東方黒夢劇   作:黒野真琴

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壱「狂いし影の巫女」

「影は今や私の独壇場なのよぉ。紫のスキマと同じようなものだわぁ」

 

 真っ暗な空間に引きずり込まれた2人は霊夢と対峙してそう言われた。

 紫は色々とすぐに理解してスキマを開こうとしたが開かなかったせいで動揺した。

 

「バカな!」

 

 思わず叫んでしまうと霊夢はクスクスと笑った。

 魔理沙はすぐにでも魔法を使えるように隣で準備をしている。

 

「ここは私の空間よぉ。薄暗いなんてレベルじゃない影の世界は私の邪魔者を排除するのぉ。そのために紫の能力は使用禁止になる」

 

 霊夢がバカにするようにそう言ってる間に魔理沙の準備が整った。

 急に魔力が高まったので霊夢は焦った。

 焦って目を見開いて止めようと動いた。

 

「やめなさい!クソ魔理沙!」

 

「嫌だぜ!影の世界を照らしてやる!光符『サンライトレイディアンス』世界を照らす太陽となれ!」

 

 魔理沙が強力なスペルを使うと目が眩むほどの光が彼女の上空に擬似太陽となって現れた。

 その光は霊夢の目を眩ませて身動き封じて、その隙に影を照らしてその世界の本性をあらわにした。

 その光景に1番驚いたのは紫だ。

 

「今日は驚かされてばかりね。でも、これは驚かない方がおかしいわ」

 

 三人が見たのは黒い影で構築された幻想郷だった。

 魔理沙が今頭の中で立てた仮説では『ここは幻想郷の反対側に存在する世界で、表とのバランスを調整しているのではないか』と考えている。

 その考えが正しいかのように霊夢が目をつぶったままおかしな行動に出た。

 

「アハハハハハハハハ!」

 

 大声で笑いながら霊夢は周囲の木々を切り倒した。

 影を自在に操れるからちょっと手が触れるだけで簡単に木々が倒される。

 その異様な光景に魔理沙と紫は恐ろしくても目を離せなかった。

 

 しばらくして霊夢は木を倒すのをやめて魔理沙達の方を向いた。

 

「照らしたねぇ。照らしちゃったねぇ!世界のもう一つの真実を!」

 

 明るすぎて目が開かないのに霊夢は話し方と雰囲気で魔理沙達にその姿を恐ろしく見せた。

 そして、ゆらりゆらりと2人に近づきながら話し始めた。

 霊夢だけが知る世界の裏側の真実を。

 

「この影の幻想郷はあっちとリンクしてるぅ!鏡の世界もリンクしてるけど、こっちで何かあればあっちにも影響が出るんだよぉ!私はおかしな幻想郷に新時代の夜明けをこさせるためにここで行動を起こす!魔理沙は私にも見えない影を照らすための太陽なんだよぉ!」

 

 そう言われて魔理沙は慌てて自分の魔法を消そうとした。

 だが、それより先に霊夢が動いた。

 

「もう遅い!影符『這い寄る反逆の手』縛られてな!」

 

 先に動いた霊夢はまた2人の足元の影を利用して全身を縛り上げた。

 それから霊夢は自分の手元の影を大きく広げて巨大な手に変えた。

 それを大きく振って森を一掃していく。

 

 何も出来なくなった2人はそれを見てることしかできなかったが、霊夢は森が片付いたところで2人にまた話した。

 

「悪いわねぇ。幻想郷のおかしなところを見極めるために大きな異変を起こす必要があるのよぉ。そのためにわざわざ魔理沙を利用したわけ。まぁ、後で解放してやるから安心して待ってなさい。全てが終われば用済みだからぁ。じゃあ、表で最後の仕事をするわねぇ」

 

 そう言って霊夢は影を通って表に戻ってしまった。

 紫と魔理沙は影の縛りが取れないから脱出できそうにない。

 紫は魔理沙のおかげでスキマを開けるようになったことに気付いているが、このままで外に出ても無意味そうなので動けない。

 動けるのは影の支配者となった霊夢だけ。

 

 

 

 ----------------

 

 

 

 不気味なほど静かな森があった場所。

 そこに自分の影を通じて霊夢はヌルリと姿を現した。

 

「やっぱりとんでもないわねぇ。これなら楽しめそう」

 

 戻ってきてすぐにそう呟いていると、倒れた木々の隙間から伊吹萃香が飛び出してきた。

 その萃香はいつにも増してすごい鬼の形相だ。

 そんな彼女は思いっきり殴るつもりで霊夢に向かって飛びかかっている。

 

「あんたはお呼びじゃない。魔理沙達と一緒に静かに待ってなさい」

 

 そう言って霊夢の影が入り口を開けて萃香を飲み込んだ。

 それと同時に向こうでは萃香の影が縛って身動きを封じる。

 

 萃香を追ってきた咲夜は色々ありすぎて混乱しているが、今は動くべきでないことを自覚しているので黙って身を隠している。

 そういうお利口な奴には霊夢の魔の手が届くことなんて無い。

 

 

 

 ----------------

 

 

 

 いつの間にか霊夢のための舞台である夜になった幻想郷。

 暗い闇が包むその場所で霊夢は嬉しそうに今の巫女や風見幽香達のような強者が来るのを待っている。

 

「かなり派手に壊したはずなんだから早く来なさいよぉ。それで新しい巫女は幻想郷のおかしな現状を知ることになるのよぉ」

 

 そう言っていると、噂した巫女が空から急降下して現れた。

 

「あなたが今回の異変の主犯ですね!退治してやります!」

 

 うまく着地した空は異変の主犯と対峙してカッコよく言った。

 それからすぐに目の前にいる敵の正体に気付いて困惑しながらも哀れみの目を向けた。

 

「まさか...戻ってきたと思ったら敵になってるなんて、残念です」

 

「そう言ってくれるだけで充分よぉ。これでようやく最後のお勤めが出来るんだからぁ」

 

 霊夢は空の優しさに対して妖怪になったせいなのか吐き気しか感じなくなったことを後悔した。

 自分の後を継ぐ若い才能に対して失礼でしかない。

 でも、巫女としてではなく妖怪としてならなかなかに楽しめそうな相手としか思っていない。

 

「さぁて、私は『影の妖怪巫女博麗霊夢』よぉ。本気でやり合うんだからあんたも名乗りなさい」

 

「私は『楽園の守護者博麗空』です。先代に失礼のないように相手いたします!」

 

 この瞬間、大きな妖力と霊力が衝突して結界に傷をつけた。

 空はそのことに動揺したが、霊夢はそんなことに興味なさそうな顔をして影の中に消えた。

 

「しまった!結界へのダメージは計算の内だったんですね!」

 

 動揺して空は思わず叫んでしまった。

 その直後、空は姿を消した霊夢がどこから襲ってくるのか分からないので警戒している。

 その霊夢は影の世界で魔理沙達に不気味に微笑んでから攻撃を外に向けた。

 

「影符『黒染めの雨』」

 

 霊夢が表の世界に向けて放った攻撃は影を通して幻想郷の空中に放たれた。

 そして、それは黒い粒となって森のあった場所を目掛けて降り注ぐ。

 

「これが霊夢さんの攻撃ですか。私の実力を測るには遅いし、弱いし、最低な攻撃ですね」

 

 降り注ぐ黒い雨に最初は余裕を見せた。

 しかし、それが倒れている木に触れた際に木を黒く染めて崩壊させるのを見て考えを改めた。

 

「マジですか!?これは絶対に身を守らないと!」

 

 そう思った空は大急ぎで多重結界を張って身の守りに入った。

 その結界は簡単に破れるような代物じゃない。

 霊夢はそれを破壊するのに雨だと力不足だと判断して次の攻撃に変えた。

 

「影符『漆黒の槍』」

 

 今度は粒を槍の形状に変形させて結界に向けて落とした。

 それが一本結界に当たると空の肩ギリギリまで刺さった。

 

「多彩ですね。これじゃあ守りきれませんよ」

 

 そう思った空は時空の穴をお祓い棒で開けた。

 その中に入って霊夢のいる場所に向かって移動を始めた。

 

 しばらくして空は影の世界を見つけてそこに穴を繋げた。

 影の世界に繋げた穴から空が出ると霊夢は嬉しそうな笑みを向けてきた。

 

「やっぱりすごいわぁ。紫が即戦力と見て育て始めただけのことはあるわよぉ。これから私も安心して戦えるわぁ」

 

 そう言うと霊夢は自分の両手を影で包んで大きな武器にした。

 その影の手で空を握り潰そうと襲い掛かった。

 その攻撃をひらりと避けて空はお札の弾幕を霊夢の影の手にぶつけた。

 そのお札の力で影は引っ込んだ。

 

「やるわねぇ」

 

「そっちこそ!」

 

 2人はなぜか楽しそうに戦っている。

 その最中に空は擬似太陽を見て何かを考えた。

 

「あれを壊そう」

 

 空がそう言った瞬間に霊夢は影で縛ろうと動いた。

 しかし、バレバレなのか空には当たることなく飛んで避けられてしまった。

 そのまま飛んで空は夢想封印を擬似太陽に向けて撃って破壊した。

 すると、すぐに影の世界を静かな闇が包み込んだ。

 

 そうなると普通なら霊夢しかそこで戦えないが、空は第六感を頼りに動いて霊夢と弾幕を撃ち合って互角に立ち回った。

 

 ここまでやれる子ならいいかなと思った霊夢は覚悟を決めて幻想郷に戻った。

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