堕天使と過ごした日常   作:ゆうきoog3

25 / 30
第25話 人生最大の熱

 

佐藤とうきは、この間のスポーツ5番勝負での“超幸運”の反動を受けていた。

力を使い果たしたかのように身体がだるく、ベッドに倒れ込んだ彼は、体温計を見て目を疑った。

 

「うわ……これ、体温っていうか……もうボイラーだよ……」

 

額には汗がにじみ、声には力がない。そんな彼を看病していたのは――

小悪魔的な雰囲気をまとう、津島善子だった。

 

「しょうがないわね……。今回はあたしが看病してあげるわよ、特別に」

 

言葉こそツンと尖っていたが、善子は慣れない手つきながらも丁寧に薬を用意し、お茶を入れて、タオルを替える。その動きには明らかに優しさが滲んでいた。

 

(以下…佐藤とうきは高熱により、テンションがおかしくなっている。)

 

「善子〜……天使みたいだ……いや、堕天使か……? ナース服着て、看病してくれよ〜〜。」

 

「な、なによいきなり!? 頭ほんとにやられてない!?」

 

とうきはふらりと手を伸ばし、善子の手にそっと触れた。

 

「うわぁ……善子の手……スベスベでひんやり……気持ちいい〜……生き返る……これ、氷枕より効く……」

 

「ちょっ、そんなに触らないのっ! あんたが高熱すぎるのよー!」

 

「えへへ……善子成分が沁みてくる……すごい……これで10年は風邪引かない気がする〜……」

 

「はあ……ほんと、どうしてこうなるのよ……」

 

善子はそう言いながらも、タオルを替え、額に手を当てる。

熱はまだ高く、彼女は小さくため息をついた。

 

「ほら、早く寝なさい。じゃないと、看病してるこっちが心配で倒れそうよ……」

 

「……善子も、無理しないでね……僕、ちゃんと治すから……だから……」

 

とうきの声が、徐々に小さくなっていく。

「……善子が、ずっとそばにいてくれたら……もう何でも……うれしい……」

 

「……っ、ばか。そういうの……軽々しく言わないでってば……」

 

善子の頬が赤く染まる。彼女はとうきの寝顔を見て、そっと小さく微笑んだ。

 

「……心配されるの、嫌いじゃないけど……病人は黙って寝てなさい……」

 

その声は、いつもより少し優しくて――

とうきはふと微笑んだまま、深い眠りへと落ちていった。

 

 

放課後の佐藤家。

チャイムが鳴り、善子はしぶしぶ玄関へ向かう。

 

「……はいはい、どちら様――」

 

「おじゃまするずら♪」

 

制服姿の花丸が元気に顔を出した。

 

「……はぁ!? な、なに勝手に!?」

 

「善子ちゃんが“とうき君の看病してる”って聞いたから、心配になって」

 

「心配なことないわよ。とうきはまだ寝てるけど、まぁ入って。」

 

部屋に入ると、ベッドに熱で倒れている佐藤とうきがいる。

額にタオルを乗せ、頬を赤らめている。

 

「まだ熱あるずらね」

 

「夜はもっと酷かったのよ。もう何度も起きてうなされて……」

 

善子はぼやきながら看病を続けている。

 

花丸は横に座り、彼の髪をそっと撫でた。

 

「頑張ったんだもんね。無茶しすぎたずらよ」

 

「ほんとバカ」

 

「それでも……好きだから、仕方ないずら♡」

 

「なっ!? そういうの言わないで!」

 

花丸はニヤリと笑い、お茶を入れ直す。善子は顔を赤らめた。

 

日が傾き、オレンジ色の光が部屋を包む。

二人の看病は続き、とうきは寝言でつぶやく。

 

「善子ちゃん……まるちゃん……ありがとう……」

 

花丸は笑う。

 

「“ちゃん”付け同率ずらね」

 

「いつもは善子呼びだから、」

 

「それを言うならマルは花丸ちゃん呼びずら。まぁ、マルちゃん呼びでもいいずら。とうき君だけの特別呼びってことで」

 

善子はぷくっと頬を膨らませる。

 

「そういうところ、ずるいわね」

 

「独占欲強いのはどっち?」

 

「~~~っ!」

 

その時、とうきが小さく咳をして顔をしかめる。

 

花丸が手を握り、善子も反対の手を握り返す。

 

「どっちが優しく看病できてるかしら?」

 

「わたしのほうが……」

 

「気持ちの問題ずら」

 

ふたりの小さな火花が散る間に、とうきは穏やかに眠る。

 

20時過ぎ、善子が欠伸をする。

 

「眠くなってきた……」

 

「少しだけ寝てもいいずら?」

 

「別に……」

 

二人はとうきを挟んで横になる。

左右から寄り添い、優しく看病の手を休めた。

 

「おやすみ、とうき君」

 

「早く元気になってよね」

 

三人の寝息が重なり合い、月明かりが照らす夜が訪れた。

 

 

翌朝

 

「ん……?」

 

佐藤とうきは目を覚ました。

熱は引き、身体も軽い。

 

(治ってる……)

 

動こうとしたら、両手を誰かに握られていることに気づく。

 

右手には善子。左手には花丸。

ふたりは眠ったまま、とうきを挟む形で寄り添っていた。

 

「な、なにこの状況……」

 

心臓がドキドキ鳴る。

朝の光が差し込むなか、とうきは静かに呟いた。

 

「これ、どんな罰ゲーム……?」

 

「まぁ、2人ともかわいいからいいか!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。