る。

 

部屋に入ると、支配人以外に3人の人間がいた。

そのうち支配人を入れた3人が横一列に、立っている。

後の1人は、汗を拭きながら、ドカッと足を投げ出してソファーに座っている。

 

全員が、入ってきた善治郎に目を向ける。

これで善治郎を入れて、部屋の中にいるのは5人ということになる。

 

そのうち善治郎が知っているのは、3人、横一列に部屋に立っている、男たち。

列の真ん中に立っているのが、痩せた体型の男、年は30半ばぐらいか、

不健康そうな病的に白い肌をしている。

この男が、サニープールのマーズファイト闘技場の責任者である、支配人その人だ。

支配人は、いやらしそうな笑みを浮かべている。

次に左隣に立っているのは、十代後半の若い日本人の男。

彼は、人懐っこい笑顔を善治郎に向けている。

最後に右隣に立つのは、手足がとても長い黒人の男、無愛想な無表情で

善治郎を見ている。

 

(むつおと、ダイロンか……この2人も呼んだのか、嫌な予感しかしねぇなぁ)

 

2人とも、A級とS級の闘士だ。

ボディガードぐらいなら、自分も入れて、3人のうちの誰かがいれば事足りるはずだ。

 

(とはいえ、俺に拒否権なんてないけどな)

 

善治郎は、開き直って、成り行きに任せるしかなかった。

 

 

 

「ゼン、すまんな急に呼び出して」

 

真ん中に立っていた、支配人はゼンに近づくと、その両手を握る。

 

「いえ、それで支配人ご用とは?」

 

「その事なのだが……」

 

支配人は、そう言うと1人ソファーに座っている人物を見る。

 

「支配人、あの御仁は?」

 

善治郎は、ソファーに座る人物を見る

四十代半ばか、五十ぐらいのビール腹をした、でっぷり太った男だ。

頬も、垂れており、顔はむくんでる。

醜く太ったデブだが、着てるピチピチのスーツは、一目見て、高級品とわかる代物だし、腕に付けてる時計も

これまたブランド品だ。

支配人の、態度を見ても、VIPであることは間違いないだろう。

 

(嫌な予感、的中か)

 

善治郎は支配人、あるいはこのVIPの男から、どんな厄介事を持ちかけられるのかと、思うと空腹とは別の意味で胃が痛くなってくるのだった。

 

──────────────────────────────────

長時間での車の移動というのは、27世紀の現在、科学の発展により、オートパイロットになっても、変わらずつらいものである。

移動中の車の揺れに、身を任せながら、善治郎は思った。

 

あの後、支配人に紹介された、VIPの名は、アーノルド准教授と言った。

紹介されたアーノルドは、宜しくと一言だけ挨拶すると、後の話は移動しながらだと、言って、支配人を除く

3人を車に乗せたのだ。

現在、アーノルドの青塗りの、キャンピングカーは高速道路をオートパイロットで走行中である。

 

「さて、まずは乾杯といこう」

 

何の事情説明もなく、3人の闘士を

車に乗せたアーノルドは、ワイングラスとワインの入った瓶を両手に持ちながら、朗らかに笑う。

キャンピングカー内の、食事用のテーブルの上には、ハムやソーセージやサラダ、サンドイッチなど簡単な料理が並べられている。

テーブルは四角で、アーノルドが1人だけ、善治郎の反対側に座り、善治郎達は3人で並んで、アーノルドの反対側に座っている。

ワインとグラスを、両手に持つアーノルドを、善治郎は冷めた目で見る。

むつおは、アーノルドを見ないで、並べられた、料理を1つ、1つ見て物色し、ダイロンはワインボトルを無言でじっと見ている。

 

アーノルドは、ワインボトルをテーブルの上に、おきグラスを全員分配る。

 

「アーノルド准教授。

すまないがアルコールを頂く前に話を聞きたい」

 

 

ワインをグラスにつごうと、していた

アーノルドを片手を広げ、ダイロンが止める。

 

「そうかね」

 

アーノルドは渋々、注ぐのを止めると

緑色のワインボトルをテーブルに置く。

アーノルドとしては、飲みながら話をしたかったのだろうが、計画の要になる闘士の機嫌を損ねる訳にはいかないので、仕方ない。

 

(せっかく、用意した高級ワインなんじゃが、仕方ない。

これもローレンスを失脚させるためじゃ)

 

アーノルドは、気を取り直して

1人、1人の闘士達の顔を見わたす。

支配人から、聞いた話によると

日本人の若い2人の男は、哺乳類型で

黒人の手足の長い男は、昆虫型との事だ。

3人ともマーズファイトでは、未だ無敗で、アーノルドも3人の試合は見た事があるので、腕については疑っていない。

 

ほんとは、もっと闘士を借りたかったが、多すぎても侵入させるのに、手間がかかるので、これぐらいがちょうど良いのかもしれない。

 

「では、君達を呼んだ理由を話させて貰う」

 

アーノルドは大物ぶって、空咳を1つして、もったいつける。

 

そんな、大物どころか小物感満載の

様子を見て、善治郎は厄介な依頼人のようだと思い。

睦男は早く言ってよと思い。

ダイロンは、さっさと目的地に着けと

思いながら、次の言葉を待つ。

 

「明日君達には、UNASA本部に乗り込んで貰う。

そこでUNASA本部MO手術研究の最高責任者ジェラルド・ローレンスを暗殺してほしい。

またこの時、今から見せる計画書に

書かれてる、研究員も消してほしいのだ」

 

アーノルドはそこまで言ったあと、

件の計画書なるものを、テーブルの脇に置いていた鞄から、取り出して

皆に人数分配った。

 

──────────────────────────────────

 

「たった3人でUNASA本部に、乗り込んで人を暗殺せよと、無謀だな」

 

アーノルドの話を聞いて、真っ先に返したのは、黒人のダイロンだった。

支配人に頼まれて、アーノルドに

協力している彼に、アーノルドへの遠慮はない。

鋭い口調で、アーノルドを非難する。

 

(やっぱ嫌な予感的中か)

 

善治郎は、頭の中でアーノルドがさっき言った言葉を思い出す。

 

UNASA本部に乗り込んで、UNASAの技術部門の責任者を暗殺しろ。

 

(つまり、俺たちを出世のための、道具にしようって訳か)

 

ブクブク太った、アーノルドを善治郎は観察する。

 

(とはいえ、支配人が協力する以上、相当大きな見返りがあるんだろうなぁ。

出来ればそのおこぼれに預かれるなら、少しはやる気も出るんだが)

 

 

「暗殺する人って悪い人なんですか?」

 

18歳とこの中では最年少の、睦男が

的外れな意見を言う。

まぁ仮に悪人なら、暗殺しても心が痛まないとでも、思ったのだろう。

 

「悪人じゃよ。

それに、ローレンス教授がいなくなれば、君達のマーズファイトの興行にももっと全面的に、協力出来るようになる。

例えば、UNASA本部に来た手術希望者をそちらに、まわしたり、UNASA本部の手術被験者を、マーズファイトに参加させたりとか、出来るようになるんじゃ」

 

アーノルドはほくそ笑みながら、自分がUNASA本部の技術部門のトップに立てば、有益かを話し続ける。

 

(後、あんたの出世にもつながるだろ)

 

心の中で、アーノルドが語らない、本心を付け足して、善治郎はアーノルドの熱弁を右から左に流しながら、計画書を読みふける。

計画書は綺麗にまとめられ、また絵などを織り交ぜて、善治郎達の役割分担を細かく説明されている。

自分の自慢や、ローレンス教授への

憎しみなどを、感情的になって話している、アーノルドの支離滅裂な話よりこっちの計画書の方が、わかりやすい。

 

(これを作ったのは、准教授とは違う別人だな。

この計画書読むだけでもわかる。

かなり出来る奴だ)

 

善治郎が読んだ通り、それはグレアム・ヤングが作ったものだった。

グレアムは、暗殺は最終手段か、やれたら殺るぐらいにしか、考えてなかったが、アーノルドにその案を伝えると

アーノルドは暗殺を第一目的に変えた。

 

計画書によると、闘士達はUNASA本部近くにある、アーノルドの家に今夜集まり、そこでアーノルドの教え子である、グレアムとエドモンドの2人と

合流する事になっている。

 

(薬を暴走させ、その混乱に乗じて

訓練用のテラフォーマーを、檻から出し、大混乱を起こさせテラフォーマーまたは他国のスパイの仕業に見せかけて暗殺か……凝ってるな)

 

善治郎は、計画書を読み終わる。

 

「とにかく頼むぞ。君達の働きに

私とマーズファイトの未来がかかっているのだ」

 

まだ話し続けていた、アーノルドがそういって締めくくった。

だが、まともに聞いていたのは、無愛想に口を結んで、腕組みしているダイロンだけで、睦男に至っては、計画書を立て、その裏で携帯を操作している。

 

(学生か)

と心の中で、善治郎は、突っ込んだが

そういえば睦男は、まだ18だったなぁと思う。

 

善治郎と睦男が知り合ったのは、一年前だ。

当時、A級に上がったばかりの、善治郎に有望株だといって、睦男の教育係に

されたのだ。

手術を受ける前から、剣道に、居合、古流剣術まで、習っていた睦男は

善治郎の指導の元、メキメキと腕を上げ、今では師である善治郎と同じ

A級闘士である。

両耳にピアスを付け、童顔の顔に

薄く染めた茶髪の髪を、短く整えている。

ちなみにダイロンは支配人と同い年の35歳独身だ。

 

 

 

「なるほどつまり、そちらと協力して

UNASA本部のローレンス教授を、暗殺すれば良いと言うわけか」

 

1人ちゃんとアーノルドの話を聞いていた、ダイロンが要約して纏めてくれる。

 

 

「そうだ。

わたしの弟子たちが、騒ぎを起こすので、その隙に頼む」 

 

アーノルドが、楽しげに嗤いながら、

言う。

既に、所長にでも成った自分でも、思い描いているのだろう。

 

「わかった」

ダイロンが、無愛想に返事し

 

「は〜いわかりました」

睦男が軽い感じで答え

 

「了解」

 

善治郎が事務的な口調で答えた。

 

『後、15分で目的地に到着です』

 

オートパイロットに、組み込まれている案内の自動音声が聞こえてくる。

 

 

自動音声が告げた通り、15分後車は

アーノルドの自宅に着いた。

時刻は夜、八時を少し過ぎた頃だった。

 




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