東方黒夢劇   作:黒野真琴

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零「巫女と魔法使いの変貌」

 ある年のある日、博麗の巫女が突如として姿を消した。

 これは異変だと思った妖怪達が調査をしたが、これが異変である証拠も博麗の巫女の所在も掴めなかった。

 

 それから数週間後、今度は普通の魔法使いが姿を消した。

 今度も異変だと思ったレミリアを筆頭とした妖怪達は賢者からなら何か聞き出せると踏んだが、彼女は本当になにも知ら無いどころか霊夢のことを必死に探している状態だった。

 

 なんの成果も得られなかった妖怪達はある程度の捜索を続けることに決めたが、いつまでも博麗の巫女の席を空けさせるわけにいかなくなった。

 結界に歪みが生じたことをきっかけにして八雲紫は霊夢の捜索を打ち切って新しい巫女の育成を始めた。

 その巫女は『博麗空』の名をもらって紫の監視の下で修行をしている。

 

 

 

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「紫様、初めて結界に触れた時に比べて少しおかしい気がします」

 

 修行中の空は霊夢のお下がりを改造した巫女服を揺らして紫に報告した。

 それを受けて紫が様子を見てみると、確かに博麗大結界に軽い振動が発生している。

 紫はしばらく考えてから空に言った。

 

「確かにおかしいわね。ちょっと様子を見てくるから修行を続けなさい」

 

「分かりました。いってらっしゃいませ」

 

 送り出された紫はスキマを通って様子のおかしい地点に向かった。

 その数秒後、幻想郷中の強者達がとんでもない魔力と妖力のぶつかり合いを感じた。

 

 

 

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 同時刻、紅魔館では。

 レミリアに霊夢捜索の状況を早苗や妖夢などが報告に来ていた。

 

「今のは大きすぎるわね。よく結界が今の衝突に耐えたものね」

 

 窓の外の異常を感じながらレミリアは独り言を言った。

 その言葉に付け足して疑問を早苗が発言した。

 

「今のって霊夢さんと魔理沙さんのに似てたような気がしたよ?」

 

 その発言から一気にその場にいる者達の言葉が溢れ出た。

 

「確かにそんな気がしたわね。妖夢はどうかしら?」

 

「咲夜さんと同じです!でも、こんなに禍々しい力と透き通るように綺麗な力でしたっけ?」

 

「よく分かりませんね。直接見てみないと本当にあの2人なのか分かりませんよ」

 

「うどんげの言う通りだ。この伊吹萃香、直に確認したい」

 

 ひょうたんをテーブルに叩きつけて言った言葉に一同は固まった。

 本当はもっと色々と言いたかったのだろうが、居候先の主が突然姿を消したことにイラついている様子なのでみんなで黙った。

 

 そんなキレ気味の萃香はひょうたんを持ち直すと一気に一回二回と酒を飲んで一息ついた。

 それから何も言わずに部屋を出て行った。

 その後をレミリアの許可を得て咲夜が追った。

 残る面々は禍々しい妖力が霊夢のものでないことを願って紅魔館で待機することにした。

 

 

 

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 幻想郷の外れにある森の中。

 紫はスキマを通ってその森に姿を現した。

 その紫が着いてから真っ先に目に飛び込んできた光景に驚いた。

 

「おらぁ!魔理沙、もっと本気を出しなぁ!」

 

「やめろ!これ以上は結界が持たないぞ!せっかく連れ戻してやったのに、お前って奴は!」

 

 そこには黒く染まった霊夢と光に満ちた魔理沙が戦う光景があった。

 紫はその2人の姿に驚き、2人の使う力に嫌な雰囲気を感じ取った。

 

「なにやってるの!やめなさい!」

 

 妖怪の賢者、八雲紫が本気で叫ぶと2人はピタリと戦闘をやめた。

 それから空中に浮遊したまま紫と会話を始めた。

 

「あら、紫じゃない。てことは、本当にここは幻想郷なのね」

 

 霊夢はここでようやく今いる場所を理解したらしい。

 それに気付いてくれたことで魔理沙はホッとして胸を撫で下ろした。

 紫はそんな2人の変わり果てた姿について色々聞かなければいけない。

 

「霊夢と魔理沙、あなた達におかえりとは言えないわ。先にその姿について説明しなさい」

 

 そう言われて霊夢は嫌そうな顔をしながら答えた。

 魔理沙はその後に言うつもりだ。

 

「説明しろと言われてもねぇ。普通に人間をやめて妖怪になっただけ。影を喰らう妖怪にねぇ」

 

「私はそんなバカなことをした霊夢を止めるために魔法を使ってこの姿になっただけだぜ。光と星の魔法を極めた真っ白な姿だぜ」

 

 その説明を聞いても霊夢のことは納得がいかなかった。

 紫の頭の中には霊夢に対する疑問と困惑が入り混じっている。

 

「魔理沙のことは納得がいったわ。でも、霊夢の妖怪になったということにはまったくもって納得が出来ないわ。再度納得のいく説明を求める」

 

 ハッキリと鋭い目を向けながら霊夢に強く言った。

 霊夢はイラついてきて、ここで消してやろうかと思ったが思いとどまって再説明を始めた。

 

「幻想郷にはおかしな点が多い。妖怪を殺さず生かすこと。妖怪になった人間は容赦なく消すこと。妖怪や神が幻想郷のトップであること。巫女はなぜか異変解決をしなければいけないということ。他にもたくさんのおかしなことがある。私はそれらの疑問を示すために妖怪になったの。歴代でかなり才能のある巫女が妖怪になっても殺されなければ人間はおかしなことに気づくだろうからねぇ」

 

 長い長いそこに至るまでの話を聞いて紫は驚愕の顔をしてしまった。

 紫からすれば今の霊夢は完全に異変を起こしている妖怪そのものだ。

 その霊夢がやろうとしてることが幻想郷の歴史を揺るがすことなのだから驚かないはずがない。

 

「霊夢、あんたがしたいこととその姿になった理由はちゃんと理解したわ。そこまで聞いたからにはここで私が動かないわけにいかないわね」

 

 震える声で妖怪の賢者様はそう言うといきなり霊夢をスキマで閉じ込めた。

 

「魔理沙!あんたがいつ霊夢の状態なんかに気付いたか知らないけど、あの子とやり合える実力があるなら止めるのを手伝いなさい!」

 

「もちろんだぜ!今の霊夢は完全にイカれてるからな!」

 

 ここで紫は決心をして魔理沙と手を組んだ。

 その次の瞬間、霊夢が木の影の中からヌルッと出てきて不気味に笑って見せた。

 

「私は間違ってることをしてるとは思わないわぁ。おかしいのは幻想郷の方なんだからぁ。妖怪と共存できると言うならしてみなさいよぉ。それが出来ないから今の状況が続いてるんでしょ。いつまでもこのままならもうすぐ内部から崩壊するわよぉ。アハハハハ!」

 

 今までと全く別物な霊夢の笑いに紫はゾッとした。

 魔理沙は何度も戦ってるようなので慣れてしまったらしい。

 

「異空間の時と同じだな。今のお前は影ならどこからでも移動できる。その弱点は私だろ!」

 

 魔理沙は霊夢を囲むように光を照射した。

 それによって霊夢の逃げ道になる影は消された。

 そのタイミングを逃すまいと紫はスペルを準備した。

 

 霊夢は光が当てられた瞬間に笑みを消している。

 紫と魔理沙に対して霊夢は汚物を見るような目を向ける。

 

「学ばないなぁ。光あるところに影ありなんだよぉ。つまり、木なら葉に影が出来る」

 

 そう言った次の瞬間にジャンプして小さな影の中に消えた。

 それから2人の足元の影から腕を出して、掴んだ足を影の中に引きずり込んだ。

 

 その様子を見てしまった伊吹萃香は霊夢に腹を立てて木を殴り倒した。

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