ゼロの使-Ai-魔   作:ポロシカマン

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騙し-Ai……④

 

 

 

「――とゆーわけで。ヒメ様のご厚意で馬車に乗せてもらって、こうして帰ってきたわけだ」

 

 そう言って事の経緯を話し終えたAi(アイ)は、まだ見慣れない黒い小人の姿で腕を組んで得意げに頷いている。

 

 それを横目に、私は姫様の方に体を向け、床に膝と額を付けた。

 

「本っっっ当にご迷惑をお掛け致しました!!!!!」

「やだルイズったら!……もう、頭を下げることなんてないのに」

「そういうわけには参りません!!」

 

 このトリステイン王国にただ一人のアンリエッタ姫殿下の御手を、こんな脳天気使い魔に煩わせておいて……あぁぁあああああもう恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出そう!!

 

 他のメイジは明日の品評会という正当な場でもって姫様に使い魔を拝謁させられるっていうのに……なんでよりにもよって私だけこんな形でぇえええ………!!!

 

「おいおいご主人タマよぉ、なーにカタくなってんだ?幼馴染なんだし肩の力抜いたらいーじゃん」

「あんたが言うな……あんただけは言うな!!」

「あぁん!?つかさっきからオレの扱いひどくない!?いきなり誘拐されて、ようやく今ここに帰還したってのに……うわぁんヒメ様ー!!」

 

 わざとらしい泣き真似。不遜すぎる態度……そういうところよそういうところ……

 

「大丈夫ですよAi(アイ)さん……ルイズも女の子ですから、ちょっと今夜は月の光のせいで怒りっぽいだけですよ」

「姫様!?」

「『月』?」

「聞いてんじゃないわよ!!」

「あ!!……あー……」

「何を察してんのよ!!違うからね!!それ絶対違うからね!!」

 

 二人して笑う姫様とAi(アイ)

 うぅう……なによ、随分仲良くしちゃって……ご主人様の私よりちょっと『距離』が近いんじゃないの……!?

 

Ai(アイ)!!」

「どしたぁ?」

「……おかえり」

「!!」

「ま、まぁ……無事に?

 帰って来て……よかったわ……」

「ご主人タマ……!」

「……ふん!これに懲りたら自分の身はしっかり自分で守りなさいよね!!」

「おう!!」

 

 そう!私がこいつのご主人様よ!

 ちょっと見た目が変ってしまったけど、この主従の繋がりは何も変わらない、変わらないわ!

 

「ふふ……(よほど心配してたのね……もう、素直じゃないんだから)」

 

「ところで元の体はどうしたのよ」

「荷物の一つとして一緒に帰って来たぜ。しかもヒメ様のはからいでここの倉庫に預けてもらっちゃった!」

「そうなのですか?」

「えぇ。Ai(アイ)さんがあの姿に戻る方法が見つかるまでは、衛兵付きのこちらの宝物庫に預けておいたほうが良いと思いまして」

 

 たしかに、姫様のおっしゃる通りだわ。

 動かない体なんて、事情の知らない者が見ればほとんど死体だもの。

 

「なんでも『破壊の杖』とかゆーヤバげなブツを狙う泥棒がいるらしくてな……めっちゃゴツいガードマンがうろうろしてたぜ」

 

 あぁ、そんな話もさっきオールド・オスマンから全生徒に通達が来ていたわね。

 『破壊の杖』……なんでそんな物騒なものが学院に保管されているのかしら?

 

「あ、それでね。ルイズ」

「……は!はい、姫様!」

「実はここに来る道すがら、Ai(アイ)さんからルイズについて色々お話を伺ったの!」

「な……えぇえええ!?」

 

 けたたましい声が喉の奥から響いた。

 

「お、おいヒメ様!!それ言っちゃうのぉ!?」

「そ、そそそそそれはどういった話でしたか!?」

 

 『変なことしゃべってないでしょうね!?』と意思を込めた視線をAi(アイ)に向ける。

 

「しゃべってないしゃべってない!!だから聞かないでぇ!!」

「ふふふふふ」 

 

 下手人はそう言ってるけど……イマイチ信用できない。

 

「それで……その……」

「はい!」

Ai(アイ)は私のことを……なんと?」

 

 

 おずおずと、身を縮めて。

 姫様の目を見据え、それをお聞きした。

 

 

 

 

 

 

 ―――次の瞬間。

 

 轟音と共に、部屋が揺れた。

 

 

 

 

 

「うぉお!?」

「きゃぁああ!!」

「姫様!!」

 

 落下物から守るため、ベッドの天蓋の下になるよう恐れながらも姫様の御体の上に被さる。

 

「地震!?……は違うな。地面からの衝撃波じゃねぇ」

「なによ!?何かわかったの!?」

「震源は……!!――ルイズ!!」

「え?」

「窓の外見せてくれ!!」

 

 自分じゃ動けないからって……!!

 ……仕方ないわね!!

 

Ai(アイ)……さん?」

「動いちゃだめだ!!」

「!!」

「ヒメ様はじっとしててくだせぇ。……あれか!!」

 

 暗くてよくわかんないけど……いる!なんかいるわ!!大きいのが!!

 

「赤外線センサーでいけるか?……いけた!!……うぉ、なんだありゃ!!」

「何が見えたの!?」

「なんか見た目ゴーレムって感じのゴーレムがいた!!」

「はぁ!?」

 

 言ってることが抽象的すぎるけど……なんとなく言いたいことは伝わったわ。

 

「たしかに……うん、いるわね。ゴーレムが」

 

 目が慣れてきたから私にも見えた。暗いけど、シルエットだけでなんとなく何がいるのかわかる。

 あれはギーシュのワルキューレのような精密な動作をさせるための人間大のものではない。質量の暴力による瞬間的な破壊力を目的とした……超大型ゴーレム!!

 

「―――あ!!」

「どした!?」

「あのゴーレムが立ってる近くの塔……宝物庫があるわ!!」

「……なんだとぉ!!??」

 

 ゴーレムを操る者の目的も、瞬時に理解した。

 

「『土くれのフーケ』……!!」

「誰それ」

「あんたがさっき話してた……『破壊の杖』を狙ってる盗賊よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

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「チッ……ただの物理攻撃でもダメか……」

「待ちなさい!!」

「!!」

 

 ゴーレムの肩、声がした方を見ると、そこには黒いマントで顔を隠した女がいた。

 もしかしなくても、あの女が『土くれのフーケ』だろう。

 

「やいやい!そこの泥棒ニャンコ!!」

「!……()()()()()!?」

「この超スーパーウルトラシークレットAIのAi(アイ)様が来たからにゃぁ、もう悪さはできねぇぞ!!神妙にお縄に……」

「うっさい!!いいから準備する!!」

「んもー!せっかちなんだから!!」

 

 左腕に装着したデュエルディスク、その中心で叫ぶAi(アイ)を窘める。

 

「簡易決闘環境構築……完了!! 自動演算機能構築……完了!! その他もろもろ……完了!! よっしゃ行けるぜ!!」

「うん!!」

 

 ……そう、私は今。

 

「合言葉は!?」

「覚えてる!!」

 

 

 この左腕に、Ai(アイ)を乗せている!

 

 

 

 

「「《INTO THE VRAINS!!》」」

 

 

 

 

 風が吹く。

 この身を切り裂くような鋭い風。

 

 でも、春の夜を忘れさせるほどに――温かい。 

 

 

 

「なんだ……この、空間は!?」

「決闘場さ!」

「あんたと私たちのね!」

「意味が……わからん……」

 

 

 そう、わからない。

 でもわからなくていい。

 

 

「まぁとりあえず……やるだけやるわ!」

「おいしっかりしようぜ!?オレの体守るんだから!!」

「あんたが言うな!!」

「ひゃい!」

 

 

 だって、未知への一歩を踏み出すのに必要なことは……そこじゃないんだから!!

 

 

「「デュエル!!」」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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