タイトルがすごいことになってるけど……まぁいっか。
それは異様な光景だった。
地に伏すのは四人の少女たち。
「さぁ、湊友希那よ。覚悟は決まったか?」
「ぐっ……!」
その言葉に湊友希那は唇を噛み締めんとする。
ステージにて足組をしつつ湊友希那を見下ろすのは、我らが主人公、冬木慧人。
その姿は完全に魔王である。
「に、逃げて……友希那……!」
「私たちのことは……気にしないでください……!」
「リサ、紗夜……!」
「今の私たちじゃ勝てない……です……!」
「お願い友希那さん……生きて……!生き延びて……!」
「燐子、あこ……!」
死にそうになりながら地に伏す四人の少女たちは、自分たちのリーダーに声をかける。
「ははははっ!さぁどうする?彼女たちを見捨てて逃げることが出来るか?答えろ。湊友希那」
迷う彼女に高らかに笑いながら声をかける魔王、慧人。
「私は……!私は…………!」
「だ、ダメだよ友希那!逃げて!アタシたちを置いて逃げて!」
「友希那さんがやられたら、誰がRoseliaを引っ張っていくんですか!」
「は、早まってはダメです!だからどうか……!」
「友希那さん!友希那さん!」
「大丈夫よ皆。……私は必ず勝つわ」
友希那は地に伏す四人の少女たちに微笑みかける。そして……そして…………
「冬木。何かいい案はないかしら」
「えぇー急に言われても困るんですけど?」
Roseliaの練習終わり。一人練習をすると言うことで残った友希那さん。いろいろあって何か彼女と二人きりで話すことになってしまった。
「最近、Roseliaの練習に緊張感が足りないと思うの」
「あぁ……いやそれ絶対アンタらがネタに走り始めたからでしょ」
思い出されるはこの前のCiRCLEでの合同ライブ。誰が予想できただろうか。あのRoseliaが頭のおかしな衣装を着て演奏することに。おかげで俺の中での頭のおかしいバンドランキング、堂々の1位になっている。
「ネタ?私たちはいつでも本気よ」
「へいへい。紗夜さんが言ってますもんね。練習は本番のように、本番は練習のようにって」
「その通りよ。ただ、本番のような緊張感を練習ではどうしても持ちにくいのよ」
音楽そのもののレベルは高い彼女たち。だが、何かを見失っている気がする。
「緊張感ねぇ……あぁ、罰ゲームとかどうですか?」
「罰ゲーム?」
「そう。例えば練習でミスったら誰かがが罰ゲーム!みたいな。それだったら緊張感があるんじゃないですか?」
「いいわね。採用。でも罰ゲームって何するの?」
「えぇ?……うーん。顔にラクガキ?」
「……多分、リサやあこはノーダメージよ」
あぁ……確かに。途中から変な方向に走りそうだなぁ……
「え?じゃあ恥ずかしいコスプレ的なのも……」
「リサとあこはノリノリでやるわ」
「うーん……黒歴史とか恥ずかしいことの暴露」
「既に私のそういう話はリサが知っているわ」
「何かのモノマネとか?ここで黒歴史を作る」
「多分、あこが楽しんでやるわ」
「語尾に何かをつけて会話縛り」
「リサが面白がってやりそうね」
「…………え?あの人たち、強くね?」
つ、強すぎるぞあの二人。罰ゲームが罰ゲームにならないだと?
「冬木の歌を聴かせるというのはどうかしら?」
「すみません。人の歌を罰ゲームにしないでください」
「……そうね。それに、あなたの歌だとCiRCLEが崩壊するかもしれないわね」
「ひでぇ!?それはひでぇ!?いくら何でも俺の歌は建物を壊すレベルにないですよ!」
というかいよいよネタが尽きた。いや……思いつく限り出したんだけどなぁ……
「えぇ……後は食関係ですか?」
「食?あぁ、何か食べさせる系ね」
「そうそう。でも下手なものやって、喉やられたり体調悪くされるとダメージでかいですよね」
「当然よ。今後に支障をきたしてしまえば、意味がないわ」
「うーん……そう考えると難しいよな…………あ」
「何を思いついたの?」
「えぇ。罰ゲームとしてダメージがでかく、リサ姐やあこちゃんでも絶対拒否したくなり、そして後に響かなそうなものを思いつきました」
そして次の練習の時、
「最近の私たちは何処か甘えがあったのよ」
急に友希那さんが真面目な事を言い出していた。
「だから、今回は罰ゲームを用意したわ」
「「「罰ゲーム?」」」
「えぇ。緊張感を味わうために、ミスした場合、罰ゲームを受けてもらう。冬木。例のモノを」
「へーい」
俺はワゴンにシーツをかけたものを押して転がす。全く、俺バイト中なのになぁ……まぁ、本当はよくないんだけど。
「えーっとこれは何かな?」
「冬木」
「へいへい」
俺はシーツを外す。中から現れたのは謎の液体Xが入ったクールポット。
「な、何ですかその液体……」
「ふっ。あれは我らが魔界に生きる者が……えっと」
「嗜む」
「……嗜むものよ」
「俺お手製ドリンク、通称『対Roselia決戦兵器』です」
「「「対Roselia決戦兵器!?」」」
「えぇ。Roseliaを倒すために用意した最終兵器です」
「……ぐ、具体的には何が入ってるの?」
「こちら、ゴーヤ、にんじん、ピーマン、セロリのグリーンスムージーとなっております。他には一切入っておりません」
「「「…………」」」
皆の顔が固まった。だって、あなたたちの嫌いを合わせたらこうなっただもん。仕方ないよね。
「ちなみに調理は友希那さんとまりなさんの監視下で行われていたため、怪しいなんとかが入ってる可能性はゼロです」
「「「…………」」」
「さぁ、練習を始めましょうか。皆さん」
「ま、待って慧人くん。味見は?」
「してないです」
「では、私たちは頂けませんね。万が一奇跡的な調合で、問題が起きては困りますし」
「そ、そうですよね。もしものことを考えると……」
「それは地獄へ誘う悪魔の飲み物……」
うわぁ……すげぇ抵抗してくるなぁ……仕方ない。
「毒味すりゃいいんでしょ。はいはい」
というわけで持ってきたグラスの一つに注いでいく。良かった。その返しが想像できていたからグラスを六つ持ってきておいて。
「え?味見でいいのにそんな沢山……」
「け、慧人さん。もっと少なくていいんですよ?味見ですからもっと少なくても……」
「何を言っているんですか紗夜さん。これぐらい飲んでも皆さんの分はしっかりとありますから。何なら追加で作りますよ」
流石紗夜さん。いち早く俺の狙いに気付いたようだが時すでに遅し。
「いただきますっと」
ということでコップに入った分を飲み干す。
「うん。おいしくねぇ」
やっぱ、具材そのままやったのはまずったな。次は改良を重ねて一部の人以外はおいしく飲めるようにしたいな。次回作に期待だな。
「まぁまぁ、皆さん。ミスさえしなければ飲まなくていいんですよ。それに頂点に立つんでしょ?これくらいの試練を乗り越えてもらわないと。……さぁ練習を始めましょう?」
「「「…………」」」
すげぇ。あそこまで固まるのは初めて見た。……まぁ、俺聞くだけなんだけど。だって、楽器弾けないし。歌えないし。というかバイト中……まぁいっか。バンドの練習のフォローということで。
「…………どうだった?」
一曲終わって反省会。
「何か途中で音が半音ズレませんでした?確か……あ、ここのフレーズです」
「ぐっ……流石慧人さん……耳だけはいい……!」
「こういう時だけ……何で慧人くんは絶対音感持ってるの……!」
「…………(ふるふる)」
「け、けー兄のバカ……!」
「ば、罰ゲームね……!」
何故か指摘した俺が責められる展開に。ただ、本人たちが否定しないあたり、少なくとも間違ったことは言ってないのだろう。というか……え?あのワンフレーズのズレだけで?す、すげぇ……ハードモード。
「でも、誰が受けるんですか?」
「あ、アタシが行くよ……!」
「リサ姐ですか」
ということでコップの一つに注いでいく。
「ちょ、ちょっと多くないかなー」
「え?俺はこれぐらい飲みましたよ」
「やっぱりこれが狙いでしたか……!」
そう。味見で飲んだ人……すなわち最初の犠牲者が普通に一杯分飲んだ以上、注ぐ担当がそれと同じ量入れても責められる筋合いはない。
それを見越していたが……さすが紗夜さん。気付いていたようで。まぁ、気付いても止められなかった以上アレだけど。
「はいリサ姐」
「あ、ありがとね……!」
「安心してください。拒否しても、残したとしても、しっかりと飲み干させてあげますから」
「あ、あはは……が、ガチだねー殺す気だねー」
目が泳いで動揺を隠しきれない。初めてかも。ここまで動揺を隠しきれないリサ姐は。
そして、日頃の俺を見ているせいか、やらなきゃやられるということで、意を決して飲み始める。
「……っっっ!!?」
目を見開き、涙目になりかけている。
「どうしました?手が止まりましたよ」
笑顔で問いかけると目がこれ以上やめてと訴えかけている。えぇーだって、やろうって言ったの友希那さんだし。やる以上本気じゃないとね。
(((……鬼が居る。ここに最悪の鬼が居る)))
そして遂に飲み干すリサ姐。
「……あれ?何で気絶しているんだろう」
倒れそうになった彼女を支える。おかしい。気絶させるような代物は入れてないのに。
「み、湊さん……」
「……続けましょう。練習を」
こっちで、リサ姐の介抱をしている中、四人で練習再開。さすが対Roselia決戦兵器って言ったところか。効果覿面、効果抜群だった。
そして、次の曲が終わった。
「言わないでください……!分かってます……私が罰ゲームを受けます……!」
「ひ、氷川さん……!」
「さ、紗夜さん……あこたちの為にそんな……!」
「…………分かったわ」
早かった。あーなるほど。彼女たちの妥協しない、完璧を求めるせいで、無茶苦茶ハードルが高いんだ。音ゲーで例えるなら、オールパーフェクトじゃないと納得しないんだ。……うわぁ、これがガチ勢か。そのせいですぐに罰ゲーム行き……ヤバいこの人たちのハードルの高さ。俺の想定の数段上なんだけど。いや、煽った俺が言えることでもないけど。
そう考えながら、罰ゲーム用のアレをグラスに注いでいく。相手が紗夜さんでも容赦できないのが悲しいところだけど……まぁいいか。ポテト好きな彼女の栄養が偏らないようにする為の措置だと思えば。
「さぁ、どうぞ。紗夜さん」
「…………慧人さん」
「何でしょう」
「私が死んだら後のことを頼みます」
いや、大袈裟では?と、思ったらすぐそこに倒れている人居たわ。
「私は……私は!決して屈さない!屈するわけにはいかない!」
そして、一気に飲み干す紗夜さん。
「す、凄いです……!立ったまま気絶してます……!」
「アレが紗夜さんの意地……!絶対に倒れない強い意志……!」
「くっ……紗夜まで失うなんて……!」
す、すげぇ……!何か紗夜さんの背後に、白い衣を纏った神々しい紗夜さんが見える……!やはりあなたは女神様でしたか……!
とりあえず、グラスを回収して立ったままなのはアレなので横にする。というか、今更だがベースとギターが消えて大丈夫なのか?
「続けるわよ……!二人の分まで……!」
二人の介抱をしていると、次の曲が終わった。
「…………くっ。ダメだったわ……!」
「ど、どうしようりんりん!」
「わ、私が行きます……!」
「そんな……!」
「い、嫌だよりんりん!りんりんまで失いたくない!」
「大丈夫だよ……必ず帰ってくるから」
…………おかしい。さっきからおかしい。何がおかしいって、何か俺だけが
「け、けいさん……!」
「何でしょう」
ヤバい。最初から凄い震えているから……うん。とてもじゃないが罪悪感がヤバい。おかしい。友希那さんはグルだったはずなのに。
「ひ、一思いにやってください!」
「……え?あ、はい」
え?俺がやるの?マジで?……いや、目を閉じて手をギュッと握りしめている……マジかぁ。
「分かりました。口を開けてください」
「は、はい……」
「行きますよ」
そして、片手は彼女の背中に回して倒れ込まないように。もう片方の手はグラスを傾け彼女の口の中に少しずつ流し込んでいく。
彼女の手は気付けば俺の服を掴み、時折悲鳴にならない声を上げようとしたり、目を見開いたりしていたが何とか飲み干すことに成功する。
そのままゆっくりとりんさんを横にする。グラスを戻しに行くと、あこちゃんがりんさんに駆け寄った。
「りんりん!」
「あこちゃん……約束……守れなかっ……」
「そんな……りんりん……りんりんっ!」
「ダメよあこ。私たちは……三人の犠牲を無駄にするわけにはいかないの……」
「うぅ……分かりました。あこ、頑張ります」
……もういいや。俺、悪役で。
そして、次の曲が終わった。
「……あこが行きます……!」
「そんな……!」
「友希那さんを失うわけにはいかないです……!ここはあこが……!」
すげぇ友情だ。ウチのサッカー部でコレやらせたら絶対蹴落とし合いが始まるのに。彼女たちは自己犠牲で行くなんて……凄い友情、結束の固さ。
「どうぞ」
そしてあこちゃんの前にグラスを差し出す。
「ふっふっふっ。我が名は聖堕天使あこ姫!我の前に立ち塞がろうものならば!我が……えっと、バーンとなるアレで打ち砕いてくれようぞ!」
や、やべぇ……フォロー役のりんさんが倒れているせいで、誰もフォローできねぇ……!
「いざ参らん!」
飲み始めるあこちゃん。途中、何度も涙を流しそうになるも、最後の一口を飲みきる。すると、目を見開きそして……
「我の勝利なり……ふにゅ~」
目を回して倒れそうになったので、咄嗟に抱きかかえる。流石に倒れて床に激突は洒落にならん。
「……どうすんの友希那さん。アンタ以外全員倒れたのだけど……」
「リサ、紗夜、燐子、あこ……よくも……よくも皆を!」
「……え?ちょっ、ま?」
「私は……私は諦めない!たとえ最後の一人になったとしても!歌いきって見せるわ!」
えぇ……何かスイッチ入っちゃったよこの人。マジか。アンタが言い出したことなんだけど?…………もういいや。それなら最後まで付き合ってやるか。
「はっ。その覚悟がいつまで持つか。楽しみだな」
湊友希那は格好良く散った。
飲み干すと同時に格好良く散っていった。
…………いや、ほんと何してんだろうね。やっぱりRoseliaの方向性、何か間違ってない?
(((いつか、この仕返しをしてやる……!)))
俺は知らなかった。この時、彼女たちの思いが一つになったことに。
何かこんな感じになりました。
予想よりアレでしたらごめんなさい!
そしてネタはまだまだ募集中ですので遠慮なくどうぞ!