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「……親父、それに小町艦長」
クローンテラフォーマーの死体を見下ろしていた、政彦がふと記録室を見上げると、そこに見知った人物を発見した。
訓練終了を伝えようとしたのだ。
だがそこに本来いるはずの、いや居てはならない人たちが、居るのを見た政彦は伝えるのをやめ黙りこんでしまう。
その招かれざる客である、太田常彦と
小町正吉は窓際に立って向かい合っている。
口が開いたり閉じたりするのが、見えたので何か喋っているようだ。
ただ唇の動きを読む読唇術を持たない
政彦には何を言っているのかさっぱり解らない。
「見られていたという訳か」
政彦は視線を再びテラフォーマの死体に戻す。
頭が潰れ、片腕が雑巾を絞ったみたいになってるテラフォーマが1体
腹に大穴を空けている、テラフォーマが1体いる。
残りの1体は十数メートル離れた壁の
ふちに蹲(うずくま)って倒れてる
無論これも死体だ。
「歴戦の猛者に、無様な訓練を見せてしまったな」
政彦は自嘲気味に鼻で笑うと、先の
戦闘を思い出す。
1
銃を持ったテラフォーマーを倒した
政彦が次に狙ったのは、ハンマーを持ったテラフォーマーだった。
ハンマー持ちテラフォーマーの懐に
飛び込んだ政彦は、テラフォーマーが
振りかぶった瞬間に、その土手っ腹に
真っ直ぐ突き出した左拳一発で、それを貫いた。
この一撃で腹の急所をぶち抜かれた
ハンマー持ちは倒れた。
「この後がいけなかった」
ハァー
政彦は溜め息を吐きながら反省する。
政彦がぶっ飛ばした背後に、残った
チェーンソー持ちテラフォーマーが、
得物を降り下ろしてきたのだ
狙いは政彦の頭部。
そのままいけば、テラフォーマーの狙い通り政彦は頭から股間まで真っ二つにされていただろう。
だがチェーンソーの物凄い刃唸り音に
気づいた政彦は、すかさずベルトの間に差していた、ナイフの鞘(シース)を背後に向かって投げる。
ソフトボールを後ろに投げるような
感じだ。
投げたシースは縦回転しながら、テラフォーマーの顔に当たる。
目元近くに当たったテラフォーマーは
顔をしかめ、降り下ろしているチェーンソーの軌道がぶれ、政彦の頭を切り裂く刃は、空を切る。
軌道を修正しようとチェーンソーを持ち上げようとした。
テラフォーマーの右腕を、シースを背後に投げると
同時に体を方向転換させていた政彦の左腕が掴む。
グシャ
まるで格闘家がデモンストレーションでリンゴを握りつぶすように、あっさりとテラフォーマーの腕を握りつぶす。
痛覚のないテラフォーマは痛みは感じないが、潰れた腕で力が入るわけもなく、左腕一本では支えられず持ち上げていたチェーンソーが左腕ごと、下に下がる。
次の瞬間テラフォーマーの顔面ががら空きになる。
その間僅か数秒だが、それで充分だった。
テラフォーマーがチェーンソーを持ち上げようと、左腕に力を込めた時には、既に政彦はテラフォーマーの頭を鷲掴みしていた。
「終わりだ」
そう宣言すると政彦が左腕に力を込める。
「ジョ」
それだけ言葉を残した、チェーンソーテラフォーマーは頭を握りつぶされる。
超握力で潰された頭部は、バラバラに砕けちり、辺りに散らばる。
頭部が無くなったテラフォーマーは
政彦が握り開くと同時に、地面に両膝を着くとゆっくりと倒れた。
以上が政彦の戦闘結果である。
重傷どころか、軽傷すら負っていない
完勝である。
だが政彦は納得しない。
「背後を取られるなど、一対複数戦の
基本が出来てないな」
政彦回収した、ベルトの間に差した
シースを見ながら、恥じるように呟く。
「1体だから、シースだけで隙が作れたが、もし2体以上いたら今ごろ他のゴキブリに、がら空きの背中を攻撃されてたな」
それにと政彦は腕を組ながら、反省を続ける。
「チェーンソーは煩(うるさ)かったから気づけたが、音のあまりでない刃物いやテラフォーマーなら素手でも充分過ぎる、殺傷能力がある。
チェーンソーでなく、素手か刃物
あるいは鈍器とかなら……」
(迎撃は間に合わなかったかも知れない)
口に出さず心の中で、自省する。
「……おっと反省ばかりもしてられんな。
無断使用の件を小町艦長に詫びないとな。
訓練終了まで待ってくれたし、その礼もしないと」
反省を終えた、政彦は記録室を見上げた後、記録室に向かった。
無論投げ終えた、雷獣の回収も忘れずに行う。
2
「それで太田博士、去年アメリカで何があったんですか?」
小町が勢い込んで、記録室のモニター近くのソファーに座っている常彦に問う。
只でさえ大きな小町の声が更に大きくなっている。
あれから窓際で過去話をしだした、常彦だったが長話になる立ち話は疲れる。
と言って、話を中断。
星野が見ている、モニターの近くに
ソファーが3つあるのでそこに場所を移した。
ちなみに小町の座るソファーの反対側にもう1つソファーがあり、常彦はそこに座っているので、小町と常彦は向かい合っている。
なお現在、星野は席をはずして、飲み物の調達に行っている。
オーダーは、小町が微糖のコーヒーで
常彦は烏龍茶で星野自身は、ブラックのコーヒーで後いつも訓練終了後に報告に来る政彦のために、スポーツドリンクの計4本だ。
(なお金は常彦が1000円渡しており、釣りは要らないと言っている)
これは星野がタバコ代の捻出に苦労している為、常彦の
粋な計らいである)
『ありがとうございます』
釣りは要らない取っておきなさいと言った時の、星野の深いお辞儀と大声の謝礼を思い出して、常彦は笑みを浮かべる。
「くすっ、まぁ慌てなさんな小町君」
ソファーから立ち上がって、前のめりになっている、小町の前に手のひらを
突きだしながら、常彦は言う。
「飲み物が届いてからでも、遅くはないよ」
手を上下に振って 、小町に座るように促す。
「はぁ〜わかりました」
肩をすくめた、小町はそう諦めたような感じで言うと、ソファーに座り直す。
二人は押し黙って、飲み物の到着を待つ。
5分ほどして、記録室のドアが勢いよく開けられる。
「お待たせしました。太田さん
小町艦長」
白衣のポケットに入れていた、買ってきた缶ジュースを取りだしながら、
小町たちの元まで来ると、星野は
ソファーの前に置いてる机の上に、取り出したジュースをそれぞれの目の前に注文された缶を置くと、今度は胸ポケットからタバコを一箱取り出すと
そこから一本取り出して口に加える。
「あっ!」
そこまでして、二人に見られている事に気づいた星野は、ばつが悪そうに頭を掻きながら、加えてるタバコを口から取り出す。
そんな様子を見た常彦と小町は笑みを浮かべる。
「釣りは取っとけとは、言ったがそれで速攻買うとは思わなかったよ」
「すみません……子供が今年から高校に入ったんで、小遣い減らされてまして」
頭を掻きながら謝罪する星野。
「構わんさ、久しぶりのタバコを堪能するといい」
「ありがとうございます。
あの小町艦長は?」
常彦に頭を下げた後、星野は恐る恐る、小町に話しかける。
常彦には許可を貰ったので、後は小町だけだ。
「どうぞ。俺もそんなに気にならないですから」
小町は恐妻家の喫煙者の願いを心良く叶えてやる。
「ただのう」
再び口にタバコを加えようとした、星野に常彦が付け足す。
「政彦は大嫌いじゃ。
あれの前でタバコを吸った日には、箱ごと捨てられるのう」
顎に指を添えながら、常彦が恐ろしい
事実を告げる。
「えっ!」
思わず星野は、指に持っていたタバコを
床に落としてしまう。
「あぁ!1ヶ月ぶりのタバコがぁー」
星野は、両手を頭の上に乗せた後、
しゃがみ込むと、床に落ちたタバコを拾うと猫舌の人間がラーメンでも食べてるように、息を吹き掛け汚れを払う。
「ふぅーふぅー」
「それを吸う気かね」
若干顔をひきつらせながら、常彦が憐れみの籠った目で、星野を見る。
「さすがにそれはやめた方が」
小町も信じられないものを見るような目で、憐れな喫煙者を見る。
「星野君。
息子に協力してくれたのだ
ワンカートン、後で買ってプレゼントするから不衛生な事はやめたまえ」
「本当ですか?太田さん」
しゃがみ込んだ状態から素早く、立ち上がった星野はあっという間に常彦の元に走りよると、その手を握った。
「1カートン何て、数年ぶりですー」
常彦の握った手を上下にブンブン動かしながら、欲しい玩具を買ってくれた
子供のように、無邪気に笑いながら
星野は喜ぶ。
常彦の手を握ってなければ、そのまま踊りそうな感じだ。
「あぁわかったから、その手を離してくれたまえ。痛いのだが」
「はっこれは失礼しました」
顔をしかめた、常彦を見た星野は、慌てて手を放した。
「ふぅー」
強く握られて少し腫れた手に、息を吹き掛けて、常彦は腫れをひかす。
「星野君、君も座りたまえ。
それからさっきも言ったが、政彦が来たら知らんから、さっさと吸いなさい
」
「あぁそれならば、大丈夫です。
政彦君は記録室に報告に来るまえに、
戦闘訓練で使った、テラフォーマーの遺体を片付け、訓練場を清掃してから、シャワーを浴びてから報告に来ますので」
余裕ですと付け足すと、星野は2本目を取り出すと、口に加える。
「そうか。それは好都合じゃのう
ならあやつに、話を止められたりする事はない訳じゃな」
常彦は、缶のプルトップを開けながら、呟く。
「博士いただきます」
小町がちょっと首だけで会釈してから
同じくジュースに手をつける。
星野は、念願のタバコを吸えてご満悦な様子だ。
「では喉も湿ったところで、話そうかのう」
両手で中味の入った缶を持ちながら、
常彦は中断していた、過去話を再開したのだった。
いかがだったでしょうか。
う~ん今回から過去編に入ろうと思ってたんですが、
戦闘結果ちゃんとしないで、過去編にするのは
ちょっとややこしいかなぁと思って、こうしました。
短く纏めたかったんですが、なかなか、上手くいかないなぁ。
次回から過去編に入っていきます。政彦の片腕がどうして移植された事や、政彦の兄弟も出てきます。
ご期待に応えれるように頑張る所存ですので、応援宜しくお願いします。
読了ありがとうございました。(^_^)