『サモン・サーバント』
このトリステイン魔法学院で二年生になった生徒が春に必ず行う、使い魔召喚の儀式である。また、呼び出された使い魔の種類から自身が持つ魔法系統を見極める目的もある。
貴族の、私たち『メイジ』にとって人生で最も重要な儀式の一つだった。
「な、ななな……」
それがようやく……ようやく成功した。
他の生徒たちが一発で成功する中、ただ一人私だけが何十回と挑戦し、ようやく。
貴族に生まれ、恵まれた教育を受けているにも関わらず……まともに魔法を使えないまま16歳になった私が、『ゼロ』のルイズと蔑まれていた私が、ようやく一人前の貴族として認められる!
……そう、思っていたのに。
「なんでなのよぉおーー!!!!」
金の縁取りに肩章の付いた黒と紫を基調としたマント。
その下の皴一つない清潔感のある礼服。
整いすぎるほどに整った顔立と、下手な貴族よりよほど豪奢な出で立ち。
「オレ様の名は
どう見ても、"人間"。
それもおそらくは、どこか知らぬ国の王侯貴族。
なんで。
なんで……よりにもよって。
私の使い魔に召喚されてしまったのよ!!!!
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「ミ、ミス・ヴァリエール!! これは……この方は一体何者ですか!?」
「聞きたいのはこっちです!!」
謎の声を聞き、変な穴に飛び込んでからちょっと。
気付けば、オレは入ったことのない世界で仰向けに寝っ転がっていた。
「おいおいルイズ! まさか儀式に失敗したこと隠すためにその辺にいた貴族を連れてきたのか!?」
「そんなわけないでしょマリコルヌ!! たとえ平民でも私はそんなことしないわ!!」
とりあえず、目の前で何やら口論してるっぽいピンク髪の女の子に話しかけてみる。
「あのすんませーん。ここなんて名前のゲームワールドっすかー?」
「……ひゃあっ!!」
いやそんな驚くことねーじゃん。
「おいルイズ呼ばれてんぞ!」
「どこの言葉か知んないけど挨拶位しとけって!」
「あんたたちねぇ……他人事だからってよくもそんな……!」
うわ、何語かわかんねーけどめっちゃキレてんな……
流石のオレでもわかっちゃったぜ。
「……あり? つーかなんでオレ人型になってんだ?」
ふと、目線が目の前の少女の頭より高いことに気付く。
「どういうことだ……?」
さっぱりわからん。
……いやわからんといえば
「そもそもここはどこのゲームワールドなんだよって! ……もしもーし?」
女の子の目の前で手を振った。
「はいぃ!?」
「なぁ教えてくれよー、ここどこなんだよー。ねー」
「あ、あの……私は……その……私が……貴方を……!」
もじもじと何やら伝えようとしているのはわかる。
でもやっぱり聞いたこともない言語だった。
……申し訳ないが、この子じゃぁオレの疑問には答えられそうもないな
「…………いや」
……つか、よく見たら
「すっげーよくできたモデルだなー」
「ひゃぁあああ!?」
両手で女の子の顔を包むように触れ、瞳を覗き込む。
「なんだよこの直線のねぇキャラデザ……え、可愛くね?」
「ふあ……ふぁ!?」
「「「きゃあああああーーーーー♡♡♡♡!!!」」」
「声もなんか背筋がぞくぞくしちゃうしよー、声優ってスゲーなー」
「ル、ルイズに……あのルイズが……ウソでしょぉ!?」
「な、なんてことよ……まさかこんな形でイイ男をゲットしちゃうなんて!! きーーーっ!! ルイズのくせにーーーっ!!」
「お、おぉぉ……なんてロマンティックな!! 美味しすぎる! 誰だか知らないが美味しすぎるぞ彼!!」
「(うるさい……)」
「うわすげ……ほっぺた波打ってんじゃん! 頂点何個だよこのモデル、完成されすぎだろ!! やべーよ隠れた名作だなこのゲーム。あ、隠れてなかったらメンゴ」
「は、はにゃ……」
モチモチだモチモチ。《モッチリ@イグニスター》! ……なんちて。
壁モンスターに使えそーなネーミングだな。覚えとこ
「放せーーー!」
「うおっと」
女の子のモデルに夢中になって油断していたせいか、押し相撲みたーな勢いで倒された。
「おい! いきなりなにすん……」
「(触られた触られた触られた触られた)~~~~~!!!」
「すんませんした!」
そんな恥ずかしそうな顔されちゃぁ、なぁ。
素で謝っちゃったよ。
「ミスタ・コルベール!!」
「な!? ……何かね、ミス・ヴァリエール」
「『コントラクト・サーバント』……やります!!」
「な……何ですと!?」
おそらくは何かを提案したらしき女の子に、顔を青ざめるなんか上司っぽいオッサン。
「うっそマジ!?」
「早まんなルイズ!! そこまでしたら本当にその人がお前の使い魔なんだぞ!!」
「うっさい!! あそこまでされて……しないわけいかないでしょ!!」
「あちゃー……出た出た悪い癖」
それにギャラリーも何やら慌てている雰囲気だ。
……しっかし表情だけで感情をバキバキに表現するたぁ、コイツらもよく見りゃ一級品だな。
恐ろしーぜクオリティへの執念。このゲームのスタッフ気合入りすぎだろ。
「……いいのですか?」
「『春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する。"始祖ブリミル"を由来とする伝統あるこの儀式においては、あらゆる例外を認めない』……そうでしたよね」
「ですが!」
「覚悟はできています!!」
「!!」
「たとえこの者が何者であろうと……私が、私がやっと召喚できた使い魔なんです!!」
「…………ミス・ヴァリエール」
「やります!! ……責任は、私が全て背負います」
……"決意"だな。
女の子の可愛い顔を凛々しくしているその感情。
あっちの世界で何度も見てきた。
「……笑えねーな」
オレはきっと、この女の子に何か重大な選択させるフラグを踏んでしまったのだろう。
「──"我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール"」
なんだってオレは、いっつもこうなんだろーな。
「"五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え"──」
たとえ今この女の子が喋っている言葉がどっかの誰かの録音だろーと関係ない。
俺というAIは、どうして存在するだけで、こういう
「"我の使い魔となせ"」
自分が嫌になる。
オレが関わったヤツはみんな……みんなオレが未来の選択を迫らせた。
オレは……オレは……
どうしてオレは……
あそこで、消えきれなかったんだよ……!
「ねぇ」
声。
「……え?」
思わず、顔を上げる。
「じっとしてて」
そして、
―――温かいものが、口に触れた。
「…………」
何をされたんだ、オレは。
「……何よ、その顔」
「……は!?」
意味が、意味がわかる。
この女の子の、言葉がわかる。
「え、な、なに今の? オレ何されちゃったわけ?」
「……契約よ。これであんたは……っ!! 言葉がわかるの!?」
「おう……なんで?」
「し…………知らない」
……暫しの、沈黙。
「なぁ」
「!!」
「さっきのって、もしかしてキ」
「わあぁあああああ!!」
「なんだよ」
なに突然叫びだしてんだコイツ。
……ははーん、これはもしかして
「一目ぼれ、からの即チュー……ときてようやくの翻訳開始、さらには恥ずかしがって取り乱す……このゲーム造ったヤツらよぉ……お前らの""""本気""""伝わったぜ!!」
「うぅぅうるさい!」
「はいっ!?」
あまりの剣幕に思わず正座してしまった。
「いい!? あんたは今から私の……このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔よ!! 誰が何と言おうと私が私の魔法で呼び出した正真正銘の使い魔!!」
「……ほー」
「わかったわね!?」
「バッチリ」
いやぁ……
「攻めてんなぁスタッフ~~~うん、いい仕事!」
「わかれーーーー!!!」
そういう設定なんだろ?
わかったってちゃんと。
いやぁ感服感服。
「……で、結局何者なのかしら、彼。 タバサ知ってる?」
「知らない」
「あら、てことはよっぽど遠い国の御方なのね……フフ」
「変わった人……興味あるわね」
「モ、モンモランシー! そ、それは僕よりもかい!?」
しっかし『使い魔』ねぇ。
デュエルでもあんま聞かねぇ単語だぞおい。
「よっこいせっと」
「え、ちょ……な、なにすんのよぉ!」
「お姫様抱っこ。使い魔なので」
「どこの国の使い魔よ!!」
「いて! なにすんだよ!」
殴られた…てことはコイツは暴力系ヒロインってヤツだな!!
レア度で言えばホログラフィック、いやコレクターズレア!
いやーーー楽しめそうだな!
どうせやることねーし、とりあえずこのゲーム……一通り遊ばしてもらおうじゃねーの!
「……あれ? 普通に重くね?」
「(無言の正拳)」
「――グぇッ!?」