ゼロの使-Ai-魔   作:ポロシカマン

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出-Ai ……③

「なー」

「……」

「なーって」

 

 悪夢のような使い魔召喚の儀式から半日。ミスタ・コルベールを含む大勢の好奇心旺盛なメイジたちから逃げ続け、やっとの思いで自室に戻った私は……目の前の使い魔、もとい『アイ』と名乗ったこの謎の男と自身の今後の学園生活について頭を痛めていた。

 

「疲れてんのか?……つか寝てる? なぁ」

 

 自分の置かれている立場を全く理解していないのだろう、男はのん気に床に寝転がって私に呼び掛けてきた。

 

「……悪いのだけど、少し静かにしててもらえる?」

「へーい」

 

 そう言って面白くないと言わんばかりにふて腐れた顔をして、床に寝転がる男。

 自分の中で良くない感情が湧き上がってくるのを感じた。

 

「…………汚いわよ」

「細けーこというなよ。俺の部屋になるんだろ? ここ」

「な……!」

 

 な……なんてふてぶてしいの、この男!

ホントに高貴な身分の人間なのかしら……?

 

「! ……ねぇ!」

「はーい?」

 

 そうよ、そもそもまだこの男自身の口から全く素性を訊いていなかったじゃない!

 勝手にこの男の風貌から想像を膨らませてばかりで肝心なことを忘れていたわ!

 そもそも使い魔の特性は召喚してすぐに調べなきゃいけなかったのに!……私のバカ!

 

「あなた、一体どこの国の人?」

「あー住所? ……そういやまだ登録してなかったな。

 えーっと日本のDen City(デンシティ)の……あれあそこん()の住所何処だったっけ?」

「『ニホン』?」

 

 ……なにか噛み合ってないような気もするけど、とりあえず聞こう。

 

「そーそークールジャパン!」

「……知らない国だわ」

「はぁ?」

 

 信じられないという顔で聞き返してきた。

 

「いやいやさすがに日本知らないとかねーだろ……」

「知らないものは知らないわよ」

「あ、そうだよ。オレも聞きたいんだけど」

「なに?」

「ここ何処の国のゲームワールド?」

 

 ゲームワー……ルド? なんのことかしら……

 

「ゲームワールドは知らないけど、ここは"ハルケギニア"よ。ハルケギニアのトリステイン魔法学院。まさかここを知らないなんて……」

「あん? なんだそりゃ絶滅動物か?」

「ゼツメ……なんですって?」

「…………あ? その前に魔法ってどういうことだ?」

「…………えぇ?」

 

 なによこれ。

 なんでこんなにも会話が噛み合わないの?

 

 ニホンだとか、ゲームワールドだとか……

 

 この男の前提としてる知識があまりにも私と違うじゃないの!

 

 

 

 

 

「待てよ……」

 

 突然。

 

「おい、お前!」

「!!」

 

 眼にも止まらぬ速さで、男が私の首を掴んだ。

 

「そうか、そういうことか……」

「……はが!?」

 

 何をするの、と口に出すこともできず、ギリギリと嫌な音が耳の奥で反響する。

 

「処理しきれねぇ情報をぶつけまくってフリーズさせる魂胆だったんだろーが、あめーんだよ。それでブッ飛ぶようなチャチなソースコードが意思なんか保てるわけねーだろ。『イグニス』なめんじゃねぇぞ」

「……!……!」

 

 儀式の時とは違う、あまりにも鋭利な視線。

飛びそうな意識の中で、はっきりとこの男の人と思えないカタチをした瞳孔が像を結び続けていた。

 

「せっかくいい遊び場に来れたと思ったのによ……なぁ。どうしてオレを復活させた? ろくでもねぇ理由だったらタダじゃおかねぇからな!!!!」

 

 

 男の瞳が

 

 金色に

 

 光っ

 

 

 

「なん……だよ……これ……」

 

 足が床に着く感触とともに、私は倒れこんだ。

 

「げっ、けほっ……はっ……はぁーっ……」

「お、おい……お前……」

「……なにすんのよ!! あんたぁ!!!」

 

 今日一日で蓄えられた諸々の怒りを含んで、自分の口から出たとは思えない声が出た。

 

 

 でも

 

 

「ナマの……人間だったのか……?」

 

 

 そんな私の怒りは、今日一番の疑問で塗り潰された。

 

 

「は、はは……そうだ……なんで気づかなかったんだ……この体、一番始めに乗っ取った『ソルティス』そのものじゃねぇかよ……」

 

 見上げる形で、男を見る。

 

 人間ではあり得ない、喉仏のある部分が菱形に発光していた。

 

「──あんた、ヒトじゃ……ないの?」

 

 その言葉が、口をついた瞬間だった。

 

 

 

「そうだよ……」

 

 

 男の瞳は、深い哀しみに染まった。

 

 

「へッ……見てもわかんねーか」

「あんた、一体何者よ!」

「……くそぉっ!」

「あ……待ちなさい!!」

 

 そして男は、私から逃げるように部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 ✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️✡️

 

 

 

「――くそっ、くそくそっ!!」

「待ちなさい!」

「るせーっ!!ほっとけよ!!」

「自分の使い魔をほっとけるわけないでしょ!!」

「何が使い魔だ!!バカにすんな!! オレはAIだーーー!!」

「なによ『エーアイ』って!! そんな種族聞いたこともないわよ!!」

 

 そんな馬鹿な話があるか!

 AIを知らない人間がこの世にいるわきゃねぇ!!

 

「ははっ、そうだよ……やっぱここはVR空間なんだ! こんな世界が、現実なわけ……」

 

『――レビテーション』

 

「うおぉ……おぉ!?」

 

 突然、草原を走っていたはずの足が地面から離れていく。

 

「な、なんで浮いて……うおぉおおお!?」

「タバサ!?」

「……読書の邪魔」

「なんだこれ……そうか! なんだ物理演算バグっちまって……わぶ!?」

 

 スイスイと空中浮遊、する間もなく。

 顔から地面に落っこちた。

 

「うえー……あ?」

 

 起き上がって、顔に触れて……そして。

 

 

「……データの土じゃ……ねぇ」

 

 

 意思をもって初めて得た、感触。

 

 

「この草も……石も……ソースが読めねぇ。……ていうか、ソースがねぇ」

「ほら、観念なさい!!」

 

 

 人間(ルイズ)に襟首を掴まれながらオレは

 

 

「マジで……現実なのかよ……」

 

 

 足の下の地面に、触れ続けた。

 

 

 

 

 

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