堕天使と過ごした日常   作:ゆうきoog3

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第26話 暗殺者

 

スポーツ五番勝負で“超幸運”を使い切った佐藤とうきは、

その反動で人生最大の高熱に倒れてしまう。

 

ベッドでぐったりするとうきを看病したのは、

ツンデレな小悪魔――津島善子。

 

不器用ながらも、薬を用意し、タオルを替え、

夜通し見守ってくれた善子の姿に、

とうきは高熱でテンションがおかしくなりながらも、佐藤とうきの人生最大の熱は幕を閉じるのであった。

 

——2年前——

 

???「俺、いつも……誰の役にも立てない……。

助けたいのに……助けられない……。

こんなの……嫌だよ……!」

 

少年は自分の無力さに腹を立てながら泣いていた。

 

弱い自分を責め続け、壊れそうになった瞬間――

???の中から、もう一つの声が生まれた。

 

???「……情けねぇーなぁ。

無力な自分も、何も守れない自分も。

だったら――全部、俺様によこせやぁ?」

 

暗闇の中で生まれたその影は、

???自身のもう一つの人格。

 

後に ???と呼ばれる存在だった。

 

絶望の夜に、

???の運命は静かに分裂した。

 

ー現在ー

 

朝。

 

まだ少し体が重い。

 

「……まぁ、動けるな」

 

人生最大の高熱から数日。

佐藤とうきは久しぶりに制服に袖を通した。

 

スマホには今朝の通知。

 

善子:先に学校行ってる。朝練あるから。

   とうきはまだ無理しないでね。

 

送り主は

津島善子。

 

「久しぶりに朝練見に行こう。」

 

校門をくぐると、まだ人は少ない。

 

朝の澄んだ空気。

遠くから微かに聞こえる音楽。

 

体育館の方だ。

 

扉の前に立つ。

 

中から聞こえるはずの歌声。

 

カウントを取る声。

 

少し強めの指示。

 

――聞こえない。

 

「あれ?」

 

今日はもう終わったのか?

 

いや、時間はまだ朝練の真っ最中のはず。

 

とうきは扉を押す。

 

軋む音。

 

そして――

 

静寂。

 

誰もいない。

 

ステージの照明は落ちたまま。

 

マイクスタンドが倒れている。

 

譜面が床に散らばっている。

 

空気が、異様に重い。

 

心臓が嫌な音を立てる。

 

「……善子?」

 

返事はない。

 

ステージ中央に落ちている黒い羽飾り。

 

それは

**Aqours**の衣装の一部。

 

さっきまで、ここにいた証。

 

床に転がるスマホ。

 

画面は割れている。

 

未送信の動画。

 

再生。

 

荒い映像。

 

ノイズ混じりの画面が揺れる。

 

拘束された

**Aqours**のメンバー。

 

その前に立つ、黒いコートの男。

 

顔は半分影に隠れている。

 

低く、抑揚のない声。

 

「佐藤とうき」

 

一瞬、映像が止まりかける。

 

「我々は暗殺を専門とする組織だ」

 

余計な装飾はない。

 

ただの事実説明。

 

「依頼を受けた。対象は――お前」

 

画面越しに、男の視線がこちらを射抜く。

 

「目的はお前の暗殺」

 

背後で善子がわずかに動く。

 

男は振り返らない。

 

「依頼主の情報は開示しない。契約事項だ」

 

淡々と続ける。

 

「彼女たちは交渉材料だ」

 

言葉に一切の感情がない。

 

「お前が来れば解放する」

 

一拍。

 

「来なければ、順に消す」

 

短い沈黙。

 

そして男は最後に告げる。

 

「場所は、旧廃港第三倉庫」

 

画面に地図が一瞬映る。

 

動画が止まる。

 

体育館に、とうき一人。

 

心臓の鼓動だけがうるさい。

 

「……暗殺、ね」

 

「……俺のせいかよ」

 

小さく吐き捨てる。

 

その瞬間――

 

胸の奥で、あの声が笑う。

 

???「ほらなぁ?

結局こうなるんだよ。あの頃と変わりやしなぁ。守りたい?助けたい?

笑わせんなよ」

 

とうきは目を閉じる。

 

深呼吸。

 

「うるせぇ」

 

スマホを取り出す。

 

クラスのグループLINE。

 

《今日はAqours全員体調不良で休みらしい》

 

担任からの連絡がすでに入っている。

 

……手回し済みか。

 

「用意周到だな」

 

とうきはスマホをポケットにしまう。

 

体育館を出る。

 

校門へ向かう足取りは、静か。

 

ーー

 

校門を出た瞬間。

 

「1人でどこ行くのかい?」

 

背後から声。

 

振り返る。

 

そこに立っていたのは――

 

「宮田?!」

 

「もうすぐ、朝の朝礼だよ?早く教室に戻りたまえよ。」

 

「いや、宮田。ちょっと学校抜けるわ、まだ体調がすぐれてなくてよぉ。病院行ってくるわ。悪い」

 

「病院、ねぇ……」

 

宮田はわずかに目を細めた。

 

「その割には、ずいぶんと“急いでいる”ように見えるが?」

 

「……気のせいだろ」

 

とうきは視線を逸らす。

 

だが、その一瞬の間を宮田は見逃さなかった。

 

「それに——妙だな」

 

「何がだよ」

 

「Aqours全員が同時に体調不良で休み。そんな偶然があると思うか?」

 

ピタリと、とうきの足が止まる。

 

図星だった。

 

「……お前には関係ねぇ」

 

低く吐き捨てるように言う。

 

だが宮田は一歩、距離を詰めた。

 

「関係があるかどうかを決めるのは君じゃない」

 

その声は、いつもの飄々としたものではない。

 

「クラスメイトとくに善子さんが不自然に消えている。しかも君は明らかに何かを隠している。」

 

「なら——放っておけないな」

 

とうきは舌打ちした。

 

「……めんどくせぇな、お前」

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

「違ぇよ」

 

一瞬、沈黙。

 

風が吹き抜ける。

 

その中で、とうきは静かに言った。

 

「これは——命のやり取りだ」

 

宮田の目が、わずかに鋭くなる。

 

「遊びじゃねぇ。来たら——死ぬかもしれねぇぞ」

 

「ほう」

 

それでも宮田は、引かなかった。

 

むしろ——

 

「それはつまり、“死ぬ可能性がある程度の状況”ということか」

 

「だったら尚更、君一人で行かせるわけにはいかないな」

 

「は?」

 

「戦力は多い方がいい。違うか?」

 

とうきは思わず眉をひそめる。

 

「お前、何言って——」

 

その瞬間。

 

宮田は軽く一歩踏み込む。

 

空気が、変わった。

 

「……!」

 

とうきの本能が警鐘を鳴らす。

 

ただの優等生の動きじゃない。

 

無駄がない。

 

隙がない。

 

「一応言っておくが、僕は武道を嗜んでいてね」

 

静かに拳を握る。

 

「それなりに“実戦”も経験している」

 

「……は?」

 

「加えて——」

 

宮田はポケットから小さなキーホルダーを取り出した。

 

だが次の瞬間——

 

カチリ、と音がした。

 

手首に装着され、微かに駆動音を立てる。

 

「簡易型だが、身体補助デバイスだ。反応速度と出力を底上げしてくれる」

 

「国が開発している新たな秘密兵器さ。」

 

とうきは一瞬、言葉を失う。

 

「……お前、何者だよ」

 

「ただのクラスメイトさ」

 

即答。

 

「困っている人間を放っておけない、ね」

 

軽く笑う。

 

だがその目は、冗談ではなかった。

 

——本気だ。

 

とうきは目を閉じる。

 

そして、小さく息を吐いた。

 

(……足手まといじゃねぇ)

 

(むしろ——)

 

胸の奥で、あの声がまた囁く。

 

???「俺様が全部壊すから関係ないがな。」

 

「……黙ってろ」

 

小さく呟き、目を開く。

 

「……勝手にしろ」

 

「足引っ張ったら、置いてくからな」

 

「心得ている」

 

宮田は即答する。

 

その口元に、わずかな笑み。

 

「では——行こうか」

 

「ああ」

 

二人は並んで歩き出す。

 

向かう先は——

 

旧廃港第三倉庫。

 

静かな朝とは裏腹に、

 

確実に“命を懸けた舞台”へと足を踏み入れていく。

 

「もの静かなところだね。」

 

宮田が低く呟く。

 

とうきは答えず、ゆっくりと一歩を踏み入れた。

 

コツ——

 

鳴るはずの足音は、やはり響かない。

 

倉庫の中は薄暗く、外の朝日が嘘のように遮断されている。

天井は高いはずなのに、妙に圧迫感があった。

 

「視界も……妙だな」

 

宮田が目を細める。

奥行きがあるはずなのに、距離感が掴めない。

 

近いのか、遠いのか——それすら曖昧だ。

 

「気を抜くなよ」

 

「ああ。ここは“仕掛け”の中だ」

 

二人は背中を預けるようにして、ゆっくりと歩を進める。

 

その時——

 

カラン……

 

何かが転がる音。

 

——いや、“音のようなもの”。

 

反響しない。広がらない。

ただ、そこに“発生した”だけの違和感。

 

とうきの視線が、床に向く。

 

転がっていたのは——薬莢。

 

「……銃を使ってる奴がいるな」

 

拾い上げた瞬間、

 

ゾワッ——

 

背筋を這い上がる、明確な“殺気”。

 

「来るぞッ!!」

 

とうきが叫んだ次の瞬間——

 

バンッ!!

 

閃光。

 

だが——

 

「……遅い」

 

宮田の声と同時に、弾丸は“逸れていた”。

 

いや、正確には——

 

“外れていた”。

 

本来当たる軌道だったはずの弾が、まるで運命を歪められたかのように、二人の横をかすめて壁に突き刺さる。

 

「……始まったな」

 

とうきの口元が、わずかに歪む。

 

不運か——それとも。

 

「ここから先は、“運”の奪い合いだ」

 

暗闇の奥。

 

ゆっくりと、人影が一つ現れる。

 

「ようこそ」

 

その声は、やけに楽しげだった。

 

「旧廃港第三倉庫へ——命を賭けた、最終試験に」

 

とうきは一歩、前に出る。

 

「宮田」

 

「分かっている」

 

短いやり取り。

 

だが、それだけで十分だった。

 

——次の瞬間。

 

空気が、弾ける。

 

「ここどこだ?宮田はどこ行った?」

 

突入してすぐに宮田と逸れてしまった。そこから善子達を探していると、壁がコンクリートで出来た、謎の空間が出てきた。

 

「何だここ?静かすぎる。」

 

そこは今までの場所とは明らかに違っていた。音が全くしない無音の空間。少しでも喋るとその空間の端まで自分の声が響いた。

 

「とりあえずここを抜けるか。」

 

俺が再び歩き始めたその時、

 

 

「ピーーーーーーー。」

 

ずっと無音だった空間に音が聞こえてきた。その音は大きくなったり小さくなりとバラバラだったが、

 

「う、何だこの音、頭が痛い。止まれ、」

 

 

そして、

 

「パァーーーン」

 

突然のバカでかい音に耳が壊れた。何も聞こえなくなり、

 

「あっ、」

 

音が聞こえないまま、ものすごい痛みを感じた。おそらく何かで頭を殴られたのだろう。脳が震えて、その場に崩れ落ちそうになる。

 

「クソッが、」

 

まんまと罠に引っかかったんだとようやく理解する。

 

 

(あんな空間罠に決まってたよな。相手はプロの殺し屋、数秒隙を作れば確実に俺を殺しに来る。)

 

「 ………」

 

だが、なぜだろう俺を殴ったはずの殺し屋が攻撃を仕掛けてこない。俺は痛みを我慢し、後ろを振り返ると、そこには、黒ずくめの男と逸れたはずの宮田がいた。

 

 

「…………」

 

宮田がなにか言っているが何も聞こえない。

 

「悪い、宮田、助かった。それとへました。お前の声も何も聞こえない、5分いや、3分でいい。時間をくれ。回復させる。」

 

「……………」

 

相変わらず宮田の声は聞こえないけど。仕方ないみたいな顔していたから大丈夫だろ。俺は人の心配より自分の回復を優先する。

 

「さてと任されてしまったからね。あなたの相手は、僕がさせていただこう。」

 

「ふん、無駄なことだな。鼓膜を潰して脳震盪を引き起こさせた。放って置いても死に至る。だが確実にその男を殺せと言う命令でな、殺し屋は本来なら人質を取ったりはしないのだが、これも計画でな。」

 

「待て、あなた達の目的は佐藤くんなのか?それならなおさら僕が頑張らないといけないね。善子さん達も僕が救おう。」

 

「プロの殺し屋を少々甘く見過ぎではないか、高校生が簡単に超えられる壁ではないぞ。」

 

「確かに拳銃やスタンガンといった武器を使用してこられては僕も埒があかなかっただろう。でも、佐藤君が受けたダメージを見ればどうも戦闘には不向きだと分かった。それなら僕にも勝機がある。」

 

「頭のキレる高校生だないいだろ。プロの力を見せてやろう。」

 

 

そう言い殺し屋はポケットから何かを出しそれを床に投げた。

 

キーーーーーーン ドガッ

 

「これは、閃光弾か。いきなり小細工か。」

 

「近距離での不意討ちこれで君の目は見えなくなった。これで仕事は終わりだ。」

 

「それは残念でしたね。」

 

「何?」

 

 

僕は、勝利に浸っていた。暗殺者を投げ飛ばした。

 

 

「な、何故目が見えている。」

 

「確かに不意討ちの目潰しだ予期してなかったら、今頃は積んでいたよ。予期していなかったらだけどね。」

 

「読んでいたとでも言いたいのか?」

 

「ああ、正確には僕ではなく、そこで寝ている彼だけどね。」

 

「どういうことだ。」

 

「ここに来る前にしつこく言われてね。プロの殺し屋達は何をしてくるか分からないだから全てに警戒しておけってね。閃光弾も使うだろうって彼は読んでいたよ。まぁ、その彼がやられちゃうなんて彼女の事でよほど焦っていたんだね。」

 

「なるほど、これは厄介な仕事のようだ。」

 

「こっちも時間がないのでね。早く蹴りをつけさせてもらおうか。」

 

宮田は空手の技術を活用し殺し屋に応戦した。それに対して殺し屋はナイフやワイヤーといった小道具で宮田を追い詰めた。

 

「俺の攻撃をさばけるなんてなかなかの腕をしているな。」

 

「まさか幼い頃から習っている武道が殺し屋に通用するとは僕も思っていませんでしたよ。もう終わらせる。」

 

そう言って宮田は相手の武器を足で蹴り飛ばし、武器を失いわずかなすきができた殺し屋に回し蹴りを直撃させた。そのまま殺し屋は吹き飛んだ

 

「この勝負僕の勝ちだ。うん?何だ?体が」

勝利宣言をした宮田の体に突如異変が襲った。

 

「済まないな、この勝負は始まった時からこちらの勝ちだったんだよ。」

 

「何?どういうことだ。僕の体に何を?」

 

「このなにもない部屋は私が仕事をするために色々改造していたんだ。そこで寝ている彼もそこまでは計算していなかったようだね。この部屋が何も無い部屋だと信じていた。」

「何が言いたい。」

 

「つまり君も私しか警戒してなかっただろう。君と戦い始めてからこの部屋に麻痺性のガスを出していた。最初の彼を倒したときも部屋の気圧を低くして大ダメージを負わせた。他にも様々な仕掛けを君達のために用意してるがもう必要なさそうだね。」

 

「なんでお前にはガスが効いていない?」

 

「あー、単純な話だよ。君と戦い始めてから私は呼吸をしていない。それだけだ。」

 

「何?息を吸わずにあんな激しく動いていたのか?」

 

「この世界で生きていくには当たり前だが、君達高校生には関係ないからな。高校生二人にここまでするのは大人気ないと思うが、さっさと君を殺して仕事を終わらそう。他の殺し屋の出番はなくなるがな。」

 

「49」

 

「何?何か言ったか?」

 

「気にしないでくれ時間を数えてただけだ。」

 

「何そこで寝てる彼のことか?残念だがあれはもう死んでるよ。だから君も向こうに行ってあげな。」

 

「2分56」

 

殺し屋が僕に止めを刺そうとこちらに向かってくる。残念な事に体が痺れて避けることができない。いや、避ける必要が無いの間違えかな。

 

「3分」

 

僕の体にナイフが刺さる直前。殺し屋の体が遠くに吹き飛んだ。

 

「まさかホントに復活するとはね。殺し屋も言ってたけど。僕の目からもホントに死んだのかと思ったよ。耳ももう大丈夫なのかい?」

 

「あ?当たり前だろ、耳が聞こえなかったら善子助けたときにありがとうってかわいい声で言われても聞こえないだろ?」

 

「馬鹿な確かに鼓膜と脳を破壊したはず。なんでそれで生きている。」

 

佐藤とうきに吹き飛ばされた殺し屋は立ち上がりながら震えた声でそういった。

 

「だから、言ったろ、善子の声も聞けないし、脳が潰れたら善子のことも考えれないだから、3分で治したって。」

 

「あ、…………」

 

今まで様々な経験をしてきたであろう殺し屋もさすがに声が出なかったようだ。僕だって逆の立場だったら佐藤とうきの言っていることがわからなくて同じような反応になると思う。

 

 

「そんなことより、この小細工やろう、お前小細工の正体はもうわかったからな。まず、」

 

「それもう聞いた。」

 

「なんだ、もう種明かししたのか?じゃ、先に進ませてもらう。」

 

「ま、待て何を言っているのか全くわからないがここは通らせないぞ。」

 

「小細工の正体がわかったんだからお前に勝機はないぞ。」

 

「何?」

 

ドゴッ

 

俺は殺し屋が動き出す前に渾身のパンチをおみまいした。

 

「最初から、小細工される前にこうしてたら済んでいた話だったな。」

 

「……増援か」

 

暗闇の奥から、複数の気配。

 

一つじゃない。

 

二つでもない。

 

——“群れ”だ。

 

「ちっ……さすがに数で来たか」

 

宮田がわずかに構えを低くする。

 

「佐藤くん、これは——」

 

「無理だな」

 

即答。

 

「は?」

 

「このままだと、お前も死ぬ」

 

淡々とした声。

 

だがその目は——決まっていた。

 

「宮田」

 

「……なんだい」

 

「吉田雄飛、呼んでこい」

 

一瞬の沈黙。

 

「……君はどうする」

 

とうきは、笑った。

 

「時間稼ぎだよ」

 

「それはつまり——」

 

「ああ」

 

一歩、前に出る。

 

「全部、俺がやる」

 

宮田は数秒だけ黙り——

 

「……死ぬなよ」

 

「死なねぇよ」

 

「そうじゃない」

 

宮田は振り返らずに言う。

 

「“戻ってこい”」

 

——その一言で、空気が変わる。

 

とうきは少しだけ目を細めた。

 

「……ああ」

 

宮田が走り去る。

 

その背中を見送って——

 

とうきは、静かに呟く。

 

「さてと」

 

胸の奥。

 

あの声が、笑う。

 

???「やっとかよ」

 

「……出しゃばんな。お前には主導権を渡さねぇ」

 

???「いいや、もう遅ぇ。全部壊す。お前の大切なものも。全部。」

 

ドクン——

 

心臓が、嫌な音を立てる。

 

「今回は——」

 

ゆっくりと顔を上げる。

 

「俺がやる。」

 

その瞬間。

 

空気が、壊れた。体の中にドス黒い感情が流れ込んでくる。だが…

 

「——アサルトバーサーカーモード」

 

視界が赤く染まる。

 

音が、歪む。

 

身体のリミッターが、外れる。

 

だが——

 

「……意識は、手放さねぇ」

 

——そう言ったはずだった。

 

だが、次の瞬間。

 

自分の足が、勝手に動いた。

 

「……は?」

 

一瞬の違和感。

 

だが、その違和感すら——

 

すぐにどうでもよくなる。

 

???「変な小細工なんてしてねぇでさっさと俺様に意識よこしやがれ!!」

 

「……チッ」

 

ギリギリで、踏みとどまる。

 

「へぇ……」

 

殺し屋の一人が、笑う。

 

「それが切り札か」

 

「まぁな」

 

次の瞬間——

 

姿が消える。

 

——ドンッ

 

一人、消し飛ぶ。

 

「は?」

 

「遅ぇよ」

 

背後。

 

——バキッ

 

二人目。

 

「数で来たのは正解だ」

 

さらに一歩。

 

床が砕ける。

 

「一人だったら——」

 

振り向く。

 

その目は、完全に“人じゃない”。

 

「一瞬で終わってた」

 

——地獄が始まる。

 

「チッ……!」

 

殺し屋の一人が距離を取る。

 

「速すぎる——!」

 

だが、遅い。

 

——ドンッ

 

言葉を言い切る前に、体が宙を舞う。

 

「次」

 

感情のない声。

 

——バキッ

 

骨が砕ける音。

 

「囲め!間合いに入れるな!」

 

「無理だ——!」

 

視界の端で、仲間が消える。

 

一歩、踏み出すたびに——一人。

 

また一人。

 

数が、意味を失っていく。

 

???「もっとだ」

 

「……まずい」

 

息が荒い。

 

だが止まらない。

 

むしろ——加速する。

 

「終わりだ」

 

最後の一人の首元に手をかける。

 

「ま、待——」

 

——ドスッ

 

意識が、落ちる。

 

静寂。

 

立っているのは——とうき一人。

 

「……」

 

肩で息をする。

 

視界が、揺れる。

 

???「こわせ。」

 

「頭が……割れそうだ」

 

奥へ進む。

 

重い扉。

 

——蹴破る。

 

ドゴォン!!

 

中にいたのは——

 

拘束されたAqoursのメンバー。

 

「……とうき?」

 

善子の声。

 

その瞬間——

 

一瞬だけ、“色”が戻る。

 

「……無事か」

 

「来るの遅いのよ……バカ」

 

「悪ぃな」

 

手早く拘束を解く。

 

ロープが切れる。

 

一人、また一人。

 

「助かった……」

 

「ありがとう……」

 

その声が、届く。

 

だが——

 

???「壊せ」

 

「……黙れ」

 

頭が、ズキズキと痛む。

 

「とうき……?」

 

善子が一歩近づく。

 

「顔……やばいわよ?」

 

「大丈夫だ……問題ねぇ」

 

そして、最後の人質である曜さんのロープを解いたそのとき。佐藤とうきの頭に凄まじい衝撃が走った。

 

「まずい、もう限界が、」

 

俺は限界を感じ曜さんを投げた。

曜「うわぁー。助けてくれたのはありがたいけどもうちょっと優しくおろしてほしかったのであります。」

 

「全員俺から離れろ。…………いや、もうおせぇ。」

 

善子「もしかして、とうき!」

 

「まさかこの俺様を制御しながら戦うとは思ってなかったぜ。いつも邪魔しやがって。今日こそぶっ壊してやるよ。」

 

俺様はそこに落ちていた鉄パイプを拾い。まっすぐさっき飛ばした数メートル先の女に飛ばした。当れば顔面に穴が開く威力だ。

振り抜いた、その瞬間ー

キンッ

 

「おい。何をしている?」

 

「てめぇは?こいつの中から見たことあるぞ。」

 

曜「雄くん!!」

 

——その名を聞いた瞬間。

 

ほんのわずかに、

 

“佐藤とうき”の意識が揺れた。

 

ー第26話完ー

 

 

次回最強VS最恐

 

 

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