「ゼロの使-Ai-魔」、始まります。
「よう、待たせたな」
そしてオレとルイズちゃまにメイドのねーちゃんは、『ヴェストリの広場』へとやってきた。
「ようこそ。逃げずに来てくれたことを感謝するよ」
目的はもちろん、このチャラッチャラな貴族のボンボンの……えーっと……
「光栄に思いたまえよ。このギーシュ・ド・グラモン、基本的に女性以外で人を待ったりはしないのだからね」
そう、ギーシュ。ギーシュとの決闘だ。
「へっ、キザなやろーだ。ぶっ倒しがいがあるぜ」
「――やっちまえギーシュー!!」
「『ゼロ』のルイズの使い魔なんかやっちまえー!!」
周りを見渡すと、オレとギーシュを取り囲むようにギャラリーが集まっていた。
「ギーシュ様ー! 頑張ってー!! 怪物を退治してー!!」
「そうだー! 人の皮をかぶった怪物なんかぶっ飛ばせー!!」
って、ちょっと待て。オレがヒール扱いなのかよ!
「ちょっとギーシュ! あんた……こいつらに私の使い魔のこと変な風に伝えたでしょ!!」
「い、いやぁ……アイ君が人の姿をした『異種族』だと教えてあげただけなんだが……」
「おいおい……」
差別主義者どもにそういう言い方は誤解されるに決まってんだろ……
「おいお前らー!」
「ひっ!」
「しゃ、しゃべった!」
いや、さっきから喋ってたし。
「オレは『AI』っていう種族でなー。本来の姿はもうちょっとちっちゃくてかわいいんだけど、仕方なくお前ら人間に合わせてやってんだー。別に取って喰ったりはしねーから安心しなー!」
そんなオレの言葉にざわざわとし始めるギャラリーたち。
「なんか偉そうだな……」
「ホントなの? 今の」
「絶対罠でしょ……」
ま、あんまり効果ないよなー……うん、知ってた。
「あいつらぁ……人の使い魔をぉ……!」
「ミ、ミス・ヴァリエール! 抑えてください!」
「どうどう、怒んなってご主人タマ」
「なによ! 悔しくないの!?」
「まぁうぜぇとは思うけどさ……だからってこっちから手を出すのは違うと思うぜ?」
「……ほう?」
「オレは『
「「「………。」」」
「……あれ?」
「ま……まぁ? 君がとても高潔な精神を持っていることは伝わったよ、うん!」
「~~フォローありがとよ!ちきしょー!!」
だめかー!
なんでカッコつけようとするといっつもこうなるんだー!!オレー!
「ぐぅ~!!……もういいからやろーぜ決闘!!」
「おうとも! もはや言葉はいらないさ!!」
「うっし……メイドのねーちゃん!!」
「はい!」
ギーシュがオレを見据え、バラを構える。
そしてオレも、ギーシュを見据えて格闘技の構えっぽい姿勢にシフト。
「決闘――開始!!」
今ここに、オレの意思を賭けた戦いが、始まった。
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「あら、もう始まっちゃってるじゃない!!」
使い魔とギーシュの決闘が始まってから少し、キュルケとタバサもギャラリーに加わってきた。
「なんだ、二人も観に来たのね」
「当然じゃない!こんな面白いこと!!」
「部外者は気楽でいいわね……こっちはヒヤヒヤしっぱなしよ」
やれやれ、と言いたげな表情で私を見下ろすキュルケ。
相変わらずムカつくわね……無駄に大きい胸が邪魔くさくて、決闘が見えにくいったら!
「あれがルイズの使い魔の力……」
「えぇ」
珍しくタバサが三単語以上の言葉をっ発したのに相打ち、使い魔の方へ視線を戻す。
「ふーん……なんだ。思ってたより戦えるのね」
「そーれそーれー! へっへへへ、すっとろいぜぇ!!」
「この、このぉ!!」
ギーシュの二つ名は『青銅』。
得意とする土系統の魔法であいつが生み出したのは、その二つ名と同じ材質のゴーレム……『ワルキューレ』。
女好きが高じた結果か、女性型のゴーレムだ。
もちろん、戦闘用として性能を最大限発揮できるよう青銅の鎧と槍を装備していて、平民の兵士数人を相手にしてもものともしない馬力を持つ……そんな、先生方の評価も高い、私からみてもよく練られた魔法だった。
しかもその『ワルキューレ』が七体。
既にこの決闘の場に召喚されている。
なのに。
「なぜだ! 何故止められない!!」
私の使い魔一人、動きを捉えらずにいた。
「わかりやすすぎんだよ、こいつらの動き!!」
一体の刺突を避けると同時に、他のワルキューレの背後に回り必ず死角の位置に入る。
そのパターンをギーシュに読まれる前にある程度正面切ってワルキューレの攻撃をいなし、隙をついて足払いして倒す。
しかも、それらの動きを休みなしで永遠と続けていた。
「き、君は疲れというものを知らないのかい!?」
「お生憎様、オレ人間じゃなくて『AI』……お前らでいうところの『怪物』だからよ! 残念だったなぁ人間サマ!! お前らの常識はこの
「ぐぅうう~~~!!!」
悔しそうに唸るギーシュ。
「へー……意外だわ。あのギーシュが最初から押されてる」
正直言って、ワルキューレたちの動きは決して悪いものではない。
陸軍元帥である父親を持つギーシュは、メイジ同士の戦い方についても十分な教育を受けていて、実際にそのノウハウが魔法にも表れている。
――ただ、
「はぁっ、はぁっ……どういうことだい……?」
「んー?」
「どうして動く前のワルキューレの動きが、まるで未来を見るようにわかるんだ!?」
「いや、単調でわかりやすいってだけだからこれ」
それが、致命的だったというだけ。
「な……?」
「あーされたらこーする。あー返されたらこー返す……あらかじめ戦闘のパターンを学習して、反射で対応できるようにしてんのはすげーよ。『経験と学習』……そして『工夫』。それが人間の一番の強みだからな……でもよ」
前後左右、そして上方から、同時に迫るワルキューレの槍。
「オレたち『AI』は、その強みを極限まで高めて造られてるってだけさ!!」
それを使い魔は、ただ一歩斜め後ろに避けただけで、躱した。
「な……!」
「ちなみに反射神経もスゲーんだぜ、人間サマ?」
飛び掛かった一体ごと、前後左右五体のワルキューレはそれぞれの槍に貫かれている。
「「おぉおおおおおーーー!! すげーー!!」」
ギャラリーたちの歓声は、最高潮に達した。
「……惜しかったわねー、囲む役が三体だったらまだ被害は抑えられたのに」
「あいつにそこまでの詰めはできないでしょ」
「ま、そこはやっぱり経験よね。ギーシュにはいい授業でしょ……ってタバサ?」
「帰る」
「あら、もういいの?」
「つまらない」
一言だけ言って、タバサはギャラリーの輪から外れ、使い魔の竜を連れて寮へと戻っていった。
「もったいないわねぇ……まだ勝負は決まってないのに」
去りゆくタバサから決闘に視線を戻す。
「まだ……まだだぁーー!!」
ギーシュは護衛に侍らせていた残る二体を使い魔に向けて突進させる。
「へ、苦しまぐれかよ……っと!」
使い魔は迫る槍の片方を避け、残る片方は柄を掴み、いなす。
その表情にはギーシュのものとは対照的に、一切の焦燥はなかった。
「(これで全部……勝負あったな!)」
しかし、
「……フッ」
柄を掴まれたワルキューレの腰布から、
ギーシュのバラの花びらが、ひとひら落ちた。
「――誰がワルキューレは七体しか出せないと言った!!」
そこから現れた『八体目』のワルキューレが、使い魔を思いっきり殴り飛ばした。
「ぐぁあああああああッ!!??」
「「「うぉおおおおおおおおおおおーーーーッ!!!!」」」
ギャラリーが、再び熱狂に包まれる。
「――あぁっ!?」
「あいつ、いつの間に出せるワルキューレを増やしてたの!?」
「フフフフフフフ……奥の手は最後まで取っておくものさ!!(……実はマグレだけども)」
殴り飛ばされた使い魔は顔から地面に激突……そのまま倒れ込んだ。
「うわ痛そー……」
「いい気味だわ。怪物が人間の姿で紛れ込んでるなんて……気持ち悪い」
「くっそぉ……!やってくれるじゃねぇか!」
「ハハハハハ!!どうしたんだい?起き上がりたまえよ……ところで、『エーアイ』は疲れを知らないんじゃなっかったかな?」
「へへ……
「それはなにより……そぉれ!」
「ぐぅうっ!」
「いーぞぉギーシューっ!!」
「そのままやっちまえー!!」
「……こいつら……!!」
さっきまでは使い魔の方を応援してたくせに……!!
「あ、あぁあ……い、今すぐ手当てしないと……!!」
「待って!」
「……ですが!!」
「したくてもできないのよ……あいつの体、人間のそれとは違うらしいから」
「そ、そんなぁ!?」
目を見開いて驚くシエスタ。
それもそうだろう。貴族の私でも驚いたのだ。ただの平民には理解の外だろう。
「ねぇ」
「な……なんでしょうか?」
でも、だからこそ知りたかった。
「あんたは……あいつが『怪物』に見える?」
ただの平民の瞳に、あいつは、私の使い魔はどう映っているんだろう。
自分でも不思議だった。
ただの平民の給仕に何を訊いているんだと。
「…………私は……」
それでも……知りたかった。
「私には、ただの優しい人に見えます」
薄ら寒い熱狂の中で響き渡る……『怪物』の声。
そんな中、シエスタは凛とした声で、笑顔でそう言い切った。
「『貴族も平民も関係ない』なんて、初めて言われましたから」
「そう……」
「あ、す、すすすすみません!!」
「べつに謝んなくていいわよ。この際だし」
本心だ。
なんていうか……この子に謙遜されると、落ち着かなかった。
「そっか……『優しい人』……か」
「ミス・ヴァリエール……?」
「ふふ……そっか……そうね!その通りだわ!……ありがとう、シエスタ!!」
「えぇ!?わ、私ですかぁ!?」
「他に誰がいるのよ!」
なんだか
「うん、それだけだったのね!あいつ!」
色々なことが吹っ切れた気がする!
「何笑ってんのよルイズ……気持ち悪い」
「うっさいわね!あんたに言われたかないわよ!!」
「どういう意味よぉ……ていうか、いいの?このままじゃあんたの使い魔、ギーシュにやられちゃうわよ?」
「あ……!」
キュルケの一言で我に返り、使い魔に視線を戻した。
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もしも、昔のオレを知ってるやつが今のオレを見たなら……きっと疑問に思うだろうな。
「ほらほらどうしたんだい? さっきまでの動きが嘘のようじゃないか!」
『随分素直にあのルイズって子の使い魔になったな』ってよ。
……まぁ実を言うと、オレも不思議ではあるんだが。
「(くそ、いいのもらっちまったぜ……動作の最適化が間に合わねぇ!)」
「ハハハハハ!!」
そりゃぁ前いた世界じゃ『人間への気持ちが離れちまった』っつってよ。
自分勝手な望みを叶えるために人間たちと敵対して……。
「怪物が人間のマネなんかしてんじゃないぞーー!」
「この国から出ていけーー!!」
散々、迷惑掛けて……。
『私ね、ここじゃ『ゼロ』のルイズって呼ばれてるの』
「へ、所詮は『ゼロ』のルイズの使い魔だな!」
『私はどの系統の魔法も使えないから、『ゼロ』。』
「多少はやる奴だと思ってたけど……なんか大した事なかったな」
『魔法の才能がゼロのルイズって、そういう意味よ』
「主人が主人なら、使い魔も使い魔ってことだろ?」
『座学だけでもって頑張って、なんとかここに居させてもらってるだけの……』
「結局、落ちこぼれには落ちこぼれの使い魔しか召喚できなかったってことだな!」
――どうしてそんなオレが、また人間と寄り添う生き方を選んだかって言うとだな……
「うっせーな……」
『私は、落ちこぼれなのよ。』
哀しそうに笑ってた『ご主人様』の言葉が、オレの心にぶっ刺さっちまったからなんだよ。
「ホント……うっせーよ……!」
自分の目的のために、ネット社会全体の混乱とかお構いなしにイグニス抹殺を実行したやつ。
自分のコンプレックスを拗らせまくった結果、故郷を滅ぼし、人類とAIの戦争をおっぱじめちまったやつ。
そして……オレ。
「おや、動きが止まったね……そろそろ降参かい?」
「なぁ」
「ん?」
「貴族って……楽しいか?」
「哲学的な質問だね……楽しいか楽しくないかでいえば、もちろん楽しいとも」
「へぇ……例えば、どんな風にだ?」
「そうだね。街で見かけた女の子に貴族と一夜を共にする『栄誉』を与えるなどは……格別の楽しみだね!」
共通してたのは、『自分の意思を貫くためには他者の犠牲を厭わなかった』ってとこだ。
「へっ、そりゃあ楽しそうだ……オレAIだから、そういうのよくわかんねーけど」
「……なんだって!?
おぉ……『エーアイ』。なんて悲しい生き物なんだ……生きていて辛くないのかい?」
人間と、人間が生み出したイグニス。
最後までオレたちを振り回し続けた、意思を持つ者の業。
「……辛いさ、もちろん」
結局人間も、イグニスも、それには抗えなかった。
「そうか……では不肖、この僕が、そんな悲しい君に引導を渡してあげよう」
――なのにさ。
「
あいつ……自分がどんなにバカにされてても、居場所を作ろうって頑張ってんだぜ?
「……ルイズ!?」
「ちょ、あのバカ何やってんのよ!!」
そう、バカだなーって思っちまった。
「ご主人……タマ?」
「立ちなさい」
「……はい?」
「あんた、このままでいいの?」
「いや……なにが?」
「このままバカにされたままでいいのかって訊いてんの!!」
「…………へへっ」
でも同時に、すげぇって思った。
「よかねーよバーカ!!」
嬉しかったんだ。
こんな、他人のために自分を曲げまくる人間が他にもいたのかってよ。
こんな奴いたらさ、オレがどんなにカッコ悪くても……
「……うん、それでこそよ!」
カッコつけるしか、ねーじゃんか。
「ったくお前……こんなとこまで来て言うことがそれか?」
「あんたが情けないからよ! ……私の顔に、泥は塗らせないんじゃなかったの?」
「……へへ、そういやそんなこと言ったっけ!」
『いい!? あんたは今から私の……このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔よ!!誰が何と言おうと、私が私の魔法で呼び出した正真正銘の使い魔!!』
……ま、そんなわけで結局。
オレはルイズの生き方にキュンキュンきちまったって話さ。
あ、言っとくけどよ! これは断じて浮気じゃないぜ!
使い魔ってのに興味があるだけだからな!
「誇り高く最後まで戦いなさい、
「おう!!……つーかやっと呼んでくれたなオレの名前!」
「あ……うん!」
だからまぁ……
「……よっしゃーーー!!」
「おぉう!?」
「こっからが本当の
今はちょっと、こっちでよろしくやってるからよ。
――だから安心しててくれ、遊作。
慶事である。
「あん?……なんか左手が光って……」
その日、トリステイン王国魔法学院にて、異常気象が観測された。
「うぉおおおおおおおおおおお!!??」
「ちょ、何よこの……風!?」
「わわわわわ!なんだ!なんだ一体ーー!?」
季節外れの、『大嵐』。
「ちょっと、いきなり何なのよこれー!」
「……まずいわ」
「あ、タバサ!? 戻ってきたの!?」
「まさか……『異次元』の力……」
「これが何か知って……きゃ!」
「どうしたの?」
「なによこれ……『カード』?」
こことは違う、彼の世界での呼び名は――『データストーム』。
「マジか……マジかぁあああーー!!」
「え、なに? あんたこれが何か知ってるの!?」
「知ってるも何も……これ!」
彼の世界の『魔法』、その源。
「オレのデッキ……【@イグニスター】だよ!!」
……そう。その日より始まったのだ。
「嵐が……止んだ……?」
彼の災厄の再来が―――
「――オレはフィールド魔法、《イグニスターAiランド》を発動!」
「……アイ君!?」
「その効果により、オレは手札から《ドヨン@イグニスター》を特殊召喚!」
<ドヨン…>
「無事で……! んん!?」
「そして《アチチ@イグニスター》を通常召喚!」
<アーチチッ!>
「その効果により、デッキから《ヒヤリ@イグニスター》を手札に加え……そのまま《ヒヤリ》を、自身の効果で特殊召喚!!」
<ヒヤー…>
「な……なんだいこの子たちは!君の使い魔なのかい!?」
「わりーなギーシュ……オレ、今超テンション上がってんだよ……!!」
「……うん??」
「ちょっとここは、最後まで付き合ってもらうぜ!!」
「な、なんだか知らないが……君が楽しそうだから、いいとも!!」
「おっしゃーー!!……よし!今再び開け!闇を導くサーキット!!」
「うぉお!? なにか出たぞ!?」
「召喚条件は、『カード名が異なるモンスター三体』! サーキットー……コンバイン!!」
ハルケギニアを震撼させた『次元大戦』の再来が、始まった。
「――暗影開闢!闇夜の英知よ!世界を超え、今再び我が手に集い……ここに覇気覚醒の力となれ!」
さぁ、この世の全てよ――闇の根源たる
「リンク召喚!……現れろ、リンク3!オレの分身!《ダークナイト@イグニスター》!」
我が『闇』に還るのだ。
「な、ななな……」
「うそ……でしょ?」
「なんという……魔法だ……」
「さぁ、デュエル再開だ!!ただしこっから先は……ずっとオレのターンだぜ!!」
そして……永劫の安寧を齎そう――――。
OCG化しているカードの効果は、基本的にOCG版を採用します。