第4話 兄と弟 (1)
「ふぅ〜やっと着いたか」
転がしてきた、旅行用のキャリーバッグを脇に置きながら一息付く。
ワシントンDC直営。
第2ダレス空港に太田政彦が到着したのは、西暦2617年の9月の中頃だった。
ダレス第2空港は、アメリカの人口数が増加したため、既存の空港数では
利用者数に追い付かなくなったので、
今から50年前に造られた新しい空港だ。
残りの他の空港は建て直しや増築を
繰り返してすでに、建造年数は200年を優に越えている。
政彦は、他の空港では席を取ることが出来なかったので、この空港を利用したのだ。
政彦が飛行機から降りて既に30分が経っている。
「迎えが来るはずなんだが」
キャリーバッグを脇に置きながら、
政彦は辺りを見渡す。
彼は現在空港のタクシー乗り場に来ていた。
タクシーだけでなく大型のバスも何台か置かれている。
事前に飛行機に乗る前に、空港に着いたらタクシー乗り場に、迎えが来ると聞いていたので政彦はここにいる。
「しまったな」
タクシー乗り場近くで、待ちながら
政彦は困った顔をする。
「誰が迎えに来てくれるのか。
聞き忘れたなぁ。
迎えの人は俺の顔を知っているのか?
知っているのなら問題ないが」
腕を組ながら、政彦は考え込む。
「う〜ん」
U-NASAに電話でも掛けようかと、政彦が思い付いた頃、ちょうど視界に遠くから人が歩いて来るのが見える。
約100メートル程先に、見えた人物は
ゆっくりだが、政彦の方に一直線に最短距離を歩いて近づいてくる。
身長178㎝ぐらいだろうか、175㎝の
政彦より少し高い。
無地の白のロングシャツに、ジーパンというラフな格好に、右手に2つと左手に2つ、高価そうな指輪をつけている。
髪をエッジの利いたベリーショート
NYゴシックショートで決めている。
高い身長に、2枚目と言っていい
端正な顔立ちが髪型を更に際立たせる。
首からペンダントのような物を架けていて、その銀の鎖が太陽の光を反射する。
だが政彦はそれがペンダントではなく、お洒落な懐中時計である事を知っている。
「ふっ……なるほど頼りになる迎えだ」
政彦は、納得顔でうなずくと、脇に置いてる、キャリーバッグを押しながら
歩きだす。
すると政彦に気づいたのだろう、
迎えの人が、歩くのをやめ手をあげる。
「兄貴!!」
大声で政彦をそう呼ぶと、迎えの人物
政彦の異母弟、太田克弘(かつひろ)は
政彦に走り寄って、合流する。
目の前の兄に克弘は人懐こい笑顔を、浮かべる。
「自由の国アメリカにようこそ」
おどけた風にそう言いながら、克弘は大仰に両腕を広げ、その場でくるっと1回転する。
「歓迎するぜ」
回転し終わった、克弘は政彦の胸の高さに左手を伸ばし、握手を求めてくる。
「迎えが来るとは聞いてたが、お前だとはな」
政彦は、口元を少しだけ動かして、小さく笑うと、同じく左手を伸ばし
握手を交わす。
二人の兄弟は約半年ぶりの再会の挨拶をこうして済ます。
父親の研究を手伝ってる政彦と、日本以外の各国に飛び回り、Mo手術の研究をしている克弘。
両者共に多忙だ。
ちなみに克弘は
政彦の3つ下である
「元気そうだな」
「兄貴こそ」
克弘はそう言ってから、握手を解き、親指を立てた後その指を反り返らす。
その指が、1つの看板を指しているのに政彦は気づく。
英語で書いてるその看板の意味は
東へ400メートル先、第3駐車場。
「第3駐車場に俺の車を止めている
車なら、U-NASAまで1時間半ってところだ」
克弘はこっちだと言うと、向きを変えて、駐車場の方に歩きだす。
さっさと駐車場の方に歩いていく、克弘に政彦は無言で付いていくのだった。
2
「変わった車に乗ってるんだな」
10分後、第3駐車場に着いた、政彦が開口一番そう言ったのは、異母弟克弘の車を見たからだ。
克弘の愛車は、オープンカーだ。
3人乗りでドアはない。
変わったと車と思われるが、それも当然。
この車の名はアクアダ2600年モデル
数百年前にイギリスで造られた、世界最高の水陸両用車である。
克弘の愛車は、今から17年程前に
更に性能を改良したモデルであり
陸上では160キロの最高時速が
200キロに、水上では、時速50キロが70キロへと、パワーアップされている。
またAT車であるはずのアクアダを克弘は、オーダーメイドでMT車にしている。
弟の車のこだわり様に、政彦は目を見開き、そのご自慢の愛車を見渡す。
「へっへっ、どうだすげぇだろ」
鼻の下を指で擦り、どや顔で克弘は兄を見る。
「良く買えたな。
確か日本円で3500万円はしたはずだが」
克弘のどや顔を、クールな眼差しで見ながら、ボディを跨いで車内に政彦は乗り込む。
「まぁ女が貢いでくれた品や金と
俺がコツコツ貯めていた、貯金はたいて何とか一括で買った」
イェーイとばかりに、サムズアップして満面の笑みを浮かべる。
愛車を兄に見せびらかせれるのが、嬉しくて堪らないのだ。
欲しいオモチャを買って貰えた。
子供みたいにはしゃぐ克弘を、政彦は微笑ましそうに見るが直ぐにキリッとした表情になると、そろそろ車を出してくれと、早口で伝えた。
「あっ悪い悪い」
克弘は、サムズアップをやめると
車のボディの端に置いてる政彦の
キャリーバッグを持ってから、運転席に乗り込み空いてる席に、バッグを置いた。
それからシートベルトを締めて、克弘は車のエンジンをかけてから、発進した。
政彦が空港に着いてから、約30分後の事だった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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