堕天使と過ごした日常   作:ゆうきoog3

22 / 30
前回商店街の旅行券が当たり善子と二人で旅行に来た佐藤とうきだがそこで待っていたのは楽しい旅行とは一転思いがけない襲撃者に佐藤とうきの暴走、さらには死んだはずの佐藤信之まで登場しめちゃくちゃに今回こそ二人はイタリアを満喫できるのか?では本編どうぞ!!


第22話 続・イタリア旅行

−−−−空港−−−−

 

「じゃ、ダンディなお父様は帰るとして、新婚さんは旅行楽しんでな。」

 

「まだ新婚じゃないんだけどな。……日本に帰るのはいいが、住む場所あんのか? 昔住んでた家は売っちまったし、俺らの家は二人で狭いから無理だぞ。」

 

(もっとも、住まれるのは困るんだけどな……。)

 

「そこは安心しろ。若い二人の邪魔はしないさ。愛しの娘の家を頼ることにする。」

 

久しぶりに娘に会えるのが嬉しいのか、親父の声はどこか弾んでいた。

 

「……姉ちゃんにとっても邪魔だと思うけど。兵庫に住んでるのは知ってるだろ? ほら、これ住所。」

 

「おお、助かる。これで特定せずに済むな。」

 

「実の娘に何しようとしてるんだよ……。」

 

呆れながらも、親父は善子のほうに向き直った。

 

「善子ちゃん、ごゆっくり。いろいろ楽しんでな。」

 

「はい。いろいろありがとうございました。」

 

ちょうどそのとき、飛行機の出発を知らせるアナウンスが空港に流れた。

 

「ほら、もう時間じゃないか?」

 

「ああ、それじゃ、先に失礼するよ。」

 

−−−−−−

 

親父を見送ったあと、ふと考え込んでいると——

 

「私のわがまま、聞いてくれてありがとう。」

 

善子が、どこか寂しそうな顔をして言った。

 

「当たり前だろ。……今までどれだけ我慢させたと思ってるんだ。だから、わがままでもなんでもない。」

 

(そもそも俺が悪いんだ。自分のことばっかりで、善子のこと、ちゃんと見てやれてなかったからな。)

 

「だから……これからは、もっと甘えてくれていい。」

 

そう言うと、善子はいつもの明るい笑顔を取り戻した。

 

「分かったわ! じゃあ、まずは手を繋いで、それから私のこと『ヨハネ』って呼んで、喉乾いたからジュース買ってきて! リトルデーモン!」

 

完全にいつもの善子(ヨハネ)モードだ。

 

「ん? 後半パシリじゃね?」

 

「ほら、早く。喉かわいた。」

 

「はいはい。分かりました、善子さん。」

 

「ヨハネ!」

 

「善子。」

 

「ヨハネ!」

 

「よ、」

 

「ハネ!」

 

「反応はやっ!」

 

ぷくっと頬を膨らませる善子。

 

「甘えろって言ったからな……。分かりました、ヨハネさん。」

 

ジュースを買いに走り、手を繋ぎ、そして——

 

「さぁ、ヨハネさん。どこ行く?」

 

「そんなの決まってるじゃない、トレビアの泉よ!」

 

(……マジかよ。)

 

−−−−−−

 

夜景を見ながら、二人並んで座る。

 

そんなとき、善子がぽつりと口を開いた。

 

「ねぇ、変なこと聞いてもいい?」

 

「なんだ?」

 

「……とうきは、私のこと好きって言ってくれたじゃない?」

 

「ああ、言ったな。」

 

「私の、どこが好きなのかなって……。」

 

「善子の好きなとこ……。そうだな、まず顔。表情も豊かですごく可愛い。怒った顔も好きだし、拗ねた顔も好き。笑った顔なんて最高に好きだ。目も好きだな。今もそうだけど、たまにその目から目を離せない時がある。キラキラしててさ。髪の毛も好き。団子もサラサラで、触り心地も最高。指も好き。手を繋いだとき、細くて、しっかり握っていたくなる。……身長も好きだな。抱きしめた時、丁度いい。」

 

「……もういいから!!///」

 

善子の顔は、真っ赤に染まっていた。

 

「恥ずかしいなら、なんで聞いたんだよ?」

 

「……知りたかったから……こんなヨハネを好きになった理由が。」

 

「……俺な、母さんが死んだって話しただろ? あの時、何もしてやれなかったんだ。」

 

善子は黙って、俺の話を聞いてくれている。

 

「母さんは優しかった。でも、優しいだけじゃ、強さがないとダメなんだって気づいたのは、ずっと後だった。俺はそれに気づかなくて……母さんがいなくなってから、荒れまくってたんだ。そんな俺を、救ってくれたのが、善子だった。」

 

「……え?」

 

「あの時、善子、お前は優しかった。……その優しさに、救われたんだ。だから俺は、今、ここにいる。」

 

「そんなこと、知らなかった……。」

 

「いやもう、俺、最近変なことばっか言ってるな……。あー、恥ずかし。」

 

「そんなことないよ。とうきのこと、もっと教えて?」

 

「いや、もうたまらん。そもそも善子と出会った『あの日』だって——……あれ? 『あの日』って?」

 

キーーーン

 

「う、うがぁっ……頭が……いてぇ……」

 

突然、頭に鋭い痛みが走る。

視界がぐらついて、何か、大事なことを思い出しかけたような、そんな感覚に襲われた。

 

「とうき!? 大丈夫!?」

 

善子が慌てて駆け寄ってくる。

 

「……ああ、大丈夫だ。ちょっと、昔のことを思い出しかけただけだ。」

 

「無理しないで。具合悪いなら……」

 

「違う違う! せっかくの旅行なんだ。今は善子と、ヨハネと、楽しまないと。」

 

無理に笑ってみせるわけじゃない。

心から、そう思った。

善子が俺を心配そうに見つめている。俺は、その手をしっかりと握った。

 

「ありがとう、心配してくれて。でも、今は——」

 

「楽しい思い出を作る時間でしょ?」

 

善子は、ふっと微笑んだ。

その笑顔が、夜景よりずっと眩しくて、愛しくて。

 

「そうだな。……さぁヨハネさん、どこ行く? 次は。」

 

「もう決まってるわ! ロマンチックな夜景スポット巡りよ、リトルデーモン!」

 

善子が楽しそうに先を歩き出す。

俺はその後ろ姿を見ながら、静かに思った。

 

(過去は、またいつか向き合えばいい。

今は——この愛しい人との時間を、何より大切にしよう。)

 

そして、俺は手を離さないように、彼女の隣へと駆け寄った。

 

 

 

「さあ、リトルデーモン、次なる目的地へ向かうわよ!」

 

善子——いや、ヨハネが、元気よく手を引っ張ってくれる。

 

俺はその手を握り返しながら、歩幅を合わせた。

 

「ヨハネ様の仰せのままに。」

 

「ふふ、よろしい!」

 

夜景スポットをいくつか巡ったあとは、有名な噴水広場へ。

ライトアップされた水面が、夜空に溶けて幻想的な景色を作り出している。

 

「うわぁ……キレイ……。」

 

善子が、無邪気に目を輝かせる。

その横顔を見ていると、なんだか胸がぎゅっと締めつけられた。

 

(この景色よりも、善子のほうが、よっぽど綺麗だ。)

 

「ねぇ、お願い事しよう?」

 

「噴水にコイン投げるやつか?」

 

「うん。ほら、ガイドブックに書いてあったじゃない。“願いが叶う”って。」

 

善子は楽しそうにポケットからコインを取り出した。

俺も真似して、一枚コインを持つ。

 

「……何お願いするんだ?」

 

「それは秘密!」

 

「ずるっ。」

 

二人で目を閉じて、それぞれ心の中で願いをかける。

(俺の願いなんて、一つしかないけどな。)

 

ポチャン——

静かな音を立てて、コインは噴水の中に沈んだ。

 

善子が、俺を見上げてニコっと笑った。

 

「絶対叶うといいね。」

 

「……ああ、絶対叶えような。」

 

−−−−−−

 

その後も、観光地を巡り、

夜はちょっと高級なレストランでディナー。

 

「乾杯、だな。」

 

「うん、乾杯!」

 

グラスを軽く合わせると、善子が小さな声で呟いた。

 

「こういうの……夢みたいだなぁ。」

 

「夢じゃねぇよ。現実だ。」

 

俺は笑って、善子の手にそっと触れる。

 

「現実だし、これからもずっと続く。」

 

善子は、嬉しそうに目を細めた。

 

−−−−−−

 

そして、旅行最終日。

 

「楽しかったなぁ……。」

 

帰りの空港で、善子がしみじみと呟いた。

 

「うん。楽しかったな。」

 

「……もっと一緒にいたいな。」

 

「帰っても一緒にいんだろ?」

 

「そうだけど、旅行の特別感ってあるじゃない?」

 

「そっか……。」

 

たしかに、ずっと一緒にいるけど、

こうして“旅先で”過ごす時間はまた特別なものだ。

 

「……また行こうな、善子。」

 

「うん! ぜったいまた行こう!」

 

そう言って、善子は俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。

 

俺は善子の頭を撫でながら、心に誓った。

 

(今度は、もっとたくさん笑わせてやる。もっともっと、幸せにしてやる。)

 

飛行機のアナウンスが流れる。

 

——もうすぐ、帰る時間だ。

 

でも、不思議と寂しくはなかった。

 

だって俺たちは、これからずっと、隣にいるから。

 

「さぁ、帰ろうか。」

 

「うん!」

 

手を繋いで、俺たちはゆっくりと歩き出した。

 

未来へ続く、この道を。

 

−−−−−−

 

【旅行編 完】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。