良かったら見ていって下さい。(-.-)
1
「かぁー生き返ったぁ」
眩しい太陽の陽射しを浴びながら、
自販機で兄に買ってもらった、ビールを飲みながら、克弘は喜びの声をあげた。
せっかくのいい天気だったので、ジュースを買うついでに、外に出ることにしたのだ。
ビールも上手いが、空気も上手い。
ちなみに克弘が、何故酒を飲んでるかと言うと、『運転疲れた』と言ったらなら代わろうと、政彦が言ってきたのでお言葉に甘えたのだ。
どうせ後10㎞程で、UNASAそれも真っ直の一本道。
ナビも愛車には搭載しているので、問題ないだろう。
政彦は飲酒の喜びに浸っている、克弘を冷めた目で見ながら、自分用のミネラルウォーターを飲む。
周りに吹く風をその身に受けながら、
二人はせっせと、自分の飲み物を片付けていく。
先に片付けたのは弟の方だった。
ぷはぁ〜とアルコールを満喫した、
克弘は飲み終わった缶を、自販機近くにある、ゴミ箱にほりこむと、体を自販機に凭(もた)れさせた。
「ありがとな、兄貴」
片目を瞑りながら、軽い感じで克弘は
ちびちびとミネラルウォーターを飲む
兄に礼を言う。
口が小さいわけではない。
あまり冷たすぎる飲料は体に良くないので、口の中でゆすいでから、飲み干しているのだ。
「昼間から酒とはいい身分だな」
「いや。アルコールが欲しくなったんでついな」
嫌みのこもった、政彦の冷たい言葉に、まぁいいじゃねぇかと、ばかりに
答える克弘。
そんな克弘をしばらくじっと政彦は
見ていたが、やがて見るのをやめてしまう。
克弘を見ながらも、飲んでいたミネラルウォーターが空になったので、政彦はゴミ箱に行き、飲み終わった
ペットを捨てる。
捨て終わった、政彦は近くに停めてある、克弘の愛車の方に歩いていく。
「待てよ兄貴」
自販機に凭れながら、克弘が呼び止める。
「……」
無言で首だけ振り返り、政彦と克弘の視線が交差する。
「飲みながら、話の続きするんじゃなかったっけ?」
口で笑いながら克弘は言うが、眼は笑っていない。
誤魔化すなと克弘のその目が言っている。
克弘の言い分に、政彦は見つめたまま
沈黙する。
そのまま、兄弟は睨み合いに入る。
だが敵対するもの同士が、対峙するような殺伐とした、感じでもなく、ましてや恋人同士が見つめ合う、甘い感じでもない。
教えを乞うて、相手が答えられずにいる状態と言ったら解りやすいだろうか。
「……ふぅ。さっきの続きだったな。親父と俺がどうして連絡しなかったのか、簡単な事だ。成功確率の低い手術を受けようとしてるお前を、刺激したくなかった。
それに俺や親父が止めろと言ってやめたか?」
近くの道路を三台程の車が、自販機を通り過ぎた頃、政彦がようやく重い口を開いた。
2
「そうだな、兄貴の言うとおりだ。
仮に兄貴達から止めろと言われても
俺はやめなかったな」
克弘が、呟くように言って肯定(こうてい)する。
「俺も親父もお前が決めた事だから、
その意志を尊重しようと思った」
沈黙を破って答えた後、克弘の隣に来た政彦が同じく自販機に背を預け、空を見上げながら淡々と言う。
だがその目には、弟に対する深い愛情が満ち溢れてる。
「それで俺が死んでいたらどうするつもりだったんだ?」
「葬式をあげたが」
またしても淡々と兄は答える。
「そういう意味じゃなくて」
じれったいとばかりに、凭れていた
自販機から背を離し、克弘は詰め寄る。
「Mo手術を受けると、決めたんだろう。
なら覚悟は出来ていたんだろう」
詰め寄ってきた、克弘を手で制止ながら、政彦は続ける。
「ならば俺にも父にも言うことはない」
背を預けていた、自販機から背を離した政彦は歩き始める。
「おい兄」
「覚悟を決めた、弟を息子を信じ成功を祈るのみだ。
親父はお百度参りを、俺は滝行でな」
呼び止めようとする、克弘を遮りながら、振り向かず政彦は答える。
(マジかよ)
自分をそこまで信じてくれる、兄と父に感激する。
「違った嘘だ」
「はい?」
思わず、ずっこけそうになりながら
甲高い声を克弘はあげた。
信じられないとばかりに政彦の背を見る。
(何だ嘘かよ、感動して損したぜ。
俺が女なら抱かれてもいいって思ったってのによ)
歯を噛み締めながら、ガルルと飛び掛かろうとする猛犬の
如く、克弘は兄の背を睨む
さっきの感動を返せと、心の中で
吠える。
そんな、弟の剣幕など、どこふく風とばかりに、政彦は振り返りこう続ける。
「滝行じゃなかった水ごりだ
ああそうそう親父のお百度参りは本当だぞ」
いたずらっ子が悪戯が成功したときのような、邪気のない笑みを政彦はする。
(やっぱ女なら抱かれてもいいな)
政彦の笑顔を見ながら、克弘は改めてそう思うのだった。
3
「アクアダと言うと、地上では鈍足というイメージがあったが、思ったより速いなぁ」
宣言通り、克弘と運転手を交代した
政彦は、アクセルを少しずつ踏みながら、アクアダを走らせる。
「まぁ、こいつは、発売後数百年経ってから、リメイクされて、パワーアップしたモデルだからな」
運転中の兄に早速克弘は、説明と自慢をする。
「なるほど」
納得顔で頷きながら、政彦はチェンジを入れ換える。
クラッチを踏み、アクセルを吹かしながら、流れるように入れ換える。
「うんいい感じだ」
政彦は満足気に頷いた。
「なぁ克弘」
ハンドルを握ったまま腕を伸ばして、
隣で外の景色を眺めてる、弟に話しかける。
「なんだよ」
景色を眺めるのをやめて、兄の方を克弘は、見る。
「いやまだ、聞いてなかったと思ってな」
顔に好奇心を浮かべながら、頬を緩める。
「聞いてなかった? 何を」
「お前のMo手術のベースだ!!」
大きな声ではっきりと言う。
「でお前のベースは何だ?
昆虫か、鳥類か、あるいは哺乳類?
それとも数少ない植物型なのか」
興奮で早口で言いながら、教えろよとばかりに伸ばした腕で、
隣に座る克弘の肩を政彦は押す。
「気になるのか?」
克弘は、ニヤニヤしながら、政彦を見る。
「当然だ」
鼻息荒く政彦が、頷く。
「そうかい。
いいぜ、俺のベースはな兄貴」
(いや待てよ)
兄の問いに答えをようと、した克弘は
ふとさっきの事を思い出す。
(そういやさっき、兄貴にからかわれたな。
やられっぱなしってのも、しゃくだしな)
気が変わった克弘は、もったいつける事にした。
「ちょっとややこしいんだよ。
口下手の俺じゃ上手く説明できねぇや
そうだ、UNASAでクローンテラフォーマー相手の戦闘訓練やるから、
その時に、わかるから楽しみにしといてくれ」
悪そうな笑顔で、形だけ手を合わせながら、悪いなと克弘は詫びる。
「ちょっと待て、生物の名前を言うだけで、口下手も何もないだろう」
納得いかないと、政彦が、弟を問い詰める。
「あっ、兄貴100メートル先の信号右な」
ナビの変わりに案内しながら
のらりくらりと、追求を克弘はかわす。
結局、UNASAに着くまでの間政彦が
克弘のベースの名を知ることはできなかった。
彼が知れたのは、戦闘向きだが、変態後はカッコ悪いと、ゲームのキャラのモデルにもなったと言う、僅かな情報だけだった。
なお余談だが、克弘は二つ適合ベースがあったそうだ。
3
「ここがUNASA本部か?」
政彦たちが、ワシントンDCにあるUNASA本部に付いたとき、時刻は午前11時すぎだった。
観光客のように、物珍しそうに
政彦はUNASA本部の建物を見上げている。
とにかくでかい建物だ、高くそびえるタワーのごときビルの周りを、複数の施設が囲んでいる。
軍基地にあってもおかしくない規模の
訓練場。
下手な大学病院より優れた、病院
広大なグラウンド、ヘリポートなど
凄い施設が目白押しだ。
「感激するのは、いいけど、何時までも経ってたら、通行の邪魔だぜ」
おのぼりさんのように、なってる政彦に隣にいる克弘が注意する。
はっと気づいた政彦は、見上げるのをやめる。
「そうだな。
観光にきたわけじゃない
手術を受けに来たんだ」
UNASA本部に見とれていた、自分を
恥じ入るように、かぶりをふると
政彦はきっとUNASA本部の正面ゲートを睨む。
「まぁ、そう鯱張るなよ。
手術が終わったら、いくらでも案内してやるよ」
「ほうサービスがいいな。
悪くない提案だ」
手術を受ける楽しみが増えたと、一人ごちると、政彦はゲートの方に歩いていく。
「なんなら、美人のお姉さんも付けようか?」
と茶化すように、克弘は言うが、
政彦は聞いてはおらず、立ち止まり遠くの方を見ている。
「兄貴何みてんだよ」
無視された事に、ちょっと不機嫌になりながら、克弘は兄の視線の先を追う。
「訓練用の運動場? そんなとこに何がある……あれは」
克弘は運動場を見渡すと、そこに人影を発見する。
動いている、それも当然走っている
からだ。
秋とはいえ、黒いサウナスーツを着て
汗を大量に流している。
その両手足に、リストバンドみたいな物がついているのを発見する。
(嘘だろ)
克弘は知っている、あれはリストバンドに見えるが、ただのリストバンドではない。
あれは
「両手足にウェイトを付けて、ランニングか遠目ではっきりしないが、
ウェイトの揺れ具合から、見て、1つ最低でも10キロはあるな」
隣の政彦が、顎に親指を当てながら、
目を凝らして、グラウンドでランニングする、人影を見る。
「体の体型や、雰囲気から見るに女だ。
ただ男らしい女と言ったらいいか、
う〜んアマゾネスと言った感じ、うん
これならしっくりくる」
政彦が端で一人納得して、頷く。
「アマゾネス?そんなすげぇのここには……いやいたなってことは」
克弘は、趣味のバードウォッチングに使うため、常に携帯してる、双眼鏡を
鞄から取りだし(車の中に置いていた)ランニングするアマゾネスとやらを覗き見る。
二十歳いや、21ぐらいか、眼鏡をかけており、髪はショートボブ
顔は美女と言って差し支えない程
整っている。
だがその優れた容姿も、まるで抜き身の刃のごとき鋭すぎる眼が、その容姿に惹かれる前に、恐怖を与えて台無しにしてしまう。
「鬼気迫ると言った感じだな。
あの若さで大した気迫だ」
感心するように政彦は、グラウンドを
走っている、眼鏡の美女を見る。
「只者ではないな。
流石にUNASA本部、精鋭揃いと言う訳か」
「いや、あんなのばかりだったら、殺伐すぎるだろうが、まぁでも彼女が特別であることに、変わりはないがな」
克弘は、双眼鏡で覗くのをやめて、鞄に片付ける。
「特別とは?」
政彦が疑問を投げ掛ける。
「言葉通りの意味だよ兄貴。
あそこで走っているのは、UNASA火星探索チーム幹部候補生、【奇跡の子】
ミッシエル・K・デイヴスその人だよ」
克弘が眩しそうに、グラウンドを全力疾走で、ひたすら走り続けるミッシエル
Kデイヴスを見ながら、告げる。
「!!」
それを聞いた政彦がかっと目を見開いて、ミッシエル・K・デイヴスを
見る、いや凝視する。
「そうか……彼女がミッシエル・K・デイヴスか」
そのまま暫く、ミッシエルを見ていた政彦だったが、1分程すると
ミッシエルから目を離した。
その後政彦は、UNASA本部の入口目指して歩いていく。
もう、振り返る事はなかった。
慌ててその後を追ってきた、克弘と合流し、
二人がUNASA本部内に入ったのは
それから約3分後の事だった。
こうして太田政彦は、異母弟克弘の
案内でUNASAに到着したのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
引っ張りに、引っ張ってしまいましたが、やっとUNASAに着きました。
(^^)
次回から過去編の肝となる政彦の、左腕の秘密について
徐々に入っていきます。