ゼロの使-Ai-魔   作:ポロシカマン

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出-Ai ……④

 

「そう……じゃああんたは『エーアイ』っていう、人間並みの動きができる人形に憑り着いた、人工の精霊ってこと?」

「んー、まぁだいたいそんな感じだな」

 

 逃げ出した使い魔をやっとのタバサの助けを借りてなんとか捕縛し、部屋に連れ帰ってから少し。ようやくこの使い魔の素性を知ることとなった。

 

「正しくは『人間並み』じゃなくて『人間以上』だけどな」

「……ふぅん?」

 

 あまり精霊を知っているわけではないけれど、こういう人間全体を小馬鹿にしたような言いぐさは……まぁ少なくとも人間だとは思えない。

 

「随分と偉そうだけど……そんなに優れた種族なのかしら?」

「証拠だってあるぜ」

「どこよ」

「ふふん……こいつだ!」

 

 私の顔のすぐ横を、手首から紐のようなものを出して何かが飛んだ。

 

「……きゃぁああ!?」

「じゃーん! マジックハンド~~!」

 

 飛んでった方向を見ると、この使い魔の拳が背中側の壁に付いている。

 それは使い魔の手首のある場所から伸びた……太い、黒いヒモのようなもので繋がっていた。

 

「て、手が、て……!」

「へへーん、人間にこれができるかぁ?」

 

 ぶるぶると、震えながら首を横に振る。

 

「いやぁ実を言うとオレも最初こんな機能あるなんて知らなかったんだけどさぁー、土壇場で気付いて救われたことがあってよ! ……見たかったなぁ……《トポロジーナ・ネイビー》……」

「あ……あはははは」

 

 もはや、笑うしかない。

 魔法でだって、こんな技は知らない。

 

「じゃ、じゃああんたがその……『チキュウ』って星の、『ニホン』って国から来たっていうのも……」

「本当だって何度も言ってんだろ?」

「うぅぅ……」

 

 巻き取るような音とともにヒモが縮み、使い魔の手と腕が元に戻る。

 信じるしかない……わよね。

 こんな怪しい、あまりにも胡散臭いヤツだけど。

 

「はぁ……わかったわ。わかったわよ」

「ホントかぁ?」

「えぇ……もう、観念するわよ」

「そりゃ助かる」

「だからあんたも、私の言うこと信じなさいよね」

「えー……」

「当たり前でしょ!! 『ネット』だか、『ブイアール』だか知らないけど……」

 

 無意識に、拳をテーブルに打ち付ける。

 

「勘違いしてたからってねぇ……貴族の女の子に……衆目の前であんな……あんなことして……!!!」

 

 話していくうちに、昼間の儀式の一部始終を思い出す。……ぐつぐつと頭に熱い血が昇っていくのを感じた。

 

「あー、いや、その件に関しましてはー……オレそんな際どいことしたっけ?」

「したわよッッッ!!!!」

「――ぶぎゃんッ!?」

 

 あまりの怒りに、傍にあった腰かけ椅子で思いっきり使い魔を殴打してしまった。

 

「いきなりなにすんだ!! 暴力反対!!」

「貴族どころか平民でも……人間ですらないヤツに遠慮はいらないわよ!!」

「鬼! 悪魔! 守備力0-!!」

「……あんた今どこ見て言ったぁッ!?」

 

 この……この、この男…!!

 どこまで人をイラつかせれば気が済むのよ…!

 

「はぁ……もういい!! 疲れたわ!!」

「うわっぷ」

 

 怒りのままに服を脱ぎすて、使い魔に投げつける。

 

「おい! さっきからいったいなんだってんだよ!」

「寝るわ! それ洗濯しといてよね!!」

「はぁあ!? ……わぶ!」

 

 口答えする前に、上も下も全部の服を使い魔に投げつけ、寝間着に着替えた。

 

「洗濯ねぇ……まぁ、やってやらねぇこともねぇけどさぁ……」

「『やらせていただきます』」

「やらせていただきますけどぉ……しっかしお前よく順応できんな? 使い魔だっつっても、普通の女の子がさっきまで人間の男だと思ってたやつに自分の服を渡しますかねぇ?」

「あんたが貴族だったらしないわよ、もちろん」

「平民はいいってか?……『差別』っていうんだぜ、そういうの」

「そう」

 

 使い魔の言葉を聞き流し、ベッドに横たわる。

 

「順応って言えば、あんたも結構順応してるじゃない」

「オレ?」

「そうよ。私が今のあんたの立場だったら、絶対洗濯なんかしてやろうとは思わないわ。……もっとごねるかと思ってた」

「こえーやつだな! それがわかっててやらせようとしてんかよ……」

「うっさい」

「はぁ……まぁ世話になるんだしな、やるよ。依頼された仕事はきちんとやる遂げるのがいいAIってもんだ」

「あら、いい心がけね。感心感心……明日の朝食は弾んであげようかしら」

「あ、メシ? 気ぃ遣ってもらってわりーけど、オレAIだしメシは食わなくていいんだよな」

 

 今日一番、信じられない言葉だった。

 

「なによそれ……どういうこと?」

「マジマジ。電気……はねーだろーし、まぁ日の出てる間の二時間くらい日向ぼっこさせてくれりゃあ、ソーラー発電システムで最低限小間使いに支障がねぇくらいのエネルギー……体力は溜められるぜ」

「うっそぉ!! すごいじゃない!」

「だろ?」

「あんたまるで……理想の平民だわ!!」

「良い笑顔でとんでもねぇ発言だなおい!?」

「あ、それなら睡眠は? 『エーアイ』って眠る必要はあるの?」

「あー……まぁ一定のスリープ、もとい睡眠時間は必要だな。他のタスクより優先して、この体の状態をじっくり調べたりしなきゃなんねぇし……エネルギーの節約も兼ねて、一日六時間は欲しいところだな」

「あぁ……そう」

「(露骨に残念がってんじゃねーよ……)」

「うん、これであんたのことはだいたいわかったかしらね」

「おいおい……この程度の会話で俺の何がわかったってんだ? まだ好きな昼ドラのジャンルも話してないんだぜ?」

「『ヒルドラ』? ……どことなく粘着質な響きね……あ、そうだ」

「今度はなんだよ……」

「洗濯のほかにも部屋の掃除と、朝の着替えの用意もしといてよね。それに教科書の用意と……」

「多くね!?」

 

 

 こうして、激動を極めた『春の使い魔召喚の儀式』の日は騒がしく終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

「……あ、そういや洗濯ってどうやるんだ?」

 

 

 

 

 

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