ゼロの使-Ai-魔   作:ポロシカマン

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果たし-Ai……④

「《ライトドラゴン》……」

 

 霹靂を伴に『エクシーズ召喚』なる方法で降臨した、Ai(アイ)の新たなる使い魔。

 

「……ドラゴン!?」

 

 二対の翼、細長い体躯。私たちが一般的によく見る風竜(ウィンドドラゴン)の姿とは似ても似つかない……が、この世の全てを睥睨し君臨していると思わせる圧倒的な威容は、『ドラゴン』の名を冠するに疑問はなかった。

 

「闇あるところに光あり……へっへっへ、これで勝ったも同然だぜ!!」

「ど、どどどっどドラゴンってあ、あああああんたさらっとなんてもん召喚してんのよ……!」

「え?ドラゴンってそんな珍しいのか?」

「犬みたいにそのへんにいるわけないでしょーーーー!!!」

 

 驚くことは、もうないと思ってたのに。

 黒い騎士は……まぁ納得できる。ギリギリ。

 ギーシュのワルキューレだって、女騎士を似せてあるもの。

 

 それが今度は何よ!

 あの足のないドラゴン、どこからどう見ても韻竜クラスの稀少種じゃないの!!

 

「……あ、でも待って」

 

 この《ライトドラゴン》だって、さっきの《ダークナイト》と同じように小さいほうの使い魔を生贄?にして召喚してたわよね……

 

 ――てことは!

 

「このドラゴンも《ダークナイト》と同じ、よくできた幻……?」

「そーだけど……いやぁ、さすがに実体を持ったモンスターは創れねぇよ!」

「……はぁあああ~~~」

 

 びっっっくりした……そりゃそうよね。

いくらなんでも本物のドラゴンをそうホイホイ召喚されてたまるもんですか。

 

「は、ははは……も、もう何が、何だか……」

 

 ギーシュも相当参ってるわね……無理もないけど。

 あ、ドラゴンといえば。確かタバサもドラゴンの使い魔を召喚していたわよね。

 

「あははははは、すごいわねあれ……タバサ、あんたの専売特許取られちゃ、きゃあ!?」

「シルフィード」

『……!!』

「聞こえてたでしょ。あれは幻」

『…………』

「あなたの仲間じゃない」

 

 そのタバサに視線を移すと、どうやらタバサの使い魔の『シルフィード』と呼ばれたドラゴンがAi(アイ)のドラゴンを見て興奮しているらしく、タバサはそれをなだめている。

 

「あっちもあっちで苦労してそうね……」

 

 クラスメイトの姿が客観的な自分の姿と重ね合わさる。

 ……自分だけじゃなさそうだ、とちょっと安心。

 

「さぁて……そんじゃ早速、《ライトドラゴン》の効果発動!!」

 

 なんて感慨に耽っていると、今まさに、Ai(アイ)は新たに召喚した使い魔の能力を行使しようとしていた。

 

「そのドラゴンにも能力があるの?」

「あたぼーよ!!よく見てな、これが【@イグニスター】デッキの真骨頂の一つ!!」

 

 《ダークナイト》の能力が『召喚の生贄にした使い魔の再召喚』……

 ならばこの《ライトドラゴン》は如何なる力を持っているというのだろう。

 

「すんごい……小さい使い魔も含めて、使い魔ごとに特殊能力が備わっているのね……!」

「……(間違いない……やっぱりあれは『異次元の魔法』)」

「タバサ?」

「なんでもない」

 

 今後の為にもしっかりこの目に焼き付けないと……

 Ai(アイ)の力は、私の力でもあるんだから……!!

 

 

「1ターンに一度、このカードのオーバーレイユニットを一つ取り除くことで、オレのフィールドの『@イグニスター』モンスターの数まで、相手モンスターを選んで破壊できる!!」

 

 

 《ライトドラゴン》が、自身を中心に回っていた光球の一つを捕食する。

 空間を割るような耳鳴りの後、胸の紋章を中心に《ライトドラゴン》は雷を帯び始めた。

 

「今オレのフィールドにいる『@イグニスター』は《ダークナイト》と《ライトドラゴン》の二体!……よって二体まで破壊できる!!」

「二体を破壊……二体……まさか!?」

「そう、破壊するのはもちろん……残る二体のワルキューレ!!」

「なんだってぇーー!?」

 

 《ライトドラゴン》の能力は……『味方の使い魔の数まで、複数の敵を同時攻撃』!!

 

「すごい!これで一気に勝負を決められるわ!!」

「おう!……やっちまえ!《ライトドラゴン》!!」

 

 Ai(アイ)の号令で、《ライトドラゴン》は纏っていた稲妻をその顎に収束。

 球状になった霹靂は、閃光とともに二体のワルキューレに炸裂した。

 

 

「!……危ない!!」

「!……まじぃ!!」

 

 バラが散る。

 決闘場は、大きな爆炎に包まれた。

 

 

 

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「すみません!!水系統のメイジの方は消火をお願いいたします!」

「そこ、燃えてるわよ!!」

 

 シエスタとキュルケが叫び、それを聞いた水系統のメイジたちは発火個所に放水し始めた。

 

「お、貴族っつっても意外に素直じゃ……ぶが!?」

「さっきより被害が大きくなってるじゃないのよ!!」

「マジごめんって!オレも今知ったの!!……ていうかご主人タマもさっきノリノリだったじゃん!!」

「…………反省シテマス」

「目ぇ逸らしてんじゃねーよ」

 

 いけないわね、つい盛り上がってこういう状況になるのを失念してしまったわ……。

 

「それにしても、冗談抜きでかなり危険な力じゃないの」

「いや、オレの前いた世界じゃ現実でこんなことはできなかったんだぜ?なんでか知らんけどこの世界じゃモンスターもその攻撃もマジで実体化してるけど」

「あれ?じゃぁさっきの『ソリッドビジョン』は現実のものじゃないっていうの?」

「まさか、さすがに現実でソリッドビジョンは出せねーよ!!電脳空間限定の技術だ!」

「『デンノウ空間』……?」

「あーそこはまたおいおい説明するから……」

「うーん、まぁとにかく使いどころは考えないとね……その、あんたの使い魔」

 

 強力な魔法は往々にしてリスクが付きまとうもの。

 周りの人に迷惑をかけてしまえばそれはただの災害と同じ。

 私のためにもAi(アイ)のためにも……どうしてもこれじゃなきゃ!って状況以外では使わないことにしましょう。

 

「……火、消えたな」

 

 Ai(アイ)が、へたり込むギーシュのもとへと歩き出す。

 他に発火個所がないか確認しつつ、私もそれについていった。

 

「ギーシュ」

「…………。」

「どうしたよ、今オレめっちゃ隙だらけだぜ?」

「フッ、もう僕に魔力は残ってないよ……こうして意識を保っているだけで精いっぱいだ」

「そうか」

 

 Ai(アイ)がシエスタに目配せする。

 それに、頷きで返すシエスタ。

 

「勝者―――Ai(アイ)さん!!」

 

 ギャラリーが再び、暑苦しいほどに熱狂。

 

 激しい決闘を制したのは、私の使い魔のAi(アイ)

 

 そして敗れたギーシュは、なぜか満足そうにうなだれていた。

 

 

 

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「いやー、まさかギーシュが負けるとはなー」

「流石にあれは誰も勝てないだろー」

「しっかしルイズの使い魔、とんでもないな!!」

「あなた大丈夫?フラフラじゃない」

「ちょっとさっきの衝撃で……ギーシュ様、ごめんなさい……」

「魔法が使えないぶん、使い魔は滅茶苦茶強いのを召喚できたってことだろ」

「ま、このまんま『ゼロ』のルイズで終わんなくてよかったんじゃない?」

「運だけはゼロじゃなかったのね!あはは!!」

 

 口々に好き勝手言いながら散っていくギャラリーたちを怨嗟の眼差しで見送るルイズに、それをどうどうとなだめるメイドのねーちゃん。

 いやマジで今日のMVPだなメイドのねーちゃん。あとで菓子折り持参しなきゃ……菓子折り売ってんのかな。

 

 ……て、そうだ。

 

「ギーシュ、ちょろっと訊きたいことがあるんだが」

 

 デッキをデュエルディスクから取り外し、デュエルを強制終了する。

 そしてオレは胡坐をかいて、仰向けに寝っ転がるギーシュに問うた。

 

「どうして()()()のワルキューレをオレへの攻撃に使わなかったんだ?」

 

 ルイズとシエスタが目を見開いて仰天する。

 

「……なんのことだい?」

「AI相手に白ばっくれるとはいい度胸だな……でも無駄だよーん。ちゃーんと見てたからな。お前が長髪で茶色のマントの女の子をワルキューレで爆風から守ってたのを」

「……なんですって!?」

 

 そう。《ライトドラゴン》の効果で残る二体のワルキューレを破壊した瞬間に発生した爆風。その時こいつは、恐らくはなけなしの力を振り絞って出したのだろう最後のワルキューレ一体を、爆風をモロに受ける位置にいた女の子を守るために差し出したのだ。

 

「オレが《ライトドラゴン》をエクシーズ召喚してた時とか、隙をついて背後から奇襲できるタイミングはいくらでもあった。その時点でお前は相当焦ってたはずだ……このままじゃ負けるってな。でもお前は最後の一体をそこで使わなかった……いや、女の子が危険にさらされているのを見るまで『使えると思ってなかった』が正しいか?」

「…………何が言いたいんだい?」

「お前は自分より赤の他人を助ける時こそ、力を発揮できるヤツだってことだよ」

 

 そんなバカな、って顔でオレの顔を見るギーシュ。

 

「なに驚いてんだよ……もしかして無意識だったか?」

「……あぁ」 

「……ったく、どいつもこいつも……貴族ってやつはよ」

「だ、だったら何だというんだ!!僕を決闘を放棄した腑抜けだとでも、そう言いたいのか!?」

「んなわけんねーだろ!」

 

 呆けた顔をするギーシュの肩を掴む。

 強く掴む。

 

「そこがいーんじゃねーか!!」

「……えぇ!?」

 

 そう、オレは人間のそういう生き方に……とっても弱いAIなのだ。

 

「ごめんなギーシュ……オレお前のこと、チャラい版のオレのパチモンくらいにしか思ってなかったわ……」

「それは誹謗中傷だよね?言葉の意味は分からないけど絶対そうだよね?」

「でも違った!お前はすげぇヤツだ!!」

「……おぉう!?」

「見直した!!……それに引き換えオレは、久々のデュエルに夢中で、爆風のことなんてちっとも頭になかった……」

「それは……うん。問題だよ。あれだけの力、及ぼす影響は甚大だった」

「だろ?本当はあそこであの女の子を守るべきだったのはオレ、そしてそこにいる危機感ゼロのダメご主人だったんだよ」

「…………うぅ」

 

 さすがの怒りんぼルイズもここでは殴ってはこない。

 ご主人タマにも確かな良心があった……ならもっとオレに優しくしろよな!!

 

「だから……この決闘は、ナシ!!」

「「……ハァ!?」」

 

 いやハァ!?なのはこっちだっつの!

 

「当然だろーが!!余力を残してた相手に勝っても……そんなの勝ったなんて言いませーん!!デュエルってのはなぁ!互いの全てをぶつけ合って……認め合って……こう、何のわだかまりもなくスカッと終わるもんなの!!……本当は!!」

「初耳だそんなもの!!」

「今聞いたな!?だったら問題ないねー!!」

「どんな理論よ!?」

 

 イグニス理論だ。提唱者はオレ。

 

「とにかく!!……ギーシュ!!」

「はい!?」

「…………。」

「……アイ君?」

「……いつか」

 

 いつか。

 

「……もっかい、今度はちゃんとルール決めて……思いっきりデュエルしようぜ」

 

 デュエルで散々悪いことしたオレが言うのもなんだけど。

 でも、こんなオレでもデュエリストなんだ。

 

 だから……いつか、本当に。

 

「なんのわだかまりもねぇ、ただ純粋に互いの力の全てをぶつけ合うだけの、超楽しい決闘、しようぜ!!」

 

 やりたい。

 心の底から、そんなデュエルを。

 ギーシュと。

 

「…………いい、のかい?」

「うん」

「僕は、見ての通りの軽い男だぞ?」

「オレもそう」

「……臆病者で、女の子と仲良くなれるくらいしか、能のないと言われている男だぞ?」

「いーじゃんナンパ。楽しそうじゃん。オレもしてみたい」

「ちょっと」

 

 うるせーなー。いいとこなんだから出てくんなよルイズちゃま。

 

「…………」

「ギーシュ」

「……なんだい?」

「こんないるだけで人間に迷惑かけるダメなAIだけどさ……オレ、人間とはそれなりに仲良くなりたいんだ」

「…………うん」

「特にお前やご主人タマ……それに、そこのメイドのねーちゃんみたいな」

「はい!?」

「……オレ的に、いい人間と」

 

 誰かのために、世界のために戦う人間。

 オレが迷惑をかけてきた人間……

 

 罪滅ぼし……とかそういうんじゃないさ。

 

 ただのオレのわかがまだ。

 

 

「だから、ギーシュ!」

「……うん!」

「メイドのねーちゃん!」

「あ、シエスタです!」

「……シエスタちゃん!!」

「はい!!」

 

 

 間違えまくったオレだけど。

 だからこそ。今度こそ。

 

 

 オレは。

 

 

 

「……『仲間』に入ーーれて!!」

 

 

 間違えたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がいいなら、僕も」

「貴方がいいのでしたら、私も」

 

 

 

 

 

 

 

 隣にいたい。

 

 

 

 

 

 

「君と」

「貴方と」

 

 

 

 

 

 

 オレは―――。

 

 

 

 

 

「「友達になりたい」」

 

 

 

 

 

 人間と、繋がりたい。

 

 

 

 

 

 

 

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