部屋に帰ってからしばらく―――――。
「ちびっこ6体の効果はざっくり言うと……《ドヨン》が墓地からモンスターを回収、《ピカリ》がデッキから魔法か罠を一枚手札に、《アチチ》が―――」
私は
「あら?水色のが一枚だけあるわね」
「あぁ、こいつは『儀式モンスター』つってな。儀式魔法カードで特殊召喚する特別強力なモンスターなのよ」
「儀式!わかりやすく特別感があるわね!!……てことはかなり強いの?」
「そりゃもう。あ、ここらへんのつよつよモンスターたちについてはあとで詳しく説明するから頭の隅っこに置いといてくれ」
「わかったわ」
最初は一人で確認しようとカードを貸してもらったけど……結局どのカードも書かれている文字を全く解読できなかった。全く癪だわ。
カードを使う度に
「……だからなんでこんな複雑な文字を使ってるのよ!!」
「なんだよ急に」
「何種類あるのよあんたの世界の文字!全っ然覚えられないわ!」
「あぁそういう……えーと常用漢字も含めて、大体二千文字くらいかな!」
「2000?!?!?」
目眩で倒れそうだった。
「わはは!初めて日本旅行する外国人みてぇだな!見たことねーけど」
「無理!とてもじゃないけど無理!!!」
「まぁ安心しろよ、日本語が異常なだけで他のとこは三十字前後だから」
「そう……え?
ちょっと待ちなさい」
「デデン!!!!さてここで問題です!!!」
「待ちなさいよ!!!」
「オレのいた世界に存在が確認されている言語の数。それに一番近い数字は、以下のどれでしょーーか!!!
①10
②50
③100
④5000 ……さぁどれ?」
「最後の桁がおかしくない!?!?!?」
こんのバカ使い魔……ニヤニヤしてんじゃないわよ!
うーん……最後だけ数字が飛び過ぎだし……いや流石に……
「……③?」
「ブッブー!!!」
「はぁ!?!?」
「正解は④!!大体7000言語くらいあるらしいぜ!!!」
「…………」
………………
「…………。」
「もしもぉ~し」
「信じられるかーーーーーッ!!」
「ばいッ!?」
ふッッッざけんじゃないわよ別れすぎでしょ!!??
なんなのよこいつ……なんでそんなに私をイラつかせたいわけ!?
「理不尽だ……」
「あんたが言うな」
ほんっとにこの使い魔は……
「……はぁ」
すごい力を持っているのは確かなのに……
なんでこんなにも感性が子供っぽいのかしら。
見た目だけは立派な二枚目なのに。
「ねぇ」
「おん?」
「そういえばあんた、何歳なの?」
「何歳……てぇと、造られてからの年数でいいのか?」
「うん。わかる?」
「んーと……」
指を折って数える
……まさか、今初めて数えてるの?
「十年……?」
年下じゃないのよ!!
「……あ、あははははは!!あんた……あんたそのナリで十歳!?」
「はぁん!?なんだよ文句あんのかよぅ!!」
「や……っ!……っ!」
「ツボりすぎだろ!!」
なるほど……あーー、すごい納得したわ。
「どうりで……色々と幼稚なわけだ」
「な、なんだとーー!?」
「あはは、ごめんごめん!私が大人げなかったわね」
「お、おぉぉおめー……このオレ様をそんな生暖かい目で見て……ただで済むと思ってんのかーーん!?」
「まぁまぁ、うふふ」
カードについてはどこへやら。
使い魔の意外な弱みを見つけて、それがおかしくって。
昨日と今日で意味不明な出来事ばっかりだったけど、でも今は考えることがどうでもよくなっちゃった気分。
「笑ってんじゃねーー!!」
今はこのおかしな使い魔で笑っていたい。
そんな午後だった。
✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️
(あぁ……暇だー……)
俺の名は『デルフリンガー』。
かつての武勇はどこへやら、場末の武器屋で絶賛投げ売り中の……しがない魔剣さぁ。
『ガンダールヴ』の出現を待ちながらあっちへ売られてこっちへ売られて。
ハルケギニア中をたらい回しにされ続け幾星霜。
(毎日毎日、赤っ鼻の店主の野郎が無知な客を騙して笑うのをただ樽の中で眺める日々……最後に振るわれたのって、いつだったかなぁ……)
退屈過ぎて嫌になる。
……今日もなんもなさそうだし、寝ちまおうかな……
「――さーて、プレゼントプレゼント……と」
「…………」
……お、ありゃ貴族のガキじゃねぇか。しかも二人。何年ぶりだ?
「いらっしゃいませェ~……おや、学院の生徒様でしたか!何をお探しデショ」
「とりあえず、この店で一番大きくて太い剣を持ってきてくれる?」
「へい!……そちらのお嬢さんはなにかお探しですかい?」
「いい。付き添いだけ」
「わかりやした!少々お待ちを!!(……へっへっへ、久々に上等なカモがお出でなすった~~!!)」
あーあ。適当に見た目だけ派手なナマクラを掴ませられるなぁありゃぁ。
もうこの店も随分長いこと居付いちゃいるが、こういう"常識"を知らねぇいいとこの坊っちゃん嬢ちゃんが欲の突っ張った大人の餌食になってる様は何度見ても居たたまれねーぜ。
ま、これも一つの社会勉強だな。
「こちらはどうです?」
「あら、いい金色!!」
「へへ、そりゃもう!なんせかの高名なゲルマニアの錬金魔術師、シュペー卿の鍛えた業物ですんで!!」
「まぁ!故郷の品だなんて、運命を感じるわ!」
「へへ!そりゃどうも!!」
「おいくら?」
「新金貨で三千というところですな!!」
うぉ、強気に出たなぁおい!!
まぁここんとこ戦争ムードが高まってるっつってやたらに仕入れまくってたし、ここらでまとまった金を……て腹積もりか。セコイ野郎だな。
「……ふ~~ん?」
「……どうしやした?」
と、なんだ?妙に探るような目ぇしてんな、あの嬢ちゃん。
……おぉ!?
「ねぇ……なんだかこの店、暑くなぁい?」
「はわっ!?」
で、でかっっっっ!!??
「はぁー……っついわぁ……シャツ、脱いじゃおうかしら……」
「お、お客様……!?」
み、見えちまうぞ!?
ビーでチクなあれが!!見えちまうぞぅ!?
「ところで店主さん?」
「はいぃ!?」
「ごめんなさぁい聞き逃しちゃってぇ……この剣、おいくらだったかしら……?」
「え、えぇとぉ……」
おぉ、おぉおおお!!
まだ下げられる……だってぇ!!??
おぅおぅおぅ今ドキのガキは随分育っちまうんだなぁ!?
びっくりした!!びっっっくりした!!
「二千、五百で……」
「五百ね?」
「なばっ!?」
ふ、フトモモもだとぉ~~~!?
「…………(うるさいな、ここ)」
な、なんつーことを……胸だけでなく脚までも……!!
や、やべぇ……この嬢ちゃん、『女体』っつーこの世で最も恐ろしい"武器"の一つを……完璧に使いこなしてやがるっ!!!!
「新金貨で五百……でよかったかしら?」
「は……」
「よかったわよね?」
「はいぃ~~~……」
轟沈!!店主轟沈!!
もうこの店は終いだな!!ワッハハハハハ!!!こりゃおもしれーや!!ここ数百年で一番痛快だぜ!!
…………んん?
「…………これか」
……あれ。
俺、もしかして掴まれてる?
「………………」
って誰かと思えばツレの眼鏡娘か。
随分ボヤっとした娘っこだな。
……むむ!?
待てよこの握り加減……
「あら?やっぱりタバサも何か買うの?」
「うん」
わかる……『ガンダールヴ』の剣である俺にゃぁわかるぜ。
間違いねぇ。この娘っこ、相当な手練れだ。
それも大抵の戦士が即死しちまうレベルの修羅場を何度もくぐってきてやがる。
「これください」
「えぇ!?」
……ってなんだとぉ!?
「そ……それですかい?こう言っちゃぁなんですがそいつはどうしようもないナマクラで……」
おい!!十年来の仲だろうが!!
ようやく買い手が見つかったのによぉ!!せめて褒めろや!!!
「構わない。いくら?」
「えぇっと、新金貨百枚で……」
「じゃ、これと合わせて六百枚ね」
「はい?」
「買ったわ」
マブい嬢ちゃんが早口で値段を確認したかと思えば、『600』と書かれた小切手をぺらりと放る。
「じゃ」
「……??」
そしてそのまま、風のように店を出る俺と嬢ちゃん二人。
「!!……しまったぁ~~~!!!」
気づいた時にはもう遅い。
長年の悪行のツケが回ってきたんだよ。
(じゃぁなオヤジ。ま、長生きしろや)
「タバサ、ホントにそれでよかったの?」
……ん?
「全体的に錆びついてるし、実戦じゃあんまり役に立ちそうもないけど……」
「別にいい。戦いには使わないから」
「あら、じゃぁ何に使うの?」
なんだなんだ今更返品なんて俺は許さ
「彼に逢わせて、反応を見る。――この剣と同じ、意思を持った器物である彼に」
「ウソぉ!?」
……なんだって?
「意思って……まさかその剣って!」
「『インテリジェンスソード』」
ぎくぅッ!!??
「喋って」
…………あわわわわ
「喋って。一言でいいから」
『……こりゃ、おでれーたな。ハハ……』
「わっ、気持ち悪!!」
『んだとこらぁーー!!』
あぁあ……なんつーヤバイ女どもに買われちまったんだ俺は……
(まだ見ぬ当代の『ガンダールヴ』よぉ!早く迎えに来てくれぇ~~~!!)
✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️
「だからぁ!!『時に』って書いてあるのがタイミングを逃す効果で!!『場合に』って書いてあるのが逃がさない効果なんだよ!!」
「……もう一回言ってくれる?」
「もーやだ!!説明やだ!!こういうもんなのーー!!」
「言語の数以前の問題じゃないのよ!?」