はっきり言って難産でした
後長いです、それではどうぞ~(^-^)
「うっぷ……あぶねぇ吐きそうになった」
もう何度めかわからない。
猛スピードでカーブを曲がって行く、車に揺られながら克弘は耐える。
小町からの命令で、急遽
UNASA本部に戻る事になった克弘。
共に行くことになった、ミッシェルが
ハンドルを握りたいと
言ってきたので、任せたのが不幸の始まり。
ミッシェルはここぞとばかりにとばす。
口には出してないが、彼女も小町の予感を杞憂とは
思ってなく、不安なようだ。
だから焦る
激しい揺れに堪えながら、
こっそりと見たメーターは
時速250キロをマークしてた。
克弘もスピードを出す方だがミッシェルはそれ以上だ。
(さっき電柱にぶつかりそうになったら、窓から片手出して、へし折って無理やり通過するし)
ミッシェルの無茶苦茶な
運転に、克弘は肝を冷やしてた。
ちなみにもう一人の同行者である、ウォルフは既に
ショックで失神している。
それを見た克弘は
UNASA本部に着くまでは、起こさないでおこうと
決めていた。
(兄貴達も心配だが、我が身の方が心配だ。
早く着いてくれよ)
克弘はミッシェルの運転
から解放される、UNASA到着を心から
願うのだった。
2
(ヤバい、あれは……やばすぎる)
目の前に仁王立ちする、黒人の男に、アメリカ軍人
ジャレッド・アンダーソン
は戦慄する。
自身の勘が、長年の経験が
危険信号を鳴らす。
目の前にいる者は、何を
しようが勝てない相手であると。
だが、逃げようにもその
隙がない。
准教授の方も同じである。
敵は圧倒的優位であるのに油断してない。
ダイロンは、仁王立ちで
立ちふさがり、准教授は
腰をかがめている。
その体勢は、今にも突進
してこようとしている。
変態を終えて、頭から突き出た2つの角が、廊下の
照明に照らされて鈍く光る。
ジャレッドはその角に
自分が串刺しになる姿を想像してしまう。
(ちくしょう……どうすりゃいいんだ)
冷や汗を掻きながら
左手に握る拳銃を見る。
対テラフォーマー用の
弾丸が込められてはいるが
目の前の堅い防御力を誇る
2人のベース持ちには恐らく通用しないだろうと、ジャレッドは予想する。
とはいえ。
(怯ませるぐらいは、出来るだろうぜ)
左手の拳銃を持ち上げながら、狙いをつける。
狙いは眼、いくら堅いとは
いえ、眼は堅くはない。
狙いを付けたジャレッドは撃とうと引き金に指を掛け、やめる。
「まじかよ……」
見えたからだ。
狙いを付けた、標的の背後から、とても綺麗なフォームで走ってくる、テラフォーマが、その数3体
テラフォーマー達は縦一直線に並び、間隔を開けて
走ってきている。
「やれやれ……放したは
良いがコントロール出来て
ないようじゃ」
「混乱を起こす事を優先したのでしょう。
安全装置とか付けるのには時間がかかる。
いくら空き家同然といえど
あまり時間は掛けるべきではないでしょう」
ジャレッドに銃口を向けられているというのに、ダイロンは気にも止めず、走ってくる、テラフォーマー達を見つめる。
突きつけられる銃口よりもテラフォーマー達の方が脅威だと言わんばかりに。
「アーノルド殿、口封じの
方を、私はあの空気の読めない無粋な乱入者達を
片付けます」
首をコキコキと鳴らしながら、ダイロンはテラフォーマー達に向かって行きながら、雇い主に頼む。
「……任されよう」
昆虫の王の力を持つ男を
頼もしそうに見ながら、
アーノルドは役割分担を
了承する。
アーノルドの返事を背中越しにダイロンは聞くと
歩く速度を速め走り出す。
その足音を聞きながら
アーノルドはさっきまで
放っておいてた、ジャレッドの方を見る。
「待たせたのう……アンダーソン君……?」
振り返ったアーノルドが
首を傾げる。
そこには、さっきまで
自分たちに銃を向けていた
はずのジャレッドがいたはずなのに、居ない。
何もない廊下を見ていた
アーノルドが頭を掻く。
「やれやれ、良い年の
おっさんが鬼ごっこを
せねばならんとはのう。
それも野郎が相手とは
せめて若い女性が相手だと
やる気もでるんじゃがのう」
腰をかがめ、気だるそうに言ったアーノルドは
数秒後ブレーキの壊れた車のような猛スピードで
廊下を駆け抜けた。
その眼は猛禽のように鋭かった。
ジャレッドとアーノルドの
命がけの鬼ごっこが始まる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
がに股で両手を両膝に載せ、ジャレッドは乱れた呼吸を整える。
迫り走ってくるテラフォーマーを見た彼は、隙が出来てこれ幸いと、逃亡していた。
敵前逃亡は重罪だが、それを咎める上官はいない。
ジャレッドはためらわなかった。
(とりあえず、保管庫に
行かねぇと)
足を止めて3分やっと、呼吸を整えたジャレッドは
歩き出す。
目指すは対テラフォーマー用装備がおいてある、第4特殊訓練室。
第4訓練室には訓練するための薬が常備されているのに加え、その訓練室はチーム戦用の訓練室なので
ジャレッドが得意とする
対テラフォーマー発射式
蟲獲り網も置かれている。
テラフォーマーが徘徊している現状、最低限変身薬と
この装備は欲しいと、ジャレッドは思う。
(そして後もう一つ)
ジャレッドは困った顔で
ポケットから出した携帯端末を見る。
その取り出した携帯端末は、何故か圏外になっている。
都市内でまして、科学の最先端を行く、UNASA本部内でこれはまず有り得ない事態だ。
「……ちくしょう通信封鎖されてる」
ジャレッドは役立たずの
端末をポケットに片付け
歩き出す。
「とにかく薬と装備を整えたら、この通信封鎖を解除しねぇと」
当面のする事を決めたジャレッドは、人気のない廊下を歩く。
(薬と装備を整えたら
第2訓練室に戻ってアルバルドさん達にも協力して
もらうか)
実験開始前に、訓練室から
出ていったジャレッドは
知らなかった。
そのアルバルドが大変な事になっている事を。
「じっ、じー!!……」
脳天から股間まで真っ二つにされたテラフォーマーが、断末魔の叫びと白い液を吹き出しながら、左右に分かれて倒れる。
「片付いたな」
刀を振り下ろした態勢の
まま政彦は呟く。
真っ二つになったテラフォーマーから数メートル離れた先には、片目と胸の辺りに穴を空けたテラフォーマーが転がっている。
何とも恐ろしい事に、政彦は刀一本でテラフォーマーを倒してのけた。
手術を受けた人間が変態しないで、テラフォーマーを
倒す事は無いことは無いが
手術を受けてない人間が
テラフォーマーを倒す例など他には一つしかない。
人類初、テラフォーマーを
倒した漢。
バグズ一号の乗組員
ジョージ・スマイルズ
その人のみだ。
とはいえ、偉業を成した
政彦だが、その顔はまだ
険しい。
政彦にとって、これは
前菜でしかない。
主菜がまだ残っている。
「ぐるるる……」
目を血走らせたコアラ人間が政彦を睨んでいる。
アルバルドの鋭い視線に
政彦も目を合わせる。
しばし2人は睨み合う。
テラフォーマーを倒した
事により辺りは静かになり
2人の呼吸音とかすかに
地面を擦る音しか聞こえない。
(まだ遠いな……)
アルバルドを視界に入れながら、政彦は徐々に摺り足で近づいていた。
薬の効果で体が膨らんだアルバルドの身長は3メートル。
懐深く入らなければ、政彦
の一太刀は届かない。
テラフォーマーを仕留めた後鞘に納めた刀を右手に持っていた。
居合いの構えである。
政彦は居合い、抜刀術で
アルバルドを倒そうと思っていた。
狙いは首への一撃。
再生ベースならともかく
哺乳類なら、首を斬られて
生きてるものなどいない。
吊り橋を渡るような、慎重さで数ミリ単位で政彦は
近づく。
相手が近づいているのを
気づかないように近づく。
アルバルドは動かなかった。
遅くでも確実に距離を詰めてくる、政彦を血走った眼で見ているだけのように見える。
そのアルバルドの右手が
ぶるぶると震えている。
それは強く拳を握り締めているため。
そうアルバルドも政彦と
同じく待っていたのだ。
敵が自分の射程距離に入るのを。
「がぁーっ」
獣のような声を上げ、アルバルドは大きく右腕を高く振り上げ狙いをつけ投げた。
風を切り何か黒い物体が
政彦めがけ飛んでいく。
数は3つ。
全弾すべて政彦の足向かって飛んでいく。
「……くっ」
間一髪気づいた政彦は
それを両脚ジャンプで
何とかかわす。
先ほどまで、自分の足が
あったところを通り過ぎていく黒い物体の正体を
政彦は正確に看破する。
それはアルバルドがさっきまで食べていたテラフォーマーの肉だった。
アルバルドは肉の一部を
右手に握り締めていた。
始めから飛び道具に使うつもりだったのか、あるいはただの食いかけだったのかは、政彦にはわからないが。
とはいえ変態していた
手術者を素手で殴り殺せるアルバルドの怪力をもってすれば、それは下手な銃弾よりも強力だ。
アルバルドは、地面に片膝をつくと、今度は床の
コンクリートをむしり取り。
弾丸にし、滞空中の政彦に
投げつけようとする。
直後眩い光と爆音が辺りに響き渡った。
苦肉の策だった。
スタングレネード。
政彦は一つしか持っていない、装備をここで使う。
本音を言えばもっと決定的な場面で使いたかった。
でも、あそこで使わなければ、無防備な空中で飛び道具をまともに食らっていた。
「この隙に」
訓練でスタングレネードへの耐性をつけている政彦は
突然の爆音と眩しい光に
混乱している、アルバルドに一気に迫る。
迫りながら腰をかがめ抜刀態勢に入る。
「しっ」
政彦は息を吐くと同時に抜刀して、脚に斬りつけた。
アルバルドがもがき、顔を手で覆っていたので、当初の狙いである首は狙えなかったのだ。
地面すれすれに弧を描く
政彦の斬撃は、アルバルドの足首を斬り裂けなかった。
固いモノに打ちつけでも
したのか、その反動で政彦は刀を手放し地面を転がる。
「ぬかった」
地面を転がりながら、政彦は舌打ちする。
MO手術によるツノゼミの身体強化と、変態による
筋肉の増強による強度は
政彦の想像以上だった。
(よもやセラミックなどの強化複合金属で打たれた
刀で斬れないとはな)
こんな事なら、足の指を
突き刺して動きを封じるべきだったと政彦は思う。
「欲張りすぎたか」
転がっていた、政彦が止まる。
すでにスタングレネードの効果はなくなり、辺りは
再び静かになっていた。
「うん?」
片膝立ちになって立ち上がろうとした、政彦が変な違和感を覚える。
暗い、いくらスタングレネードの効果がきれたとは言え暗すぎる。
照明は付いているのだ。
ポタポタと何かが地面に落ちる音が聞こえる。
音に気づいた政彦が顔を上げ見上げ。
「うぅぅ」
目が合う。
よだれを垂らして仁王立ちして見下ろす、アルバルドがそこにいる。
瞬間悟ってしまう。
暗かったのは、アルバルドの巨体による、影のせい。
地面に落ちてた、液体の
音は、狂った獣の滴るよだれが落ちる音。
スタングレネードから
立ち直ったアルバルドは
転がる政彦を追いかけ
追い詰めていた。
「グァァー!!」
追い詰めた獲物にとどめを刺すべくアルバルドは
拳を振り下ろした。
駆ける。
一分一秒でも早くあの男の元に行くためにゼンは駆けぬける。
他には何も見えない。
今この瞬間ゼンは与えられた任務も仲間の事もすべて頭からなくなっていた。
ただあの男と闘い勝つ
それだけ。
血反吐吐き、命がけで得たこの力をあの男に見せてやる。
はやる気持ちを抑えもせず
ゼンは走る。
いつの間にか彼は四足歩行で走っていた。
体の中に後天的に植えられた獣の因子がそれをしたのか、でも高ぶる気持ちに支配されている、ゼンは自分が四足歩行で走っている事に気づいていなかった。
速く着きたいから、自然とこうなったといったところなのだろう。
まぁ二足であろうと、四足であろうと、彼には関係なかった、速く着ければ良いのだ。
こんなに気持ちが興奮するのは、いつ以来だろうか。初めて女を抱いた時か、否マーズファイトで初めて人を殺した時か、いやそれ以上、人生初かもしれない。
ゼンは生きているという 実感をこれ以上ないほど
感じていた。
まるで真っ赤なペンキを
ぶちまけたかのように
床は紅に染まっている。
「うぅぅ……これが選ばれた戦士の力か」
うずくまりながら、政彦は呟いた。
さっきまでいたところから、七メートルは離れている。
振り下ろされた、巨岩のような拳の一撃を、何とか
着地を考えない全力での背後へのジャンプで命は失わずにすんでいた。
だが、代償は大きい。
痛みに耐えながら、政彦は
右手で抑えていた左肩を見る。
左腕は肘から下が無くなっていた。
ズダズタに引きちぎられた
ような傷口から血が滴り落ちている。
ジャンプで離れる瞬間
迫った拳から致命傷を避けるため政彦は両腕でガードした。
右腕は無事だが、前に出していた、左腕はもがれた。
政彦は激痛に耐えながら
着ている服から包帯を取り出し止血する。
血が流れ過ぎた頭が朦朧とする。
だが、意識を手放したら死ぬ遭難した雪山と一緒だ
政彦は必死に耐える。
幸い追撃は来なかった。
アルバルドは地面に拳がめり込んだ態勢のままで
居たからだ。
まるで、自身の起こした破壊の余韻に浸っているように政彦には見えた。
現にアルバルドの半径数メートルの地面には、亀裂が入り割れている。
その間に政彦は、斬りつけて飛んでいった刀の元まで歩いていき、武器の回収をする。
「片腕は失ったが、武器はあるか」
地面に転がってる、愛刀の
汚れを払いながら、政彦は
アルバルドを見る。
状況は極めて劣勢。
これが政彦の予想通り
人為的なものなら、他の
ところにも手がまわっているだろう。
つまり救援は期待できない。
まぁ、仮に手がまわってなくても、合同訓練に、クルーのほとんどが出払っているから、助けにこれる
者自体が居ないのだが。
「こうなっては仕方ないな
親父殿からは、試作品だから安全の保証はできないと言っていたが」
政彦はそう言って、ため息を1つ吐くと、胸ポケットを探り、1つの無針注射器
を取り出す。
「使うしかないな。
使わせて貰うぞ。
試作人体強化秘薬スタンピードッ
!! 」
政彦は決断すると、服を脱ぎ捨て、その胸に無針注射器の先を突き立てた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
何とか書きたい事は、詰め込めました。
いかがだったでしょうか。
書けば書くほどむずかしい
今日この頃です。