良かったら見ていってくれると嬉しいです。
(^^)
「すぅ〜すぅ〜」
政彦の寝息をBGMにしながら、克弘は愛車を飛ばす。
目的地はUNASAアメリカ本部、距離にすると後20キロと言ったところだ。
(何時も気を張り積めてる、兄貴のこんな無防備な姿は珍しいな)
克弘は兄の寝顔を不思議そうに見る。
「手術成功率は36%」
克弘は真剣な表情で、独り言を呟く。
「日本じゃ見つからなかった。
適合ベースが仮に見つかったとしても、成功確率はたったこれだけだ。
バグズ手術よりマシっちゃマシだが」
克弘は片手で頭をかきむしった。
「 それでも低い事に変わりはない。
失敗して死ぬかも知れないぜ兄貴」
「それでもやるのかい?」
眠る政彦の顔を覗き込みながら、静かに克弘は語る。
「おっと、寝てる人間に言っても仕方ないや」
克弘は答が返ってくるはずもないのに、つい不安に刈られて口に出してしまった事を恥じる。
だが答えは予想に反して返ってきた。
「 愚問だな。
火星に行きテラフォーミング計画を成功させるのが、俺の生涯をかけた
目標だ。
火星に行くのに、Mo手術が必要なら
手術する以外の選択肢はない」
ゆっくりと目を開いた、政彦が
身を起こしながら、その強い決意を
伝える。
その瞳には、ひとかけらも迷いは見えない。
「人類に時はない。
テラフォーミング計画を成功させない限り、世界に未来はない」
政彦は鋭い目で克弘をじっと見る。
「お前にもわかってる筈だ克弘。
テラフォーミング計画は人類全てにとっての悲願だ。
人類はこの計画に一丸となって当たらなければならない」
政彦の気迫に一瞬たじろぐが、克弘は眼だけはずらさずにすんだ。
「全ての力を結集し火星を」
左拳を顔の前に持ってきて、強く握り締める。
「手にするのだ。人類の手に」
(うぉっ)
一瞬兄の瞳に炎が宿ったように克弘には見えた。
「そりゃ確かに正論だが」
(それを現実にするのは、難しいぜ)
(極めてな)
克弘は、兄に同意しながら、心の中で
理想実現の困難さに気を落とすのだった。
2
「ところで克弘。
Mo手術を受けた者が、受けるなというのは、少し身勝手じゃないのか?」
政彦は、運転をする克弘を羨ましそうに見ながら、ちょっと意地悪そうに
言う。
「兄貴知ってたのか?」
克弘は、目を点にして声を上げる。
実は克弘は1ヶ月前にMo手術をローマで受けていたのだ。
生きるか死ぬか解らない、手術だったが、克弘は受ける決断をして、その事を親兄弟には伝えなかった。
手術前に伝えたのは、亡き母の兄である伯父だけである。
つまり
「伯父貴に聞いたのか?」
それしかないと、思い克弘は、政彦に問う。
「いや」
政彦は首を振ってそれを否定する。
「親父殿だ、親父殿は、お前の伯父さんから聞いたと言っていた」
「伯父貴が伝えたのか、親父に」
克弘が驚きに目をみはり、体を震わして、政彦を見る。
意外だと、思ってるようだ。
「普通だろ。甥っ子が命懸けの手術に
挑むというのに、それを知ってるのに、その親に伝えない方がおかしい」
さも当然の事だろうと、ばかりに
当たり前のような顔で答える政彦。
「待てよ。じゃあ兄貴も親父も
知ってたんだな?
だったら何で連絡とかしてこなかったんだ?」
克弘は、声を荒げる。
自分がMo手術を受けるのを知っていながら、連絡すら寄越さなかった、
兄と父の意図がわからない。
きつい目で睨みつけてくる、克弘の視線を受けながら、政彦は指で前の窓を指す。
「うん?」
克弘が釣られて指先を見ると、前方の信号がいつの間にか赤になっていた。
(やば!?)
慌てて克弘が、急ブレーキを踏んで
何とか信号無視は回避する。
「あぶねぇー。助かったぜ兄貴」
額を手の甲で拭いながら、ふぅ〜と一息付くと、克弘は兄に礼を言った。
「構わん。だが話ながら運転するのは危険だな。
うん?……あそこに自販機があるな
ジュースでも買って、それから続きといくか」
なるほど、政彦の視線を追うと、道路に面して、二台並んでいる自販機がある。
ここから約200メートルと言ったところか。
「そりゃいい。
長時間の運転で疲れてっから、休憩したかったんだ」
克弘は笑みを浮かべて、同意する。
「決まりだ」
弟の同意を得た兄は、財布の中から硬貨を取り出す。
そんな、行動を取る兄を横目に盗み見ながら、克弘はどんなジュースを買って貰おうかと、頭を悩ますのだった。
UNASAまで、後10キロ
最後まで読んで頂きありがとうございました。
次回UNASA本部に付く予定です。
兄弟の会話シーン、つい長くなってしまった。
(-.-)