ゼロの使-Ai-魔   作:ポロシカマン

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騙し-Ai……①

「『使い魔の品評会』!?」

「あれ、知らなかったのかい?」

 

 ギーシュとAi(アイ)の決闘から数日たった昼下がり。

 私は土系統の魔法についてギーシュに教わっていた。

 魔法を使えるようになる!とまでは思わないモノのなにかコツくらいは掴んでみせると杖を振るってはみたものの……やっぱりというかなんというか、何度やってもただの爆発にしかならなかった。

 今までずっと出来なかったのだから、突然道が拓けたりはしないと覚悟はしてたけど……やっぱり堪える。

 そんな私を見かねたのか、ギーシュはシエスタを呼んでグラモン家御用達のとっておきの紅茶を振る舞ってくれていた。

 その席でギーシュが使い魔のビッグモールに「あぁヴェルダンデ、今度の品評会で君の美しさをアンリエッタ王女殿下もご理解してくださるだろう……」と呟いたのを聞いてしまい……今に至る。

 

「……忘れてた……」

「ルイズにしては珍しいね」

「ミス・ヴァリエールはここ数日、Ai(アイ)さんのことでだいぶお忙しそうでしたし、無理ないですよ」

「それはそうなんだけど……」

「なんでも最も素晴らしい使い魔を持つメイジには、アンリエッタ王女様自ら褒章を賜与してくださるそうだよ」

「なんですってぇ!?」

「だからほら、見たまえ」

 

 ギーシュがバラを差した方を見ると、キュルケやこの間の儀式で使い魔を召喚したメイジたちが挙って、何やら見世物の練習をしているところだった。

 

「皆さん、はりきっていらっしゃいますね」

「はぁ……あいつをアンリエッタ様にお見せしなきゃならないなんて……」

「何を気に病むんだいルイズ!彼ほど派手な特技を身に付けている使い魔はそうはいないだろう?」

「……問題はそこじゃないのよ」

「というと?」

「あいつが、人を敬った話し方をしてくれると思う?」

「「……あー」」

 

 しくしくとお腹の底が痛むのを感じながら問いかける。

 その一言で、ギーシュとシエスタは納得してくれたようだった。

 

「悪い男ではないんだがねぇ……」

「悪い人ではないんですけど……」

「悲しい評価ね……」

 

 まぁ私もそう思うけど。

 

「あぁでももちろん彼のことは好ましく思っているよ! なんというかね……彼と話しているとこう、十年ほど若返った気分になるね。ただ何も考えず、兄上たちと屋敷の庭を走り回っていた頃のように」

「私もです!故郷の村の小さい子たちと遊んでいる時みたいな気分になります!」

「あ、やっぱりそういう目で見てたのね」

 

 どうやら私の言わんとしたことは十分に二人も認識しているようだ。

 

「あいつ、良くも悪くも子供なのよね……」

「いたずら好きで無邪気で嘘つき……うんうん」

「可愛らしいですよねー」

「え?」

「え?」

「……え?」

 

 ……まぁ可愛いかどうかはさておき。

問題は変わらず、あいつを学院外のやんごとなき御方達の前でどう振舞わせるかなのだった。

 

「いっそのことしゃべらせない、というのはどうかな」

「無理ね無理無理。絶対我慢できないわ」

「きちんと必要性を説明すれば、ちゃんと場に相応しい言葉遣いをしてくれるんじゃ……」

「それは私も考えたけど、やっぱり一から教えるとなると時間が足りないわ。私たち貴族の子供だって、嫌というほど練習して、ここ最近になってようやく自然にできるようになったんですもの」

「いやー、大変だよねぇあれは!」

「(この人は特に大変そうだなぁ……)」

 

 シエスタの生暖かい視線にも気付かず、長々と修行の思い出を語りだすギーシュ。

 

「……そろそろお暇するわね」

「あぁ。ルイズ、次はいつにするんだい?」

「んー……ちょっと例の品評会の準備で忙しくなりそうだし、それが終わって暇になったら集まりましょうか」

「わかったよ」

「じゃぁね。……あ、紅茶ごちそうさま。美味しかったわ」

「うん!それは良かった!!」

 

 笑顔で見送るギーシュとシエスタに別れを告げ、昼寝しているAi(アイ)を起こしに行く。

 

「あら…………?」

 

 いつもの原っぱ、確かにここで寝ていたのを、さっき見たばかりなのに。

 

 Ai(アイ)は、そこにいなかった。

 

 

 

 

✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️

 

 

 

「つん、つんつん!!」

「――おぉう!?」

「やっと起きた!!」

「……あぁん?」

 

 気持ちよく昼寝していたっつーのに、気づけばどこかの森の中。

 一体全体何が起こってんだ??

 

「……あれー?」

 

 目の前には謎のマントマン。フードに隠れていて顔のよく見えない、いかにも「怪しんでください」といった風貌だな。

 しかも土地勘も何もあったもんじゃねぇこんな帰り道もわかんねぇ殺風景な場所に連れてこられて……かなりやべぇ状況だぜ。

 

「何モンだこの野郎!!」

 

 シュバっと立って、ビシッと指さす。

 こんな時だ。いつも以上にしっかり決めとかねぇと……状況の優先権はオレが握った!!

 

「お前なんかに名乗る名はないのね……ない!!」

「そうかよ。つーか今噛んだ?」

「だまるのね!!かんでないのね!!……はっ!?」

「……どしたの?」

「やっぱりお前はいけ好かないのね……いけ好かない!!」

 

 なんか知らないうちにめっちゃ敵意向けられてんじゃんオレ。

 つーかどんだけ口調隠したいんだよ。全然隠れてねーんだけど。

 ……まぁいいや。見えてる地雷にツッコむほどオレもバカじゃねぇ。

 

「……もしかして寝てる間にここに連れてきたのか?」

「そうなのね……だ!!」

「むふっ」

「何がおかしいのだ!?」

「……はい、すんません」

 

 ダメだ、笑かそうとしてるとしか思えねぇ……!

 

「で、用は何だよ?オレこう見えて超忙しいんだけど」

「のんきに昼寝してたくせに……まぁいいのn……だ」

 

 お、我慢できたな。偉い偉い。

 

「お前に聞きたいことがある……のだ」

「へぇーえ。オレの何が知りたいわけ?」

 

 とりあえず、話だけは合わせとくか。

 

 

 

 

「――お前は、人間をどう思うのだ?」

「大嫌いだ」

 

 

 

「……意外なのだ」

「そうか?」

 

 まぁちょっと答えが質問に被せ気味だったかもしれない。

 

「あんなにいつも人間と一緒にいるのに、か?」

「そりゃあ、あいつらのことは好きだからな」

「……????」

「なんで頭捻ってるんだよ」

「人間が嫌いなのに……人間は好きなのか……??」

 

 あー、そういうことね。

 

「オレが嫌いなのは『集団、種族としての人間』だよ。……目的は立派なのに大したシミュレーション、予測もしないうちに実行して失敗したり、間違ってると分かってるのにアホな多数派の圧力に負けてアホなことしたり……戦争とかなんやらで無意味に同じ人間を殺し続けたり、そういう欠点を欠点のままにしてる『人間』だ」

「……それはわかる」

「でもよ、そんな人間の中にも、たまにいるんだよ」

 

 

 ――人は強くなる。その過程で争いを生むかも知れない。

 だがそうなったとしても戦い続けるしかないんだ。

 答えは無くとも、繋がり続ける為に……!!

 

 ――誇り高く最後まで戦いなさい、Ai(アイ)

 あんたはこの、『ゼロ』のルイズの使い魔なんだから!!

 

 

「自分を変えて、周りのみんなも変えていく……超カッコいいって思えるヤツがさ!集団の中でも埋もれねぇ、そんなキラッキラしてるカッコいいやつらがいるんだよ!!」

「きゅい!?」

「大好きなんだ!愛してるよ!!」

「……あ、愛?」

「おう!だからオレは、そんなスゲーやつらのいる人間全体の味方でありたいんだ!!」

 

 傍にいたい。愛したい。

 

「わかるか!?オレのこのビッグな愛!!」

「むぅ~……なんだか話が大きすぎるのだ。煙に巻こうとしてるのか?」

「そんなんじゃねーよ本心だ!!」

「きゅいぃ……わからん」

「その証拠に……オレの名前、Ai(アイ)っていうんだ。人を愛するって意味で、Ai(アイ)なんだよ!!オレの一番好きな人間が付けてくれた名前だ!!スゲーだろ!!」

 

 わっははは!!と大笑い。

 やっぱり、何度言っても誇らしいよな。オレのこの『Ai(アイ)』って名前は。

 

「……なるほどなのだ」

「おぉ!納得してくれたか!!」

「うん」

 

 なんだよ意外と話の分かるやつじゃ……

 

「お前、要するにお人好しなのね!!」

「……はぁ!?」

 

 なかった。

 

「なんか黒いし自分のご主人様を裏切る気満々の頭の切れる悪いヤツだと思ってたのね!!なのに全然無害なのね!!やっぱりあいつが勝手に敵視してただけだったのね……」

「偏見が過ぎるだろ!!色で性格を判断してんじゃねーよ!!つーか口調隠れてねーぞ!!」

「……なんかめんどくさいからもういいのね」

「適当すぎるだろ!!」

 

 オレが言うのもなんだけど!!

 

「なんでそんなに人間が好きなのかはイマイチわかんなかったけど……悪いヤツじゃないみたいなのはよくわかったのね、だから今日はもうカンベンしてやるのね!!」

「ふざけんな!!」

 

 勝手にこんな知らん場所に連れてきて評価しやがって!!

 この大迷惑野郎!!

 

「大体お前何者なんだよ!!オレは名乗ったぞ!!お前も名乗りやがれ!!」

「わかったから静かにするのね」

 

 目の前のあんちくしょうがフードを外す。

 そして露わになった素顔は、さっきから聞いていた子供のように高い声とマッチするような、まぁ可愛らしい女の子のそれだった。

 

「ホントはやだけど名乗ってやるのね。名前は『イルククゥ』!!よーく覚えておくのね!!」

 

 えっへん、とそのやたらアピってくるドデカいおテェストを張りながら、鼻を鳴らすイルククゥちゃん。

 普通にイラつく。

 

「さっきから聞いてりゃ……まさかお前も、オレと同じ人間じゃないヒト型の異種族ってやつか?」

「くわしくは言えないのね。でもそういうことでいいのね」

「そうかい……ていうか、もしかしてオレお前に会ったことある?なんでそこまで一方的にオレのこと知ってんだ?」

「それはもちろん、あの時の決闘を見てたからなのね!!」

「あぁそういうこと……で、なに?結局お前はオレの人間への感情を知りたいがために、寝てるオレをこんな人気のない森に連れてきたってことか?」

「そうなのね」

 

 ……こいつ……かわいい顔じゃなかったら一発ぶん殴ってたところだぜ……

 

「イルククゥもその、ちび……人間と色々あって」

「……ふん?」

「境遇の近いお前と、お話したかったのね……」

「だったら普通に話しかけて来いよ。ったく、せっかく気持ちよく昼寝してたってのにさ」

「それはごめんなさいなのね。イルククゥもお昼寝は大好きなのね……でも本当の姿でお前とあそこで話すのはいやだったのね」

「なんでだよ」

「正体を知られたくなかったのね。『あの姿』のまま今みたいにペラペラしゃべるとす~っごくめんどくさいことになるのね」

「ふーん。だったらオレもこれ以上詮索はしねぇよ。面倒ごとが嫌いなのはオレも同じだからな」

「助かるのね!やっぱりお前はいい奴なのね!!」

「るせぇ。……しっかし真の姿があるのかぁ。オレと同じだな」

「そうなのね!?」

「おう、見せてやりたいところだが……生憎今は世界観的になれなくてな……残念だぜ」

「きゅい……お気の毒なのね」

 

 ……大概こいつも結構なお人好しじゃねーかな。

 

「あ!でもお前をここに連れてきたのにはもう一つ理由がのね!!」

「え、そうなの?」

「きゅい!実は……折り入ってお願いがあるのね……」

 

 うーん、お願いねぇ……まぁなんだかんだ言ってオレのこと結構頼ってるみたいだし、ここは快く引き受けてやってもいいかな。

 

「いいぜ、このAi(アイ)ちゃんにお任せあれ!!」

 

 どーんと胸を叩いて頼れるAIアピール。

 そんなオレの兄貴っぷりにイルククゥは目を輝かせた。

 さーて、一体どんな依頼が……

 

「お前のドラゴンを、見せてほしいのね!!」

 

 ……んん?

 

「え、ドラゴン??」

「きゅいきゅい!!」

「ドラゴン……あぁ!!」

 

 ガッテンガッテン。

 オレはデュエルディスクにデッキをセットした。

 

「――オレはレベル4になった《ブルル》と《ピカリ》でオーバーレイ!!」

「おぉ!!」

「怪力乱神!驚天動地!!その力、今こそ再び……久遠の慟哭から目覚めよ!!」

「きた~~~!!」

 

 デュエルじゃないけどせっかく盛り上がってくれてるので、口上付きでど派手に召喚。

 オレのドラゴンといえば、こいつしかいないよな!

 

「エクシーズ召喚!!来い、ランク4!!《ライトドラゴン@イグニスター》!!」

「きゅあ~~~~~!!!!」

 

 ライトドラゴンが雷をバリバリ言わせてる横で黄色い声を上げるイルククゥちゃん。

 その姿はまるでアイドルのライブで興奮しているファンのよう。

 

「か、か、かこいいの~~~!!」

 

 こいつをデザインしたオレも鼻が高いぜ。

 

「へへーん、どうよこの滑らかなボデー!!攻撃力もお高く止まって2300!!」

「強そ~なの~~!!」

「効果は汎用性ばっちりの対象を取らない破壊効果に破壊無効効果!!さらにさらにぃ!味方のモンスターが戦闘ダメージを与えると、なななんと!!墓地のリンクモンスターを復活させることもできちゃうんです!!」

「よくわかんないけどすごいの~~~!!」

「そしてなにより……イラストアドが高い!!」

「ふんふんふんふん!!」

「これでどうだーー!!」

「しゃぁわせ……なの……がく」

 

 すっかりライトドラゴンの魅力にメロメロメロンなイルククゥ。

 しっかしドラゴン萌えとは中々キマッてるご趣味をお持ちのようで……侮りがたし、異世界。

 

「……っておーい、起きろー」

「はぅん」

 

 ほっぺたをぺしぺし、目ん玉をハートにしたまま寝てるイルククゥを起こそうとするもどことなくやらしい声を上げるばかりで起きる気配がない。

 

「いやちょっとお嬢さん?あんたが起きないとオレ帰り道わかんないんだけど?ちょっと?」

「うぅ~ん……うるさいのぉちびすけぇ……」

「誰がちびすけだコラぁ!!」

 

 もうしょうがないので、肩を揺すって起こすことにした。

 

「起きろ~~~~~~!!」

 

 その時。

 

 

 

 

 

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 忘れもしない。あの時消えてしまった……

 

 

「!!……そちらの方、ご気分でも悪いのでしょうか!?」

「…………………」

「お待ちください!今魔法で……!!」

 

 

 かつての仲間の声を、オレは聞いたんだ。

 

 

「うぅ~ん……きゅい?」

「よかった!お目覚めになられたのですね!」

「…………あんたは」

「っ!!……す、すみません!!私今は急いでますので……それでは!」

「――待ってくれ!!」

「きゃっ!!」

「あんた……」

「あ、あの……」

 

 

 

 ――Ai(アイ)、あなたが最後の希望です。頼みましたよ。

 

 

 

「一体何を……」

 

 

 

 その腕を、掴んでしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………アクア?」

 

 

 

 

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