現実逃避気味に毎日投稿してましたが、明日と明後日も投稿します。
「お前とやれんのはいつぶりだ?」
「去年の冬以来だな」
「約一年か……おもしれぇ。久し振りにボコボコにしてやるよ」
「はっ。お前にボコボコにされた記憶はねぇけどな」
「言ってろ。今回で勝ち越しだ」
「それはこっちの台詞だ」
前半の40分間が終了した。
スコアは7-7の同点である。
「凄いね……」
「東雲くんと互角にやり合ってるあの人は何者?」
桃山浦の観客から出てきた言葉。それもそうだ。ここまで異常なまでに、ハイペースに点を取り合う展開は誰が想像できたか。
「サッカーってこんなに点が取れるスポーツなの?」
「多分、この試合が凄いだけですよ」
「けいさんも凄かったですけど……」
「あの、東雲って人も凄かったね~」
「何か二人だけ住む世界が違う?感じだったよね!」
前半だけで、桃山浦高校の東雲は5ゴール2アシスト、対する虎南高校の慧人は1ゴール6アシスト。試合前から争っていた二人が全得点に絡む活躍を見せていた。
しかも、それだけに留まらない。二人は何度も1対1でぶつかる場面があったが互いに一歩も引かない。東雲が抜き去れば、次は慧人がやり返す。他の選手が彼らを止めようとするも、二人は持ち前の技術力でディフェンダーを抜き去り、東雲は自身でそのまま、慧人はパスを繋げることで点へと繋げていく。双方の攻撃陣が強すぎて、守備陣が歯が立ってない。その結果が両チーム合わせて40分で14点という結果だ。
「これがケイトさんのブシドーなんですね!」
「そうだよね!なんかるんっってきた!」
「お二人の言いたいことはよく分からないですがなんか凄かったッス!」
「凄い技術力ね……どれだけ練習していたのかしら」
「普段から想像付かないよね……」
深い関心を見せる彼女たち。サッカーのことを詳しく知らない彼女たちでも、彼らの凄さが伝わっていた。
一方、ハーフタイム中のベンチ。
『東雲。お前飛ばしすぎじゃないのか?後半バテるぞ』
『ははっ。大丈夫ですよ。それに久し振りにアイツとやれてますから、楽しくてしょうがない』
『中学時代からの因縁……だったか?』
『あぁ。あの男には負けられないからな』
『それを踏まえてもいつもより絶好調じゃないか。ダブルハットトリック目前だろ』
『何か今日はいつもより調子がいいんですよ。後半もガンガン回してくれ』
『まぁ、お前がウチのエースだからな。ディフェンス!押さえていかねぇと突き放せねぇぞ!』
『やるねー冬木。いつもあんなに積極的に攻めないじゃん』
『別にそうでもねぇよ。ちょっとしか変わってねぇっての』
『…………いや、いつもはパス主体だけど、今はドリブル主体。プレイスタイルが違うよ』
『……まぁ、アイツには負けて居られないからな』
『お前らの激闘はいいが……冬木。お前の体力は持つのか?』
『持つか?持たせてやるよ。不思議と今は疲れを感じてねぇ。後半もバテる気がしねぇな』
『あの男はお前に任せる。いいか?俺たちDFは何としてもこれ以上失点させないようにするぞ』
双方作戦を練りながら休憩を取る。そして後半戦が幕を開ける。
「来いよ冬木!」
「行くぞ東雲!」
ボールを持った慧人。一旦東雲を引きつけて、ボールを上から通してかわして行く。
「あれはシャペウ!」
「上手い!これなら……!」
「いや!」
普通ならこれでディフェンダーを抜ける……だが。
「お前のその技は何度も見てきてるんだよ!」
東雲を抜くことはまだできていなかった。
「だろうな!」
しかし、対して驚く様子もなく、ボールを確保する。そして……
「なんつーフェイント合戦だよ!」
「前半以上とか衰えを知らねぇのかよ!」
フェイント、相手を騙して抜き去るものだが、この二人は過去の数え切れないほどの対決のせいでお互いの癖などを把握している。そのためにお互いがお互いを突破することは容易ではなくなってしまった。
だが、それは1対1の話。試合においては別である。
「冬木!こっちだ!」
「キャプテン!」
重心を右足に乗せて、右から抜いていく、或いは右サイドを駆け上がるキャプテンにパスを出すと思わせ、左足でバックパスを出す。
「流石だね!」
ボールを受け取った千石は右サイドを駆け上がっているキャプテンにパスを出す。
二人は1対1ではよく対決を繰り広げていたが、試合となれば別。パスという選択肢が加わった上でどう動くかまでは読み切ることは難しくなっていた。
「キャプテン!こっちだ!」
「分かってる!」
ボールを託されたキャプテンは、サイドからゴール前に向かってクロスを上げる。
桃山浦のディフェンスと虎南のフォワード陣がゴール前に密集する中、そのボールに向かって、走り込んでくる慧人と併走している東雲の二人がいた。
「構えろ!キーパー!」
慧人がボールに向かって跳躍すると同時に、東雲は慧人の前に出る。そしてワンテンポ遅れて東雲も跳び上がり……
「なっ……!」
慧人はそのボールをスルーする。そのままボールは二人の間を通ってゆき……
「ナイススルー!」
森下がそのボールに合わせてシュートを放つ。キーパーは冬木が打つものだと思っていたために、反応が一瞬遅れる。その一瞬が命取りとなり……
「よしっ!」
「追加点だ!」
キャプテンと森下がハイタッチを交わす。
「よく後ろにいてくれたな」
「司令塔だよ?舐めないでほしいね」
続いて千石と慧人もハイタッチを交わす。
そのままお互いポジションに着く。
「これだからおもしれぇ……」
「やり返すぞ。東雲」
「あぁ!」
桃山浦のキックオフで試合再開。ボールは東雲が持ち、あっという間にマークに来たフォワード二人を抜き去る。
「気を引き締めろ!止めていくぞ!」
「突破していくだけだ」
フェイントにはフェイント。
東雲がフェイントを重ねていくが抜かれないように慧人はそれに着いていく。
「やっぱ抜けねぇよな!」
すると、東雲は右足のアウトサイドで軽く蹴った後、素早くインサイドでボールを左足の後ろ側を通し、左足のアウトサイドで軽く蹴る。
「こっちはマクギーディターンか!」
「マズい!あの二人の間に距離が!」
空いた距離を詰めようと慧人が前に出る。前に出たタイミングで東雲は味方にボールを託し、自身はゴールに向かって走って行く。
「ディフェンス!」
慧人のマ-クを振り切った東雲。対して慧人は東雲に追いつくより、ボールを持っているやつから奪う方が良いと判断して走って行くが……
「東雲!」
慧人がやってくる前にボールは大きく上がる。
「いけっ!」
少しゴールから離れた位置でのボレーシュート。そのボールはゴールの左上の隅に吸い寄せられるように飛んでいき、ゴールに刺さった。
「よっしゃぁ!」
「ナイスボレー!東雲!」
「おうよ!まだまだ取っていくぞ!」
後半戦も一進一退の攻防を繰り広げる両チーム。
「すごい戦いね!特にあの二人!何だかバーンって感じがする!」
「あの二人の決闘……実に儚いね」
「ふえぇ……目が回りそうだよ……」
「それにしてもよく走ってますね……冬木先輩」
「けーくんもあんなに走れるんだね」
特に東雲と慧人は衰えを一切感じさせない。前半以上に双方が走ってぶつかっている。
「ひーちゃんもけーとさんくらい走れば痩せれるよ~」
「うっ……いや、声出すだけでもきっと行けるはず!頑張ってー!慧人先輩!」
「あはは……あんなに走れないよね。普通」
「でも、アタシはあれくらい体力付けたいな」
「…………いや、あそこまではいらないでしょ。絶対」
無尽蔵と言っても差し支えないそのスタミナ。
後半残り5分になっても彼らの走るスピードや量は全く落ちていなかった。
「何だか凄いキラキラしているね!慧人さん楽しそう!」
「あ、何か分かる気がする。あの二人楽しそうだよね」
「うんうん。楽しいのが一番だよね」
「いや、納得していいのか!?何であの人たちはあんな動きが出来るの!?」
「まぁまぁ。落ち着いてよ。そこはほら。慧人さんじゃん」
慧人=超人という方程式が成り立っている以上、大抵のことは慧人だからですんでしまうようになっている現状。
もはやサッカ-(?)になりつつある二つの高校の戦いも終わりを迎えようとしていた。得点は12対12と同点。次の一点を取った方が勝者となる。
「ふぅ……」
「はぁ……はぁ……」
息が軽く上がり始めた二人が向き合う。ボールは東雲が持っていた。
「そろそろラストプレーだ……」
「そうだな……」
東雲はボールを足裏で転がしながら徐々に後退していく。それに対し、慧人が距離を詰めようと前に出た瞬間、ボールを右足の裏で転がしてそれを軽くジャンプして跨ぐ。そして左足の裏で右足の方に転がし、右のインサイドでボールを蹴って加速する。
「あれはファルカンフェイントか!」
「今更だが何でお前はすぐに名前が出てくるんだ!?」
一歩出遅れた慧人も着いていくが、東雲は急停止する。そして、慧人が追いついて自身の前に立ったタイミングで、ボールを縦に蹴り出し自身は慧人を避けるようにして前へと走る。
「今度は裏街道!よし!これで抜けたはずだ!」
「行けっ!東雲!」
そして東雲がシュート体勢に入り、シュートを放つ。
「これで終わり……っ!」
そこで東雲は目を見開く、抜き去ったはずの慧人がシュートを胸で受けていたからだ。
「威力高いなぁ……おい」
「化け物かよ……完全に置いてきたと思ったのに追いつきやがって」
そのまま慧人は千石にパスを出し、相手ゴール目がけて走る。東雲もほぼ同時に走り出して……二人が並ぶ。
「へい!」
「取らせるか!」
ボールは彼らの前へと送られる。
「冬木!」「東雲!」
ボールを取ったのは……慧人だった。
「決めてやるっ!」
「決めさせねぇっ!」
すかさずシュートの体勢に入る慧人。そしてシュートは放たれる。足を延ばしてシュートを止めようとする東雲。ボールはそこでは止まらずゴールへと向かう……
「…………っ!」
ゴールキーパーが手を伸ばすもギリギリ届かない。
そしてボールはそのまま……
そのまま……
ガンッ!
ボールはゴールバーに直撃し、ゴールの後ろへと飛んでいく。
ピ、ピー!
その時、試合終了のホイッスルが響き渡る。
「終わったか……」
「だな。はぁー疲れた」
倒れそうになる東雲の腕を取り、肩で支える慧人。
「わりぃ。一気に疲れが出たわ」
「そりゃ、あんだけ走りゃそうなるだろ」
「そういうお前はまだまだ平気そうじゃねぇか」
「普段クソほど走らされてるからな。それより最後。お前の足を掠めただろ」
「ははっ。そのおかげでコースが僅かに上に逸れたな。ラッキーってとこだ」
「……今回は引き分けだ。次は俺が勝つ」
「こっちこそ。それでこそライバルだ」
クールビューティーや金髪ロリータが絡んでいなければこの二人はまともに見える。
「…………」
だが、二人は知らない。限界以上に動けた陰には彼らが女神だ天使だと崇めていた二人が見ていたことが大きいと言うことに。
試合終了後。
『よし、引き上げるぞお前らー』
『『『おぉー』』』
ベンチを空け、撤収している両校。
「いやぁ。凄い試合だったね~」
「そうね」
「確か、もう一試合するんでしょ?どうするの?見ていく?」
「私は見ていこうと思います。スポーツをする慧人さんというのが新鮮ですので」
「とか言いつつ、本当はスポーツをしている慧人くんを見たいだけでしょ?」
「勿論です。それの何が問題ですか?」
「紗夜さんが素直に答えた……」
「開き直りましたね……」
「清々しいほどに開き直ったわね」
「あ、そうです。慧人さん!」
紗夜が、慧人を呼ぶためにそこそこ大きな声を出す。
「呼びました?紗夜さん」
すると、ヒョコヒョコと歩いて来る慧人。
「手をあげてください」
「???こうですか?」
頭にクエッションマークを浮かべながら、手を軽く顔の高さくらいに挙げる慧人。
「えぇ」
そんな慧人のあげられた手をペチン、って感じで紗夜が叩く。
「かっこよかったですよ」
「……え?」
すると、手を見て現状を整理し始める慧人。
(い、今のはハイタッチ?え?今、特に何も考えていなかった……ってそうじゃない!)
「紗夜さん!もう一回!もう一回やっ――」
ガシッと、慧人の両肩が掴まれる。
「はいはい。次の試合のミーティングするからお前はこっちなー」
「はいはい。こっちこようねー」
「は、放せテメェらぁっ!おい!今すぐ俺を放せぇぇっ!」
「「「テメェばっかイチャつきやがってこの野郎!」」」
「うるせぇ!俺は……俺は!あっち側にいきたいんだぁぁあああっ!」
「「「行かせるかよクソ野郎が!」」」
「…………阿呆だね」
「阿呆だよ。コイツは」
ジタバタするが、抵抗も虚しくサッカー部の面々によって連行されていく慧人。その様子を眺めている25人プラス黒服さん。
さっきまでかっこよく見えていた彼の姿は、いつもの残念な感じに戻っていた。
惚気回やるけど相手誰にする?
-
リサ姐
-
千聖
-
日菜
-
花音
-
先輩