それではどうぞ~
さて、ここで時を戻そう。
結果的に、小吉のミッシェル達の派遣は、上策だった。
何故なら、UNASA本部を狙う者達は
早朝からすでに動いていたからだ。
時刻は午前8時、場所はUNASA本部近くにある、アーノルド准教授邸。
一見豪華な洋風邸宅に、見える屋敷だが、家族も知らない秘密の地下室や
隠し部屋がある、いわゆる西洋風からくり屋敷ともいうべき、この豪邸の一室で、7人の男たちが、食事をしていた。
ぶ厚い肉を始め、高級魚料理など、豪勢な料理が、並んでいる。
まぁさすがに朝っぱらから酒は用意してはいないが、紅茶とコーヒーは用意されている。
この屋敷の主の意向だ。
大事の前にせいを付けて欲しいと、アーノルドは食卓に付いた時にそう言った。
そんな豪華料理だが、誰も料理に手をつけてはいない。
長く広い四角のテーブルの椅子に座っている。
席順は、一番奥の真ん中の席に、アーノルドが座り、その左右を弟子である
グレアムとエドが陣取り、左側のグレアムの隣に善治郎、その横にむつお
右側のエドの隣にダイロンが座っている。
いまだに、料理に手を付けないだけでなく、皆の顔は険しい。
それもそのはず、この食事は最終打ち合わせも兼ねているからだ。
料理に手はつけてはいないが、飲み物は飲んでいる、アーノルド准教授が、
皆を見渡しながら、口を開く。
「では、最終確認だ。
各々の役割と装備の、確認を」
コーヒーを啜りながら、アーノルドは
グレアムの方を見て、頷く。
ここからはグレアムが、進行しろという合図だ。
余談だが、アーノルド准教授の長話は
UNASA内では、それなりに有名である。
無論そんな事は、露とも知らない
マーズファイト闘士達だったが、昨晩の顔合わせで、グレアムが優秀なの
はわかってるので、特にアーノルドが
丸投げしたことを無責任とは、思わなかった。
ただ、3人とも実質的なリーダーは
グレアムだと、認識はしたが。
アーノルドに司会進行を、任せられた
グレアムは、椅子から立ち上がると、
全員の顔を見渡す。
「おはようございます。
皆様昨晩はよく眠れましたか?
それでは、准教授に代わって
説明を始めさせて頂きます」
グレアムは、それなりに丁寧な挨拶を
手短に済ますと、早速本題に入る。
「今回のローレンス教授暗殺計画ですが、皆様には3つのチームに分かれてもらいます」
そう言ったグレアムは、作戦の内容を
聞かせる。
グレアムの立てた作戦は、まず
メンバーを3つのチームに分ける。
グレアムと、アーノルドがペアの
第一班、次にエドのみの第二班
ただし、エドはUNASA本部内で
マーズファイト闘士達の第三班と
合流する事になっている。
「グレアム氏、発言良いか」
そこまで聞いた、ダイロンが手を上げる。
「何でしょう?」
「合流と言ったが、余所者の我々が
UNASA本部にどうやって入るのだ?
」
「あっそうか、警備が手薄ってだけで、無いわけじゃないんだった」
ダイロンの指摘に、むつおが問題点に
気づいたとばかりに、強行突破するのと、いたずらっ子みたいな、笑みを浮かべながら、グレアムに問いかける。
2人の同僚が質問したが、ゼンは
発言権を求めるでなく、黙って成り行きを見ている。
無責任ではないし、無茶な強行突破をしようと思っている訳でもない。
優秀なグレアムがその程度の事、考えてない訳はないと、わかっているからだ。
「強行突破などする必要はありません。
そんな事しなくても、UNASA本部には
簡単に入れます」
大丈夫ですと、グレアムは皆を見渡しながら、請け負う。
我に策ありと。
「へぇ~どうするんですか?」
待ちきれないとばかりに、席を立ち、
グレアムの側に、むつおが行く。
ダイロンは、再び席に座り、グレアムの次の言葉を待つ。
エドと、アーノルドは飯を食いながら
聞き耳を立てる。
「マーズファイト闘士である、
皆様には、UNASAにMO手術を
受けに来た志願兵に、なってもらいます」
グレアムは、にっこりと笑いながら、
そう言うと、UNASA本部内への
マーズファイト闘士達の侵入作戦の
全容を話し終える。
それを聞いた、マーズファイト闘士達は好戦的な笑みを浮かべると、
飯にむしゃぶりついた。
最終打ち合わせを終えた、グレアム達は大事の前の、腹ごしらえに入って行くのだった。
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ピピッ
時計の電子音が、午前11時を伝える
ここはUNASA本部内、第二特殊訓練室に付いてる、記録室。
その記録室は、異様な雰囲気に包まれていた。
記録室内に居るのは、2人の技師と
この実験に立ち合うように言われた
日米合同第1班クルー、現在懲罰居残り中のジャレッドアンダーソン
MO手術を受けたジャレッドでは、あるがこの異様な雰囲気の原因は、彼ではない。
この部屋にいる、もう1人の人物が原因なのだ。
『何なんだ、あいつは?』
ジャレッドは、痛いものを見るような
目で、自分たち以外の部屋の住人を見る。
2人の技師達は、手元を動かし、実験記録をとる準備とか、実験の段取りの確認とかしていて、4人目はいなかった事にしている。
いわゆるフル無視というやつだ。
ジャレッドが、呆れるのも無理はなかった。
そのフル無視された、男の格好は
この場に全く似つかわしくないもの。
山でも登るような、ジャンバーの中にごつい強化セラミックプレートの入った防弾チョッキを着け、迷彩柄のズボンを履き、ズボンの脹ら脛辺りが、妙に膨らんでいるところから、種類はわからないが、サブウェポンの拳銃か何かが、足にホルスターで、装着しているのを、軍人であるジャレッドは見抜く。
そして、当然の事ながら、足にサブウェポンを付けるような、者は
肩にショルダーホルスターで、拳銃を携帯してるのも、ジャレッドは気づいている。
しかも左肩だけでなく、右肩もだ。
が驚くのはまだ早い。
腰にはベルトを通して、日本刀が吊され、日本刀を吊してない所には、
スローイングナイフが、何本か吊し
背中には槍を背負っている。
西洋の物ではない。
重火器ならともかく、白兵戦の武器に詳しくない、ジャレッドには、それぐらいしかわからなかった。
頑丈そうな帽子を被り、またジャレッドは気づかなかったが、手榴弾を
防弾チョッキのポケットに幾つか収納もしている。
室内で眩しくもないのに、サングラスも付けているのも、異様だ。
ただのサングラスではない。
サングラス型のCEP
(コンバット・アイ・プロテクション)で砂塵やホコリ、破片、UV
レーザー光線からも眼を守る機能を持つ
強化ポリカーボネート製で、軽量かつ耐衝撃に優れている。
銃弾を受けても、レンズは割れないと
機能実験で証明されている逸品だ。
両手には長い柄と刀身を合わせたら
六尺にはならんという、とても長い日本刀を持っている。
正確には、長巻といわれる、薙刀によく似た武器なのだが、例によって
白兵戦の武器に知識のない、鯱男には
わからない。
鉄ではなく、鉄よりもはるかに強度が高い特殊合金で出来ており、とても重いが、その変人は
「はぁっ!!」
気合いを放ちながら、素振りをしだす。
(勘弁してくれ)
ジャレッドは頭を抱えうずくまり、
技師達は、何も聞こえませんとアピールするかのごとく、耳をふさぐ。
「何やってるんですか!! 政彦さん」
そんな、和と洋の融合した、独特の完全武装した変人が、醸す異様な空気を
血相変えて、乱入してきた凛とした声が断ち切った。
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「見ての通り、警護だ」
武装変人改め太田政彦が、頬を膨らまし睨んでいる、ジェニファーに普通に答える。
素振りしていた長巻きは、仕方ないので壁に立てかけ、目を守るサングラスも似合ってないですの、一言により
外し、胸ポケットに片づけている。
ちなみにジェニファーが、来たジャレッド達は、触らぬ神に祟りなしと、ばかりにその場をジェニファーに任して退出している。
本来なら丸投げなのだが、結果的に2人っきりになれた、ジェニファーは
あまり気にしなかった、政彦も同様である。
「警護って……ボディガードっていうより、戦場にいる兵士みたいじゃないですか」
何も恥じることも、悪びれる事もなく
あっさりと答えた、政彦に一瞬気圧されたが、負けじとジェニファーは突っ込む。
「備えあれば、憂いなしとわが国では言う」
そう言った政彦は、話は終わりとばかりに、顔をジェニファーから逸らすと記録室のモニターを見ようとするが
「話はまだ終わってません」
見れない。
両頬をジェニファーに抑えられ、顔を彼女の方に向けられたからだ。
「いくら何でも、重装備すぎます」
とジェニファーは言う。
政彦は、ジェニファーをしばらく見つめた後、静かに彼女に諭すように、語りだす。
曰わく、この実験は危険性があると
政彦は、UNASAの警備の弱体化
上層部の不在、各国のスパイ達が
暗躍出来る条件は、揃ってると説く。
当初は、記録室内に、異常な格好をした日本人が居ると聞いて、カッとなって飛んできたジェニファーだが、元々頭の回転が早い彼女は、政彦の話を論理的に考え、一理あると
思う。
そうなると、政彦の物騒極まりない格好も気にならなくなり、彼の話に聞き入ってしまう。
「………なるほど、可能性は低いですが、あり得る話ですね」
「そうだ、だから万一に備えている」
「でも、施設内でいきなり重武装したら、テロリストに間違われてもおかしくないですよ」
政彦の言葉に納得はしたが、年上として釘を差すことを、ジェニファーは忘れない。
「それはわかっている。
だが、事を起こすなら、敵は手術を受けている兵かもしれない。
生身の俺では、武装しないと対抗できない」
まぁ奥の手はあるがなと、心の中で付け足すがそれは、口には出さない。
「それは、そうですけど」
「確かに、何か起こる可能性は低いかもしれない。
だがもし事が起こった時、生き残れるのはその可能性を考えて、最悪の事態に備えていた者達だ」
政彦は、しみじみとした口調で言う。
まるで、そんな最悪の事態にあったことがあるという感じだ。
「中学校の時の、通り魔事件の事ですか?」
「それもあるが……常に最悪の事態を想定して動くのは、軍人の基本だ」
「政彦さんは、軍人じゃないですけど」
政彦の言い分に、疑問をジェニファーは向ける。
「火星探索チームに、入れば軍人と変わらないさ」
きっぱりと断固した口調で、ジェニファーを見ながら、政彦は答える。
その声には、並々ならぬ覚悟と、強い意志が感じられる。
「立派な心掛けだな」
話し合う2人の、正確にはジェニファーの背後から、若い男の声が聞こえてきて、会話に割り込む。
ジェニファーが声の聞こえた方を振り向くと、長身の男を先頭に、その後ろに2人の男が横並びに続き、ジェニファーと政彦の元に来る。
先頭を歩く、身長180を超える長身の男はアルバルド・ローレンス。
今日、有袋類型用の新薬実験のモニターを務める、日米合同第二班の班長代理を任されている。
ミッシェルが22歳になって、正式に副長に就任後は、副長補佐になることが
決まっている。
「ジェニファー、彼は?」
鍛え抜かれた体、聞いていた容姿などから、大方の想像は付くが、確信が欲しいとばかりに、彼女にしか聞こえないぐらいの、声で話し掛ける。
「アルバルド・ローレンス、副長代理です。
私の従姉の旦那さんです」
次にジェニファーは、アルバルドの後ろに立っている、短くとがらせた茶髪の男を手のひらで差す。
「アル兄さんの左後ろを歩いているのが、アル兄さんと同じ、有袋類型をベースに持つアイザックさんです」
続いて右後ろに立っている、ニット帽を被って、首にドクロのネックレスを
着けている男を指し示す。
「反対側にいるのも、同じく有袋類型のベースを持つ、ショーンさんです」
「ほう~」
政彦は、アルバルドを感心しながら、
全体を見る。
鍛え抜かれた体、強い意志の籠もった瞳、隙のない身のこなし。
どれも一流どころか、超一流といっても過言ではない。
(さすが、ステイツ。
星条旗は伊達ではないな)
アルバルドという、優秀な人材ですら、代理すぎないと言うことに、アメリカの人材の豊富さ、底知れぬ力に
政彦は震える。
「ジェニーこちらの方は?」
何も言わずに、自分を見回す視線に耐えかねたのか、アルバルドがジェニファーに聞く。
説明してくれと、その眼が言っている。
「アル兄さん、すみません」
アルバルドに、呼ばれたジェニファーは深く頭を下げて、謝ると、すぐに政彦を紹介する。
なお、遅くなったが、兄弟のいない
ジェニファーは、アルバルドを兄のように慕っている。
アルバルドの妻の従姉のことも、姉さんと呼ぶの延長戦で、アルバルドのことも、兄さんと彼女は呼んでいるのだ。
「アル兄さん。
こちらはUNASA日本支部の太田恒彦教授の息子さんで、太田政彦さん。
政彦さん、こちらは火星探索チーム合同第二班の副長代理の、アルバルド・ローレンス、アル兄さんです。
私の従姉の旦那さんでもあります」
「初めまして、太田政彦です
宜しくお見知りおきを、ローレンス副長代理」
「ああ、宜しくな、太田政彦君
俺の事は、アルバルドか、アルもしくはバルで良いぜ」
アルバルドが、軽い感じで、挨拶を返す。
「わかりました。ローレンス副長代理」
政彦は、全くわかってない、返事で
挨拶を終えると、さっき内緒話で、ジェニファーに教えてもらった、後ろにいるアイザックとショーンにも、(太田政彦です)と言って挨拶する。
すると、挨拶された2人は、アイザックです。ショーンですと短い挨拶を返す。
「ところで、ジェニー」
政彦と部下達の挨拶を眺めながら、
近くにいる、ジェニファーに声を掛ける。
「何ですか? アル兄さん」
ジェニファーが返事を返してくる。
返事を聞いたアルバルドは、ジェニファーの側に寄り耳元で囁く。
「ジェニーにも、やっと春が来たんだなぁ~」
手の掛かる、子供が立派になったような親のような、慈愛に満ちた眼差しで見つめながら、うんうん良かったと
アルバルドは何度も頷く。
「兄さん今は……秋ですよ」
一瞬言葉の、意味が良くわからず
見当違いの答えをジェニファーは返す。
彼女が義兄の言葉の意味を知り、顔を真っ赤にして、騒いだのはそれから
5分後の事だった。
こうして、後に政彦の人生に大きく関わる事になる、アルバルド・ローレンスとの初めての出会いは終わった
最後まで読んで頂きありがとうございました。
小説を書いてて、思うのが心理描写と場面の切り替えの難しさです。
特に場面の切り替えは、ちゃんと描写しないと、何がなんだかわからなくなるので、漫画だと短い文と絵ですむんですけどね。
未熟なので、それに対するアドバイスあると嬉しいです。
もちろん感想やその他のご意見も待ってま~す(^-^)
ありがとうございました
(ゝω・)