クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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高評価感謝です!感想も本当にありがとうございます。
また、誤字報告も、色々と間違えたりして本当にすみません。助かっています。


え?俺それ聞いてない

 あの後、リサ姐からクッキー、沙綾からパン、はぐみからコロッケの差し入れを貰った。徹夜明けの身体にあの量のコロッケは……地獄かな?とか言いながらおいしくいただきました。

 とそんなこんなでリハーサル。一緒に夜を明かした(会議していた)五人は余りにも死にそうな顔をしていたのでリハーサルは休んで寝ている。流石に本番は明日で倒れてもらっては困るからね。

 

「さてと、じゃあ働きますか」

 

 彼女らがいない分、俺が今朝までの成果の報告と共に仕切っていくとするか。

 というわけで、全体の指揮とか色々と動いていく。

 リハーサルって言ったが、何か各バンドの細かい出し物とかは当日のお楽しみにしたいという理由で、大まかな動きや特別な機材の確認がメインだ。バンドの入れ替わるタイミングとか諸々を動いて確認している。ただ、企画書は昨日出してもらってある程度把握しているが……ガチでやるの?アンタら。

 

「慧人。貴方だけ元気だけど働いたの?」

「いやいや千聖。無茶苦茶働いた気はあります」

「へぇー例えば何したの?」

「リサ姐まで……いやぁ、お茶会とコーヒーブレイクの為にパイとかケーキとかを集まる前に作って、そこから全体を取りまとめながら……」

 

((何か最初に聞き捨てならないことをさらっと言ってたけどスルーしよう))

 

 とりあえず挙げたら切りがない事が分かった。あげてみて分かるんだねこういうの。

 

「あ、でも千聖。慧人くんの目の下とか……」

「そうね。よく見たら、振る舞いもだけどこの男。横になったら3秒で寝るわ」

「あはは。NFOでの徹夜ならもっと楽なんですけどね」

「あ、それは分かります……」

 

 何かりんさんから同意が得られた。やったね。

 

「後は今、女神様からパワーを頂けていないので……」

 

((あ……色々と察した……))

 

「あ、あの。けいさんも休みます……?み、皆さんが作ってくれたこの企画書のお陰で……問題なくリハーサルは進んでいるので……」

「お気遣いありがとうございます。ただ、これはあくまで紙面上の話なんでね。不測の事態が起きないかチェックしておきたいので」

 

(やっぱりね。スペックだけならうちの事務所のスタッフ以上。今度試してみようかしら)

 

 本当はリハーサルで寝る予定だったのは、彼女たち五人が起きていれば俺はいらないからだ。だが、あの五人が倒れている(寝ている)以上、俺が動くしかない。…………というか、さっきから千聖の目がどうにも査定している感じがするが……どうでもいっか。

 

「こっちは問題なかったわよ!」

「あいよー。んじゃ最後Roseliaだな。リサ姐、りんさんよろしく」

「はーい。行こう?燐子」

「分かりました……」

 

 とりあえず順調順調。まぁ、やっぱり紙の上だと出てこなかった小さな問題はあるので、微調整も同時に進めている。

 

「どう?いい感じ?」

「あ、まりなさん。ここまでは大きな問題はないですよ」

「それはよかった……昨日から頑張ってたもんね」

「あはは……あれ?まりなさんも徹夜じゃ……」

「ううん。朝方に少し寝ていたよ。」

「なるほど。あ、大きな問題ありましたわ」

「どんな問題?」

「タイトルが未定という問題です」

「…………それってマズくない?」

「そうですね…………無茶苦茶マズいですよ」

 

 ステージ自体は問題ないと思うが……うん。タイトル未定なのだ。これじゃ宣伝も身が入らないだろう。

 誤解しないで欲しいのはやったんだよ?タイトルに関する議論。……朝の5時に。もうね?頭が回らなくて意見がおかしな事になって来て、俺たちのアイデアなんだっけな……あぁ。『ツグってるミッシェルによる隙間パーティー ~ポテトとチョココロネを添えて~』だったか?もう頭がぶっ壊れ始めた俺たちでも没と分かるぐらい変なのが出来ていた。

 ツグってるミッシェルって何?隙間パーティーって何?ポテトとコロネを添えるってどういうこと?とタイトルに一瞬で三つのツッコミが入り、細かくツッコミを入れると切りがないことを悟ってしまった。そしてそこから、もうタイトルを考えるだけ無駄と悟って、タイトル未定で行くことにした。まぁ……なんだ。全員限界だったんだよ。うん。

 

「そろそろ仮眠を取ったら?明日も働いてもらうんだし」

「大丈夫ですよ。翼を生やしてくれる飲み物か紗夜さんが居てくれれば問題ないです」

「…………多分それ精神論よね?」

「主は言いました。限界は己が決めると。つまり、限界を決めなければ限界は存在しないんです」

「うわぁ……冬木くんが言うと本当に限界がなさそうに聞こえるからやめてほしい」

「その通りよ!出来るって思えば何でも出来るのよ!」

「おっ。珍しく意見が合うじゃないかこころ」

 

 凄いな。あのぶっ飛んでると思っているこころと意見が一致した。あれ?それって俺もぶっ飛んでるってっことか?まっさかぁー。

 

「こころちゃん……最後の締めのところやるって……」

「すぐに行くわ!」

 

 リハーサルっぽい何か、空いている人は自由に、やっている人たちは真剣に。でも、全員が楽しそうに思えてくる。

 

「……いいね。こういうの」

「ですね」

 

 リハーサルは大きな問題もなく無事に終わった。

 

「さてと、後はタイトルだが……」

 

 もうすぐ昼。さて、まだタイトルが未定という大きな壁にぶつかった。

 

「慧人さん。次は貴方が仮眠を取る番ですよ」

「紗夜さん。もう起きて大丈夫なんですか?」

「えぇ。皆さんの好意とは言え、ずっと寝てもいれません。それにここで寝過ぎてしまうと夜に眠れなくなりそうですから」

「紗夜さんらしい回答ですね。でも心配しなくていいですよ。俺は平気なんで……?」

 

 すると紗夜さんの奥に千聖がプラカードを持っているのが見える。何々?『そこは言葉に甘えて寝るところよ!』…………いや、知らねぇよ。

 

「…………?」

「どうしました?」

 

(今井さんが何か掲げてますね……えーっと?)

 

 紗夜さんの動きが少し止まった。何だろう?そう思って俺も紗夜さんの見ている方を見ようとするが、また千聖が何か掲げた。『まぁいいわ。貴方は起きていられなくなるから』……え?いや、怖っ……。何されるの?ちょっ、怖いんですけど?

 

「慧人さん。隣へ座ってください」

 

 すると近くの長い椅子のところに腰掛ける紗夜さん。俺は千聖の不穏な言葉が怖かったがまぁ、紗夜さんが何かするわけでもないと思い、そのまま隣に座る。

 

「私に背中を向けるようにして、足を椅子の上に乗せてください」

「はぁ」

 

 言われるがまま紗夜さんに背中を向ける。

 

「そのまま倒れ込んでください」

 

 そのまま倒れ込む……とここで俺は気付く。頭に当たっているのが椅子の硬い感触ではなく、ちょっと柔らかいような……

 

「え?」

「……今は休んでください」

 

 そして目元を優しく手で覆われる。視界が暗転するのと同時に意識も沈んでいくのを感じた。

 

 

 

 

 

「やっと寝たね~いやぁ成功成功」

「えぇ。ナイスアイデアよ。リサちゃん」

「いやいや。千聖も乗ってくれたからだよ」

「本当に秒で堕ちたわね。全く、無理しすぎよ」

「えーっと、今井さん。白鷺さん。私はここからどうすれば……」

「んーとりあえず頭を軽く撫でてあげたら?」

「でも、ここだと私が会議に参加できないような……」

「紗夜ちゃん。今のあなたのやるべき事は会議じゃないの」

「……なるほど。分かりました」

 

((やらせたのはこっちだけど、他の皆が居る中でよくやるわ……))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 昨日は起きたら日菜に「うらやましぃぃぃ!ズルいいぃぃっ!」ってずっと肩を揺らされ頭が揺れた。お、俺に言うんじゃねぇ……ね、寝起きだこっちは……さ、紗夜さんヘルプミー……。とこんな感じで軽く死にかけましたが無事です。

 

「……はーい。受付はこちらでーす」

 

 現在受付を一人でこなしています。うん。沢山の人が来てくれているのはとてもいいことだけど、圧倒的に人手が足りません。まりなさん?何か機材の最終調整を手伝っている。他のバイト?存在していない。すなわち、ここは俺一人である。

 ただまぁ、別に誘導兼受付係が一人であることに問題はない。……問題があるとすれば、タイトルが『キラキラ愉快な商店街 狂乱のブシドーパーティー』になってることくらいか。…………昨日、俺が寝ている間……つまり、昼に決めたんだよな?深夜テンションのノリで決めたわけじゃないんだよな?どうしよう。ここまでお関わり合いになりたくないようなタイトルになるとは思わなかった。いやまさかね?まさかこれが採用されるとか……畜生。会議の最初に比較的まともな面子で決めておくべきだった。

 

「はーい。押さないでくださーい。順番にー」

 

 ちなみに棒読みなのは諦めてくれ。彼女たちにも言われたが、慣れている人たちからしたらそうでもないが初対面だと怖いと。特に子どもとか泣き出しかねないと。だから感情の一切を込めない事により、何かあっても威圧しないようにとのこと。

 あなたたち普通に酷いですね?見ただけで子どもが泣き出しかねないだと?そんなわけないじゃないか。…………多分。今、目が合った五歳ぐらいの子が涙目になったのは目の錯覚だと信じたい。

 そんなこんなで客をさばき開演時間。俺はまりなさんと共に、客席後方から彼女たちを眺めることにする。

 

「お疲れ様。ゴメンね、全部任せちゃって」

「気にしないでくださいよ。さぁて、こっからは彼女たちの時間ですね」

 

 幸いめんどくせぇ客はいなさそうだし、平和に見ることにする。

 というわけで最初はPoppin' Party……うん。企画書読んだけどアイツらマジでやってるよ……。

 香澄が星の着ぐるみを着て、たえがウサ耳にウサギのマスク……まではガチでやると思った。りみがチョココロネをステージの上から客席に投げ、沙綾が両手にドラムのスティックはいいけど何故か口に三本目のスティックを咥えている。ある意味凄いなこの二人は。よく演奏しながらチョココロネ配布や、口に咥えたスティックを使えるわ。

 ……それとりみと沙綾ってそっち側の人間なのね。やっぱり。……とりあえず有咲。お疲れ様。

 

 続いてAfterglow。……まさかあのつぐみが、何かアイドルみたいな衣装でセンターを飾るなんて……企画書読んだ時から疑ってたけど……うん。まぁ、つぐみもそういうの憧れていたんだろうなーうんうん。

 

「……ねぇ冬木くん。蘭ちゃんの後ろ……」

「……言わないでください。あれは俺が疲れて見えてるだけなんです。ただの幻覚なんです」

 

 蘭の後ろにモアイっぽい何かが見えるなんてそんなはずはない。そして、そんなモアイ頬紅く染めている気がするのは気のせいだ。やめてくれ。お前が照れても需要ねぇんだよ。

 

 そしてPastel*Palettes……彼女たちはある意味尊敬するよ。いやね?誰も楽器を持ってないんだよ。もうこの時点で俺の知るライブから離れた。そして、全員空中ブランコ?何か棒に捕まって浮いてるんだよ……麻弥に聞いたらアレ、少し前にやった番組の企画だったらしい。いや、ここでやる意味。誰だと思ってんだアレを夜中の2時とかにセットしたの(俺です)。

 まぁ、楽しそうにやってるからいいか……たった一人、千聖を除いて。とりあえず千聖?周り楽しそうだからお前も笑顔を……あぁーすげぇ今睨まれた。すげぇー睨まれた気がする。何思考読めるの?マジで?

 

 四番手、ハロー、ハッピーワールド!うん。さすが有言実行のこころ。本当にリボンのシャワーを打っているよ。とりあえず、こころ、はぐみ、薫さんの通称三バカは楽しそうでなによりです。だけど、ミッシェルの中の美咲は「うわぁー本当にやっちゃったよ」って感じがするし、というかその巨大な筒状のクラッカーを打った音で花音が怖がって縮こまってる。いいのかそれで?打った側が笑顔になってないぞ?

 ……まぁ、あれでもまだマシな方だったりする。今の彼女たちは二本しかその巨大クラッカーをやってないけど、当初の予定ではその十倍だったとかなんとか。……さすが美咲。お前こそあのバンド唯一の常識人だ。

 

 そして最後のRoselia。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 会場が静まり返った。というか引いてる。

 

「……冬木くん」

「……どこで道を間違えたんでしょうね」

 

 かく言う俺も引いてる。企画書もらった段階で紗夜さんに「これマジでやるんですか?」と三回くらい聞いた。三回とも「やりますよ」と真顔で答えられて頭を抱えた。

 いやね?五人が一つの巨大な衣装(のように見える何か)の中に入ってるんだよね。で、演奏しているのはいいんだけどさ……うん。

 

「……俺、間違ってました」

「……何かな?」

「……Roseliaが1番やべぇ集団だったわ」

 

 Roseliaというバンドはあの五バンドの中で唯一、結成の……始まりの時から見ている。友希那さんや紗夜さんの本気や技術の高さ。それに付いていくりんさんやあこちゃん、リサ姐。あの五人の凄さは知っているが……何だろう?どうにも彼女たちは音楽関係に疎い俺でも分かるぐらい……何か大切なものを失っている気がする。

 あぁ、勘違いじゃなかったのかな?Roseliaにまともなメンバーがいないのって……何がヤバいって、リサ姐はちょっと苦笑しているけど他四人ガチなんだよ。いや、それでやる?普通。

 でも唯一アレだ。こんなとてもじゃないが引いてしまうような彼女たちの演出だが、唯一最高な点を上げるとすれば……!

 

「紗夜さんマジで尊い……!」

「冬木くん帰ってきてー」

 

 あぁ、あのよく分からん巨大な衣装の中、真面目にギターを弾く彼女の姿。そして、その頭にはちょこんと獣耳が。凄い、二重でギャップがある……あれ?まさかこれが伝説のギャップ萌えか?

 

「すみません……感動で涙が……!」

「いや絶対違うよ?やっぱり、君も色々と間違っているよ?」

 

 そんなこんなでRoseliaが一旦下がり、少し経つと五バンド全員が登場してキラキラ星を歌い出す。うん、香澄が星のかぶり物しているのはもういいんだけど……何で有咲がカスタネットなの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事にライブは成功し、観客も盛り上がっていた。現在打ち上げということでささやかなパーティーを開いている。

 

「お疲れ様です。慧人さん」

「あ、お疲れ様。紗夜さん」

「どうでした?」

「可愛かったですよ」

「違います。演奏に関してです」

「あはは」

 

 言えないよな?あの巨大な衣装で引いて、ギャップ萌えというものを垣間見ていた人間が、演奏を集中して聞いているわけがない。でもまぁ……

 

「最高でしたよ」

「それはよかったです」

 

 集中してはいなかった。それでも、彼女たちの(演出は置いといて)音楽に賭ける思いの強さは伝わってくるような演奏だったことは分かる。

 

「ちょっといいかな」

「みんな~まりなさんに注目~」

 

 ん?まりなさんから?締めの挨拶でもする気か?まぁ、オーナーが普段から居ない以上、もう実質まりなさんがオーナーだよ。

 

「みんな今日はお疲れ様。本当にCiRCLEの最後にふさわしい、素敵なライブだったよ?特にアンコールの皆できらきら星歌うところなんか……」

 

 ……ん?

 

「「「最後!?」」」

「つまり今回が最終回?」

「いや、もう1クールあるから」

「なるほど……あと12話くらいで終わりか」

「しれっと第二期に突入するから関係ないわよ」

「まじか!?完結が遠くないか!?」

「そもそもこれ完結するか分からないわよ!」

「いやそこ二人話が逸れてるから!」

 

 おっと。確かに重要なのはそっちじゃないか。

 

「あれ?言ってなかった?CiRCLEは今年いっぱいで閉店することになったの」

「「「えええええぇぇぇぇぇぇぇっっ!!?」」」

「いや、バイトの俺も聞いてないんですけどまりなさん!?」

「うっそー。バイトの子には全員言ったはずなんだけど」

 

 ちょ、え?俺の収入源!?いや、それ以上にここなくなったら色々と困るんですけど!?




次回。ヒント。下のイラストです。(作者手書きです。閲覧注意ではないです)

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