異端の科学者と忘れられた技術 (凍結)   作:翔馬

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長いです、それではどうぞ(ゝω・)


実験

 

「何だね……君たちは?」

 

 

 

政彦が、アルバルドと対面している頃、UNASAの入り口に3人の来客があった。

1人は2メートル近い背の

黒人で残りの2人は若い日本人。

 

言うまでもなく、グレアムの指示で

志願兵を装ってる、ゼン達3人だ。

3人は警備員に自分たちは、火星のクルーになりに来たと、説明している。

 

警備員達が、どうしたものかと、困ってしまう。

 

「何の騒ぎだ? 」

 

そこへ1人の研究員がやってくる。

黒人の男にも劣らない、巨漢で

白衣の前をはだけさせ、ボタンを止めていない。

 

グレアムの指示通り待ち構えていた、エドがやってきたのだ。

 

「あなたは、昆虫型MO手術担当チームの」

 

エドの事を知っていた、2人いる警備員の1人が、渡りに船とばかりに、エドに近づいていき、事情を話す。

 

ひとしきり聞き終えたエドは、作戦通りの台詞を警備員にはなす。

 

「なるほど事情はわかった……そういう事なら、適性ベースを調べる事にしよう」

 

「よろしいのですか?」

 

「人手はいくらあっても、足りないからね。

ロシアみたいに嫌がる者を、無理やり手術台に載せるような、事はしたくないしね」

 

エドはそう言って、警備員達との話を締めくくると、話が終わるのを待っているゼン達を呼ぶ。

 

「というわけで、君たちを案内させてもらう。

UNASA本部、昆虫型mo担当チームの

エドモンド・ウェイン ゲイシーだ

エドで構わない」

 

エドが昨晩やった自己紹介を、警備員達の手前初対面と思わせる、ための芝居をうつ。

 

「ゼン、日本人だ」

 

「津山睦夫(つやまむつお)

同じく日本人です」

 

「ダイロンだ」

 

闘士達が、エドの芝居に合わせ自己紹介する。

 

エドは3人を満足げに、見てほくそ笑むと、こっちだと言って3人をUNASAの敷地内にエスコートした。

 

─────────────────────────────────

 

「それにしても、アル兄さん早いですね」

 

「早いとは?」

 

からかわれて、まだ顔が少し赤いが

そこそこ落ち着いたジェニファーが

不思議に思った事を聞く。

 

実験開始は昼の二時からだ、まだ11時を少しまわったぐらいで、実験開始まで二時間以上もある。

いくら何でも早すぎる。

逃げ出したジャレッドのように、実験のお手伝いをするのなら、また話は別だが。

 

「実験は2時開始ですよ。

私は、訓練所に不審者がいると連絡が入ったので、確認に来たから、早くきましたが」

 

「ああそういうことか……じつはな」

 

「2時開始予定が、繰り上がって

12時開始になったんじゃよ」

 

アルバルドが、答える前に扉の方から声が届き、ジェニファーの質問に答える。

 

「お父様!! 」

 

彼女の父である、ジェラルド・ローレンスが、2人の取り巻きを連れて、

現れた。

──────────────────────────────────

 

「実験開始を2時間も繰り上げるのか?」

 

ローレンスの言葉に一番最初に、食いついたのは、政彦だ。

 

なぜ予定を変えると、非難を込めた目で、ジェラルドを見る。

 

「そう、にらまんでくれ。

上から立ちあいたいから、早く行うようにと

言ってきたのじゃ。

リカバリーゾーンでの実地訓練の両方みたいそうでな。

スケジュール変更となったのじゃよ」

 

「身勝手な話だな、新薬の臨床実験だぞ。

予定を変えて何かあったらどうするんだ?」

 

 

「何、心配はいらんよ。

うちのスタッフは優秀じゃからのう」

 

ジェラルドはそう言うと、背後に控えている、ジェフリ-を見やる。

 

ジェラルドに目配せされた、ジェフリーはお任せ下さいと一言言うと、自分の隣にいる、不健康そうな男に

薬はと言う。

 

 

「準備はできております」

 

不健康そうな男は、左手に持っている

頑丈そうなケースをジェフリーに手渡す。

 

渡されたケースの中身を確認した、ジェフリーはジェラルドにいつでも行けますという。

 

すると、突如設置されているモニターの電源が付き、1人の男が映し出される。

年は三十半ばぐらいだろうか、白人で

ブランド物のスーツを着ている、灰色の髪の男だ。

政彦はその男の事を知っていた。

確か、UNASAドイツ支部の支部長だ。

親がドイツ政府の大物議員で、その七光りでUNASAの上層部に名を連ねている。

名前は忘れたが。

 

『ローレンス教授、すまないね

だが私も忙しい身なのでね』

 

モニター越しに、形だけ謝ったドイツ支部長は、次にジェフリーが持つケースに注目する。

 

『それが、有袋類用の新薬か』

 

「そうです」

 

『その新薬なら、従来の哺乳類型の

薬より長時間、変態できなおかつ

安価で作れると聞いている

期待しているよ。

薬があるという事は、もう準備出来ているのかね?』

 

「後は、戦闘訓練に使う、テラフォーマーズの安全装置と、訓練を受ける

アルバルド隊員達三名の準備のみです

」

 

モニター越しの相手に、ジェラルドが

報告する。

 

『では、急がしたまえ。

このあと、リカバリーゾーンの実地訓練も視察しないといけないのだ、私は』

 

「わかりました。

すぐにお目にかけます」

 

二時間も予定を繰り上げさせた上に、その上さらに早くしろと、理不尽な要求をする、支部長に対し、丁寧に

答えると、ジェラルドはすぐに実験準備に入る。

その指示は的確で、11時50分には

実験を始めれる準備が整った。

 

────────────────────────────────

「皆ご苦労。それでは、12時より

新薬実験を開始する」

 

ジェラルドが部下たちを労う。

 

「予定より随分早いが、大丈夫なのか?」

 

政彦が隣にいる、ジェニファーに話しかける。

政彦は皆が慌ただしく、実験の準備を手伝おうと思ったが、政彦野格好に皆ビビってしまい作業にならなかった。

仕方ないので、皆の働きぶりを観察していると、ジェニファーが隣にやってきて今に至る。

 

「意外と心配性なんですね、政彦さんは……大丈夫ですよ。

お父様もジェフリーさんも優秀ですから。

それにアル兄さんは、副長代理を勤めていて、戦闘能力は日米合同第二班の

中では、ミッシェル班長に次いで次点なんですよ」  

 

ジェニファーが、杞憂だと笑いとばす。

 

 

「ほう、あの神の子の次に強いと、有袋類にそんな強力なベースがあるのか?」

 

「ベースが強力なのか、アル兄さん自身がつよいのかわかりませんが、アル兄さんのベースはコアラですよ」

 

「コアラ……なるほどな」

 

政彦は理解したような、口振りで

そう言うと、訓練室を映し出しているモニターを見る。

3人同時に使うため、普段の二十メートル四方程度の広さではなく、四方100メートルの大型の部屋を使っている。

 

モニターに映る、アルバルド達は

緊張に顔をこわばらせながら、

アルバルド以外の、2人はフィルム型の薬を握りしめ、アルバルドは、片手に栄養ドリンクでも、入ってそうな瓶を持っている。

 

「新薬は飲み薬か」

 

「ええ、味にもこだわったって、ジェフ兄さんが言ってました」

 

「それ意味があるのか?」

 

 

「美味しい方が飲みやすいだろうって言ってましたね」

 

ジェニファーが指を顎に添えながら、

思い出しながら、言う。

 

「まずくて、吐いたら変態出来んか

一理あるな」

 

なるほどなと、政彦が頷いた。

 

 

実験開始まで後5分

 

 

─────────────────────────────────

 

「何とか間に合ったな」

 

薄暗い、部屋の中に声が響く。

 

僅かに2つだけしか照明がない

その寂しい部屋に、グレアム・バンディがエド・ゲイシーと共にいる。

 

その薄暗い部屋にいる、2人を6つの眼がじーっと見ている。

 

「実験開始時間を、早められた時は、焦ったがな」

 

「3体のクローンテラフォーマーの

安全装置は外した。

残りは実験開始後の混乱の間に済まして、投入すればいい」

 

「駒のやつは、ちゃんと薬の入れ替えやったんだよな」

 

エドが、グレアムに確認を取る。

 

「大丈夫だ、ちょっとすり替えるだけ

子供でも出来る」

 

 

「そうか、なら後はこいつらを

解き放つだけか」

 

 

先ほどから、じーっと自分たちを見てくる、部屋にある檻に入れられている、生物達をエドが見渡す。

 

「じっ」

 

「ぎぃ」

 

「じじ」

 

エドに見られているのに、気づいた視線の主たちは、奇妙な声を上げる。

 

檻の中にいるのは、訓練用のクローンテラフォーマー3体、グレアムとエドが安全装置を外して、細工を施した

者達だ。

 

グレアムとエドは、3体のクローンテラフォーマー達を見ながら、実験開始の時を待つ。

 

実験開始の合図、惨劇の始まりの合図を

彼らは待った。

 

 

────────────────────────────────

 

「時間じゃ、それではこれより

有袋類用moの新薬実験を開始する

」

 

午後12時ちょうど、ジェラルド・ローレンスが実験開始を宣言した。

 

ジェラルドは部下にテラフォーマー解放と命令を出す。

 

命令を受けた研究員が、シャッターの開閉スイッチを押すと、訓練室内に

備え付けられている、シャッターが

機械音を上げ、上昇し開く。

そこから三体のクローンテラフォーマーが現れる。

 

「さ~てこの実験で良いとこ見せて、哺乳類型も捨てたもんじゃないって証明しようぜ」

 

シャッターから出てきて、ゆっくりと自分たち向かって、歩いてくる

テラフォーマー達を、見ながら

アルバルドが笑みを浮かべ軽口を言うと仲間たちを見やる。

 

「3対3か、人間とゴキブリのチーム戦だな」

 

ニット帽を被ったショーンが、首筋に

フィルム型の薬を貼り付ける。

 

「先に行かしてもらう。

人為変態」

 

ショーンが、他の2人に先駆けて人為変態をする。

首筋から電流でも流れたと思うような激痛の後、血流が逆流でもしているのかと、錯覚するほど激しく

流れ、体が人ではなくなっていく。

細胞が激しく活動し、ショーンの体に

みるみる黒い毛が生えてくる。

口から二本の牙が生えてきて、手足の爪が伸び、ショーンの変態が完了する。

ショーンのベースはタスマニアデビル

小さな体に、骨をも噛み砕く強力な顎の力と鋭い爪を持つ。

悪魔の名を持つ、世界最大の肉食有袋類である。

 

ショーンが変態するのに、少し遅れたが、アイザックとアルバルドも変態を開始する。

アイザックはカンガルーの中でも

大柄で凶暴なアカカンガルーにそして

アルバルドは2人と違い、左手に持っている飲み薬を一気に飲みほす。

 

2人が変態する時間を稼ぐため、先に変態したショーンが、ゆっくりと歩いてくる3体のテラフォーマーにすでに向かっている。

 

 

アイザックは腹に袋ができ、尻尾が尻から生えている。

 

 

「がぁぁぁぁ!! 」

 

絶叫の如き雄叫びをあげ、アルバルドが変態していく、両手に猛禽類の如き鋭い爪が生え、体全体に灰色の毛が生え、アイザックと同じく腹に袋が出来る。

両腕はまるでゴリラの腕のように太く

口からよだれを垂らしている。

 

近くで変態を終えた、アイザックは

様子がおかしいと思う。

アルバルドが変態するのは、何度も見てきたが、今までこんな絶叫を上げ変態する事はなかった。

 

「ローレンス教授……アルの様子が、うわぁぁ!! 」

 

アイザックは、続きを言えなかった

何故なら変態を終えた、アルバルドが

突然殴りかかってきたからだ。

目を血走らせながら、拳槌の形にした拳をアルバルドは振り下ろす。

 

「気でも狂ったか、アルバルド」

 

アイザックは、尻尾を使って、後ろに跳んで避けようとするが、アルバルドの鉄槌が彼の頭を砕く方が先だった。

 

アイザックの頭が潰れたトマトみたいに真っ赤な血を吹き出しながら、潰れた顔が首元までめり込み、アイザックの首が見えなくなる。

 

「がぁぁぁぁ!! 」

 

アルバルドはアイザックの頭を潰した拳をそのまま、コンクリートの床にたたきつけ、コンクリートを割り地面にヒビを入れる。

 

ヒビが入るのに続いて振動が地面を揺るがし、テラフォーマーとショーンが

その揺れで身動きが取れなくなる。

 

揺れに耐えている、ショーンを上空から、拳を握りしめたまま、アルバルドが降ってくる。

地面に鉄槌を打ち込んだ威力を利用し、空中に彼は飛び上がっていたのだ。

 

もはや、アルバルドにテラフォーマーも仲間も見えていなかった。

自分以外の動くものは、全て敵なのだ。

 

アルバルドが握りしめた拳を裏拳で

振るう。

轟音と、風を起こしたその拳は横振りにショーンの頬を叩くと、そのまま顔面を半分吹き飛ばした。

 

「ぐおぉぉ!! 」

 

仲間2人を殺したアルバルドは、口からよだれと、猛獣の如き唸り声を上げると、三体のテラフォーマーに飛びかかっていく。

 

 

─────────────────────────────

 

突然のアルバルドの暴走が、信じられず、皆が呆けたように訓練室の映像を見ている。

その中で政彦だけが、冷静だった。

 

 

「ジェニファー!! 」

 

政彦は、口を開けて、訓練室の映像を見ているジェニファーに、強く呼びかける。

 

「…………えっ?政彦さん何ですか」

 

驚いたジェニファーが、慌てて振り向く。

 

 

「俺は訓練室に行き、アルバルド・ローレンスを、抑える。

お前は、万が一に備え、皆を守れ

手術を受けてるなら、出来るはずだ」

 

政彦は早口でそう言うと、ジェニファーに昆虫型用の変身薬三本と

対テラフォーマー用拳銃ファイブセブンレプリカと予備弾倉を手渡す。

 

 

「これは?」

 

「何か起こった時の為に、用意していた 」

 

君が使えと政彦は言う。

 

(用意良すぎですよ)

 

まるで、事が起こるのを見越していたような、政彦の手際の良さに、心の中でジェニファーは突っ込む。

 

「政彦さんは、何か起こるってわかっていたんですか。

まさか予知能力とか持ってるんですか?」

 

「おじさん好きの、美少女じゃあるまいし、そんな便利な能力など持ってない。

ただ、空き家同然の今のUNASAの状況なら、良からぬ事を企む奴らが暗躍する確率が高いと思ったから備えていただけだ。

さっきも言っただろ備えあれば憂いなしと」

 

政彦は壁に立てかけている、長巻きを

取りに行きながら、ジェニファーと話す。

 

「これが人為的なものなら、愉快犯でもないかぎり、他にも何か仕掛けてくるぞ。

仕掛けてくるなら、技術者がまず狙われると思う。

いざとなったら、変態して皆を守るんだ」

 

政彦が、壁に立てかけている長巻きを

取り外し、持つ。

 

「そんな事言われても」

 

ジェニファーが悲鳴じみた声で言って、顔を歪める。

 

「撃退する必要はない、少しの間時間を稼ぐだけで良いんだ。

すぐにあれを止めて、戻ってくる」

 

政彦は、テラフォーマーを殴りつけている、アルバルドを見ながら決意を込めて言う。

 

「政彦さん……」

 

ジェニファーが祈るように手を合わせて、訓練室に走っていく、その背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。
うーん場面切り替えと、文によるわかりやすい説明の仕方、難しい。
お優しい方アドバイス待ってます(^^)

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