クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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一番盛り上がるのは最後だったりする

「あ、悪魔の賛歌が……滅びの歌が……!」

 

 目を回しながらソファーに倒れ込むあこちゃん。

 

「うぅ……闇の呪文……」

 

 耳を押さえ、ソファの陰にうずくまるりんさん。

 

「……………………」

 

 目を開け、口を少し開き魂が抜けた感じの友希那さん。

 

「ご、ごめん……」

 

 笑顔を作ろうとしながらも明らかに無理してるリサ姐。

 

「ぽてぽてぽてぽてぽて」

 

 ポテトをがむしゃらに食べることで耳からの情報を遮断しようとする紗夜さん。

 カオスである。まさにカオスである。

 ただこのカオスこそが俺が初めてRoseliaの前で歌った、カラオケ内の光景である。

 

 

 

 

 

 何故Roseliaが俺たちの高校で演奏していたか?それはこの前、カラオケに連れて行かれた時だった。

 

「……はぁ……つ、疲れた……」

「…………だいぶマシになったわ」

「そうですね。最初の地獄を見せていたときに比べれば普通になりました」

 

 俺の歌唱力はドラ○もんのジャ○アン並って自他共に認めている。そのため、そもそも歌うこと自体そんなに好きじゃない。……まぁ、今は聞くこと()好きである。

 

「でも自分でも音が合って来ていることは分かりますよ」

「絶対音感持ってたんだっけ?」

「……俺なんかに要らないものですよ」

 

 絶対音感。これを持っていることを自覚したのは中学だが……まぁ、あんまり公言してない。

 だって、絶対音感持ち=歌が上手いとか思われるからね。ふざけるな。絶対音感持ってても音痴な奴もリズム感がないやつも居るんだよ。しかも自分で歌ってて音外してると分かってしまうのが悲しみを加速させていくって言うね。

 

「でもさぁ。文化祭でバンドやるんでしょ?」

「やるというか……やらされるというか……」

「そう言えば、そもそも何でそんなことになったのですか?」

「ああ、説明してなかったですね。えーっと……」

 

 ということでやる羽目になった経緯を説明する。そういやこの人たち、何でそう言った事情を聞かないで快く引き受けてくれたのだろう?すごい不思議だ。

 

「大変だねー」

「ホントですよ……しかも他の部活は優勝するためにあの手この手を使っていますしね。生徒の買収にスパイ活動。ははは、笑えてきますよ」

 

 ダンッ!ダンッ!ダンッ!

 

 軽く笑ってると机を叩く音が3回分聞こえた。見ると静かにだが怒りを感じる三人がいた。

 

「ゆ、友希那さん?紗夜さん?リサ姐?え、えっと……」

「…………許せないわ」

「えぇ。ムカつきますね」

「アタシもこれはねぇ」

 

 三人が言うに、勝ちたい、優勝したいという強い思いを抱く()()()いい。でもそのために、バンドの演奏技術を磨くのではなく、自分たちが勝つためだけに買収したり、他者を蹴落とすような真似は()()()許せないとのこと。

 …………ああそうだった。この人たちはそういや、バンドをガチでやって、頂点を本気で目指している人たちだった

 何が言いたいかと言われるとどうやら俺は、彼女たちのスイッチを入れてしまったようだ。

 

「…………慧人。確かまだ枠はあるのよね」

「えぇまぁ。ウチの部活の枠が一つ空いてますが……」

 

 空いているというか、埋まる予定がないというか……

 

「アタシたちにその枠をくれないかな?」

「それは別に構いませんが……」

 

 むしろこの空気でNOと言えるほど俺強くない。彼女たち。怖い。

 

「腐ってるその人たちにホンモノのバンドを見せつけてやりましょう」

 

 三人の目には炎が灯っていた。

 

「…………分かりました。手はずは整えておきますよ」

 

 あいにく俺はその炎を消す方法を知らない。

 

「よぉし、こうなったら慧人くんにはもっとうまくなってもらわないとね☆」

「……え?」

「…………私たちの前にやるのだから」

「いやちょっと?」

「もう一回行きますよ。慧人さん」

 

 嘘だろ?と言おうとした頃には既にメロディーが流れ始めていた。

 この後更に厳しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Roseliaが三曲歌い終える頃には、会場であった体育館は満員。それどころか体育館から外も入れなかった人たちで一杯になっていた。鳴り止まないアンコール。沸騰してしまうのではと錯覚させられるほどの熱気。俺たちの……いや、今までの全てと段違い。付け焼き刃の俺たちでは同じ次元に立てない、いや、立たせないような圧倒的な力を肌で感じた。

 今回の経験を通してRoseliaの……いや、彼女たちの凄さを改めて知ることができた。Roselia格好いいなぁ……後、演奏している紗夜さんやっぱ神だわ。うん。最高。

 

「…………で。何の御用ですか。校長先生」

 

 文化祭も終わりがけ、何故か放送により俺は校長室に呼び出された。全校放送である。

 

「…………素晴らしい演奏だった」

「はい?」

「短い期間で頑張った君たちもだが、彼女たちの演奏は実に素晴らしいものだった」

「……そりゃそうですよ。アイツらの凄さは俺もよく知っています」

 

 あの演奏をするのにどれだけ努力しているか。個々人の長年の努力までは分からないにしても、Roseliaが結成されてからなら俺はよく知っている。

 

「でも、アイツらは今のレベルで満足はしてないですよ。絶対に」

「……そのハングリー精神は私たちも見習うべき姿、君たちに学んでほしい姿だね」

「そうですね」

「そろそろ本題に入ろう。集計の結果、君たちの部活が……まぁ、正確には彼女たちだが、断トツトップだったよ」

「おぉ……」

 

 全投票者のおよそ98%くらいがRoseliaに票を入れたらしい。本当にやりやがったよアイツら。さすがすぎるわ。本当に全部活の思惑をぶち壊したよ。

 

「で、これはお願いなんだが……彼女たちにもう一回演奏を頼めないだろうか」

「と言いますと?」

「このイベントは予想以上の盛り上がりを見せた。なら、最後の最後まで盛り上げてもらいたいのだよ。一曲で全然かまわない。だから……」

「分かりました。聞いてみますね」

 

 とりあえず、スマホを取り出して、

 

「もしもし、紗夜さん?」

『や、やっぱり何かやらかしたのですか!慧人さん!』

「待って。第一声から俺への印象が酷い」

『校長先生からの放送による呼び出しなんて普通はないですからね。何をやらかしたか皆と話していたんです』

「……おう…………そこに俺の味方はいないんだな」

 

 悲しい。マジで悲しい。

 

『ところで何故電話を?ま、まさか今生の別れを……』

「ないですよ。そろそろボケるのやめましょう?」

『ボケてません。本気です』

「…………」

 

 どうしよう。この人無自覚だった。よし。秘技『スルー』発動。

 

「紗夜さんたちにお願いなんですが……この後、一曲だけでもいいんで、弾いてもらうことって出来ます?」

『ふふっ、慧人さんからのお願いですか……それくらい構いませんよ。寧ろアンコールに、ルールとは言えお答えできなかったのが悔やんでいたくらいですから』

「流石です。ありがとうございます」

『えぇっ!?おねーちゃんたちもう一回演奏するの!?あたしもやりたいやりたい!』

『ひ、日菜!電話中は静かにしてって……』

 

 あーそういや日菜も俺たちの演奏見に来てたな。何でも、紗夜さんが出るついでにって。いやお前の目当て紗夜さんだろ。

 

「分かった。ちょっと聞いてみますね」

『すみません……』

 

 ということで、

 

「校長先生。彼女たちからはオッケーで、他にも演奏したいという奴がいるのですが……」

 

 奴って言うか日菜というか。あれ?パスパレとしてじゃないよな?だって、今日は千聖が仕事入ってるって言ってたよな?そのせいで俺の醜態を生で見れないって悔やんでいたよな……?いや、醜態確定は酷……待てよ?そう言えば花音がスマホをずっと構えていたような……後彩も。あれ?もしやあの二人って刺客的な何かだったりします?はははっ。あの二人に限ってそんなわけ……あるなぁ。

 

「勿論、大歓迎だよ」

「ありがとうございます」

 

 よかった。何か乗り気だ。そういやアンタがこれ言い出したんだもんな。

 

「オッケーだってよ。日菜」

『やったー!』

『なら皆でやりましょうよ!そうすればきっと楽しいわ!』

「その声はこころか?」

 

 弦巻こころ。ハロー、ハッピーワールド!のボーカルでリーダー。無茶苦茶金持ち。やりたいとか願いは望めば叶う破天荒お嬢様である。

 ……そういやコイツも見に来てたな……理由は、りんさんのキーボードとかあこちゃんのドラムを運ぶために黒服さんたちをお借りしたら、そのまま着いてきたって感じだ。マジでありがとう。黒服さんたちマジで感謝してます。

 後来ていた面子を挙げるとすれば、あこちゃんの姉の巴とか、巴と来ていた蘭やモカ、そういや香澄にたえも来ていたっけ?理由?そんなの知るわけがない。

 

「おいおい皆ってまさか……!」

『任せて!ここに居る皆の楽器と衣装はすぐに持ってこさせるわ!』

 

 ……電話越しで話が思ったより壮大になってるが……黒服さんたちごめんなさい。これは俺の予想外です。

 

『スケジュールを教えて頂戴!』

「え?あー大体三十分後にやるんで……最初はRoselia。後は順番も何もないです」

『つまり自由ね!』

 

 そうだな……自由と書いて無法地帯ってやつだ。

 

『色々と確認したいのですぐに戻ってきて下さい』

「あ、はい。すぐ行きます」

 

 というわけで電話を切って……

 

「校長先生。後のことは全部俺にやらせてください」

「分かった。告知なら任せてくれ」

 

 アンタ乗り気だな?まぁいいけど。 

 で、体育館のステージ裏に戻ってくると……まぁ何だ。凄いやる気だなぁ……。

 

「どうします?」

「とりあえず校長から俺の好きにしていいって言われた」

「さっすがー」

「こうなったらトコトンやるわよ!」

「「「おぉー!」」」

 

 あはは……何でこうなったか聞かれたら、まぁ皆のノリの良さのおかげだな。

 黒服さんたちが大出動。デカいトラック的なのもやって来てここで着替えてとのことだったり、着々と準備が進められる。俺もこの後どうするかに対して、意見ってほどではないが出したりしたが……皆それぞれ言ってくるので俺はまとめることを放棄した。えぇいお前らもう自由にやれ!

 そんな中時間になったので俺は壇上に赴き、校長から優勝の祝福を受けておく。すごい観客の数だがお前らの居る理由なんて分かってる。

 そして、マイクを片手に……

 

「お前らぁ!もう一回Roseliaの演奏が聞きたいかぁ!」

『『『おぉぉっ!』』』

「声が小せぇぞぉっ!」

『『『おおぉぉぉっ!』』』

「よっしゃぁ!じゃあ、ここからは彼女たちの時間だ!最後の最後まで盛り上げていくぞ!テメェら準備はいいなぁ!」

『『『おおおぉぉぉぉっ!!』』』

「始めるぞ!さぁライブだぁっ!」

 

 ドォンッ!

 

 そう言った瞬間、背後から爆発音が聞こえて、スモークが立ちこめた。え?ちょっと待て俺その演出聞いてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れー」

「「「お疲れー」」」

 

 場所はファミレス。打ち上げをしていた。メンバーは俺と彼女たちである。

 

「何かとんでもないことになってたわね……」

「いいじゃん☆何にも縛られずに自由にやれてさ☆」

「あたしはおねーちゃんと弾けて楽しかったよ!」

「あこもおねーちゃんと叩けて楽しかった!」

 

 Roseliaが演奏した後は本当に自由だった。そもそもRoselia以外が五人全員そろっていないため、バンドのメンバー関係なし、割とごちゃ混ぜでやっていた。

 日菜も紗夜さんと並んでギターを弾いてて……何だかそれだけでも感動しそうになったの俺だけ?あ、リサ姐や友希那さんも共感してくれる?だよね。夏前とかだと絶対考えられなかったもんね。

 後はあこちゃんも巴と一緒に……二人ドラムってすごい迫力だと思いました。りんさんもキーボードが足りてなかったからか色んな人たちと合わせてたし。こころに乗せられる花音と、悪乗りしたモカに付き合わされる蘭とか……あ、そういや彩と日菜が最初に出たときには凄い盛り上がっていたよな。何でもあれってアイドルの……!とか何とか。そのことに彩は地味にガッツポーズしていた。……そんなにアイドルの認識が嬉しかったのか?

 まぁ、そんな中たえは歯ギターやりたいとかウサギ呼びたいとか言い出したので流石に止めたり、香澄がボーカルが五人そろってるから何か一緒に歌おう!って言い出してきらきら星とか歌ってたんだっけ?後は……Roseliaの無茶ぶりで俺もまた歌わされたり……うん。ごめんね。一曲しかまともに歌えなくて。ごめんね。実力が段違いで。友希那さんすげぇ……。

 

 ああそうだ。そういや、今日他の部活が演奏していたやつも弾いたっけ。これは俺のいたずら心ってやつだ。要するに格の違いを見せつけてやろうと……まぁ、俺もやられたんでお相子で。大丈夫。弾けるメンバーで即興バンド作ってやったから。……何でそれで出来たのだろう。皆すごいなぁ。

 もし今回の件で責任問題が起きても責任は全部俺が取るから。……嘘です校長が取ります。

 

「でも、打ち上げはいいのですか?私たちの方に参加して」

「いいですよ。ウチの学校は打ち上げ禁止なので普通は縮こまったってやってます」

「じゃあ見つかったら慧人くんだけ怒られるんだ」

「頑張ってね」

「生きて帰ってきてね」

「今まで楽しかったよ」

「また会おうね」

「おい、もう怒られる前提かよ。いいかお前ら。バレなきゃいいんだよ。バレなきゃ」

「言ってることが悪人……」

「犯罪者のそれだね……」

「ふはは~じゃあモカちゃんがしっかり密告しておくね~」

「…………宣言したら密告じゃないよね」

 

 こんな感じで騒いで終わりました。

 余談だが、()()()学校側に密告された。

 週明けのHRで担任に『打ち上げはするならバレるなよ?特にファミレスで他校のライブしてくれた女子たちと一緒に居たサッカー部の~』と言われ、その後サッカー部や彼女たちの演奏の虜になった奴ら……つまり、全校生徒のほとんどと鬼ごっこが始まるのはいつもより規模が大きくて大変でした。

 増えた部費は何に使おう?そんなことを考えながら市街を爆走しています。

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