クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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今回は宣言通り紗夜さんたち登場です。


イヌ派?ネコ派?

 湊友希那。

 彼女は出会い方さえ違えば崇拝していた可能性があると言った。

 

 彼女との出会いはそう、あの公園だった。

 バイトが夕方から入っていたある休日。

 公園のベンチで横になり軽く昼寝をしていた俺。

 起きると空が茜色に染まっていた。

 そろそろバイトに行かないといけないと思い、身体を起こすと……

 

「にゃーん……ふふっ」

 

 集まっている猫たち。そこにいる一人の少女……とても幸せそうな顔で猫たちを撫でてる。時々、猫の鳴き真似とか……あーうん。何か見なかった方がよかったかも。多分、あれは誰も居ないと思ってやってることだ。

 よし、バレる前に逃げよう。そう思い立ち上がった瞬間。

 

「…………」

「…………」

 

 目が、合った。

 流れる沈黙。俺はそれを打開すべく問いかけた。

 

「…………猫好きなんですか?」

「…………っ!」

 

 すると頬が紅く染まっていく。そしてそのまま逃げるように去って行った。

 

「…………いやいや、逃げなくても……」

 

 どうせ関わることのない赤の他人なんだし……まぁいいや。バイト行こバイト。

 

 そしてバイト。受付でお客さんをさばいてる!……と言いたいがまぁ、そんなわけもなく。待ちの時間が生まれ、現在暇の大バーゲンセール中だったりする。

 

「…………すいません」

 

 そんな暇を持て余していた俺に声がかけられる。

 

「あ、はい何で……あ」

「あ……!」

 

 早かった。再会が実に早かった。

 もうこの時点で俺の彼女に対する印象は猫好き。

 これが湊友希那とのファーストコンタクトだったりする。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、CiRCLE裏に呼び出された俺は彼女が、自分は断じて猫に対して特別な感情を抱いていない、音楽一筋だと長々と説明を受ける羽目に。もうそのせいでこの人は残念な猫好きって印象で固定されてしまった。

 

「いいえ。ネコの方がいいわ」

「甘いですね。イヌの方がいいに決まってます」

 

 そして現在。彼女――友希那さんは俺とかRoseliaと言った一部の面々には、既に開き直って猫好きであることをそこまで隠そうとしない。まぁ……もう……なんだ。うん。開き直った方が楽だよね!ちなみに紗夜さんは犬好きである。

 紗夜さんより前に出会ってはいるが、公園での出会いがなければきっと、クールビューティー教の血が騒いでいただろう。無論、今となっては後の祭りであるが。

 

「慧人さん。あなたはどちらですか?ネコ派ですか?イヌ派ですか?」

「ん?それはネコ……」

 

 ネコ派と言おうとすると、心底失望したような目を向けてくる。表情もどこか冷たい。

 

「ではなくイヌ……」

 

 イヌ派と言おうとすると、心底喜んでいるような目を向けてくる。表情もどこか嬉しそう。

 

「ネコ……イヌ……ネコ……イヌ……」

 

 コロコロと変わる表情……うわぁ、絶対ババ抜きとか弱そうだぁ……。

 

「もちろん、クールビューティーが一番ですよ」

「いえ。戯れ言はいいので早く選んでください」

「アッ、ハイ」

 

 俺は目を閉じて思案する。そして、結論に至った。

 

「…………ハリネズミって可愛くない?」

「「はぁ?」」

 

 おっと、友希那さんまでもが何言ってんだコイツって感じを向けてくる。

 

「おう、分かった。…………戦争だな?」

 

 いや、実際のところ、ハリネズミが一番好きである。イヌ?ネコ?いやいや、ハリネズミとかまぁ、後はハムスターとか。そういう手のひらサイズの小動物(勿論その中でも好みはあるが)こそ至高だろう。

 まぁやり合ってもいいんだが……この人たちどうせ譲らないので、目を閉じる。

 全く、イヌ派?ネコ派?ってその二大勢力で、他のものを無視するのは好まないわ。……きっとたえや花音なら分かってくれる。たえは迷わずウサギ派だろうし、花音はクラゲ派とかだろう。…………クラゲ派って何?誰か教えて。

 

「待たせたね☆」

「絶対ネコよ」

「いいえイヌです」

「……どういう状況?」

「ネコ派とイヌ派に分かれて争ってます。個人的にはどっちもいいと思いますが……」

「あ、何だ。確かに二人の好み違うもんね」

 

 と、興味を失せた感じを出すリサ姐。……どうしたのだろう?

 

「リサ姐……思い切り関係なさそうにしてますけど、あなたが一番関係ありますよ」

「…………へ?何で?」

「あーいえ。この二人、『リサ姐にはイヌ耳が似合うかネコ耳が似合うか』が元になって言い争ってるんですよ?」

「……な、何でそんな話に……!」

「で、この後『イヌ耳を付けるさせるかネコ耳を付けさせるか』で議論中です」

 

 ん?俺はその大前提を無視して話をしていたからね。関係ない。

 というかこの人たちも結局は自分たちの好みの話しかしてないので、結果変わんない。似合うかどうかより、自分の好きな方を猛プッシュって感じだ。

 

「……ごめん。両方ともないって選択は……」

「「あり得ないわ」」

「…………!」

「いえ、救いを俺に求められましても……あと、二人とも。そろそろ行きましょう?というか、両方試してから議論をすればいいと思いますよ」

「「そうね。分かったわ」」

「ごめん。アタシが一番分かってない。後一番良くない」

「諦めてください。何処かの誰かさんがリサ姐が来るまでの時間を潰すために『遅れてくるリサ姐に後でイヌ耳かネコ耳のどちらかつけさせたいけど、どっちがいいと思う?』って、イヌ過激派とネコ過激派の二人の間に爆弾落としたんですから」

「慧人くんが原因だったかぁ……!」

 

 救いを求める目から一転、まるで仇を見るような目をしてくる。ん?あれ?俺が悪いのか?

 とまぁ、お陰で暇な時間は潰せたが……何だろう。代わりに何か大切なものを失った気がする。

 そんなこんなショッピングに向かうが……今気付いた。友希那さん、紗夜さん、リサ姐。美少女三人と一緒にショッピング。……これ、俗に言う両手に花と言うやつではないか?いや、両手だけでは飽き足らず頭にまで咲かせていそうだが……

 

「とか言いつつ実際はただの荷物持ちだからなぁ……」

 

 彼女たち曰く、荷物持ち兼男避けだそうだ。俺が居れば大抵のトラブルは回避できるらしい。いや、俺そんなすごい存在じゃないけど?え?大抵のトラブルを力業でねじ伏せてる?何そいつ怖い。

 

「まぁ、ショッピングは早めに終わらせて早くカラオケに行きましょ」

「そうですね。今日のメインはそっちですから」

「……うぐっ」

 

 本来、俺はこの後に合流すればよかったが……まぁ、前述の通りである。

 何故、カラオケか?

 

「来週なんでしょ?ほらほら、頑張らないと…………死者が出るよ」

 

 リサ姐が真面目な顔で脅してくる。

 俺、冬木慧人は()()()()歌うことが下手なのだ。で、ウチの文化祭で歌わされる……ってボソッと言ったら友希那さんが「なら鍛えないとね」とボーカルの魂に熱が入ったよう。そこに紗夜さんのスイッチも入り……結果これである。

 よかったのはボーカル陣でも友希那さんという点だろうか。俺の知っているボーカル陣の中ではマシな部類だ。こころや香澄相手は考えたくないし、彩は……その後ろのやつが怖いし、蘭……もなんとなくやめた方がいいと思う。

 ただ、友希那さんのことだから厳しいんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ショッピングは終わりカラオケルーム。ショッピング中は案の定荷物持ちにされました。悲しい。

 

「ということで、まずは本日のメイン!リサ姐にはイヌ耳とネコ耳どちらが似合うかぁっ!」

「「待ってました!」」

 

 シャッシャッ、シャロシャロ

 

 マイクを片手に話す俺。近くに置いてあるマラカスやタンバリンを鳴らして盛り上げる二人。

 

「待って待って。今日のメインは君の歌だよ?ねぇ、メインが違うよね?大体、イヌ耳もネコ耳もショッピングの最中に誰も見ていなかっ――」

「何を言ってるんですか?友希那さんと紗夜さんにリサ姐の相手を任せて、裏で調達しておきましたよ。ちなみに耳だけに飽き足らず、犬や猫の手みたいなああいうのも買っておきました」

 

 グッとサムズアップする俺。

 

「……流石ね。冬木」

「ええ。流石です」

 

 すると二人もグッと応えてくれた。

 

「ふっ。褒めないでくださいよ」

「――行動力!行動力が高過ぎる!全然気付かなかったよ!」

 

 俺たち三人の連携を舐めないで頂きたい。

 

「ということで、リサ姐よろしく」

 

 袋ごと渡す俺。

 何だかんだ言いながらもつけてくれるリサ姐はすごいと思う。

 

「にゃ、にゃーん……」

「…………っ!!」

「…………っ!」

 

 最初は猫耳に猫の手を付け、カラオケのソファの上で四つん這いになって頬をかく動作をする。

 無論、そこまで頼んでいないのだが、その光景の破壊力は抜群だった。

 特に友希那さんが胸の辺りを抑え、顔を真っ赤にしている。紗夜さんもこの破壊力にはやられはじめ、かく言う俺も無茶苦茶可愛いと思っている。もうね。ヤバい。

 

「にゃーん……」

 

 すると友希那さんがリサ姐……いや、リサ猫の顎の下を撫でている。リサ猫も気持ちよさそうにし、友希那さんも幸せそうだ。

 あぁ~何だろうねこの空間。俺いたらダメなやつだ。ちなみに紗夜さんはスマホを構えて撮っていた。え?後でしっかりグループの方に貼っておきます?マジで?流石です!

 

 しばらくお待ちください。

 

「…………♪」

 

 リサ猫にかなり癒やされ、ご満悦の友希那さん。そして、次は犬の番……

 

「わんわん!」

「…………っ!!」

 

 紗夜さんの目が見開いた。もう、リサ姐……いや、リサ犬もノリノリである。

 紗夜さんの頬が緩んでいき、友希那さんもこれはこれでと言い始めながら、しっかり手にはスマホが握られていた。俺もうんうんって感じこの空間を眺めている。

 

「お、お手……」

「わんっ!」

「はうぅぅ……!」

 

 あぁ~癒やされるなぁ……え?友希那さん?しっかりグループの方に貼っておく?もう分かってるじゃないですか!ありがとうございます!

 俺、来世は犬になろうかな。

 

 しばらくお待ちください。

 

「…………♪」

「…………♪」

 

 たっぷりリサ犬に癒された紗夜さん。もう、犬がいい猫がいいなんていう争いはしなくていいんだ。どっちも素晴らしいんだ。あぁ~平和な世界。

 

「…………そうだ☆」

 

 すると、リサ姐は悪戯ッ子的な笑みを浮かべる。そしてイヌ耳とネコ耳を持って二人の下へ……え?待って。それ以上は……

 

「…………もう死んでもいいや」

 

 あぁ……何だろうこの空間。

 控えめに言って最高。




途中にあった「イヌ派?ネコ派?」の分岐。ギャルゲー風に書くと、

イヌ派だ。→紗夜さんの好感度上昇。友希那さんの好感度減少。
ネコ派だ。→紗夜さんの好感度減少。友希那さんの好感度上昇。
その他の派閥だ。→二人の好感度減少。

ちなみに慧人は裏ルートを辿ったために、紗夜さん、友希那さん、リサ姐の三人からの好感度が減少しました。……大丈夫かコイツ。

後、以下ある意味BADENDルート。
ハリネズミ派だ。→慧人の好感度急上昇。クールビューティー教に入信させられる。
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