気付いたらまた部屋に閉じ込められていた。
「あーうん。またなのね」
前は千聖と閉じ込められ、絵しりとりをして最後は一緒に寝た。さて、今回は……
「ここはどこですか?」
「紗夜さん……!」
我らが女神様、紗夜さんである。
「どうやら閉じ込められたみたいです」
部屋の内装は前と変わり、大きなベッド、そして台に壁にはモニターテレビ。四隅にカメラは相変わらずだが……まぁ、いっか。
「随分と落ち着いていますね」
「えぇ。つい先日、千聖と閉じ込められたばかりですから」
「へぇー……」
何かジト目で見てくる。可愛い。
「でも、紗夜さんとならいつまでもここに居たいです」
「そうですね。では、一緒にずっと居ましょうか」
こうして俺たちは脱出を諦め、そのまま一生ここで暮らしましたとさ。
『クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)』めでたく完結。
「…………じゃないよね?」
「すみません。少し乗りました」
コンコンコン
すると紙がドアの下から。はいはい。分かってます。
「『ここは○○○しないと出られない部屋です』やっぱりね」
「ちなみに白鷺さんと何を?」
「絵しりとりです」
「……風紀の乱れた匂いがします。男女が密室で二人きり。何も起きなかったはずがありません」
「俺ですよ?」
「あ、慧人さんなら大丈夫ですね。私以外に手を出すはずがありません」
「そのとおりです」
さすが分かっていらっしゃる。俺は紗夜さん一筋なんですから。
コンコンコン
「はいはい?『イチャイチャしているところすみません。今回もこころ様の思いつきでお二人を閉じ込めました。今回はホラー映画を視聴しないと出られない部屋です。棚の上にリモコンがありますので、それを操作すれば見られるようになっています。では』だそうです。アレですね」
とりあえずリモコンを取ってきてベッドに腰掛ける。俺にとっては二度目だから落ち着いている。人間って凄いなぁ。拉致監禁にあっても、相手が見知った相手だとすぐに適応できる。…………普通アウトだよなぁ……。流石弦巻家。
「ちなみに紗夜さんってホラー系大丈夫ですか?」
「もちろんですよ」
「そう」
ピッ
というわけでテレビの電源を点ける。そして、右側……紗夜さんとの中間地点にリモコンを置く。すると、もう再生されるみたいで……
ピッ
一時停止された。
「紗夜さん?」
「いえ。いきなりスタートというのは心臓に悪いですからね。プールと同じですよ。まずは準備をしっかりしなくては」
「はぁ……もういいですか?」
「えぇ」
ピッ
再生ボタンを押す。まぁ、最初の重々しい雰囲気から何かが起こりそうな……
ピッ
画面が停止した。
「紗夜さん?」
「いいですか慧人さん。ホラー映画が始まる前に一つ。ホラー映画に出てくるようなお化けとかゾンビとかは実在しないんですよ?そんな非科学的なことを信じていてはまだまだです。まぁ、私は信じていないんですけどね」
「……はぁ」
ピッ
映画のタイトルは知らないけど、幽霊とか心霊現象とかそういう系か?それともゾンビとかそういう系だろうか。後はサイコ系なんかもありそ……
ピッ
画面が停止した。
「…………」
「そうですね、幽霊。まぁ、西洋ではゴーストと呼ばれる存在について。こちらは人間の肉体が死んでしまったとしても魂は死なずに現世をさまよい続けると言われています。まぁ、幽霊の多くは悲運な死を遂げてしまったような存在も多いとされ、現世への未練がなくなれば成仏、消えるともされています。また、動物や他人に霊が乗り移ることもあるとされていますがはっきり言いましょう。この話自体が非科学的なものなんです。分かりますか?科学的根拠がないんです。だから存在しないと私は思っているんですけどね」
「…………」
ピッ
そうそう。こう言う重苦しい雰囲気での始まりが……
ピッ
「…………」
「大体映画になっているということは何かしらのトリックがあるわけですよ。映画中に起きていることは全て怪奇現象に見せるために……」
「…………」
ピッ
とりあえずリモコンを左側に置いてっと。いやぁ、どんな映画かな?この最初の如何にもな雰囲気の始まりってすっごくワクワクしてくるよね。
「だだだだだだから、いいいいいまとびらがかかかかかってに、ひひひらいたのもなななにかととととりっくが」
バタンッ!
「きゃああああああああああああ!」
映画の中で勝手に扉が開いて、そこを主人公が通ったらドアが勝手に閉まった。あーまずはありがちな閉じ込められるってね。なるほど。ポルターガイスト系かな?それはいいんだけど……
ピッ
「……紗夜さん?」
「な、なんでしょう?」
右隣の彼女を見る。もう涙目であった。…………早くね?まだ開始何分とかそういう次元だよ?
「本当はホラーとかそういうの……苦手なんでしょ?」
「に、苦手じゃないです」
「そう」
ピッ
じゃあ、続き続きっと。
ピッ
「ごめんなさい凄い苦手です。苦手だからぁ……」
ど、どうしよう……!何というかガチで泣きかけている紗夜さん……可愛い。超可愛い。
「……俺の前でくらい強がらないでくださいよ。ほら腕掴んでいていいですから」
「…………(こくこくこく)」
凄い頷いたかと思うと右腕に力強く抱きついてくる。…………なるほど。これはマズい。何がとは言わないが非常にマズい。よし、全力で右腕から意識を逸らそう。
そして2時間くらいが経過した。当然映画は終わっている。
映画?一言で言うなら、内容が一切頭に入ってこなかったせいでほとんど覚えていない。何か包丁が宙を舞っていたような……まぁいっか。このレベルで本当に覚えていない。
で、何故覚えてないか問われたら、間違いなくこの部屋に一緒に閉じ込められた彼女が原因だろう。
「紗夜さん?」
「……怖くない怖くない怖くない怖くない」
耳元で呪詛を唱える彼女の背中を軽く叩く。
腕に抱きつくことを許可した後、ストーリーが進むにつれ途中から正面から抱きつかれた。まぁ、画面は見えたけどそれにしてもだ。もうその辺りから全然映画が頭に入っていない。
「もう映画終わって30分くらい経つと――」
「怖くない怖くない怖くない怖くない」
「――よしよし」
諦めて彼女の後頭部あたりをなでることにする。
途中から恐怖などではなく理性との戦いだった。ここは密室で二人きり。俺が腰掛けているのは大きなベッド。正面から襲いかかってくるのは彼女の胸部の感触とほのかに香る髪。そして極めつけに定期的に来る激しい抱擁。
辛うじて理性が保てていたのは、画面の
もうずっと別の意味でドキドキが止まらない。何というか……
「これが吊り橋効果?」
何か違う気がするけどこれが吊り橋効果ってやつなのか?なるほど。このドキドキを恋のドキドキと勘違いさせるってやつか。ん?ちょっと待って。俺今何にドキドキしているんだ?あ、やっべ。そこが分からない以上吊り橋効果云々も分からないんじゃ……
いや、待てよ?結局ドキドキしている以上変わらないのか?というかこれ以上は理性が持たない……!
「堕ちるか」
俺は意識を飛ばすことにする。すなわち寝る。おやすみなさい。
…………目が覚めると見慣れない天井があった。そして何かに抱きしめられる感覚が……。
「あぁ……」
そう言えばこころの黒服さんたちに閉じ込められて、ホラー映画見て、意識を飛ばしたんだっけ?
「…………すぅ」
穏やかな寝息を立てている紗夜さん。可愛い。彼女も多分疲れたんだろう。可愛い。まぁ、あれだけホラー映画で叫んだりすれば当然か。可愛い。それに普段も頑張っているだろうし。可愛い。それにしてもあそこまでホラーが苦手とは。可愛い。これは遊園地とかでお化け屋敷に連れて行ったらどうなるか。可愛い。想像するだけで……。可愛い。
「…………ヤバい」
さっきから思考の合間に可愛いって言葉が入ってくる。もう末期かな?末期だな。まぁ、皆からも末期って言われているし、これぞ自他共に認めている末期。
結論。紗夜さん可愛い。
「…………いや待て」
ホラー映画が大丈夫と強がって、実は全然ダメ。そんな姿……クールビューティーというよりポンコツキュートではないか。これでは紗夜さんがポンコツキュートの道にまた一歩近づいてしまう。それはよろしくない。本当によろしくない。クールビューティーにすべく、ホラーを克服するか、もしくは冷静に受け流してもらわないと困る。
よく考えたら彼女は可愛いというより美しくあるべきなんだ。そうだ間違いない。美しくあるべき。いや、美しいけど。十分美しいけど。
むむ。これでは紗夜さんがクールビューティーに戻れない。ポンコツキュートに近づいてしまう……ダメだ。彼女をクールビューティーに戻すのは俺の使命なんだ。そのためには……
「まぁ、明日からでいっか」
こんな幸せそうに寝ている彼女を起こすのは忍びない。まぁ、明日から頑張ろう。おー。
……ちなみに抱きつかれて動けないからどうしようかと考えているのは内緒だ。
ちなみに作者はグロテスクなのは全般NGです。恐怖には耐性がそこそこあってもグロには皆無です。
この主人公、何が怖いのか分からない。
第三弾は…………やろうか迷い中です。(言えない。やるネタが切れているなんて)
次回、Roselia回。