今回はちょっと長いです。
それではどうぞ( ^-^)_旦~
SMO33話
ピピッと、小さな電子音が鳴り
夜9時になったことを告げる。
「もう、こんな時間か」
政彦は読みかけの本を閉じると、時計を見た。
政彦が現在いるのは、UNASA本部近くにあるビジネスホテルの一室だ。
ローレンス教授からは、我が家に泊まってくれても良いと言ってくれたが、そこまで世話になれないと言って、断ったのだ。
その時何故か知らないが、ジェニファーが酷く残念そうな顔をしたのだが、政彦は妙だなと思っただけだった。
なのでUNASA本部近くの比較的安い
このホテルに宿泊したのだ。
時計で時間を確認した政彦は、そろそろ汗でも流そうと思って、浴室に向かおうとするが、足を止める。
部屋の外側から、扉をノックする音が
聞こえて来たからだ。
コンコンとノック音の後、声が続く。
「兄貴ちょっと良いか」
「克弘か」
扉の向こうにいる、弟の名を呼ぶと
政彦は、止まっていた足を浴室ではなく、扉の方へと動かした。
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「こんな時間に訪ねてくるとは、珍しいな。
女が待ってるんじゃないのか?」
政彦が、からかうような口調で言いながら、備え付けの机の上にコーヒーを置き、自分用のミネラルウォーター
のペットボトルも置くと、弟が座る
反対側のソファーに座る。
「そんな余裕ねぇよ、明日の朝には
グランメキシコに行くんでね」
克弘が、コーヒーに口をつけながら、
だるそうな感じで言う。
肩を落としており、口だけでなく
本当にけだるそうだ。
「グランメキシコだと、まさかアネックス日米合同第一班と二班の合同訓練に参加するのか?」
政彦が、驚いた顔を浮かべて、克弘を見る。
アネックス第一班、第二班による
グランメキシコのリカバリーゾーンで行われる、合同訓練はUNASA上層部も
視察に赴く、重要な訓練だ。
本来なら、第一班、第二班のメンバー全員で行うはずだったのだが、新薬開発を早くしたい、上層部が
新薬の実験も急かしたので、予定が被ってしまい、第二班の班員で副長代理を勤める、アルバルド・ローレンスと彼の、同僚で彼と仲のよい、オーストラリア固有種をベースに持つ2人の男が、その実験のサポートにつくため
留守番をする。
さらにおまけで、訓練でトトカルチャをやっていた、日米合同第二班班員、ジャレッド・アンダーソンが、罰として合同訓練不参加と始末書の提出及び、4つある訓練場の清掃を命じられており、これもお留守番だ。
合同訓練は2泊3日で行われる予定で、リカバリーゾーン内に安全装置の付けた、テラフォーマーを放出する、訓練も予定されている。
火星での実戦を想定した、かなり本格的な訓練内容になっている。
「新薬開発の話を、ローレンス教授や
スミス助手と話してたら、小吉艦長が
来て、克弘君も明日の訓練に参加しないかって、言われてさ。
あの人、押しが強いんだ断り切れねぇよ」
はぁ〜と克弘が溜め息を吐く。
(なるほど、小吉さんらしい)
恐らく小町の事だ。
ローマで手術を受けた、知人の息子の
実力に興味を持ったのだろう。
(あるいは、克弘からローマのMO手術の技術がどういうものか、見るのが狙いかもな)
まったくと政彦は飽きれる。
(小吉さんは、アネックスの総隊長
だというのに、クルー全員の能力を
把握していないとは……それもこれも
各国が自国の班員の、特性や能力を秘密にして少しでも事を有利にしようとしているからだ)
馬鹿馬鹿しいと政彦は思う。
(総隊長が自身が預かる戦力が、どれほどかわからないなど、これでどうやって敵のホームである、火星で任務が出きるのだ)
政彦が苛立ちのあまり、自分の水の入った、ペットボトルを強く握り締める。
「兄貴どうしたんだ?」
「どうした」
克弘に妙な顔で見られた政彦は、手のひらが冷たい事に気づく。
自分の手のひらを見ると、手で潰した
ペットボトルの中に入っていた水が
飛び出して自分の手に掛かっているのに気づく。
「ほら」
手を濡らした兄のために、克弘は
テーブルの真ん中に置いてる、ティッシュ箱を、政彦の手元に寄せる。
「ありがとう助かる」
政彦は早口で礼を言うと、濡れた手を
拭きだす。
「どうしたんだ、らしくないぜ」
克弘が気遣うような、優しい声で問う
「少し考え事に夢中になってな
気づかなかった」
政彦は気まずそうに言うと、拭き終わったティッシュをゴミ箱に捨てる。
「考え事って?」
「小吉さんも大変だって事だ」
「艦長が?」
兄の言った意味が、よくわからず
不思議そうな顔を克弘はする。
「そうだ。
恐らく俺が思うに、小吉さんがお前を参加させたのは、1つお前の実力を
知りたい、もう1つはローマの手術技術を、知りたいだろう。
お前はローマでMO手術を受けてるからな」
「手術は受けたけど、俺はローマ班員じゃないぜ」
参ったなぁと、克弘が困った顔を浮かべて眉をひそめる。
「班員でないからこそだ。
班員なら、他国の者にMO手術の特性を見せるなと、命令できるが
班員でないお前は一般人、その限りじゃない」
「なるほどそれで、ローレンス教授やスミス助手が俺に、詳しく話を聞きにきたのか?」
納得と、克弘は後頭部で腕を組む。
「ふざけた話だ。
六カ国全てが、協力しなければならないのに、どの国も他国に先んじようと
うまい汁吸おうと、スパイを放ったりと裏でこそこそと動いてやがる。
どの国もMO手術の技術で、利益を独占したいそればかりだ……愚者共が
これで先進国の首脳陣だと言うのだから、笑わせる」
怒り心頭の政彦は、ペットボトルを持ってない方の反対側の手を拳槌の形にして、机を叩く。
「落ち着けって兄貴、愚者共は言い過ぎだぜ」
落ち着かせようと克弘が、政彦をなだめにかかる。
「言い過ぎなものか!!、愚者を愚者と
言って何が悪い。
MO手術のもたらす利益などという、些末な事にとらわれて、大局が見えないなど俺から言わせれば政治家失格だ」
政彦はそこまで一気にまくしたてると、握りしめていたペットボトルの残りを一気に飲み干し、手で口を拭う。
「ふぅ〜。
MO手術による、利権がどれほど凄いのかは、俺にはわからん」
飲み物を飲んで、少しは気が晴れたのか、政彦の口調がゆっくりで穏やかになる。
「だが、どれだけの利益をMO手術が
産み出しても、地球そのものが駄目になれば、結局人類は終わりだ」
「地球が終わりって、大げさだな 兄貴は」
「大げさなどではないさ。
リカバリーゾーンは知ってるな」
「ああ、10数年以上前に人の住まない土地を作ったら、その土地に応じて
先進国が多額の援助をするって、国際法だろ」
克弘が、要点だけ簡単にまとめて答える。
「そうだ。
先進国は自然を増やし、地球の資源を増やそうとした。
だが、何も悪いこともしてないのに、強制的に先祖代々の土地を奪われるのに、その土地に住む者は反発し、やがて争いとなった」
政彦がかみしめるように、語る。
つらい話を、やむを得ずしているようだ。
「土地を地元民に、返そうとした
ゲリラ達と、政府軍の戦いだな。
ゲリラ達は戦力差を埋めるため、
ついには当時の技術、バグズ手術で
改造人間を造るまでにいたった」
克弘が人類の醜い行いを、口に出す。
2人の歴史語りは続く。
「闇バグズ手術だな。
まぁこのゲリラ戦に、火星からやってきたテラフォーマーなどが、関わっくるんだが、それは本題じゃないから
省く。
問題はゲリラ達でもなく、政府の対応だ。
ゲリラ達が勝って、地元民に取り返してやった土地を、政府は取り戻すために地元民達を皆殺しにした。
しかも土地が荒れないように、中性子爆弾で人だけ皆殺しにしてな」
政彦が怖い顔で、吐き捨てるように言う。
人類の愚行に、怒りを現している。
「ああそうだったな。
大人も子供も関係なしで、皆殺し。
先祖代々の土地に住みたいという
ささやかな願いすら、踏みにじられる
酷い時代だ」
やるせない気持ちで、克弘は呟く。
「その酷い行いは、今も続いている。
10数年前でも、それだぞ。
資源の枯渇は、現在もっと酷くなっている。
先進国とて、例外じゃない。
むしろ先進国の方が、発展途上国より
ダメージは大きいな」
「何が何でも、火星の土地が人類には
必要って訳か」
真剣な顔で、克弘は兄の話を聞く。
「数百年かけて、あの星を緑溢れる
星にした、ゴキブリ達には悪いがな。
彼らは悪くはないが、人類が生き残るためだ。
滅ぼさせねばな」
鋭い目で弟を兄は見る。
その瞳に、断固たる信念が窺える。
(相変わらず頭の中にあるのは
火星のテラフォーミング計画を成すことだけなんだな)
それ以外には興味ない兄を克弘は
複雑な気持ちで見る。
(兄貴にとってテラフォーミング計画を、成すことが人生の目標だもんな)
「克弘、さっきからずっと見つめているが、何か言いたい事でもあるのか?
」
ずっと無言で自分を見ていた、克弘を
政彦は、怪訝な様子で聞いてくる。
「いや……兄貴って変わらないなって
頭の中にあるのは、テラフォーミング計画を成功させたいって事だけだ」
克弘が呆れた声で言う。
「格闘技術鍛えたり、射撃訓練したり
マーズファイトに参加したり、ああ
読書は違うな。
でもほとんど火星のテラフォーミングの為の事ばかりだよな。
他の事に興味とかないのか?」
「他の事とは?」
「例えば恋とか、兄貴、彼女いない歴=年齢だろ」
克弘が、それで良いのか?
と続ける。
「必要ない。
それに靡くか、靡かないかわからない女を、下手な鉄砲数打ち当たると追っているほど、俺は暇ではない」
弟のロマン溢れる問いに、政彦は
身も蓋もない言い方で返す。
強がりで言ってるのでないのは、その顔を見れば、克弘にはわかった。
「寂しくないか?
女とやるのは気持ち良いぜぇ」
克弘が、座ったまま、腰を前後に振る。
克弘が、数え切れない女を、よがらせてきた腰遣いだ。
「気持ち良いが、高級料理と一緒だ。
旨いが何が何でも、食べないと
いけないと言うわけではない」
克弘の猥談に政彦は冷たく返す。
一瞬怯みそうになった、克弘だが
頑張って続ける。
そこで、別のアプローチで攻めてみることにする。
「そういや兄貴、ジェニファーちゃんと随分仲良くなってたよなぁ」
克弘は、小町艦長に呼び出しを食らった後に、合流した兄とジェニファーの
距離が縮まっていたのを、思い出しながらからかう。
「親父殿の、親友の娘さんだからな
むげにも出来まい」
当たり障りのない、答えでさらっと
政彦は、受け流す。
他意はないとばかりに。
「ほんとにそれだけか?」
「他に何がある」
「恋人にしたいとか、寝たいとかさぁ〜そういう欲、兄貴にはないの?」
しつこいくらい、克弘がいじってくる。
「利紀じゃあるまいし、己の性欲くらい、コントロール出来る。
俺のモットーは、いかなる手段を使っても火星のテラフォーミング計画を成功させることだ。
この命をかけても成したいと思ってる。
お前たちみたいに、下半身に人格なしがモットーではないのでな」
苦笑いしながら、政彦が答える。
「ひでぇなぁ、相手はちゃんと選ぶよ
女なら何でも言いわけじゃない」
「どっちもいけるだろうが、獣姦も
いけたよな、確か」
先ほどのお返しとばかりに、政彦が
いじり返す。
「獣姦は、やらされただけだ。
もうやってねぇよ。
同性は、年下の可愛い少年ならって
何言わすんだ」
兄の誘導尋問に引っかかった、克弘が
今のなしと大声を上げる。
「別に問題ないだろ。
ズーフィリアであろうと、バイセクシャルであろうとそれは趣味の範囲内だ。
まぁ、ネクロフィリアだとかカニバリズムとかだと、問題も出てくるが。
そうでなければ、セックスのスタイルが人と多少違う程度の問題だ」
政彦が気にするなとばかりに、淡々と答える。
「ほんと、大抵の事じゃ揺るがないよな兄貴は、俺が麻奈美(まなみ)さんとやっても、避妊ちゃんとしろの一言ですましたしなぁ」
信じられないと思いながら、克弘が言う。
「麻奈美さんじゃないだろ。
お母さんと呼べ」
政彦が涼しい顔で、窓の外から見える
夜景を見ながら言う。
「わかってるよ」
克弘が、ふてくされた顔をしながら
了解する。
「で話は戻るけど、兄貴は母親と俺がやってるの見てあの時どうおもったんだよ」
意地悪そうな笑みを浮かべ、克弘は兄の心情を聞く。
「どうも何も、母者の性行為など
物心ついた頃から、よく見てたからな
特に何も思わなかったが」
「本当か?」
「母者も、親父殿もあっちの方は好きだからなぁ、浮気など両方とも普通にやってた。
大方母者に誘われたのだろう、だったら当時10歳未満のお前に、抗うすべはない」
真顔で、克弘の質問に答えた政彦は
何か食べる物でも出そうと言って、立ち上がる。
「お菓子か、パンがあったはずだ。
それよりどうした、昔の事など今更話して」
何かあるのか?と政彦は克弘に問う。
問われた克弘は、話そうか、話すまいか迷い、俯く。
「本題はなんだ?」
立ったままの、政彦が両腕を組み弟を見下ろす。
「兄貴、新薬実験を見学するんだってな。
小町艦長に一緒に合同訓練しないかって、誘われたのに断って」
克弘が顔を上げながら、両手を重ねながら聞いてくる。
「手術を受けてない、俺が合同訓練に
いっても、仕方ないだろう?
周りは改造人間なんだぞ」
「そうじゃないだろう?」
俺はごまかせないぜと、顔にだしながら克弘が、真意を求める。
弟の問うような鋭い視線を、政彦は
瞳をそらすことなく、受ける。
しばらく、2人は睨み合いを
続けるが、やがて政彦が折れ、椅子に座り直すと。
隠せぬかと、自嘲気味に笑う。
政彦は背筋を、ピンと伸ばして、居住まいを正し、仕切り直す。
よほど重大な話何だろう事が伺える。
「克弘……俺は今回の新薬実験で何か起こるかもしれないと考えているんだ」
険しい顔を政彦はする。
冗談や妄想というわけでもないようだ。
あくまで俺の推測なんだが、政彦はそう言うと険しい顔のまま、そう思った根拠を語った。
克弘が政彦の話を聞き終えたのは、およそ1時間後だった。
今回は、訓練と実験を控えた、政彦達の不安を書いてみました。
兄弟の会話ばかりだったんですが、
いかがでしたでしょうか?
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最後まで読んで頂きありがとうございました