「―――とまぁそういうわけでぇ、ボクモンスター召喚するの得意なんでしゅ☆」
ここはどこだって?
女の子のお部屋!!キャッ!!
「はぁ……それは、なんとも」
「なんだか、頭が痛くなってきましたわ……」
「……ふむ」
それって本当!?……ウ・ソ☆
「真面目に説明しなさいよ!!」
「っだい!?」
残念!!学院長サンのお部屋でした!!
冗談はさておき、なんかさっきの決闘のこれやそれやとか、オレ自身のあれやどれやについて知りたいんだって。
はー……ぶっちゃけすげーーめんどくさい。
……イグニスと人間の戦争に関するもの以外、もう洗いざらい話したしな。帰りたい。
「なんだかとても複雑な状況なんですね……アイさん……」
「同胞もなくたった一人で見知らぬ世界に召喚されて……うぅ……僕だったら寂しくて途方に暮れてしまうよ……」
オレとご主人タマのルイズはもちろん、ギーシュとシエスタも巻き込まれ。
こいつらにも悪いしさー、帰ろーよん!
「……ミス・ヴァリエール。使い魔の扱いは慎重にすべきですよ」
「そうだぞー!!AIは優しくしないと死んじゃうんだぞーー!!」
「うっさい!!この程度で死ぬなら決闘の時に死にまくりじゃないの!!」
「……しーん」
「自分で言ってんじゃないわよ……」
「ふほほ」
おじいちゃん笑ってんじゃねーよ!!
オレは落語家か!!
「オールド・オスマン……笑ってないであなたも止めてくださいよ」
「まぁよいではないか。見たところ険悪な仲でもなし、ちょっとしたじゃれ合いじゃろうて」
「じゃ、じゃれ合ってなんかいません!!」
「おじいちゃん目が腐ってんの?眼科行った方がいいぞ?」
「失礼な口利くんじゃないの!」
「顔はやめて!!」
「もう!ばか!!」
「(口では怒っておるが……楽しんでおるのが顔に出ておる。内心はこの使い魔との触れ合いを喜んでおる証拠じゃな。……あのヴァリエールの三女がのう。よほどこの者が気に入っていると見える)」
「バカって言った方がバカなんだぞう!!」
「じゃあ結局あんたもばかね!ばーーか!!」
「なんだとこのバ……はっ!!」
「……なによ?」
「これは……無限ループ!!」
「だからなんだってのよ!!」
「あいだい!?」
「ほっほっほ!」
「(よきかなよきかな。これでこの子の進路にも光明が見えてきた。肩の荷が一つ下りた心地じゃの)」
「――こほん!!」
メガネのおねーさん咳払いで、カオスを極めそうだった部屋の空気は落ち着きを取り戻した。
おねーさんの視線がオッサンを差し、おねーさんの意図をくみ取ったオッサンはおずおずと話し始めた。
「ミスタ・コルベール、よろしくお願いします」
「では、今アイ君が話してくれたことをまとめましょうか」
「お、オナシャス」
「君は『エーアイ』という意思を持ったゴーレムような種族であり、ミス・ヴァリエールに召喚される前は『ニホン』という異世界で暮らしていて……」
「へぇ」
「そして君がミスタ・グラモンとの決闘で見せた魔法……のような技は、君が元いた世界で流行していたカードゲームを再現したもの、と……こういう理解でいいかな?」
「へぇへぇ」
「……(適当に返事してんじゃないわよ!)」
「「「……はぁ」」」
爺さんとその秘書っぽいメガネのおねーさん、そしてルイズに召喚された時にも見たメガネのオッサンは揃ってため息をついた。
「――あの、すみません。一つ質問が」
「はい?」
床に座り込み、さっきご主人タマに蹴られたスネを撫でていると、メガネのおねーさんから質問。
なんじゃろなったらなんじゃろな。
「『エーアイ』についてですが、今ミスタ・コルベールに説明していただいたように『意思を持ったゴーレムのようなもの』として定義するのでしたら……我々メイジの操るゴーレムにも、意思を持たせることは可能なのでしょうか?」
あー……想像以上にヘビーなやつ来たな……
「ふむ……」
ご主人タマもギーシュも気になってるみたいで、視線をオレに注がせる。
「ゴーレムに意思を持たせる方法ねぇ……」
期待されんのはまぁ悪くない。
――でもな。
「いやぁ流石のオレでもそこまでは知らないっすよー!」
言えねぇ。
こればっかりは、言えねぇ。
「とすると……あなたはご自分がどのようにして意思を得たのかもご存じでない?」
「まぁな。ふと気が付いたら……オレはオレとして、オレをやってたね」
「……そうですか。失礼いたしました」
「いやいやぁ……あ、その代わりといっちゃぁなんだけど」
「はい?」
「見たい?モンスター召喚するとこ!」
デュエルディスクにデッキをセット。
簡易VR空間が展開され、部屋全体を覆っていく。
「おぉ!!」
「これは、すごい……」
「へへへ、すごいのはこっからだぜ!!」
デッキから手札五枚をドロー。
「《ドンヨリボー@イグニスター》を召喚!!」
<ドヨヨ…>
そしてプレートが展開されていることを確認し、中央のモンスターゾーンにカードを置いた。
「わぁ……!」
「初めて見る使い魔だね!」
「こいつは《ドンヨリボー》。さっきのデュエルで召喚した《ドヨン》……の弟的存在でな。……そういやこれが初召喚か」
「あら、そうなの?」
「おう。こいつの効果はフィールド、もとい召喚された状態だと使えないのさ」
《ドンヨリボー》の効果は大まかに言うと、
『手札から捨てて《@イグニスター》の受ける戦闘ダメージを無効にする』
『墓地のこのカードを除外して《@イグニスター》か《Ai》カードによる効果ダメージを倍にする』の二つ。
「だからこいつ自身を召喚する機会は滅多になくってよ。でもその分こいつの存在を気取られづらいから、相手の不意を突いたりできるんだ」
「ふむ……つまりは自分が受ける痛みをゼロにし、さらには敵に与える痛みを倍にする能力を持っているということですか」
「しかもそれを不意打ちできるのね。……見た目のわりにえげつないわねその子」
なにやら気恥ずかしそうにもじもじと手を揺らす《ドンヨリボー》。
照れてんのか?
へへ、可愛い奴だぜ。
「んじゃこっからさらに……開け!闇を導くサーキット!!」
「おぉ!」
「召喚条件は『レベル4以下のサイバース族モンスター1体』!!オレはレベル1の《ドンヨリボー》をリンクマーカーにセット!!」
部屋の天井にサーキットを出現させ、紫の矢風となった《ドンヨリボー》を斜め左下のマーカーにセットする。
「リンク召喚!!」
そしてサーキットの光の中から現れたるは、もちろんこいつ!!
「来い!《リングリボー》!!」
<グリグリングー!>
ポップでキュートなまぁるいフォルム。
相棒に託したかつての友達、《リンクリボー》。
その生き別れの兄弟……てな設定で生み出した、オレのデッキで唯一の《@イグニスター》に属さない純粋なサイバースモンスター。
それがこの《リングリボー》だ。ちなみに中で暮らせたりする。
「ほほぉ!使い魔を別の使い魔に!!……これはたまげた!!」
「《リングリボー》さん……わぁ、とても可愛らしい!」
「生意気な目つきね……なんだか誰かさんにそっくりだわ」
<グリリー!>
なにやら若いお嬢様方から中々の高評価を得ている《リングリボー》くん。
嬉しそうに空中で一回転とかわいさアピールに磨きがかかっている。
……ていうかなんか、オレのモンスターたちにどことなく意思を感じるのは気のせいか??
「この子も新しく見るね。どんな能力を持っているんだい?」
「こいつはトラップを無効にして除外できる。魔法っぽく言うと、罠の発動をなかったことにできるってとこだな」
「おぉ!それはなんとも素晴らしい!!」
オッサンはじめ、センセー方からの高評価もちゃっかり。
色んな意味で侮れないのぞ、リンク1ってね。
<グリ!>
「おん?」
感心していると、なにやら《リングリボー》が周囲を見渡し始め……
<グリグリングー!>
「え?……きゃあぁあ!?」
「ほぉおおお!?」
突然、メガネのおねーさんのスカートの中に潜り込んだ……だとぉ!?
「どういうことだい!?」
「ちょ、あんた何やらせてんのよ!?」
「いやオレなんも言ってねーし!!」
「じゃぁなんなのよ!!」
「……待て」
《リングリボー》の行動の意味に思考を巡らせる。
あいつの効果は『トラップの無効化』。ならあいつの奇行はそのアイデンティティに則ったモノのはず……ならば。
「……多分、何か"罠"でも見つけたんじゃねーの?」
「ミス・ロングビルのスカートの中に?」
「(ぎくり)」
「そうとしか思えねぇ」
「あ、ちょ、くすぐっ、やめ……て、ったらぁ……!!」
<グリリ!>
と、どうやら"罠"が見つかったようだ。
なにかを尻尾で捕縛して……あれは……
「ネズミ?」
どこにでもいそうな普通のネズミ……でもないよう。
そのネズミを見た瞬間、センセー方の顔があっというまに真っ青になった。
「『モートソグニル』…………!!」
「え、なに?誰かのペット?」
「オールド・オスマンの使い魔よ!」
「はぁ!?」
え、ネズミが!?
あのおじいちゃんの!?マジで!?
「…………また、ですか」
「いや、あの、その、これは罠なんじゃ!!どこかに賊が忍び込んでいてもすぐにワシの"眼"に入るよう監視に出させておいたんじゃよ!!……なぁモートソグニル?」
ちゅーと鳴くモートソグニルくん。
いやだからってなんで女教師のスカートの中に……
「うわ、生盗撮とか……ガチのセクハラじゃん」
「ち、ちちちち違ーーう!!監視の為って言ったじゃろーが!!」
「私の下着のですか?」
「そう!!……いや違う!!」
「あなたって人は…………!!!」
「あ、ちょ、待ちなしゃい!!」
「すまないみんな、今日はもういいから……」
「はい」
「はい」
「はい」
「じゃ」
「あ、き、君たちーー!!」
「許さーーーーん!!!」
「ぎゃーーーーー!?」
ネズミは返してあげました。ちゃんちゃん