評価してくださった方々、お気に入り登録していただいた方々。本当にありがとうございます。
気付けば次の試合が始まる時間だった。やっぱ一試合しか空いてないってキツイと思う今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか?
「とりあえず、この試合は引き分け以上なら上位リーグに行けるな」
赤巻と善灯の試合は赤巻の勝利で幕を閉じる。だが、やっぱりレギュラー……というか主力陣は前半だけ出て点差を付けて後半は引っ込んでいた。どんだけ体力温存してるのやら。
「まず、警戒すべきは向こうのキャプテンだな。さっきの東雲みたいな技術はないが、フィジカルとなんと言っても勝つためにラフプレーも厭わない精神が厄介ってとこだ。おかげで相手チームはあのキャプテンによる統率でウチ以上に一体感がある。後は向こうの全体的な感じとしてフィジカルが強く、体力もそこそこ。まぁ、体力面はウチには負けるけどね」
「……確かに。あっちのキャプテンってヤンキーみたいだな。にしても千石。お前、よく相手の情報仕入れているな……」
「…………本当は監督かマネージャーに任せたいよ?でもいないじゃん」
「……そうだなぁ」
今にして思えば、監督がいればもう少しまともだったかも。ウチのサッカー部。
ただフィジカルにヤンキーによる統率か……確かに向こうはギスギスではないけどそんな感じするな。攻撃的っていうか……。
「まぁ、相手が何であれ俺たちは勝つだけだ!引き分け?違う!俺たちが目指すのは勝利だ!」
「お、流石キャプテン。いいこというじゃん」
「ああ。そして……彼女たちを惚れさせるんだ」
そう言って指さす方には……あれ?まだ残ってくれていたんだ。二試合目と同様に25人プラス黒服さんたちが。さっきまでそこには……あぁ、トラックの中にいたのか。それなら納得。
「いや、キャプテンじゃ無理無理ー」
「……現実みたら?鏡いる?持ってこようか?」
「んなことどうでもいいからさっさと整列するぞ」
「っておいお前らぁ!?少しは肯定してくれてもいいじゃないか!?」
「「「あーうん。はいはい」」」
キャプテンの戯れ言を無視して並ぶ。たく。万年カノジョ募集中はどうでもいいからさっさと試合しようぜ?
挨拶して、再び円陣を組む。いいよね円陣って。気が引き締まるというか何というか……
「よし、勝つぞ!」
「「「しゃぁぁっ!」」」
そしてポジションに着く。……改めて見ると何だ?この……キャプテンだけじゃなくて他にも一世代前の不良というかヤンキーが何人か……か。
前半戦が終了した。スコアは3ー0で赤巻が勝っていた。
「慧人さんが何も出来ていないね……」
「しょうがないッスよ。試合始まってからずーっと3人くらいに囲まれているんですから」
「もうなんかドカーンって感じで倒せないのかな?」
「暴力はダメですよ。ヒナさん」
あの東雲と言われた人たちとの試合と違って、慧人はボールにほとんど触れていない。ずっと、2人か3人がついている。
サッカーのことを詳しくは知らないのだけど、どうしてもこの試合は嫌な感じがする。向こうの人たちの空気が悪い。
「でも、何かさ。危ない感じがするよねー」
「確かに。何か肘とか腕とか当たってましたもんね」
「何回かふぁーる?で試合が止まってたよね?」
そう。しかもこの試合はやたらとラフプレーと呼ばれるものが多い。さっきから虎南の人たちが何度も倒されたりしているのがその証拠だ。
「チサトさん?何か考え事ですか?」
「えぇ。ちょっと心配って感じかしら」
何か悪いことが起きなければいいのだけど。
そしてその予想は悪い意味で当たってしまうのだった。
それは後半が始まって15分くらい経った時だった。赤巻のコーナーキック?と呼ばれるもので、ゴール前に人がたくさん集まっていたときに起きた。
あげられたボールはその密集地帯へ飛んでいき、ここからじゃよく分からなかったが誰かがシュートして決めた。これで4-0となり、フィールドにいる人たちが自分の最初のポジションに着こうと人が動き始めた。
そこで、人が1人倒れていることが分かった。倒れて動けなくなっているのが見えた。
『千石!大丈夫か!』
『テメェ!今のはわざとだろ!無視すんなよおい!』
『落ち着けキャプテン。突っかかる前に今は千石だ』
千石と呼ばれている人が倒れている様子。虎南高校の人たちがが心配して駆け寄ったりしているのは普通だと思う。しかし、赤巻の人たちは誰一人として心配する様子もなく、自分たちのポジションに着いて待っていた。
「え?どうなっているの?」
「誰か倒れているみたい」
「大丈夫かな?」
他の見ている人たちは、ベンチからタンカーを持って運ばれている人を見ているが、私は相手の方が気になった。普通なら、相手とは言え急に倒れた人のことを少しは心配する素振りを見せるだろう。だが、そんな素振りも、空気も一切なかった。
ワザとやった。
恐らくだが、その人を退場させるためにワザとやった。経験がなくとも雰囲気で分かる。あの人たちに罪悪感はない。確実に勝つためにやった。勝つために相手を潰した。
「これで終わればいいのだけど……」
「何か言った?」
「何でもないわ」
運ばれた人の代わりに別の人が入って試合が再開される。ボールは慧人に渡って、相手の一人を突破する。
『…………っ!』
すると、突破された人が慧人の後頭部目がけて肘を振った。慧人はそれに気付いたのか避けることが出来ていたが……間違いない。今のは狙ってやっている。
審判は…………あぁ、そういうことなのね。他の赤巻の人たちが丁度見えないようにしている。多分、さっきの千石って人のも見えないようにやったのだろう。
『ッチ。勘のいいやつが』
『……今のはワザとだろ』
『勝つために邪魔な相手を潰す。まずは一人だな』
『クソが』
慧人が彼の目の前に居る向こうの選手と話しているようだが、流石に聞き取れない。
そして慧人が目の前の人を突破すると、今度は手を伸ばして何かをつかもうとする。それをうまいこと躱してはいるが……明らかに慧人は狙われている。
『こっち!』
『森下!』
そのまま森下と呼ばれた人にボールが渡る。その人は前の方でボールを受け取ると右の方から弧を描くようにゴールへと向かう。向こうの人たちは足がボールを持っている人より遅いのか追いつけていない。
『これで!』
森下という人がシュート体勢に入る。すると、その瞬間、横から相手選手のスライディング(?)が。ボールが弾かれると共に、その足が軸としていた足に当たり、その衝撃で森下と呼ばれた人は倒れ込んでしまう。
ピー!
審判の笛の音とともに試合が中断される。森下と呼ばれた人は足首を押さえたまま動かない。こっちでも心配する声や動揺が見られるが、やっぱり、相手側は一切動揺をしていない。
『森下!大丈夫か!』
『おい!今の狙ってやっただろ!』
『ボールを取ろうとしただけだ』
『落ち着いてよ冬木、キャプテン……っ!』
立ち上がった瞬間に、足首の痛みからか倒れそうになっている。
『悪い……ちょっと続けられそうにない……!』
『いや、よく頑張った』
『後は俺たちに任せろ』
『ごめん』
慧人とキャプテンという人に支えられながらベンチへ下がる。代わりに出てきた人共に、フィールドへ走って行くと……
『『あぁっ?』』
相手側のキャプテンとすれ違った瞬間。慧人とキャプテンって呼ばれた人は怒りの声を上げた。
何を言われたかは分からない。ただ、何を言われたか……想像はできてしまう。
試合再開。直接フリーキック?とかで、慧人が直接シュートを放ってゴールを決めた。これで4-1。
ボールは赤巻高校から始まり、ボールは慧人が奪った。そのまま相手選手の肘とか腕とかの襲撃を躱していく。
「あからさまね……」
「で、でもあんなに囲まれているのにボールを取られないのは凄いよね」
「それは……ね」
彼は何なのかしら。死角からの攻撃も躱せるって……超人?
『キャプテン!』
『ああっ!』
すると、キャプテンと呼ばれた人がゴール前へと突進していく。そして、囲まれた状態からゴール前にボールをあげる慧人。
誰もがボールの行方を目で追う中、私は見てしまった。
ボールを蹴った後の隙を突かれてしまった彼の姿を。
慧人さんが蹴ったボールはそのままキャプテンと呼ばれている人の元へ。頭にボールを当ててそのままゴールに入った。
「よっしゃぁ!追加点だ!」
「ナイスクロス冬木!」
盛り上がりを見せるフィールド。そのまま慧人さんの方を見ると……
「慧人さん……?」
彼は倒れたまま起き上がろうとしていなかった。
「冬木!」
「アイツ!クロスをあげたときに吹っ飛ばされたぞ!」
「クロスをあげた瞬間を狙ったのかよ!」
「あんなの避けられるわけがない……!」
ザワつく虎南高校の人たち。当然この光景は私たちにも衝撃を与えた。
「……酷すぎる」
「冬木先輩!」
サッカーをほとんど知らない私たちでもこの光景は……いや、この試合はおかしい。前の試合と違って荒っぽい……。
「イエローカードは出ているが……」
「テメェ!ワザとだろ!」
「たまたま勢い余ってぶつかっただけ……」
「ざけんなよテメェら!千石も森下も冬木も!テメェら勝つためなら何でもすんのか!あぁっ!?」
「落ち着いて下さいキャプテン!」
「今キャプテンまで居なくなったらどうするんですか!」
相手選手に詰め寄るキャプテンさんを他の人たちが抑えている。
「…………落ち着けよ。キャプテン」
「冬木!大丈夫か!」
「君!大丈夫なのか!」
「……問題ねぇよ」
「いや血!血が出てます!」
「ベンチ!救急セット!」
「一旦ベンチ行ってこい!」
「……分かった。キャプテン……耐えろよ」
「誰に言ってやがる」
立ち上がった慧人さん。そのままベンチに向かうが、ふらふらになっているようで。とてもまっすぐ歩いているようには見えなかった。
「紗夜ちゃん。行ってきたら?」
「え、えぇ。そうね」
白鷺さんに言われてそのまま彼の居るベンチに。試合の方は再開したようで……
「お前ら!アイツが帰ってくるまで耐えるぞ!」
「「「おう!」」」
人数が10人でやっている。だが、そんなことより慧人さんだ。
「先輩!無茶ですよ!」
「あそこに戻るなんて……!」
「血が出てるだけだ。早くしてくれ」
「……諦めろ。どうせ止めたって止まらん」
「お、起きた?千石」
「……まぁね。痛いけど」
「でも、そうだよなーこいつが止まるわけがないよねー」
「……慧人さん」
騒がしい……って言うとあれだが騒がしくなっているベンチへ。黒服さんが1人ボディガード的な感じで付いてきてくれている。
「……紗夜さん。すみません。見苦しいところを見せてますね」
「…………何でそこまでして……そんなにまでなって」
なぜかは分からない。彼の傷ついた姿を見て心が痛い。とても痛くなって息苦しさを覚える。そして、もう一度そんなに傷付くかもしれないと思うと、やめてと言いたくなる。そんな姿を見たくない。そんな傷ついたあなたの姿を見たくない。だから……!
「…………許せないんですよ。勝つために相手を潰せばいいって言うクソみてぇな野郎どもが。……そいつらは絶対に倒す。そんな奴らに負けたくはねぇ」
でも、慧人さんのその目を見て、そんな言葉は言えなかった。
いつになく本気で、多分私が何を言っても止まらない。そう思えた。
あぁ、そうか。私がギターに……音楽に本気になっている時と同じ目だ。同じ空気だ。
「……分かりました。すみません。救急セットを貸してください」
「……あ、はい!」
「紗夜さん?」
「じっとしてください」
「……分かりました」
「……いつもあなたには支えてもらっています。あなたが居てくれたから今の私はあります。いつもあなたは私のやりたいことを後押しして、支えてくれています。だから、これが今の慧人さんのやりたいことなら……私はそれを応援します。そして、これが今の私が出来ることです」
素早く丁寧にやっていく。授業で習った程度の処置だが、それでもこれが私の出来ることの全てだから。砂とか入らないよう水でけがの部分を流し、ガーゼを当てて包帯などを巻いていく。動かしやすいように、かと言ってほどけないように。
「……どうですか?」
「……問題ないです。ありがとうございます」
頭や腕、足に包帯が巻かれた彼が答える。こんな痛々しい姿の彼をあの場に戻したくはない。でも、私には彼を送り出すことしかできないのが少しだけ悔しい。
「頑張って」
「えぇ」
そして試合に戻っていく彼の後ろ姿を見る。その姿は初めて遠くにあると思えた。
きっとこの後ろ姿に追いつくことはない。でも、その後ろ姿を見守ることは出来る。
「だから……勝って下さい」
「よぉ。潰されに戻ってきたか?」
相手のクソが小声で話し掛けてくる。
「なぁ……女神って信じているか?」
「あぁ?頭打っておかしくなったのか?」
「女神を心配させるような信者ってバカだよな。女神に悲しい瞳を向けさせてしまうような信者って阿呆だよな。俺はさ。女神には笑っていてほしいんだわ。だって笑っている彼女が一番だから。……決して俺の姿を見て悲しんでほしくないんだわ」
だから……
「もう二度と倒れないし、傷つけられない。女神の加護を得た俺の本気を味合わせてやるよ」
惚気回やるけど相手誰にする?
-
リサ姐
-
千聖
-
日菜
-
花音
-
先輩